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ゆるふわお姉ちゃん(年下)と行く異世界紀行  作者: kdorax
3章 リアルJKとゴブリンの王
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第11話 終・赤ずきんちゃん?

「俺は二人や三人同時に相手をすることは容易いガオ。爺さん婆さんと合わせて性の五輪が開幕するガオ」

「ああっ! 誰かこのピンチを救ってくれる勇気ある方はいませんか?」


 自分の身にリアルで危険が迫っている事を感じ取ったのか、チェルシーが場外に向けて助けを求める。

 ただの寸劇だから実際に何かがあることはないんだが、ディックのアレがぶらぶらしている状況が続くと不安にもなるか。

 まな板ショーじゃあるまいし大丈夫……大丈夫だよな?


「ハハッ、お困りのようだねお嬢さん。ここはプリメロが誇るスピードスターこと、このごっきぃに任せな!」

「何者ガオ!?」


 立ち見客の人垣の後ろから共同体の冒険者ごっきぃの威勢の良い声が上がる。

 トウッという掛け声がするとともに、ごっきぃが人垣を飛び越えてでてくる。

 なるほど舞台に飛び乗るつもりだろうが、飛び上がる際に舞台や其処に立つ人の位置が見えていたのだろうかという疑念が湧く。

 助走もないのに飛び越えられる脚力には目を瞠るものがあるが、判断力は酒にヤラれているとしか思えない。

 下手をするとハヤトの二の舞いになって役立たずが一人増えるだけだぞ?


「あっ……」

「ぐえー」

「やられたガオー」


 ほら、言わんこっちゃない。

 空中から勢いよく舞い降りたごっきぃはディックに体当たりをして彼をノックアウトしたが、こんな状況であっても演技を忘れなかったディックには驚きを覚える。


「酷い結末でございまし……」

「フッ、余興なんてこんなもんだろーヨ」


 頭を抱えるベアトリクスに腕を組んで失笑するアンジェリカ。

 方法はともかく厄介なオオカミは始末されたわけで、この下らない寸劇も終わりだろう。


「勇気ある冒険者の方、まさか体を張ってギンイロオオカミを組み伏せるとは。それよりお爺ちゃんとお婆ちゃんは大丈夫かしら」

「こっちは大丈夫だ、だから部屋に入ってくるんじゃない」

「急いで助けを呼んでくるのよ。いや、急がなくていいから時間を掛けて、でも確実によ」

「分かったわ、街に戻ってお父さんを呼んでくる」


 チェルシーは舞台に上がってきた時と同じように、スカートをひらひらさせて一礼すると舞台から下りて行く。

 しかし孫には見せられない姿って、オオカミと一体どんなハードプレイをしていたんだろうか。

 爺さんと婆さんは舞台袖で台詞だけの役回りとなっていたのは幸いだ。


 チェルシーが引き上げたことで舞台には三人の男が横たわっているだけとなり、これ以上寸劇が進行するということはなくなった。

 グダグダした割にあっけない幕切れであり、周りに群がっていた人々もそれぞれのテーブルへと戻っていく。


「なんか食うものないかな。さっきから酒しか飲んでないんだ」

「そこら辺にあるものを適当にといっても、テーブルがないのでございましね」

「こいつらなら今から片付けるんじゃよ」

「うむ」


 舞台脇にいたフッサとエクシオが舞台の上に倒れる三人を壁際に運んでいき横たわらせる。

 扱いが雑だなと思うが、赤レンガでの酔いつぶれた人間の扱いはいつもこんなものだ。

 今日は体に毛皮が掛けられているだけのやさしみがあるし、これならば風邪を引くこともあるまい。


「そろそろ新しい料理もでてくるんじゃねーか? 噂をすればほらヨ」

「ハイ、お待ちど!」


 キッチンの方に引っ込んでいたチェルシーが冒険者と四人がかりで大皿を運んできた。

 そこまでしないと持ってこられない料理、それはオオカミの丸焼きである。

 四肢を広げられて焼かれたオオカミが丸々一頭ドカンと存在するだけでなく、口に焼きリンゴが咥えさせられていてそれっぽい料理の雰囲気がある。


「どれどれ、オオカミって一体どんな味が……って、ほとんど生だコレ」


 右肩の辺りの肉を削いで口に運んでみると、外側に焼き目は入っているものの中まで完全に火が通っていない。

 そりゃあオオカミを運び込んでから一時間も経ってないんだから、出来上がる料理も出来上がらないだろう。


「あーゴメン、やっぱ火が通ってないか。途中で面倒くさくなったってお父さん言ってたし」

「タタキだと思って食えば良いんだヨ……そういう問題でもないな」

「そもそもオオカミを食べようとすることが間違っているのでございまし。しかしこれはこれで」


 四本足なら机以外は食べられると聞いたことがあるが、肉食動物の肉ってそんなに食べないよな。

 野生の肉食動物の肉は手に入れる難易度が高いからかな。

 育てるにしても草食動物のほうが手間はかからないってのもあるだろう。

 ついうっかりと自分が食べられるなんてことはないし、そもそも肉を食うために肉を食わせるというのは無駄が多すぎる。

 まあ、そんなことはどうでもいい。


「こんな見た目だけ存在感がある料理の仕方じゃなくて、大人しく鍋にでもぶち込んどけばいいんじゃねえか?」

「あっ、それは二頭目でやってます」

「二頭目?」

「三頭目もいるみたいでございまし」


 ベアトリクスがナイフで差す方を見ると、二人組の冒険者がオオカミの毛皮を被って建物に入ってきて手近なテーブルに乗り上がったところだった。

 成る程、オオカミの解体は今も行われていて毛皮と肉が現在進行系で供給されるようだ。


「ガオガオ、ガオーン!」

「オイオイオイ。バカが増えたぞ」

「俺も毛皮貰ってくるし」

「俺だってまだ終わっちゃいねぇぞ」


 悪ノリするバカがいれば、気絶から復帰するバカもいる。

 生焼けの肉もきちんと熱を通してみるとそれほど悪いものでもない。

 この調子であればバカ騒ぎは終わる気配がなさそうだ。

 それじゃあ俺もひとつバカになってみようじゃないか。


「俺の分の毛皮持って来い!」

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