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ゆるふわお姉ちゃん(年下)と行く異世界紀行  作者: kdorax
3章 リアルJKとゴブリンの王
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第1話 引きこもり冒険者

「はーい、みなさ~ん。おはよーございまーす。今日も一日がんばっていきましょー!」

「「「「オーッ!」」」」


 お姉ちゃんが発する朝の挨拶に四人の男達が元気に返答する。

 それぞれをディック、エクシオ、フッサ、ハヤトという。

 いずれも冒険者協会に所属している冒険者で、利き腕が異様に発達したその外見からシオマネキと呼ばれることもある。


 そんな彼等には今、魔物を退治する仕事に協力してもらっている。

 今日もプリメロの街の北に位置する山で適当な魔物を狩り倒してくる予定で、今の挨拶は体調確認を兼ねた点呼のようなものだ。


 死を起因にこの世界に転移してきてから、ひと月ほどの時間が経っただろうか。

 俺とお姉ちゃんは生活費を稼ぐ目的で魔物を倒す冒険者稼業を続けていたのだが、ちょー強いお姉ちゃんの頑張りのおかげで、今では街の近辺にいた魔物は狩り尽くしてしまった。


 すると今度は北にある山まで行かなければ、魔物に遭遇することもないということになった。

 近場であれば倒した魔物の首を街に持ち帰ることに、さほどの苦労を要しなかったのであるが、自然豊かな山ともなるとそうはいかない。

 遠い上に足場が悪いため行って帰ってくるだけで苦労するのだから。


 そこで俺が目をつけたのが、冒険者協会が拠点としている赤レンガと呼ばれている建物の食堂で燻っている協会員達である。

 昼間から酒を飲んで酔いつぶれている彼等を、魔物の首を運ぶ作業に利用することにした。

 彼等は金がある限りは仕事をしないというスタンスだというのだが、簡単な作業で金が手に入るとあっては手伝う他ないと協力してくれている。


 これからディックが操る馬車に乗りこんで山へと向かうことになるが――その前に大事な作業がある。

 協会の掲示板に張り出されている魔物の手配書の内容を確認することだ。


「ゴブリンの集団、ギンイロオオカミ、動く死体……腐ってなきゃ良いけど、腐ってたら持ち帰リたくないな」


 どんな凶悪極まりない魔物であっても、懸賞がかかっていなければ倒しても報奨金が出ない。

 それでは苦労して倒したところで無駄な働きになってしまう。

 もっとも全部お姉ちゃんがぱぱっとやっちゃうから、俺の苦労は一欠片だって無いんだけど。


「お姉ちゃん一度ドラゴンに乗ってみたいんだけど、いまだに出会えないわね」

「動く死体な。一度遭遇したことがあるが、ありゃあ腐っておるから臭うし厄介じゃぞ。見つけても見なかったことにしたいものじゃ。単価も安いしのう」

「そうか、金額には拘らないけど臭うのは避けておきたいな。目当てにしているゴブリンも中々足がかりが掴めないし……うん? なんだこれ」


 手配書の確認をしていると、その中の一枚に見慣れないものがあった。

 以前に確認したとき、それは確か三日前だったはずだが、そのときにこんなものは無かったと記憶している。

 であるとすれば、三日前の朝以降にここへ張り出されたものだろう。


『仲間募集  (略) お願いたすけてヘルプミー 苺』


 この世界の言語ではない文字で書かれているそれは、ともすれば今日まで誰にも見咎められなかったのだろう。

 いや、それは違うか。

 日本語を理解出来るのは俺だけではない。


「おーいハヤトさん。この張り紙ってあんたも読めると思うんだけど、何かご存知でない?」


 ハヤトは話す言葉から日本か関連する地の出身……だと俺は勝手に思っている。

 転移者同士でこの世界に来る前の事を話すことがないから不明ではある。

 その理由は単純で、転移者は様々な世界の様々の時代から来ているため、話が合わないことが多いからだ。

 皆それぞれ生まれ育った場所と年代が違うのだから常識や価値観は人それぞれ違っていて通じることはない。


「そいでごすか。昨日おいが会いに行たら追い返されもした」

「助けの手を求めておいて、いざ誰か来たら振りほどくとは……大したやつだな」

「なになにケイ君。面白い魔物さんが載っているの?」


 お姉ちゃんがニコニコ顔で俺に擦り寄ってきて、柔らかい肉体を俺の身体に密着させる。

 香水の甘い香りがふんわりと鼻孔をくすぐる。

 じめっとして少しカビ臭いこの建物の中でだとなおさら良い匂いに感じる。


