本編 ヴィリム付き執事兼薬師
ここから始まる物語。本編です。楽しくなると思います。今までは序盤でした。
世にも稀にな色無しとして産まれ、更に稀な魔力を待ち魔法を使うことができるとわかってから四季が何度も繰り返され、12歳になっていた。魔法や座学なども優等生だが一度も学校に通っていない。体のことを気遣い体の成長過程で半分を過ぎた頃にしようと決まっていた。しかも本人の知らないところでだ。そ代わりと言って何人のも教師をつけた。剣術の講師以外が申し分なく付けられた。今では中等部の座学の勉強過程はほぼ修了していると言っても過言ではなかった。
(剣術は怖いからいいんだけどね)
容姿も歳を重ねるごとに女性らしい中性的な顔つきが変わると思えば、更に拍車をかけられていた。今では侍女達に髪を結わえられたり幼少期は男の服でもフリルが付いていてもいいだろうが12歳となったヴィリムの場合は未だにフリルがあしらわれていた。
「完全な男性の服よりは落ち着くけどね」
内心冷や汗ものだったりするのだ、ヴィリムの存在は王城で働くものだけが知っているが、大臣や何かしらの役職についている男からどう思われているのか不安になるのだが、そう言った訴えなどは上がってはいないようだ。
そして、ヴィリムとして産まれ早12年が経っていたが未だにならないことがある。
それは前世にはなかった部分に今は付いているものに慣れない事だ。お手洗いやお風呂などそれを見ないようにしていた。見てしまうと顔が真っ赤になるのが自分でも分かるぐらいに顔が熱くなっていくのだ。かつて自分が日本人だった頃大好きなお風呂が憂鬱に思わなかったことが憂鬱に思えて仕方がない。
「まぁ、それはそのうちいつか慣れるよね。たぶん………」
そう自分に言い聞かせるように呟くとこの部屋の壁の一部を全てずらっと天井まで段が作られた本棚からお気に入りの小説を取り出しソファーに深く腰掛け読み耽る。読みながら喉に触れる仕草を繰り返していることを本人が気づかないほど夢中になっていた。
此処は新しくできたヴィリムの為の宮殿。通称【白銀の宮】と言われる場所。その名の由来は白を基調にした金を所々にさりげなく模様を散りばめられた宮殿だった。なぜ白銀だと思うだろう。白を基調にした為か日差しが差し込むとその光に反応してか壁が銀色に錯覚で思い周りがキラキラと銀色に輝くそうだが、此処の主人の色も関係しているのだろう。
この白銀の宮が理由は身体が弱い彼が今まで住んでいた王子達が住む宮だと何かしらの人の気配や物音が多く、ゆっくりと静養ができない可能性が高い。と言ってもここは今まで住んでいた兄達が住む場所と姉や妃達が住む宮とはあまり離れていないが、静かな場所で他の場所と接点を断つように木々が茂り、許可したものしか入らないように宮廷魔法士によって施されていた。と言っても道を閉ざすように施されている為全体を覆い囲んでいるわけではない。閉ざされた道もヴィリムの意思と限られたものに渡されたバッチに反応して道を開けるように作られた魔法だ。そして、この白銀の世界専用の温室と庭があり、花達が生き生きと咲き誇って窓を開けると花の匂いが鼻腔をくすぐり、気持ちが穏やかになる。彼自身に与えられた宮であっても兄弟達は度々此処に足を運び和気あいあいとしている。反対ももちろんあるがほとんどヴィリムが出向くことが少ない。用がない限りこの白銀の宮から出ることが滅多にないのだ。おかげで風邪を引いても治る速さや体のだるさなどに違いが出ていた。もちろん他の理由もきちんとある為その一つであるが、そのことに家族が喜んだ姿にはホッとした。
この宮が作られた時、やはり自分は家族の中ではいない存在なのかもしれないとネガティブ思考に陥ったが父王や兄弟達が頻繁に訪れ、風邪をこじらせたと聞けばフルーツが山幾つもできるぐらいに届けられる状態になる。
