第26話 ゴブリンについての感想
さて目前にうごめくこの大量の魔物、その名もゴブリンについて詳細を観察しよう。
身体的特徴から見てみよう
体長は概ね一メートル程度で俺の腰くらいに頭があるというサイズ感だ。
服装は薄汚れた腰布を巻いている程度で上半身は裸のものが多く靴など履いていない。
たまに服を着ている個体も存在しているがサイズは合っているようには見えない。
自分たちで服を作って着ているのではなく既にあるものを着ているだけと思われる。
顔は猿とは違い表面が毛で覆われておらず、肌は垂れて爛れたような質感をしており深い皺が刻まれ分厚さを感じさせる。
その肌質のせいなのか瞼が重そうで目は半開きであり目つきが悪い。
耳は長く尖っていて鼻もており見ていて楽しいものではない。
次に道具だ。
各個体が思い思いの武器を手に持っているが、その武器はとてもじゃないが褒められたものではない。
多くは石や木の棒を手にしている。
これは手に入りやすいから身につけているというのが適切な評価か。
生身の人間相手にダメージを与えることはこの程度の武器でも大いに効果がある。
中でも石材や硬い木材で出来た棍棒はとても驚異的と言えるだろう。
問題はより攻撃的な武器であるはずの剣や槍といった刃物だ。
一つ目の問題は、刃物というものは取り扱いが厄介で、何が厄介かと言うと手入れが必要なところにある。
ゴブリン達が持っている刃物は全て人間から奪ったものなのだろう。
しかし奪ってから月日を経ているその身は刃が所々欠け落ち、また全身が錆びに覆われていることが見て取れる。
そう、手入れがされていないのである。
刃の手入れとは研ぐことにあるのだが、これを理解していない。
こんなダメダメの刃で物を切るという事が出来るだろうか?
答えは不可能だ。
特に急所を防具で固めている冒険者には有効な攻撃手段になり得ない。
そのため自ずとして武器の質量を活かして殴打することが攻撃の主体になる。
ここで二つ目の問題が明らかになる。
ゴブリンの体格が人に比べて小さいために、扱える武器のサイズはどうしても人間よりも小さいものにならざるを得ない。
石は人が持てるものより小さく軽いもの、木の棒も細く短いもの、棍棒も小さく軽いものとあらゆる武器が人間の持つそれと比べると見劣りする。
これでは打撃力が人間の使用するそれと比べるとダメージを期待できない。
じゃあ人間が使用していた武器を使用する個体はどうだろうか。
これも自分の体に合っていない武器を使う羽目になっている。
現に剣などを使っている個体は剣を振るう度に体が振り回されており、酔いどれた冒険者ですら安々と攻撃を躱すことが出来ている。
そもそも持ち手部の太さがゴブリンの手の大きさに合っていないのだから、まともに握れているかも怪しいところだ。
ということで人間からみて攻撃力が高そうな武器を持つゴブリンほど、武器に振り回されるがために人間に対してダメージを与えることは困難となっている。
最後はコミュニケーションだ。
ギィギィギャアギャア喚いているがその声でどれだけ仲間とコミュニケーションを取れているのだろうか。
山でフッサやエクシオたちが遭遇した際は多くて十人程度が連携して攻撃を加えてくるという話だった。
しかし、ゴブリンたちはあまりにも大量に押し寄せているために乱戦の様相を呈してきている状況。
この場が支配しているのはただの混乱だ。
ゴブリンたちも頭に血が登っているのか本能的に襲いかかってくるばかりで連携が取れいているようには見えない。
中にはリーダー格と思しい個体も確認出来ているが、騒がしいこの状況下において上手く指示が出来ていない。
結論するとこのゴブリンの集団は数の暴力に頼っているだけの雑魚に他ならない。
もっとも戦闘というのは数こそが強さという面があるのだが。
落ち着いて仕留めていけばいずれ騒ぎも終息するだろう。
それまで皆の体力が持てばの話であるが。
ということで次は冒険者連中の状況を見てみよう。




