お楽しみの後で
・・・・ここは、どこだ?・・・なんだ?騒がしいな
「おい、れい!どこいくんだ!」
「といれ!」
あれは、小さい頃の俺か?じゃあ、ここは幼稚園?じゃあここは俺の夢か、ついて行ってみよう
「ふぅ、そうだ、おちゃのも」
へぇ、懐かしい水筒だな。
「ん?ねぇねぇ、きみ、どうしたの?」
あれ?あの子ってまさか、いや、間違いないあいつは
「ぼくはれいだよ、きみのおなまえは?」
「あたし?あたしはまや」
やっぱり麻弥だ、ははっ、この頃も可愛かったな
「まやちゃんはどうしてみんなとあそばないの?」
「・・・あたし、みんなにきらわれてるから、だからあたしもみんなきらいだから」
あぁ、そういえば麻弥って、小2まで性格が暗かったよな、それまでずっと虐めにあってきたからな
「みんなじゃないよ?だってぼくはきみのことすきだから」
「どうして?」
あれ?なんか視界がぼやけてきた、そろそろ起きる時間かな?
「わからないよ、でもすき」
「・・・、・・・・・、・・・・・?」
え?麻弥、今なんて言ったんだ?
◇
「ぃ・・・・にぃ、起きて、朝だよ!」
「・・・ん?あぁ、わかったよ、いま、おきた、から」
俺、朝に弱いんだよな~、それに日向起こされるの何年ぶりだろうか。それに何か懐かしい夢を見てた気がするんだが、まぁいいか
「にぃは麻弥姉ちゃん起こしてね、私が起こしても起きなかったから」
「ん、・・・・は?あぁ、そうか」
俺は一瞬訳がわからなかったがすぐに思い出した、そういえば昨日は日向もいたけど、麻弥とひさしぶりに寝たんだよな
「おい、麻弥、起きろ、朝飯なくなるぞー」
「んにゃ、パパ、もう少し寝かせて」
俺はお前の親父じゃねえよ、目ぇさませ
「何寝ぼけてんだ、さっさと起きろ」
「ん?あれ?零?・・・・っ!」
あ、隠れやがった、まぁ、これくらい簡単に剥がせるがな、それっ・・・え!?
「やぁ、見ないでぇ!」
「見ないでって、なんでお前寝間着の下はいてないんだよ!」
麻弥は素早く布団で隠すが、俺はバッチリ見てしまった、麻弥が今はいているパンツは日向の物だが、パンツはパンツ、可愛らしい麻弥のお尻が俺の網膜にくっきりと焼き付いた
「零、見た?」
「すまん、はっきりと見えた」
そう俺が答えると麻弥は布団に籠ってしまった
「おーい、麻弥、出てこいよ。ほら、朝飯なくなるぞ」
布団から麻弥の手が出てきて何かを探すように近くをパタパタとはたいている
「これか?」
寝間着のズボンを渡すとそれを掴んで素早く中に引き込む、中ではいているみたいだ
◇
「ったく、一緒に風呂に入ろうって昨日言ってたのになんでパンツ見られるのが恥ずかしいんだよ、それに麻弥が風呂からあがってきた時なんかタオル巻いただけの状態だっただろ?」
「零だって、起きたらいつもは家にいない女の子が目の前にいたらビックリするでしょ?それと同じだよ」
確かに驚くが、まず麻弥がズボンを脱いだ状態なのがおかしいだろ
「まぁ確かに驚くが、でも―」
「わぁ、零ママの朝ごはんだぁ、美味しそう!あ、ヒナちゃんおはよ」
「おはよ、麻弥姉ちゃん」
お前は人の話を聞け!本当に、麻弥は食欲が最優先だからな、いつかコロッコロになるぞ
「零、今私の事悪く考えたでしょ?」
「あぁ、そんなに食に働いてばかりだといつか太るぞって思ったんだよ」
ぐふっ!朝に殴るなよ、反応鈍くなってんだから、ゴフッ!マジで入った
「おぉ、ヤベェ、入った」
「そんなの知ーらない!零が変な事言うからでしょ、別に私太らないもん、ちゃんと運動してるから!」
「にぃ、大丈夫?」
麻弥のパンチは入らなければ大丈夫だが、今のは入ったから大丈夫じゃない
「ちょっとキツイ」
「あらあら、どうしたの?お腹壊しちゃった?」
「にぃが、麻弥姉ちゃんに太ったみたいな事言って、お腹殴られて、こうなったの」
母さんは、何も言わず、ただ微笑むだけで朝飯を食べ始める
「んー!このフレンチトーストすごく美味しい!もう一個食べよっと」
「ほら、早く食べないとにぃの大好きなフレンチトースト無くなっちゃうぞ」
「はぁ、やっと治まってきた。ふぅ、さて、食うか」
フレンチトーストは、よかった、残ってる、あと20個か、母さんがこれを作る時はいつも50は作るから麻弥と日向がほとんど食べてしまったのか、せめて10個は食いたい!
