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ゆるふわお姉ちゃん(年下)と行く異世界紀行  作者: kdorax
4章 聖女の聖水と死者の村
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第9話 いざゾンビ退治に

 冒険者仲間であるディックに馬車を出してもらい皆で山の砦までやってきた。

 馬車とはいうが幌がついていない荷物運搬用の馬車で、いつもは狩った魔物の死骸を運搬するのに使用しているもの。

 

 メンバーは俺、お姉ちゃん、イチゴちゃん、アンジェリカ、ベアトリクス、ジェシカ、そしてソフィアの七人だ。

 最初は七人で馬車に乗っていたが途中で狭いという理由で俺だけが徒歩で追いかけるハメになった。

 山道なので馬の速度が出ないために付いていくことに難儀はしない。

 しかしこんなことになるなら誰か一人置いてきても良かったと思う。


「ディック、明日の晩にもう一度迎えにくるのでございまし」

「えっ? 俺は今から帰るんですか? 馬車を停めておくところはあるじゃないですか」


 何度となく通行し慣れた道ではあるのだが、太陽がすでに西に落ちようとしている頃。

 ディックは道を指差し、すぐにも暗くて前が見えなくなって危険だというをアピールする。


「ゾンビが出没するかもしれない山に馬車を停めておくわけには行かないのでございまし」

「そ……そんな……」

「戦力に寄与しないのが悪いんだヨ。明日の夕方には迎えに来るんだヨ」


 こんな夜道を歩かされる馬が可哀相ではあるが、もし夜中にゾンビに襲われては敵わないので戻ってもらう必要がある。

 ディックも明日の夕方に迎えに来ることを約束し馬車を操って戻っていった。


「馬車で話をしていた通りだがヨ、今日はここで夜を明かして明日の朝から周辺の散策だヨ」


 この砦も以前は砦跡と呼んでいた程、往時の面影もないほど荒れていた。

 元々は昨年魔物が大量発生するまでは北の国々との間での国境の検問として使われていた施設。

 最近ゴブリンを始末してからは、領主の兵たちが人の往来の再開に向けて整備を進めている。

 そのため一時期より小綺麗になっており、荒れた印象はなくなっている。


 この砦には旅の商人が一晩明かせるように宿泊施設も備え付けられている。

 ここからプリメロの街まで距離があるためである。

 ただし、ゾンビが出現するということで兵たちも街に戻っているので今は俺たち以外は誰もいない。


「ベッドが四つある上の部屋と、二つある下の部屋ねぇ……」

「旅客用と駐在の兵士用でございまし」


 砦は加工した石を積み立てた堅牢な作りで、二階建てとなっている。

一階部分が兵士の詰め所と検問の設備があり、二階部分に商人たち旅客用の宿泊設備がある。


「六人しか寝られないナ」

「俺とおね――」

「わたしとイチゴちゃんが下の部屋で過ごすからぁ、仲が良い四人さんは上の部屋でよろしくねぇ」

「それでいいと思いまーす」


 イチゴちゃんの賛成を含む六対ゼロ、一人棄権の賛成多数の多数決により部屋割は決してしまった。

 おかしい、口に出すことを許されなかったが、俺とお姉ちゃんが一緒のベッドで寝れば誰もあぶれなかったはず。

 それじゃあ俺は今晩どこで夜を明かせばいいので?


「四人で一緒に寝るのは神竜討伐の時以来」

「一晩。それも会議で王城に集まったときの話じゃね―かヨ。オメーは神竜戦に参加せずにそのまま城でぬくぬくしていたはずだヨ」

「あの場所までは三人で行ったものの戦ったのは貴方一人でございまし」

「神竜ってどんなんですかー? お願い叶えてくれそうなのにー退治しちゃったんですかー?」


 神の竜だからといって願いを叶えてくれるご機嫌なものなのだろうか?

 どういったものであれ討伐してしまって良いような呼称ではないが。

 むしろ信奉の対象になりそうなものだよね?


「先日のゴブリンのように一部の魔物は人と同じように別世界から転移してきます。つまり神が送り込んできた竜ということで神の竜です。厄介な神様ですよ本当」

「そうして送り込まれた魔物には繁殖して増えているのもいて、それがそこら中の魔物だと伝えられているのでございまし」


 そういえば死んだからには転移される可能性があるんだよね。

 神様も人の立場だけでなく全ての生き物の立場に立ってくれてある意味平等だね。

 以前に倒したゴブリンの王も神の力で転移してきて……


「ん? それじゃあ魔物も神様から何か貰ってる可能性があるのか?」

「神様と話が通じればってとこらじゃないかしらぁ? いまだに話の通じる魔物とは出会ってないしぃ」

「問答無用で送り込まれる場合が多そうだな……でも牛の時についでに倒した羽生えた人型魔物は喋ってたっけ?」

「片言で喋ってたけど意思の疎通は出来てなかったじゃない」

「そりゃそうか」


 煩わしかったから問答無用で倒してしまったが、あやつとは一切話が通じていなかった。

 神様にもあんな調子だったら貰えるものも貰えないかっただろう。


「その魔物ってーギルドの壁に飾られてる生首ですかー? くまさんの隣にあるやつー。あれたまに呻いていて怖いんですけどー」

「首を斬る前は片言だったんだけど~、いつの間にか呻き声しか挙げなくなっちゃったわねぇ」

「首だけで喋ってるのがおかしい気もするが……あれは五月蝿かったから頭にマイクロウェーブを掛けたらああなったんだよ」

「レンチンしちゃったんですかー」

「あらぁ、ケイ君の仕業だったのねぇ」


 最近は特に気にも停めていなかったが、そういえばあれは元々魔物の類だった。

 倒しても銅貨一枚にもならなかったから魔物だったことを気にもとめていなかったや。

 

 現在はマックに遊びをせがまれた時にサッカーボール代わりに使っている。

 蹴って遊ぶのであらぬ方向に飛んでいって見失いがちだけど、喚くからこそ無くさないで済んで便利なんだよね。

 

 俺とお姉ちゃんがこっちに来て二日目から首だけの姿だというのに長生きするものである。

 思えばこの世界に来て二月が経とうとしているが、いまだにあいつを超える変なものには遭遇していないな。

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