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ゆるふわお姉ちゃん(年下)と行く異世界紀行  作者: kdorax
3章 リアルJKとゴブリンの王
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第27話 戦う人々

 アンジェリカは槍を突けばゴブリンを二、三体まるごと串刺しにしてしまい、振り回せば三、四個の首が空中に舞う。

 この混乱した戦場にあって彼女の周りはその槍の間合いの分だけ空白地帯が広がっている。

 圧倒的な人数差は彼女にとって無関係のようである。


 ベアトリクスはというと民家の屋根の上から目ざとくリーダー格のゴブリンを見つけては的確に矢で射止めている。

 また高所から全体の状況を判断できるため、冒険者連中や街人に対して大声を張って指示も出している。

 どれくらい対象の耳に届いているかは不明ではあるが、指示通りの行動に移す人もチラホラといる。

 なるほど指示系統は機能しているということだ。


 冒険者連中は酒に酔っている影響で鈍い動きではあるものの、数人で息のあった連携で確実にゴブリンを仕留めていく。

 他にも街人も体力に自信があるものに限るとは思うが、良い体格をした成人男性は角材や斧、鍬や鋤などで手に応戦している。

 ベアトリクスのフォローもあってゴブリンに良いようにやられるということはない。


 俺も襲いかかってくる無謀なゴブリンを得意のCQC、もといラフプレー上等なフットボールに似た動きで応戦している。

 飛びかかってくるものは殴り、走って体当たりを仕掛けてくるものは蹴り飛ばす。

 その行為はスポーツで例えるより蝿や蚊などの小虫を叩き落とすといったほうが正確といえる。

 正直このゴブリンと呼ばれる魔物に真っ当な戦闘技術など不要に思える。


 ゴブリンに応戦しながら戦場となった街を観察していると、無傷なのに地面でノビているゴブリンが何体か居ることに気づく。

 悪いものでも食べて腹でも下したのかとも思ったが、その近くにいる人物からスタンガンで失神しただけだということが分かった。


「やだーこっち来ないでー」


 イチゴちゃんが喚きながら警棒型スタンガンを振り回している。

 ゴブリンの身体に当てられれば勝ちというチート武器なので素人でも意外と戦えているらしい。

 もっともその近くにいるお姉ちゃんが気を配って危なく無いようにしているようだが。


「やあお姉ちゃんにイチゴちゃん。調子はどうだい?」

「見てわからないかしら。絶好調よ!」

「なんとかーやれてますねー」


 頑張っている二人に声を掛けてみるが順調のようだ。


 最終的に街人も含めて四、五十人程度でゴブリンと相対することになったが、結果を見ると完勝であった。

 戦いの結果として、街の至るところに無残な姿になったゴブリンが転がっている。


「それでは街の皆様はご家族の安否を確認いただき、行方知れずの家族がいればご報告くださいまし。それが終われば掃除の開始でございまし」


 民家の屋根の上にいるベアトリクスからの声掛けにより参戦した街人はそれぞれの家へと戻っていった。

 目の前に広がる大惨事の片付けは当然行うようで、このあと街人が総出で対応するようだ。


「冒険者のクズどもは散ったゴブリンが物陰に隠れていないか隅々まで確認だ。死んだふりしている奴がいるかもしれん。倒れているゴブリンは死んでいると分かっていても再度殺せ。分かったかヨ」


 アンジェリカからの命令を受け、戦闘を終えて一息ついてた冒険者達は数人でグループを組み、街の探索を開始した。

なかなかと物騒な命令でもあるが、イチゴちゃんがスタンガンで気絶させた個体などは死んでいないのできちんととどめを刺しとかないとね。

 これ重要。


「お姉ちゃんもイチゴちゃんも怪我はないかい?」

「特に異常はないわね。腕を振り回し過ぎて疲れちゃったくらいかしら」

「気分が悪いくらいですねー。今までの人生でここまでー血と肉を見たことってーゾンビ映画以外で経験無いんでー」

「そうだよな。後片付けは皆に任せてイチゴちゃんは先に赤レンガでお茶でも飲んでゆっくりしとくと良い」

「そーさせてもらいます」


 イチゴちゃんは一人トボトボと元気のない足取りで赤レンガの建物へと入っていく。


「精神的に参らなければいいが」

「後でわたしもフォローしとくわよ」

「それよりはあれだな。金だ」


 ここ数日、こどもオオカミの訓練を行っていたのは手配されているゴブリンを見つけ出すためだ。

 結果的に探しものは向こうから勝手にやってきたのだが、手配魔物を倒したことには違いない。

 

 しかし冒険者達だけで倒したわけではなく、また、想定よりも明らかに多い数を相手にすることになった。

 一番の気がかりは街への損害が発生した点にある。

 この場合の報奨金の分前はどうなるのかをベアトリクスに確認する必要がある。


「あら、お二人は何も無かったかのような感じでございましね」

「苦労はしなかったからな」

「期待ハズレもいいとこだったわね。もっと戦って面白い相手だったら良かったのだけれど」


 屋根の上から降りてきたベアトリクスに声を掛けられる。

 タイミングが丁度いいので報奨金のことを聞いてしまおう。


「そういえば今回の戦いでの報奨金の扱いってどうなるんだ?」

「皆には落ち着いてから話そうと思っているのでございましが、先にお伝えしておきますと――」


 ベアトリクスの話を要約すると、怪我をした街人への見舞金と壊れた街の施設への補修費を差し引き、残った金額を冒険者協会、冒険者共同体の全員で分配する。


「素朴な疑問だけれども残る金額が存在するのかしら?」

「無いだろうな。元々が大した報奨金の額じゃ無かったし」

「今回はタダ働きをさせてしまいましたが、ゴブリンが居なくなれば山の街道が使えるようになるのでございまし。別の仕事で稼ぐことも出来るようになるのでございまし」

「これで終わっていればの話だろ?」

「左様。嫌なことは起こるもんだヨ。ガキが一人行方知れずだ」


 三人で会話をしているところにアンジェリカが声を掛けてくる。

 隣には帽子を握りしめ目に涙を浮かべた小さな女の子を連れている。


「おにいちゃんが…おにいちゃんがゴブリンにつれてかれちゃったー」

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