「わっ!零、すごい食べるね、ってフレンチトーストばっかり!私も食べるー!」
「あ、麻弥テメェ、一番でかいやつ取りやがって!」
「ふふふ、なかよしね~」
「にぃって昔から麻弥姉ちゃんの事好きだよねぇ」
日向の言葉に俺の体はピタリと動きを止める
「別にそんなんじゃねぇよ」
俺は精一杯恥ずかしさを抑えながら答える
「私は零の事好きだよ?」
「ほらぁ、にぃも麻弥姉ちゃんが好きって素直にいいなよ」
「うるさい黙れ」
日向ぁ、今は抑えておいてやるが、お前にも好きな男ができた時は絶対に仕返ししてやるからな!
「そ、そうだ、日向は好きな男とかいないのか?」
「あ、ヒナちゃんの恋ばな私すごい興味ある!」
「え!?い、いないよ!!」
「ふふっ、若い子は大変ねぇ」
◇
朝飯を食べ終え、俺と麻弥はゲームセンターに遊びに来ていた
「おぉ、ひさしぶりに来たけど、色々と配置が変わってるな」
「本当だね、零の好きだったゲーム、入り口から遠くなってるね」
あ、本当だ、かなり店の奥に移動しているな。俺の好きなシューティングゲーム、中3の最初まではやってたんだがそれからは受験勉強とかでいそがしかったからな、ちょっとひさしぶりにやってみるか
「ひさしぶりにやってみようかな、腕が鈍ってなかったら良いんだが」
俺はそう言ってケースに入ってあるハンドガンを握り金を入れると麻弥も金を入れ、ハンドガンを握る
「初めてだけど、私もやりたいから一緒にやろ?」
「麻弥もやるのか?じゃあ、麻弥に負けないように頑張らないとな」
麻弥のために飛ばさなかった説明を聞いてゲームを始める
「・・・・・・・・」
「あっ、ちょっと、零、本気出しすぎだよ」
右の敵とその下はまだ安全、左が麻弥を狙っているからそっちを優先する
「あ、こっちの敵が空いてる、それ」
「お、うまいな、でも近くだけじゃなく離れた場所からも狙っているぞ」
まぁ、その全ては俺が倒しているから麻弥にダメージが入ることは少ないだろう
「最初のステージは簡単だな」
「零は私の獲物捕ってばっかり、なによ、命中率100%とか強すぎだよ」
別に最初のステージはこんなもんだろ?
「そうか?俺は別に強く無いぞ?麻弥は初心者だからそう感じるだけかもな、ほら次のステージが始まるぞ」
「むぅ、絶対に見返してやるから」
さてと、そこだ!ってえぇ!!何で爆発したんだ!?
「すごい!爆弾すごく強いよ、あ、無くなっちゃった、じゃあ今度はマシンガンだぁ」
「ははっ、お楽しみのとこ悪いが、俺はハンドガンだけで全員片付けてやるよ!」
麻弥、すごく楽しそうだな、こんなに笑顔になってすごく可愛いな
「あ、この荷物持ってる敵倒したらいっぱい銃の弾が出てきた、また爆弾使えるよ、やったぁ!」
「そんな事言ってる間に俺はかなりの敵を倒したぞ、これは俺の勝ちだな」
麻弥はすぐに画面に向き直り爆弾を大量に投げ放つ、容赦ねぇな
「零には絶対に負けないからぁ!」
「お、もうすぐでこのステージはクリアだぞ、結果が楽しみだ」
ゲームの主人公達が施設を抜け出してステージをクリアした、結果は俺と麻弥はなんと1500点差!何でこんなに点差が近いんだ!