(最初は怖かったけど今はそうじゃない。暖かさを感じられて心地いい)
読書に没頭しながら時折考え事をしながら何冊か読み終わった時、ガチャっと窓が開いた、驚き音がした窓を視線をやると窓際に体を預けながらこちらに目をやっていた。黒い服装に身を包んだ金髪の青年が此方を見ていた。
「どうやってここに!?」
この白銀の宮に出入りする顔触れではないものがそこに居たことに疑問に思いながらも壁に背を守らせる。
すると何かを空中に投げキャッチする動作を何度も繰り返しした。その何かは許可されたものしか与えられないバッチだった。
「それは!!どうして貴方が!」
「ん?これか?そう警戒心強くしてると身体が疲れるぞ。これはきちんとしたルートで強制的に持たされた。だから平気だ。直接あったことないが俺は何度もここに出入りしているぞ」
ヴィリムが小野真澄だった頃驚く時口元を手に当てその手を片手で持つ仕草をしていることに気づかないが、その女性特有で有ろうその仕草に嫌な顔せずに此方に足を向けた。
「こ、来ないでください!衛兵…」
「衛兵を呼んだところで俺は拘束されない。警戒するなって言っただろ、口開けろ」
抵抗を見せたヴィリムの攻撃を軽い動作で避けた彼は少し優しさが乗った声でそう告げるが頑なに口を開けないヴィリムの顎を掴み、強制的に開けさせた。
「んあ…んん」
口を開けられ顎の関節を持たれて痛みに耐えるとひやりとした金属を口に入れられ白黒させた時見えた形状が医者を口の中を見る時舌を押さえるものだと分かった。口腔を覗く仕草をした金髪の青年はなぜかため息をついた。
「お前な?喉痛いなら言えって薬師に言われてないか?」
薬師と呼ばれる者は薬を調合する勉強をしてその役職に就いた者をそう呼ぶ。その多くは回復の魔法を使える者が多い。ヴィリムには信頼できる優秀な薬師がひとりで作ってくれていると聞いた。ほとんど専属みたいな形になっていると。その薬はよく効くのだが。
「だって……」
「苦いし、まずい。そして、妙な色合いだからか?」
その言葉に硬直するしかなかった。
「薬なんだから苦いのは当然だろ」
「あの苦さは異常だよ。薬膳は口に苦しっていうけどね、あの色とかたまに毒薬にしか思えないんだ」
少し青年の顎を持つ力が抜けたと思って逃げようとすると力を込められた
「悪かったな」
ぼそりと何かを呟いたが聞き取れなかった。
「え?なに?」
「何でもない。おい、取り敢えずこれ飲め」
顔を上に向かせられ、茶色い瓶に入った液体を口の中に流し込まれる。その液体は物凄く苦い者だった。
手足が恐怖に震える。飲み込まずにいると鼻を摘まれた。苦しさに少し両手を上げながら口の中の液体をほんの少し飲み込むと青年の力が抜けていった。喉をと通った液体は痛みのあった場所をかぁーとあつくする。少し飲んでも体に異常が見られなかったヴィリムは残りの口の液体も飲み込んだ。同じように熱くなったが痛みが少し消えていることに気づく。それに。
「え、痛みが?それにこの味?」
「ほら、もう一口あるから口開けろ」
今度は大人しく口を小さく開けると瓶の口を入れられ一気に流し込まれたが飲み込んだ。
「やっぱりこの味」
考え込むヴィリムは俯き青年から目を離す。ハッとし顔を開けた時には青年はいなかった。開けられた窓も閉められカギも閉められていた。
青年に不思議に思いながら読みかけの本に手を伸ばす。
「薬師、ね……」
色合いは目にすることはできなかったが、あの薬の味は何度も口にしたことがある独特の味をしていた。
ヴィリムの部屋を出た青年は王城の廊下を静かに歩き、薬が入っていた空になった瓶を眺めた。すると前方から目的の人物を目認をすると小幅が大きくなってた。
「おい、オヤジ。ヴィリム、ヴィリム殿下に会った」
