序盤3 色無し
ブックマーク3件ありがとうございます!
前回は長い読み物になります。
小野真澄がヴィリムとして目覚めて月日が流れは早く3歳になり、喋りや歩くこと自分で少し着替えることができるようになった。周りの人達、使用人が話しているのを聞き耳を立て続けて解った事が幾つかあった。
ここはディオノス王国と言って北のほうにある大国だった。
「要するにここはフランス、ドイツ、イタリアをくっ付けた大国か」
一人で廊下をポテポテと歩いているといろんな事が聞ける。
この国はどうとか噂とか。よく聞くのはこの国、ディオノスに生まれて良かったという話だった。ヴィリムは此処がなんという国かわかったのはそれが理由だった。
安全なだと国民からも信頼される大国だとわかり何はともあれ一番心配した部分が解消されてホッとした。
そして、一番驚いたのは自分の立場が…
「ヴィリム王子!」
名前を呼ばれて振り向くと一人の衛兵が息を切らしてそばに駆け寄って来た。
(ディオノス王国第三王子だった事だよ…)
ゼエゼエと息をして膝に手を置いて息をしている衛兵を少し見下ろしながら首を傾げる。
「どうしたの?」
「どうしたの?ではありません!ヴィリム王子!何処かに行かれるなら一言我々に教えてください。おねがいですから誘拐されたかと!」
ああ、そいうことと思い脱力する。
「ごめんなさい」
「元気よく行動することは微笑ましいですが、ヴィリム王子はお体弱いのです気をつけていただかないと。それにディオノス王国第三王子だという事を忘れないでください」
母親のように説教され少し気が沈む。しかし。
「と言っても私はまだ国民にさらされていない存在だけど」
この国の国民の認識ではまた、第三王子ヴィリム・ディオノスという認識はまだないというより周辺諸国にも公表されていない事実。知らされているのはヴィリムの母、正妃が亡くなったということだけだ。
自身の存在を知っているのは王族である家族と此処、王城に仕える者のみであり、口外しないように言われている。
「それでヴィリム王子は何処に行こうしていたのですか?」
問われ首を傾げた。なぜなら今日はメイドから、兄弟姉妹からお茶に誘われていると言われていたからだ。と言うより毎週この曜日とこの時間帯はお茶会の時間なのだ。
「え?だって今日はお茶会……」
そう言うとガクンと衛兵の首が垂れてしまった。
「そうでしたね……申し訳ありません。偉そうに説教してしまい」
「気にしていないから平気です。心配してくれてありがとう」
いえいえと首を振る衛兵を見ながら方向転換しお茶会の会場となる中庭に向かう。
ヴィリムは昔から体が弱い為、優れる日しか参加できないが毎週開かれているのだ。
「あのお方って『色無し』の第三王子殿下でしょ。今日は元気そうね」
途中使用人のひそひそ話が耳に届いた。気にせず足を動かすが度々耳する『色無し』という単語。それは何を意味するかわからない。ただ皆、兄弟姉妹の様な鮮やかな色やパステルカラーの様な色合いを持つ髪の人達だ。ただ何故が自分と同じ銀色の髪を持った人にはあった事がない。
(同じ色の髪の人がいないのはこれはこれで美味しいかな)
少し嬉しく思っている部分でもあった。それを思うと頰が緩む。
「お可哀想にその際でお体が弱いというのに」
「しっ!聞こえるわ!」
「まだ平気じゃない?理解してないもの。でも今日はお加減が良さそうだわ」
チラチラとこちらを見ながら話をし続ける使用人に少し眉を潜める。
(中身は大の大人なので色無しという単語意外理解してますが?)
見た目で判断されて不機嫌に思うが本来なら本当に理解できないであろう内容ではあるだろうが、理解できていないという事で話されるとげんなりする。
「でも、あの髪は美しいわ見てて癒される」
「そうね、目の保養になるわ」
ヴィリムは再び頰を緩めた時お茶会の会場となる場所で目的の人達を見つけ小走りなった。
(いい加減『色無し』という単語の意味が知りたい兄様達教えてくれるかな)
青々と茂る草の上を小さな足で踏み締めカサカサと音を立てると深い赤の髪の青年がこちらに振り向きながら立ち上がると手を広げ片膝をついた。
「フランク兄様!」
「ヴィオ!よく来たな」
近くまで駆け寄りそこから飛びつくと広い胸に顔を埋めた時くるりと回転した。そのまま縦抱きにされ、フランクは座っていた椅子に座り直すと膝に座らせた。
「お久しぶりです」
兄弟姉妹の顔を見ながら挨拶をした。
膝の上になしているのは第一子で第1王子鮮やかな赤髪を持つフランク。
第二子で第1王女のフィリーネ浅い青毛の可愛いらしいふわふわした印象的。
第三子で第二王子レオンハルト水々しいオレンジの髪色を持つが女顔である。フィリーネとレオンハルトは双子の姉弟。
第4子で第二王女はおっとりとした感じを引き立たせは黄緑色でコルネリア。
それぞれ腹違いではあるが兄弟姉妹で五人の共通点として紫の瞳を国王である父から受け継いでいる。
何よりそれぞれ異なった色を持つ為遠目からでも五人が集まればすぐ見つかるのだ。
「ふふ、微熱が続いたと聞いていたけれど大丈夫そうね」
クスクスと静かに笑うフィリーネは思い出した様に両手の指を若干絡め小首を傾げてた。
「今日はヴィオが来るかもしれないと聞いていたからクッキーを焼いて来たわ。たくさん食べて」
バスケットのフタを開けるとふわりと甘い匂いが鼻孔を掠める。
「わぁー、フィリーネ姉様ありがとうございます」
嬉しそうに笑ったヴィリムに笑みを零す。
ヴィリムは家族からヴィオという愛称で呼ばれている。
末の弟を思い思いに甘やかす兄弟に囲まれているヴィリムは前世では一人っ子だったので少し楽しいが困惑する。どれだけの甘やかさは許されるのかと思うが兄達のしたい様に甘やかされていた。
バスケットに手を伸ばしクッキーをパクリと口に含むと甘い香りとホロリとした舌触りが口一杯に広かった。
(よし!勇気を出して聞いてみよう!)