「おぉ、危ねぇ、もう少しで麻弥に負けそうだったぜ」
「そうなの?1000くらい離れてるけどもう少しで零に勝てるんだ、頑張ろっと」
おそらく麻弥の爆弾による撃破得点とマシンガンのオーバーキルでの小さな得点が積み重なってここまでの高得点を出し、俺が焦って得点の高いヘッドショットを外した事により得点が減った分でここまで互いの得点が近くなったんだろう
「感覚はかなり戻ってきた、麻弥、本気出すけど悪く思うなよ」
「いいよ、私も頑張るから」
第3ステージ、はっ、俺の相手じゃねぇぜ、来いよ三下共、俺が全員片付けてやる
「・・・・・・・・」
「えっ!ちょっ、零速すぎ、もぉ!爆弾使っちゃえ!」
第3ステージはすぐにクリアされた、結果は麻弥の完敗、このステージでは麻弥の攻撃で倒せた敵がいないため得点が入らなかった
「うわぁ、零強すぎだよぉ、零、どうしたの?」
「ちゃんと前を見ろ、まだ戦いは終わってないぞ」
その後、麻弥が得点を得る事は無かった
◇
「ふぅ、スッキリしたぁ」
「途中からは零が一人で戦ってたような物だったけどね、零ってば完全にあっちの世界に行っちゃって、私達の周りにいっぱい人が集まってた事最後まで気付かなかったでしょ?」
あぁ、確かにゲームが終わって振り向くまで気付かなかったよ、滅茶苦茶ギャラリーが多かったからビックリしたよ
「あぁ、本当にビックリしたよ、まだ昼にもなってないのにあれだけの人が集まって来るなんて初めてだ」
「ゲーセンっていつもたくさん人がいるって思ってたけど違うんだね」
まぁ、朝にもそれなりに人はいるがあの人数は異常だ
「麻弥、今何時だ?」
「そうねだいたいね~、あれ、零、どうしたの?」
ん?あぁ一瞬わからなかったけど、麻弥のそのネタは結構古いぞ
「麻弥ごめん、ネタが古くて一瞬わからなかったよ、それ、サ◯ンのネタだろ?」
「なに?サザ◯って、これはパパに私が時間を聞いた時に言ってるセリフだよ?」
あぁ、なるほど、麻弥の親父さんはサザン好きだからな
「まぁ、自分の親父さんに聞け」
「うん、わかった」
自分のケータイを見ると、10時ちょうどか
「麻弥、俺ちょっと腹減ったから何か食いに行こうぜ」
「え、いいけど、ここじゃない所で食べない?」
どうしたんだ?麻弥の様子がおかしいな
「いいけど、どこにする?」
「えっとぉ、そうだ、最近本屋さんに新しい本が出たらしいからそれ買ってから近くのコンビニで何か買お?」
この時、俺は麻弥の言う通りコンビニで小腹を満たした、すると突然母さんからの着信音が鳴る
「もしも―」
「零、大丈夫!?今どこにいるの!?」
母さん、やけに慌てているな、何かあったのか?
「え、まぁ、俺も麻弥も大丈夫だけど、何かあったのか?」
「そう、よかった。あのね、さっきあなた達が遊びに行くって言ってたスーパーに強盗がテロを起こしてて町中大騒ぎなの、それで母さんは零と麻弥ちゃんが向かった所だったから心配になって」
強盗?マジか、でも確かに遠くでパトのサイレンが鳴っているな、危ねぇ、本当麻弥が場所を変えようって言ってくれなかったら俺達も人質にされてたかもな・・・あれ?