「ああ、アルノルトか。殿下に会ったとは何の風の吹き回しだ?」
青年の名はアルノルト・ディックハウト。この国宰相の息子だ。
薬学に優れた回復魔法の使い手。彼は強制的にヴィリムの薬師にされていたのだ。
「確かに無理やり色ヴィリム殿下の薬師にされたのはやだった。だが大抵のやつは突き返すか残すかする薬をきちんと飲むやつだからな気になってた」
「最初は難を見せたがきちんと飲んだようだったな。薬師が変わったのは一目瞭然だろうが、お前のは即効性で効き目がいいからな」
目を伏せため息つく、宰相もまた同じように黒い服に身を包んでいた。ディックハウト家は代々王家の人間の仕えたい人を決め、その人のために情報を集める。諜報機関の役割を果たす一族でもあった。だが、アルノルトの年代で主人を決めていないのは異例だった。
「ヴィリム殿下を見た時この人だと思った、だから俺は自分の意思でヴィリムに仕える。強制的に下にいるのは御免だ」
ようやく腹を決めた息子に頷く宰相。
「お前がヴィリム王子についてくれるのなら助かる。二週間後、中等部に入学なされるからな」
「入学と言うよりは転入に近いがな」
ヴィリムの通う予定はクラスのほとんどが持ち上がりで途中で入ってくる人もいないのでそもそも入学式はないにし等しい。
「ヴィリム殿下をいきなり集団行動の場所に入れて大丈夫なのか?」
苦い顔をする宰相もあまり良くないと考えてはいるがヴィリムの年を考えるさそうも言ってられない事でもあった。
「確かに体に負担はかかるだろうがお前が仕えると言うなら問題はないだろう」
「それとあの魔力は何だ?桁違いだろ。あれで色なしで産まれたのが不思議なくらい魔力を感じた。あの状態で学校で騒ぎにからないか不安だな」
「魔力を隠すものを持ってあの姿で行ってもらう。お披露目の時に困る」
「お披露目の時に魔力のことは明かすのか?」
「当然だろう。ところでアルノルト。お前はヴィリム付き執事兼薬師と言う肩書きでいいな」
その言葉に見開くが肩唇を吊り上げる。
「光栄だな」
そう言い残すと何処かに去って行った。
謎の青年が部屋を訪れた翌日宰相が部屋を訪れた。
「それで宰相。僕にお話って一体?」
「悪い話ではありませんので楽にしてくださいね。二週間後には中等部へ入学なされる身。なので身の回りを世話をするものを大部分を固定しなければなりません」
学校に通うとなればいろんなことを伝えなければならないことが多くなる。多数の人で身の回りを世話をしているとなると情報が歪んだらしてきちんと伝わらない可能性も出てくるそこで固定ということだ。
「そこで本日付で殿下に専属執事をつけることになりました」
「いきなり?大丈夫なのかな?」
突然執事をつけると言われてもここに出入りする者に未だに慣れないのだ。見ず知らずの人間接することは可能なのだろうか。前世から男性との接点がないため、どう接したらいいのか分からないのだ。
「ご心配には及びませんよ、直接には一度しか会ってはいませんが、間接的にはよく知った人物と言いましょうか」
安心させるように言ってはいるが若干意味のない助けのようだが、宰相が言うのだから安心していいのだろう。
「入りなさい」
その言葉を合図に扉が開けられ入ってきたのは……。
「我が息子ではありますが執事学校や色んな物に優れておりますからご安心を殿下」
昨日この場所であった金髪の怪しげ薬を飲ませた侵入者の青年。
「アルノルト・ディックハウトでございます。何かございましたらお気軽にお申し付けください」
「ではいろいろお二人でお話しくださいませ」
音も立てず静かに部屋を退出した宰相。残された二人には沈黙の時間が流れた。
「侵入者さんがまさか宰相の息子さんだったとは。あれからのどに痛みはほぼ消えたよ。ありがとう薬師さん」
