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ゆるふわお姉ちゃん(年下)と行く異世界紀行  作者: kdorax
4章 聖女の聖水と死者の村
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第4話 対ゾンビに向けて

 話を聞いた結果、頭が混乱してきた。

 結局ゾンビの魔力をなんとかするってことじゃないか。

 対抗魔法でなんとかなるならジェシカにお願いすれば対処出来るってこと?

 あの人にお願いするのはなんか嫌だな。

 あとで人体実験の道具にされてしまいそうだ。


「やはり混乱を招く。対抗魔法では相手と同じかそれ以上の魔力が対処に必要。聖なる力であれば相手より少ない魔力で対処出来ることを付加」

「なるほど。聖なる力っていうのも魔力の一つということですか」

「そう、聖なる力は魔力であって使い方を魔法と異とする。そのため魔法院では体系外の魔法として定義する」

「それが理由で魔法と同じように才能がある祭司と、そうでない祭司がいるってことでいいかしらぁ?」

「正解。私は才能に溢れる方の祭司」


 溢れるて……

 自分の才能を自負する……

 こいつ、もしかしてジェシカと同じタイプなのか?

 類は友を呼ぶというので気をつけなければ。

 今日チェルシーが付いてこなかったのは、礼拝を通じて何かしら察知していたからに違いない。


「でもー聖なる力をー持たない祭司さんてーインチキにならないんですかー?」

「神殿は身寄りなき者を手助けすることも役割。聖なる力よりも清らかなる心が大事とされている」

「なるー」


 貴方って確か淫聖とか呼ばれている危険人物ですよね?

 そこに清らかなる心は存在しているとは到底思えないのですが。

 

 逆に言うと清らかなる心を持たずとも、聖なる力を持っていれば祭司になれるということかな。

 そこをツッコむと話がおかしくなりそうなので神殿の役割について確認しておこう。


「ここでいう身寄りがないってのは、とりあえず別の世界から送り込んだので後の世話はそっちでよろしくね的な?」

「身寄りがないのは全ての転移者で同じ。転移者を救うのは冒険者ギルドの役割。神殿が救うのは孤児」

「冒険者協会に拾われたあたしってー運が良かったんですかねー」

「そうねぇ。けど利用するためってのは否めないけどさぁ」


 むう……神殿は真っ当なことをやっている。

 それではどちらの冒険者ギルドにも拾われなかった転移者はどうやって飯を食っているのだろうか。


 必ずしも街やその近く、人の集まる場所に転移されるとは限らないのだし。

 転移場所が悪くて地面に埋もれた奴とか空高くから即落下した不運な奴に比べれば命があるだけマシか。

 そんなどうして転移させた、ってなる不幸な奴がいるとは思いたくないが。


「神殿の役割はさておき、ソフィアさんは聖なる力を持っているということで、ゾンビに対抗することもできる訳ですか」

「ええ、並のゾンビなら相手に不足なし」

「ゾンビに並とか上とか大盛りとかあるんですか?」

「仕組み上あり得ない。死んだ肉体に魔力で仮初の命が宿っているのがゾンビ。どんな肉体にも限度がある」

「同感だ」


 何か負に落ちないが、ソフィアが言っていることに間違いはない。

 人は自分の体を傷つけないという意識が精神的な障壁となって身体の動きにブレーキが掛かってしまう。

 ただし、それがなくなるからといって飛躍的に身体能力が向上するわけではない。

 

 ゾンビになることで骨格や筋繊維が作り変えられたら別だ。

 そんなことが出来るなら自分の意識を持ったままゾンビの身体になろうとする奴がいてもおかしくはない。

 いや、それ自体が死霊魔術の一部ということなのだろうか。


「もちろん人ではない肉体を持つゾンビもいるのは事実。それでも元の肉体を超えることは無いのが基本。でも死なないことはメリット」

「では並とつけたのは?」

「ゾンビだけの対処であれば問題なし。問題はそのゾンビを操っている者の存在。それがとてつもない魔力を持った相手であれば私にはどうにもならない」

「そっかぁ。術者が必ずしも邪悪な存在という訳じゃないというわけねぇ」

「一つはその通り。ただの人間であれば聖なる力は全く無害。もう一つ、操るゾンビの数が多い場合」

「人間の魔力が才能次第である以上、ゾンビを魔力によって操る数には限りあるということか。つまり魔力がとてつもない人間がゾンビを操ると大変なことになると」

「肯定。大量のゾンビがいる上、術者へ対抗する術がない。術者の魔力が底もしれないとなるとお手上げ」


 それはあくまでも全てを一人で対応する場合のことだろう。

 であれば分業制であれば対応できる可能性はあるということか。

 

 ゾンビはソフィアさんになんとかしてもらう。

 その間に俺たちで術者を探し出してなんとかするという戦術はとり得る話だ。


「一人でなければ打つ手はあるのでは? ゾンビ狩りを一緒に手伝って貰うっていうのはありかな?」

「その場合相応のお布施が必要」


 そりゃ無料でっていうのは虫のいい話だ。

 ジェシカも魔法を見せてくれたけれど、そのあとイチゴちゃんとチェルシーの授業料を取られている。

 それを俺が払っているのは変な気がするが、お姉ちゃんが出す言い出したのだ。

 俺に文句を言う権利は与えられていない。


「そりゃそうか」

「わたし達はまだ本物のゾンビを目にしてないわぁ。必要になってから考えれば良いんじゃないかしらぁ」


 お姉ちゃんが言うように実在が疑わしいゾンビに対してご足労頂く必要があるだろうか?

 まずはゾンビそのものを確認することが先決だろう。

 その上で対処する必要があれば協力を願えば良いことだ。


 しかしゾンビと遭遇した際に対抗手段を持たないのも悪手である。

 弱点が分かっていたらそれに越したことはない。

 本格対処のときに使える手は多いほうが良いし。

 ということでベアトリクスも話に出していた聖水、一先ず試しに貰っておくか。


「ご協力頂くかはどういった相手か分かった後にお布施の金額と相談ということで。今日のところは聖水ってやつを貰いたいんだけれどそれもお布施が必要ですよね?」

「聖水は心づけ程度」

「こんなところでどうかしらぁ?」


 お姉ちゃんが絶妙な金額をソフィアさんに提示する。

 現在ゾンビに掛かっている懸賞金の額を考えると、経費としては痛くないくらい。

 お守り代としては安いものだろう。


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