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ゆるふわお姉ちゃん(年下)と行く異世界紀行  作者: kdorax
4章 聖女の聖水と死者の村
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第12話 ゾンビ襲来

 皆が寝静まった夜――

 

 俺はお姉ちゃんが料理の際にポーチから取り出してそのままの木綿豆腐を冷奴として頂いてた。

 そこら辺の棚に捨てられていた酒をチビチビとやりながらだ。

 

 見つけた居場所は関所の検問を敷いていたと思われる場所。

 カウンターと椅子があって据わりが良かったのだ。

 スプーンで掬った豆腐にこれまたお姉ちゃんが残してくれた海塩を一つまみ味付けしたところで、をスッと何かが動く気配がした。


「眠れないなら豆腐しか無いけど飲むか?」

「……」


 イチゴちゃんだったらどうするんだという六分の一の可能性には及ばず、酒が飲める誰かかと思った俺は声をかけた。

 しかし返事がない。

 一体誰かと改めたところ――


「なんだ。ただの腐った死体か……」


 ゾンビだこれ。

 俺なら生きている知り合いなら近づいてきた時点で誰だか気づくよ。

 動いているのに心音がないから気づかないってのは相手がゾンビだからだ。


 しかし心音だけでなくバイタル反応の一切がゼロ。

 それなのに動いていて怖い。

 体温が外気温とほぼ同じなのでサーモグラフィにもまともに映らんぞこれ。

 

 腐っているのではなく発酵している線もあったが、発酵していたら熱ぐらい出そうなものだが。

 内部で少量発酵していてエネルギーを捻出していればそこまで外に熱は漏れないかもしれない。


 さてゾンビの観察もいいが――どうやってこれを排除しようか?

 誰かを呼んでくるか俺が一人で対処するの二択だが……

 

 まだ起きていたら良いけど寝ているところを起こしたら悪いよね。

 それに女子だけの部屋に駆け込むのって気が引けるし。

 つまり俺が一人で何とかする必要があるわけだ。


 一つ目、全力で倒す。

 人間一つ分の肉の塊だから消滅させるのは簡単だが、それではすぐに終わって面白くない。

 ジェシカからも肉体を残しておいてって言われているしこれは無し。


 二つ目、面白みがある倒し方をする。

 面白みってなんだよ……

 少しずつ肉体を削っていって何処までなら動くが試してみるか?

 これもジェシカに後から文句を言わるから無し。


 三つ目、続・面白みがある倒し方をする。

 なんと! 偶然にも手元には今朝方ソフィアに貰ったばかりの御聖水が。

 赤レンガに置いておく訳にもいかず持ってきておいて良かった。

 まあチェルシーに押し付けられたっていうのが実情なんだがな。


 ……本当にこれでいくのか?

 いや、土壇場で聖水に頼る事態になる前に実験はしておく必要がある。

 数十のゾンビに囲まれてしまった場合、使おうとする余裕があるとは思えない


「むへっ」


 蓋を開けると独特の臭気で咽る。

 するとどうだろう、ゾンビさんと目が合ってしまったではありませんか。


 声、立てちゃったものね。

 耳、聞こえているんですね。

 血の巡りも無く腐っているであろう脳みそでどうやって音声情報を処理しているんだろう。


 しかしこの聖水、どうやって使うのが良いのだろう?

 ソフィアのおすすめは布に塗布して使うという話だが。


 手近な布が服しかねぇっ!


 これは困ったな。

 まあ布を聖水で濡らしたとして、どうやって使うかという問題もある。

 別の方法を考えるべきだ。


 それじゃあ口に含んで人間霧吹き……毒霧を吹くプロレスラーかよ。

 今日だけで二人ほど見かけたとはいえ、聖水を口に含むのがありえないよ。


 ならばこのまま全部ブッカケて使ってしまうか。

 どうせ明日の朝一番の新鮮なやつを採取出来るだろ。

 ハッ、俺はなんでこんなものを明日も持ち歩こうと思ってしまったんだ。


 でも他の使用方法もないので最後の手段として全ブッカケを取ることにする。

 やることは簡単、手に持った瓶をゾンビに向けてそのままソイヤッってやるだけ。


 ソイヤッってやった。


 バシャッと豪快にゾンビの頭に命中。

 液体が頭から身体へと滴り落ちていく。

 自分ではあんまりやられたくない姿が目の前にあった。

 死んでまで辱められるって酷い人生だな。


「……」


 呼吸をしていないので呻き声とかは全く発し無いんだけどなんだか苦しそう。

 ゾンビの顔に表情とかも無いんだけどね。

 だから完全に俺の感想。


 殺虫剤を掛けられた虫よろしく、しばらくその場をくるくる回っていたかと思うと、ドサッと膝から崩れ落ちた。

 その後もピクピクと身体を痙攣させていたが、一分程でそれも収まり完全に動きを停止させた。

 その辺に落ちていた木の棒で突いて見たが再び動き出す様子はない。

 完全に活動を止めてしまったようだ。


「聖水、本物だったのか……」


 ただの排泄物ですらこの威力。

 これはソフィアの話の全てを信じてしまって良いのでは?

 プリメロに帰ったらお布施をもっと収めないと。


 さて、この後どうしようか。


 ゾンビの死体の処理については明日にでも皆で観察するから今やる必要もあるまい。

 同じ理由で態々皆を叩き起こす必要もない。

 それに触るってことは聖水に触れるということでもあるのでノーサンキュー。

 ということは特にやることがないということで、後は夜を明かすだけということだ。


 ゾンビがこの一体と限った話ではないが、どういう理由か音に反応することは分かった。

 物音を立てずに寝ていれば襲われることもあるまい。

 俺はカウンターに戻ると椅子に座って寝て夜を明かすことにした。


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