そういうとため息をつかれ、アルノルトは内ポケットから昨日使った同じ形のものを取り出した。彼が言わずとも口を開けた。
「嘘じゃないみたいだな。俺はヴィリム殿下付き執事兼薬師だ。風邪ひいたら薬作ってやるから飲めよ?」
「何、初めて私の薬を作りますって言い方はないでしょ?私はアルノ…ねえ、アルでいい?私と二人の時はヴィリムって呼び捨てでいいから。敬語無し」
「はいはい」
「アルが作ってくれた薬は残したことないよね?それはアルが一番知ってるよね」
口に入れた金属をきゅきゅと拭き終わると入ってきた時から持っていたアタッシュケースのようなものから何やら取り出して近くにあったチェストの上で作り始めた。
「ああ、それが疑問に思ってた。ほかの薬師からは薬嫌いだ。お前の薬は絶対飲むことなく降ろされるだろって口々に言われたが、一度もそのまま返って来なかったからな」
座っていた椅子からぴょこんと降りるとアルノルトの傍に歩み寄ると手元に見ていた。
「んーそれは苦いのにやたら効き目ない薬と苦くて効き目がいい薬どっちがいいと思う?」
「前者じゃないのか」
「それだったらアルの薬飲んでないよ。答えは後者。以外薬をずっと飲み続けても治りが遅いんじゃこっちとしては拷問みたいなもんだ。苦くて効き目がいいほうが飲む回数少なくて楽だから」
だから薬膳は口に苦しなんだよと笑って見せる。
「なんだそれは」
「苦い薬ほどいい薬はないってこと。だからアルのはいいお薬。この白銀の宮が完成して転居した三年前からからアルが作ってくれるようになってから風邪の治りがいいんだよ。いつも作ってくれてありがとう薬師さん」
「意味は分かったが、どこの言葉だ?」
アルが作っていたのは薬のようだ調合し終わり、手をかざし魔力を流し込むと瞬く間に紫の薬の完成した。
「…自分で作った。はじめてこの薬見たときもこの色だったよね。毒薬だと思ったよ、父様から渡されたとき殺されるんだって思った」
(本当は前世の国の言葉。薬膳は口に苦しとはよく言ったものね)
アルノルトはくくっと笑って見せた。
「そうか。国王陛下はこの宮を建てているときから俺を見るとお前の薬師になってほしいと誇りも捨ててまで頭を下げていたぞ。しかも兄弟姉妹全員も。だから絶対殺されない。この宮お前のためだ。わかってるだろ。出来たぞ、飲め」
「分かってるつもりだよ」
渡された薬をグイッと飲む。
「うえ…まっず!苦い!」
空になった入れ物を差し出された手に乱暴に渡すとくしゃくしゃと撫ぜ、片付け始めた。
「どうして俺がお前の薬を作ってた薬師だと分かったんだ?昨日の時点で確信してただろ?」
「味とそれに・・・薬から他の薬師が作ってる薬にはない魔力を感じたし。あの時薬と同じ魔力をアルから
感じたから」
「おい、待て魔力を感じるって言ったって個人の魔力の気配の察知何て不可能だ。魔法属性の察知ならまだしもだ」
「それが私には可能なんだ」
フフッと笑って見せると天を見上げたアルノルトはめ息をついた
「稀中の稀な魔力を持っているからこそできる技と思っておこう」
「ぜひそうして」
くああとあくびをしたヴィリムを抱き上げ寝室に連れていきベットに横にさせると跪く。
「今日からあなた様のお世話をすることをどうかお許しください」
いつの間にか手にしていたタイチェーンをネクタイにつけた。それは銀色に輝くチェーンにヴィリムのシンボルとされている白いアネモネをかたどった物が付けられていた。
「私こそアルノルト・ディックハウト。貴方には私の執事として薬師として苦労かけると思うけどその印に恥じぬ行動を」
アルノルトが着けたタイチェーンの意味は花のシンボルで分かる《私はヴィリムに忠誠を誓う者》という意味だ。何人たりとも主人を傷つけることは私は許さない。