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ゆるふわお姉ちゃん(年下)と行く異世界紀行  作者: kdorax
3章 リアルJKとゴブリンの王
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第34話 密談

 目ぼしいものをかき集める作業が終わると、続いて一同で内容の確認だ。

 金銀銅の各硬貨、金属のインゴット、宝石の類、武具、そして缶詰。

 価値が分かりやすいものもあれば分かりにくいものもある。


「硬貨を除いて一番価値のあるやつはどれになるんだ?」

「「「缶詰!!!」」」


 現地民三人は興奮気味に声を揃えて缶詰が一番高価だと答えた。

 凄い中身でも詰まっているのだろうか。


「缶詰って言ったって中身は一体何だ? そんなにテンション上がるものなのか?」

「あーそうそう、説明しないと分からないでございましね。北から来る缶詰といえば中身は一つ、蟹身でございまし」

「内陸国のセントロでは海産物は貴重なのですよ。青魚の缶詰なら南からも入りますが、蟹は北からしか入ってきませんので」

「北氷洋で採れた蟹をその場で缶詰にするって代物ヨ。借金で首が回らなくなったか、そもそも稼ぎ方を知らない転移者を労働者としてこき使って出来た命の結晶だヨ」

「蟹工船ってーやつですねー。大変だ―」

「過酷な環境で作られるがゆえに製造原価が高く、それを陸路で運ぶため輸送効率も悪い。そして輸入は一年止まったままとくれば価値はうなぎのぼり。そんなものがロハで手に入るときたら笑いが止まらないですね」


 三人は聞いてもいないことまで懇切丁寧に説明してくれる。

 ジェシカに至ってはあまりにテンションが上りすぎて早口になってしまう。

 金銭でどれくらいになるか分かればよかったのだが時価ということだけは分かった。


「今日中にこの缶詰だけは別のところへ移しておく必要があるのでございまし」

「遠くまで運ぶ必要は無いよな? 日中、山に入るのは俺たちぐらいだし」

「そうだナ。外の人目につかないところに運び出せばそれでいいヨ」

「街人はここまでこないし、明日にも検分にくる領主のところの駐屯兵も洞窟の周りを探索はしないのでございまし」

「じゃあ街までの運び出しは明後日以降か。明日は兵隊さんも連れてしれっと残った財宝を取りに来ればいいか」

「それでいいのでございまし。あとは手で持てる分くらいは持ち出すのでございまし」

「領主には宝があったってことは伝えるが、どれくらいあったかまでは教えてやる義理はないからヨ」


 アンジェリカたちの助言のもと、俺達は持ち出しやすく価値が分かりやすい硬貨と宝石に目を向ける。


「そう。それならジュエリーを幾つか貰っておきましょうか」

「あたしもージュエリーとーお金をもらいまーす」

「俺は金だけでいいや。けど、大分減ったけど怪しまれやしないか?」


 皆でそれぞれ硬貨や宝石を手に取り懐に収めてしまうとかなり目減りしてしまった。

 インゴットや武具は丸々残るとはいえど、これではあまりにも盗んだことがバレバレと言えよう。


「突発的に発生したため無報酬ということもあり、私めらが多少くすねているのは向こうも承知でございまし。むしろここで常識的な量を減らしておかないと割の良い蟹缶の存在を疑われることになるのでございまし」

「そうか、巨悪を隠すために目に見えた悪で目を逸らさせるってわけか」

「慈善事業じゃねーんだ。そういうこったヨ」


 咎められずに済むと分かったのなら安心して持って帰ろう。

 目に見えてズボンのポケットが膨らんでいる位で丁度いいというところだ。

 俺たちは蟹缶とゴブリンの剣を協力して持ち出し、近くの茂みに隠し終えると男の子を抱えて街へと戻った。

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