頃合いを見計らい例の単語について聞いてみようと深呼吸をすると膝の上に乗せていたフランクが見下ろしていた。
「どうした?ヴィオ?」
深呼吸をしているときに話しかけられピクリと肩を震わせるが後ろを振り向き見上げる。
「あのね?フランク兄様。聞きたい事があるんです」
この歳になると疑問や不思議なことはなんでも口にする年頃なので答えてくれると信じながら可愛らしくコテンと傾げてみせた。
「最近『色無し』という単語をよく耳にするんです。僕を見ながらだから僕のことだと思うのですが。どういう意味が分からなくて」
『色無し』という単語を出した途端兄弟姉妹の周りの温度が下がった気がしたが、負け時とうるうるした目でフランクを見つめた。
じっと見つめられたままでいたフランクは喉奥でつまらせたように唸るとため息をついた。
「こうなるとは思っていたが……仕方がないか……」
「「だけど!!まだ早すぎます!」」
フィリーネとレオンハルトの声が重なりフランクは重くため息をつく。
「いつまでも隠しておける問題ではないはずだ。父上からも頃合いを見て話すよう言われていただろう」
「ですが……」
弱々しく反対しているコルネリア。
(これは思った以上に何かありそうだね)
心の中でため息をつき、口論となりそうになっている兄達を止める。
「こうやって僕を守ってくれているのは嬉しいですが、でも何も知らなくて知らないのとなにかあるって知ってた知らないのとは違いますよね?兄様達が必死に隠しているという事は僕に不利な事なのでしょうから覚悟を決めています。だから教えてください」
まだ、3歳という幼児が重い説得のある言葉に兄達四人は目を見開きヴィリムをみた。
ヴィリムは笑顔を絶やさぬように心がけながら兄達をキラキラした笑みを贈る。
少し重い空気の中フランクは口を開開いた。
「私たちには魔法が使える事は知っているな?」
「はい」
返事をしたヴィリムに頷いた彼は自身の髪を指した。
「魔法の属性は髪の色で決まる。あれは赤だから炎。ピンクの髪を持つものも含まれる」
なるほどと感心したヴィリムはフィリーネを見ると薬と笑い右手に氷が現れ左に水の塊を作り出した。
「私は青い色だから氷または水の魔法なのよ水色の方もね」
順に話していくような流れになりレオンハルトもうつむいていたが顔を上げ話す。
「オレンジの色は明るいし、さらに明るいのは黄色。だから光系の魔法が使えるんだ
「私は私のような色合いの方や緑の色合いの人は植物の魔法を使います」
か細い声で話すコルネリアはにこりと笑い何もないところから気が伸び始めた。
「他には回復系の魔法。それが使えるのは茶色、金髪の人物。この大陸では見かけないが東の国に黒や紫の髪を持つものもいるようだ。闇系統の魔法とも聞くが、あまり私たちのような色合いを持つものは生まれないそうだ」
「理解できました。髪色に関連する魔法が使えるですね。フランク兄様は赤だから炎なのですね」
理解できて嬉しそうにしているヴィリムの頭を撫ぜ、他のものは微笑ましそうににこやかだったが次第に険しくなる。
「この、炎、氷や水、光、回復、植物、闇の魔力を持って産まれ、その色の濃さで魔力の量が決まると言われているわ」
悲しそうに沈んだ声で説明するフィリーネ。
(私の髪色は含まれていないよね?まさか)
「えっと………まさか……」
「ヴィオ、そのまさかなの」
悲しそうに涙を瞳に溜めたフィリーネを姉を気遣ってかそっとさに手を添えるレオンハルトはフィリーネが膝の上で手を組んでいる見ながら言葉を繋げる。
「銀髪は色無しと言われます。ヴィオ、お前がその存在なんだ。銀髪で産まれるのは稀なんだ」
肩を少し震わせ、こちらを見つめているコルネリアまた繋げる。
「銀髪で産まれたその人達は必ずと言っていいほど魔力がなかった」
そう言って泣き出してしまったコルネリアは立ち上がると何処かにかけて言ってしまう
(あー……)
予想していたが重すぎる現実に少し心がは沈んだ。
「そして、過去に銀髪として産まれたのは世界的に見てもヴィオを含め10人。ヴィオが産まれる前の色無しと言われた人物は六百年前なんだが、例外なく体が弱い存在。これは自覚があるだろう」
「はい」
「だが、ヴィオ。諦めてはいけない。一例のみだが宮廷魔法士より優れた魔力を持っていた色無しが存在したと文献で明らかになっている。望みがないとは限らない」
それを聞くと少しキラキラした光が差し込めたような気がして内心ガッツポーズを決めた。
(なんとなく周りの話で予測していたけど魔力がないか。転生してチートスキルはアニメや漫画の世界か)
多少の希望があるとはいえ、ほぼ無いに等しいものにガッツポーズをした自分に嫌気がさしたのだった。
タイトルの色無しはこの意味でした。でもまだ望みはありますよ?