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ゆるふわお姉ちゃん(年下)と行く異世界紀行  作者: kdorax
3章 リアルJKとゴブリンの王
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第31話 ゴブリンウォッチング

 俺たちはまずこの場所とゴブリンの様子を観察することにした。

 敵を見かけたからといってすぐに飛び出すのは間抜けのやることだ。


「ゴブリンにこれほどの設備を整えられるとは思えないのでございまし。元々何の場所だったんでございまし?」

「山賊の拠点ってとこじゃねーか? 北からの商人襲ってた奴らが駆除されないままだったはずだヨ」

「そいつらはどこに行ったんだ?」

「バラバラで判別出来ないけど人骨みたいなものが散らばっているわね」

「ご愁傷さま」


 前の住人達はゴブリンに屠られたようで、俺達はその新しい住人達であるゴブリンを屠るために今この場にいる。

 もっとも本当の目的は男の子の救出であり、ゴブリンの殲滅は今となっては目的達成のための手段だ。


「それであの石造りのテーブルの上で横たわっているのが攫われた男の子か」

「見たことあるガキだからそーだナ。ひとまず命は無事みてーだヨ」

「生贄か食事かその両方か。いずれにしても速やかに助けたいものだ」


 テーブルか祭壇か用途は分からないが、石造りの台の上に十歳くらいの男の子が横たえられている。

 眠っているか気絶しているかで意識が無いので、しばらく自分から動き出すことはないだろう。


「となれば子供を守りながらゴブリンを倒すだけなのでございましが……」

「なんか一体だけデカくねーかヨ?」


 石台とセットのように位置する同じく石で出来た立派な椅子に座している立派な体格をしたゴブリン。

 その体長は通常のゴブリンの倍はあり、立ち上がれば二メートルを優に越えるだろう。

 あまりにも一線を画する存在感に皆の顔は引きつり気味だ。

 そりゃあ自分より体格が大きい人型魔物だもの、普通に考えてあまりにも危険過ぎる。


「オークかよってデカさだが……外見からしてゴブリンに違いねーヨ」

「弓で射っても倒れそうにないのでございまし。その両隣にいる側近面したゴブリンも大きさ三割増しにでございまし」

「あれくらいならゴブリン達のリーダー格として珍しくないのでは?」

「さっきもあれくらいの何体か見かけた気もするよ」

「じゃあ一番の大物を王と呼んであげるとして、左右のは将軍さんってところかしら」

「右大臣、左大臣かも」

「議長とー裁判長かもですねー」

「だから呼び方はどうでもいいので! 最初に出た王と将軍、それでいくのでございまし」


 一体並外れて大きいために目算が狂いがちだが、両隣の二体も並のゴブリンより二、三割大きめの体格が違う。

 それらの目に見えて違うゴブリン三体は、お姉ちゃんがサクッとつけたあだ名で識別することになった。


「随分こぢんまりとした王国でございまし」

「そりゃあ千人からの国民がぶっ殺された亡国だからだヨ」

「ゴブリン王国の興廃この一戦にありというものですか」

「まあ奴らの命はこのあとすぐに全て刈り取ってしまうのだから王国は廃れるしかないのだが」

「倒しちゃうのは当然なのだけれど、男の子を傷つけさせないでどうやって戦えば良いかしら」


 お姉ちゃんが言う通り、どうやって倒すのかがとても問題だ。

 ただ倒すだけならば正面を切って飛び出して、向かってくるゴブリンをしばきあげるだけで終わる話。

 しかし今回は先程ベアトリクスが話した通り、人質になっている男の子の命を守りきらないといけないのだ。

 五十対六という人数差なので戦いになれば乱戦ということになる。


「しかしあいつら良く俺たちに気づかないもんだな」


 俺たちは声を押し殺して喋っているわけではないのに、ゴブリン達はずっと気づかない。

 わざと目立つ行為もしていなければ、もちろんライトを相手に向けるなどしていない。

 それにしても注意力が無さ過ぎるのではなかろうか。


「生物として目が悪いんでしょう。生き方からして目の良さを必要としない単純さですからね。大きな物音を立てない限り見つからないと思われます」

「注意して静かにしなくて良いのは楽だが、逆に目を引きつけるためには一工夫必要というわけだ」

「そうなるのでございまし」

「あと頭の程度が低いというのもあります。男の子を人質に盾にするということも無いでしょう。むしろ贄を奪いに来たと思われて守ろうとするまであると思います」

「どっちが悪者なんだって話だな」


 ジェシカの解説によりゴブリンの生態を知ることが出来た。

 幻獣図鑑には記されていないことまで良く知っていらっしゃる。

 今教えてくれた内容は外見とは関係ない話なので、事前に知識として教えてもらっても嬉しいものではなかったが。


「それじゃ戦力を確認すると――まともに接近戦を出来るのが四人ってところだろ」

「私は肉体的に接近戦に向いていないし、魔法も乱戦には向いていません」

「あたしもーここで待っている方がいいかなー」

「妥当な判断だヨ」


 先頭に参加するのは四人。

 俺、お姉ちゃん、アンジェリカ、ベアトリクス。

 残るジェシカとイチゴちゃんはこの場に留まって貰うことになる。


「それでは私めはここから弓で援護する形を取るのでございまし」

「となるとゴブリンに突っ込むのは三人になる。しかしまともに正面から全員で行くと人数差が厳しくなってくるな」

「ケイ君が囮になって引きつけた所をわたしとアンジェリカさんで側面から叩くというのはどうかしら」

「良い案だと思うヨ」


 今回取る戦術はこうだ。

 

 初めに俺がここから飛び降りてゴブリンの意識を引きつける。

 近くにいるゴブリンから俺に向かって突進してくるので、そこを階段を降りたお姉ちゃんとアンジェリカが側面から叩く。

 その間ベアトリクスは弓矢をゴブリンに降り注がせる。

 雑魚を始末したら王様と将軍を個別に倒してしまう。

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