「麻弥、もしかしてこの事を知ってたのか?」
俺が問いかけると、麻弥は首を横にふる
「え、ううん、何だか嫌な感じがしたからあの場所から離れたかっただけだよ?でも、強盗の被害にあった人達には申し訳ないな、って、思っ、て」
「何言ってんだよ、麻弥はただわからないけど嫌な感じがしたからあそこから離れたいって思ったんだろ?なら麻弥は何も悪くないよ、それどころか逆に俺達は運が良かったんだよ。だから泣くな、本当に麻弥は昔から泣き虫だな、ほら、こっちに来いよ俺の胸貸してやるから」
麻弥は俺の体に抱きつき腕の中でたくさん泣いている。そんな麻弥に俺は頭を撫でてやる事しかできなかった
◇
あれから数時間の刻が経ち、麻弥は泣き疲れて眠ってしまった
「ははっ、お前は子どもかよ、泣き止んだと思ったらいつの間にか眠りやがって」
ま、そんな所も可愛いけどな。ふぅ、麻弥が起きるまでしばらくはこのままかな
「う、うぅん、あ、零、私どれだけ寝てた?」
「おはよ、あまり長く寝てないぞ、麻弥が泣き止んでから一時間も経ってないよ」
突然麻弥が顔を赤くして視線を外した
「どうした?顔赤いぞ?」
「えっと、その、ずっと零にくっついてたから、迷惑かなって」
なんだ、そんな事か
「大丈夫、ちょっとイタズラしてやろうかなって思ったけど、色々とあってできなかったよ」
「よくわかんないけど、色々あってよかったよ」
まぁ、嘘じゃないけど、本音を言えば傷心の麻弥にそんな事したらさらに傷付くんじゃないかって思ったから、だからやらなかったんだ
「そろそろ帰ろうか」
「うん」
少し回り道だけど、あのスーパーからは離れた道を使って帰って行く
「おらぁ!」
「ぐぉっ!」
曲がり角に差し掛かった所で誰かに体当たりされて、俺は車道に飛ばされた
「ひっ!」
「あっ、貴様!」
「おい、それ以上近付くなよ、近付くとこの女の命はねぇぞ!」
「君、立てるか?」
「はい、大丈夫です」
あの野郎、麻弥に銃口向けやがって、麻弥が怯えてるじゃねぇか、絶対に許さねぇ
「れ、い、たす、けて」
「黙れ女!撃ち殺されてぇのか!」
麻弥が俺に助けを求めている、俺がやらなきゃ
「あ、ちょっと君!」
「なっ、なんだテメェ!やんのかゴラァ!」
ゲーセンの銃よりもずっと冷たくて重い、でもこの程度、俺があいつに抱く殺意と麻弥の命に比べたらまだ温かくて軽い、俺は麻弥の望む形であいつを助ける
「お、落ち着け、君がそれを使って、もし彼女に当たったらどうする!?」
「うるさい!そんな事、俺が麻弥に当てなければ問題ねぇ!」
「いいから、それを返し―」
俺が引き金を引くと、空に響く大きな破裂音と火薬の匂いが広がり、そして、小さな金属が地面に落ちる音、強盗は自分の手を握り、その場に倒れる
「・・・い、今だ!捕らえろ!」
警察が動くと同時に麻弥がこちらに走ってきた
「麻弥、無事でよかった」
「うん、怖かったよ、私、殺されちゃうって思って、怖かっ、たよ」
これはまた、さっきみたいな事になるのかな?
「君!さっきは犯人に当たったからよかったが、もし君の彼女に当たったら君は、底知れぬ罪悪感に身を沈める事になりかねなかったんだぞ!」
「はい、すみません」
俺が謝ると、その警察官はすぐに笑顔を見せる
「だけど、君のその彼女を助けようとする強い気持ちは素晴らしかったよ。犯人逮捕に協力ありがとう、後日、我々警察から感謝状を贈らせてもらうよ」
「はい、ありがとうございます。あ、あの!」
立ち上がり、迎えに来たパトカーに乗ろうとするさっきの警察官を呼び止める
「俺とこいつは、まだ、恋人じゃないです」
「そうか、頑張れ少年!」
その後、麻弥を家まで運んで、俺は自分の家に帰って行く
今回はちょっと脱線感がありますね、スミマセン
自分でもなぜこうしたのかわかりません