「いや、仲間を募集している張り紙があったから気になってさ」

「ふーむふむふむ。これは女の子が書いたものね」


 少し考えれば最後に書かれた名前から分かる……いや、そんな名前の男だっているだろうから違うか。

 じゃあ、このカラフルで丸い文字の書かれ方から分かる……いや、そんな風に書く男だっているだろうから違うか。

 俺にはこれを書いたのが異世界から来た転生者ということが分かっても、それが女の子と結論付けるまでには至らない。

 そうかお姉ちゃんが持っている女の勘ってやつだな。


「そんなことが分かるんだ……それよりもお姉ちゃんはこの文字が読めるんだね」

「お姉ちゃん、どんな文字でも読み書き出来るわよ」


 多くの人間は自分が普段使う言葉の読み書きが精々であり、地政学的な理由があっても二つか三つ程読み書き出来れば良い方だろう。

 それを難なく読み書きできると豪語できるなど、お姉ちゃんには不思議な部分が多い。

 用意するのは面倒であるが、多数の言語を織り交ぜた文章を見せたとしても、この調子であれば読んでくれそうな気がする。

 しかし今大事なことはお姉ちゃんの識字力ではなく、この張り紙をした女の子だと思う。


「おはようございますお二人様。それに目を留めるとはお目が高い。(わたくし)めもイチゴさんのことは気掛かりなのでございまし」

「おはようベア。この子の事を知っているんだ……って、そりゃ管理者なんだから知っているか」

「掲示を許可したのは私めでございまし。そういえばお二人はご面識ありませんでしたか――」


 ベアトリクスがカウンターから顔を覗かせて俺たち二人に声を掛けてくる。

 彼女は今日もいつもと同じ、黒のワンピースに白のエプロンドレスという服装をしている。


 最近になって服を仕立て直したらしくどれも真新しく見える。

 服装だけでなく顔の化粧の厚みも増したし、香水の量も増えているため、出会ったときより更に金の匂いをさせるようになった。

 理由は見た目を整えることに使えるお金が増えたからだが、それは街の経済状況か改善されたことが関係しているのだろう。


 プリメロの街に住む人々は自分たちの身を守るため、街の外を蠢いている魔物たちに対して多くの懸賞金をかけている。

 俺とお姉ちゃんがやってくる前は、魔物は十分に退治されておらず、残念なことに彼等の願う結果にならなかった

 その結果人々の資産は冒険者協会の金庫にプールされることになり、街に流通する金銭は著しく現象していた。


 お金を持たない人々は魔物に困っていても、新たに懸賞金を掛けることが出来ない。

 それは協会にとっても収入が無いことと同じであり、ベアトリクスの懐も寂しい状況が続いていたらしい。


 このひと月の間、俺とお姉ちゃんを中心とした協会員が手配魔物を狩り倒してはその報酬で遊び倒した結果、協会の金庫にプールされていた金が街全体に行き渡るようになった。

 そして金回りの良くなった街の人々は新たな魔物に懸賞金がかけられるようになり、その二割を徴収しているベアトリクスの懐も潤うようになったのである。

 街全体の金回りが良くなった結果、色々な物価が上がったのだが、懐具合が十分な俺とお姉ちゃんには関係のない話だ。


「彼女――イチゴさんというのでございますが、ふた月ほど前に冒険者協会に登録されたのでございまし。丁度お二人の前に来た転移者になるのでございまし」

「ああ、ハズレ掴まされたって言ってたやつか」

「そうでございまし。その彼女が三日ほど前に青ざめた顔で駆け込んできて、その張り紙を作成したのでございまし。今までクエストも受けておらず、どのように過ごしていたのか私めも不思議でございまし」

「ふーん、どうやって暮らしているのか分からないと。それはちょっと気になるな」

「ケイ様におかれましては人足を募集されておられますから、伺われるのもよいのかもしれませんね」

「そうだな」


 この世界に来た日、アンジェリカがベアトリクスをあざ笑っていた『二回続けてハズレを引いた』という話の一人目が彼女らしい。

 [おしらせ]

3章は平日更新で全30話くらいを予定。

[登場人物紹介]

 ケイ君 この作品の主人公。

 マスコット・チアーズ ケイ君主観のこの作品ではほぼお姉ちゃんとだけ呼ばれる。

 ベアトリクス 冒険者協会の人。最近栄養が改善してふくよかになりつつある。

 ディック、エクシオ、フッサ、ハヤト ただのモブ

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