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ゆるふわお姉ちゃん(年下)と行く異世界紀行  作者: kdorax
3章 リアルJKとゴブリンの王
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第23話 ゴブリンって……

「あれー? でもーこんなことが出来るんだったらーゴブリンを見つけ出すのもー簡単なことなんじゃないですかー?」


 イチゴちゃんが的確な疑問を俺に投げつけてくる。


「イチゴちゃんそれはねぇ、無理よ~。確かにケイ君には空間の全てをコントロール出来る力があるわぁ。でもねぇ、ゴブリンがどんな生物か分かってないんだから見つけることなんて出来ないわぁ。狸と穴熊の違いを知らずに特徴だけ聞いて山に探しに行ってもレッサーパンダを捕まえてきちゃうくらいよ~」

「そのとおり。山で何か動物を見かけたとしてどれがゴブリンかなんて分からないよ。手配書には特徴すら書いてないんだぜ?」


 お姉ちゃんの例えが何言っているか理解できないが、肯定した上で話を続ける。

 俺は掲示板に貼られているゴブリンの集団の手配書を指差す。

 手配書に記載されいているのはゴブリンの集団という対象の名称と報奨金額だけしか書かれていない。

 どういった特徴があるとか、注意すべき事項は何だといった説明が省略されているのだ。


「そういえばそうでございましね。ゴブリンは昔からいる名前だけは有名な魔物だから記載が雑になったのでございまし」

「ほら、そっちに幻獣図鑑があっただろうがヨ。アレに書いてねーかヨ」

「一年ほどアップデートされてませんが、ゴブリンは載っていると思うのでございまし」


 そう言うとベアトリクスはカウンターを越えて奥の書棚から一冊の本を持ち出してきた。 

 ケモスキー幻獣図鑑とタイトルされた書物で、編纂者がケモスキー伯爵で出版者が冒険者協会エクリプセ帝国本部と記載がある。

 お姉ちゃんが一瞬何やら複雑な表情を見せたのだが、気になることでもあるのだろうか


「ゴブリンならこのあたりの番号のはずでございましが……ああ、あったのでございまし」


 ベアトリクスがペラペラと本のページを捲っていき、ある場所で手を止める。

 つまりそこがゴブリンについて記載があるところということだ。

 しかし存在していたと言ったわりに次の行動に移すことをしない。


「見せてもらってもいいんじゃないかしらぁ?」


 そう言って立ち上がったお姉ちゃんがベアトリクスの後ろから本を覗き込む。

 ページに一通り目を通すとフッと一笑すると満足して俺の隣に座り直す。


「なんだったんだの?」

「読めば分かるわよ」

「見せてよ」

「まあ。見れば分かるのでございましね」


 呆れた顔をしているようにも見えるベアトリクスから本を受け取る。

 本というが作りとしてはバインダーとなっていて、ページの差し替えが出来るようになっている。

 新しい発見があった場合に情報の更新が出来るようにしているためだろう。

 丁度開いているページがゴブリンの記載である。


「文字しか書いてないが……」


 ページの三分の一がゴブリンについての記述であり、特徴が文字で記載されているが、絵は無いので外見的特徴が分かりやすいものではない。

 そして肝心の記述されている内容はこうだ。


・形状は人型で体長は大きいもので1メートル程度

・集団で生活しているため社会を構成していると思われるが詳細は不明。

・人から奪った武器を運用する場面もみられ、多少は知恵が回る可能性がある。

・魔法を使う個体が確認されたという情報もある。


「役に立たねぇな。身長1メートルの人型って特徴だけだと猿と区別つかないじゃん……」


 思わず頭を抱えてしまった。

 聞いていた話と大した違いが見られない。

 数多くの生物反応が見られる自然豊かな山から、こんなクソみたいな情報だけでどうやってゴブリンを見つけだせるというのだろうか。


「まあ魔物としてはポピュラーな部類だしヨ……皆知ってるからって雌豚と一緒で態々詳しく書かなかったやつだナ。魔法使うゴブリンがいるのは知らなかったがヨ」

「それは見つけ次第有無を言わさず斬り殺していただけかと思われまし」

「そうかもしれんがヨ……って正しいことじゃねーかっ! 誰だってそーするヨ」


 魔物である以上アンジェリカのように見つけ次第速やかに仕留めるのが正しいと思う。


「しかし普遍的で有名な魔物だからとはいえ、まさかここまで記述がさっぱりとは思っても見なかったのでございまし」

「記述について不満が多いですね。訂正すると魔法ではなく魔術ですよ。ゴブリンが魔力を体系的に研究もしているとはとても思えません。たまたま使えているものでしょうね」

「魔術と魔法って何か違うのかしらぁ?」


 お姉ちゃんが細かい点を気にする。

 魔法使いのジェシカが態々訂正するのだから一家言あるのだろう。


「同じ魔力を扱うものではありますが、魔法は学問であり理屈を理解して使用します。魔術は理屈を抜きに使えてしまうものがそれに当たります。ゴブリンが魔力を扱えるのが偶々ですよ、偶々」

「なるほど。それじゃあ転移者の中にはこの世界に来たときから魔法が使える人もいるんだろうが、ジェシカさんから見たらそれは魔術を使っているってことになるのか」

「そうなりますね。それが実現出来る理屈を解析できれば魔法になります。その研究こそが魔法の基礎研究なのですよ。転移者が持ち込んだけれど誰にも継承されずに終わった魔術も多いです」

「あー誰かが使えるならば再現性があるってことか」

「そういうことです。理論上使えるはずとされている魔法の中にも使えない物があります。それがある日突然使える様になってしまう。それは往々にしてその魔術を使える者がこの世界に転移したことによって起こる事象とされています」

「魔法という科学的な矛盾を許容するために神が世界改変でもやっているってか」


 ジェシカの話から推測される答えを俺は口にする。

 魔法は無から生み出されるのではなく、転移者が持ち込んだものが綿々と綴られたものである。

 転移者の無理を実現させるために神が世界の法則を変えてしまっているのだろう。


「あら、良くわかりましたね。もっとも、それが世界の理の改変なのであるか、それとも神による許可なのかは我々の与り知るところではありません」

「転移者本人が知らないことを良く知っていらっしゃる」

「それは当然でしょう。我々魔法の研究者は過去から数多の転移者を観測してきたのです。その一方で転移者は自分自身のことしか知らないのだから」

「それもそうだ」


 学問として長い年月に渡って研究されていればその学問を修める者の方が、ぽっと出の転移者よりも詳しいのは自然のことか。

 自分のこと程よく分からないというのが人でもある。

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