序盤2 目覚め
少し短いです。
2017/6/29
一部加筆しました。後々に困るので
ふわふわと白い空間に水を張って深く長く浸っている永遠とも言える感覚。
[真澄ちゃんいつ迄もここに留まってはダメよ。さぁ、起きなさい]
ずっと浅い眠りで眠り続けて体が動かないでいるように思えるその感覚に小野真澄は違和感を覚える。
………そして、名を呼ばれた気がした。
(あれ?私どうしたんだろう)
体は濡れていない。でも、吐く息が気泡となって上に上がっていく音。
(さっきの声は誰なの?此処は?確か私は……)
そう思った時……光が差しいきなりグンと体が浮き上がる。
(う、うわ!)
あの時のように強い光に体が包まれ瞑っているはずの瞼をさらにキツく閉じる。恐怖が体を支配し、何も考えられず頭が真っ白になる。けれどドクンと胸が脈打つ感覚が体に戻っていく。
脈打つ感覚が平常のように思えた時やっと強く光が消え目を開けた。
でも、其処は……。
何一つもシミも無い天井。白いその天井に何やらぶら下がっていた。よく赤ん坊が眠っているベットについているそれが真澄の目の前にぶら下がっている。
「あうあうふあ?」
真澄が出した声は時の声ではなく赤ん坊の声が出た。本来は【此処はどこ?】と言ったはずなのに。
(えっと……)
不思議に思っていると扉を開ける音が聞こえた。
「おや?お目覚めになられたのですか?ヴィリム様。今日は爽やかな朝でお散歩に最適な日ですよ」
二人のメイドが入ってきた。一人が喋りかけながら自分を抱き上げられ、体の全体を包み込まれた。
(ん?体なんだか小さい気がする……)
よしよしと揺すられプチプチとあやされプチプチと服を流しながら鏡の前にちょこんと座らせられ、其処に移されたのはまさしく自分地味な黒髪の地味子さんの顔ではなく銀髪の紫の瞳でなのだが赤子体型だった。
体を傾け、コロンと頭の重みでコロリと転がりふわふわの絨毯で衝撃はなかった。そのままペタペタと体を触る。
視線も感覚も自分そのものの感覚。
(えっとこれは……もしかしてあの時間違いなく死んでこれは新しい体…?)
そうそう理解した真澄は自分は転生したのだとわかった。しかも、綺麗な顔でニヤニヤが止まらなかった。
心の中で喋っていたのだが現実は鏡の前に映る自分が楽しいのか
キャキャと発している感覚があるまさに赤子だった。
「キャっきゃあーうー」
「あら?そんなに目の前の自分の姿が楽しいですか?ヴィリム様」
クスクスと先ほど喋りかけてきたメイドとは違う人が話した
「あう?」
(そっか、私はヴィリムなんだね。なんだか男の子ぽい)
そう思っているとズボンを脱がされ露わになったオムツ。
テキパキとオムツも替えられていく。其処で気になり下を向くと女だった時はないものが其処にあった。
(……ぽいじゃなく男の子でした。はい)
どんどん明かされていく自分の姿。それに驚かず入れたのも最早前世となったヲタクな自分の趣味に感謝した。
よく好んで読んだラノベの主人公がTS転生が自分に起きたのだと理解できたことに過去の自分に感謝しかなかった。
(しかし、この部屋なんだか中世な感じがするしメイドさんがいるってことは結構な上流貴族かな貧乏な貴族とかは家はそれなりに豪華でも使用人さんがあまりいなかったりするからな。てかそれがセオリーってイカンイカン)
折角転生できて二度目の人生。しかも前世の記憶持ちときた。これは楽しんでヲタクな自分を変えられるかもしれない。
(でも、それも利点だよね何かあれば対処のしようあるし、消されてなくてラッキー)
そう考えているとコンコンと扉を叩く音がして、メイドが扉を開けると赤く綺麗な髪と自分と同じく紫の瞳をもった少年が入ってきた。きている服は貴族のような服装だった。
「ヴィリム様、お兄様が遊びに来てくださいましたよ」
ニコニコと話しかけてくれるメイドにキャキャと笑い会していると兄と言われた人物に抱き上げられた。
「今日は元気そうだね。昨日は風邪ひきさんだったからね?」
優しくて暖かい手で頰を撫でられウトウトし始めた。
そしてまた、誰かが入って来た。
「失礼いたします。お水をお持ちいたしました」
礼儀正しく入って来たメイドはぎこちなか部屋に入りカタカタとトレーの上のガラスのコップを揺らしながら慎重に部屋の中心に来たが何故が其処で自分の足を自分で踏んで転け、中身の水が辺りを濡らしコップはコトリと割れず絨毯の上で転がった。
「何をやっているんだ」
そこで少し先ほどまでの声とは打って変わって低めた声を出した。
「申し訳ありません!!すぐに拭くものを!」
「いや、いい。火の魔法で蒸発させる」
兄には何やらブツブツと唱えた。
(今なんて!?魔法とか言わなかった?!)
右手を掌を上にした時ボウっと炎が現れた。
(おお!これはもしや魔法とやらかてすか?ここは魔法ありの世界なんだね)
兄の魔法を見たヴィリムは嬉しそうに笑った。それを見た兄は可笑しそうに笑う。
「あははっ楽しいのか。そうか、くく」
笑いながら手を振ると火は辺りに広がり濡れて絨毯の色を濃く染めていた水分が火の熱で蒸発し消えたのか元の色を取り戻した。炎を掌から消した兄は優しく抱き上げ揺すった。
「あまりはしゃぐとまた体に響くぞ?おやすみ?」
トントンと背中を叩かれ赤ん坊のヴィリムは眠りについた。
お読みいただきありがとうございます
次回はもう少し長めだと思います