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ゆるふわお姉ちゃん(年下)と行く異世界紀行  作者: kdorax
3章 リアルJKとゴブリンの王
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第22話 ケイ君についてのおはなし

「ところでケイさんでしたよね。先程のことなのですが――」


 オオカミのシシカバブを口にしていたジェシカが切り出す。

 どうやら食事に招待されたから顔を出しただけというわけではなさそうだ。


「何を知りたいんですかね?」

「何かと聞かれると全てを。と言いたいのですがそれはいずれということで、今日のところは一つだけです。私を空に飛ばしたのはあなたで、その能力は神様から頂いたものですか?」


 聞きたいことは2つでは? というつまらない疑問は捨て置いて正直に答えることにする。


「確かに俺がやったことで、だけど神様に頼んだことではない。前の世界でも出来ていたことだ。俺がこっちの世界に来るときに神様に頼んだのはお姉ちゃんの身一つだけだから、俺自身は神様から何一つも得てはいない。むしろこっちの世界では出来ないことが増えたまである」

「はい?」


 俺の言葉を受けてジェシカは間の抜けた返事をする。

 理解できないことは何点かあったかもしれないが、長く話をしてしまったせいで彼女がどこに驚いたのか分からない。

 聞かれたことだけ答えればよかったのに、余計なことまで口走ってしまったのは反省点だ。


「先程やったのは重力の操作だけど、他に出来ることを見せたほうが早いか。例えばこの酒が入ったジョッキを手を使わずに持ち上げることは容易い」


 俺はそう言ってから、目の前のテーブルに置いていた飲みかけのジョッキを空中に浮遊させる。

 やっていることはただの空間移動でしかなく、俺にとっては手を使って物を動かすことと変わらない動作だ。


 宙に浮かべるだけでは面白みが足りないので、サービスで浮かべたジョッキを上下に回転させてみたりする。

 中に入った酒を決してこぼさないのが見どころの一つだ。

 この光景を珍しい目、驚きの目でお姉ちゃんを除いた皆が注目して見ている。


「ケイさん、それ魔法ですか? 使えないっていう話では?」

「んー? 神様から貰ったってー話ですかー? それとも手品ですかー? 分かったー超能力だー!」

「いいえイチゴちゃん。ケイ君は魔法なんて使えなくてもこれくらい簡単にできてしまうのよ~。科学の力を使ってねぇ」


 タネ明かしの説明のはしりはお姉ちゃんが代わりにしてくれた。


「魔法で無いことは分かるのですが、科学とはいえどうやって実現していのです?」

「簡単に出来ることだからこそ詳しく説明はできないが……空間の全てを素粒子レベルでコントロールする。あとはそれを動かすだけ。見えない手で持ってると思ってくれれば良い」

「何を言っているのかー理解出来ませんねー」


 俺自身が好きで持っている能力ではない。

 そのためどういう理屈で出来ているのか説明を受けたが理解は出来ていない。

 ただ、そういうことも出来るという話。


「触ってみると面白いかもねぇ」

「うわー何かー不思議な感じですねー」

「浮いているのに固定されているって感じです。ボクこんなこと経験するの初めてだ」

「酒に指が入らねーんだがどういうことだヨ」


 イチゴちゃんとチェルシーがジョッキを押したり引いたりしてみるが、空間に対して固定されているジョッキは1ミリたりとも動かせない。

 そして固定されているのは中身の酒も同じなので液体であるが個体という状態になっている。

 試しにとアンジェリカが触っても指が濡れることもない。


「それでは私を空に飛ばしたのも簡単にできるというわけですか」


 ジェシカの言葉への回答としてジョッキを上に上げたり下に上げたりしてみる。


「分かるけど口で返事しろヨ」

「あの時は反重力を発生させたから今見せているのとは違うし、空まで飛んでったのはちょっとした事故だ。すまない」

「いいえ、お気になさらず。あの程度で死ぬほど温い世界には生きていないので。科学を使う転移者を少なからず見てきましたが、ここまでのものは初めてですね」

[登場人物紹介]

 ケイ君 この作品の主人公。重力を操作し目からビームを出したりする。

 マスコット・チアーズ お姉ちゃん。そんなケイ君のことを何でも知ってる。

 イチゴ 女子高生。

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