強いけど頼りない兄貴
食器の片付けも終わり、麻弥と日向は『独りぼっちの僕は人気者の君に恋をした』という最近人気のテレビドラマを見ている、今は主人公がいじめっこに初めて仕返しをしたところだ、しかし主人公かなり強いな、いじめっこ5人を一人でボコるとか強過ぎて何かの特撮ヒーローかと思えるほどだ。あ、今のは痛そう
「酒月くんすごいね」
「麻弥姉ちゃん、今は高原 幸二だよ」
「よくわからん、誰だよ酒月やら高原やらややこしい」
「零、知らないの?酒月 来斗、最近人気の俳優さんよ?」
母さん、いつの間に俺の後ろに!そんな事より母さんから俳優の情報が出てくるなんて初めてだな、そんなに気に入ったか?
「にぃってばこんな事も知らないでよく女の子と話合わせられるね」
「まぁ、零が女の子にモテるのはいつもの事だし、話って言うより質問に答えてるって方がしっくり来るかな?」
「へぇ~、零って高校生になってモテたんだぁ、今度母さんに女の子紹介してよ」
「麻弥、余計な事を」
俺は中学の時から女子に好意を持たれていたが、面倒な事になりそうだったから家族に言わなかったのに、麻弥のやつ
「まぁ、にぃは顔だけなら良いんだけどね、妹の私としてはもう少し頼りがいのある男になって欲しいな」
「私は零の事頼りがいのある男の子だと思うけどなぁ」
「悪かったな頼りない兄貴で」
ケンカとかは強い方だと思うんだが、本当に頼れる人間は、どんな事があっても仲間や大切な人を守る勇気を持っている人間だと俺は思う
だけど俺は、本当に日向や麻弥が困っている時に、助けを求めている時に守る事が、助ける事ができるだろうか
「そういえば今さらだけど、にぃのその腕の傷痕って何のやつ?」
日向は俺の左腕に残る傷痕を指差す
「これの事か?日向は覚えていないのか?」
「え、うん」
まぁ、あの時は日向がまだ七歳の頃だったからな、それにあの後すぐに気を失っていたから仕方ないかもな
「そうだな、あの時は俺と日向が初めて二人でおつかいに出掛けた帰りだったな」
◇
「よし、後はお家に帰るだけだよ、日向のおやつも買ったからもう大丈夫だね」
「うん、にぃのおやつもあるよ」
店から出てきた零と日向は手を繋いで向かいの横断歩道まで歩いていた
「にぃ、走ったらおうだほど渡れるよ?」
日向はまだ青い信号機を指差して零の少し前を歩く
「でも卵がわれたらお母さんに怒られるよ?」
「うぅ、じゃあにぃと歩く」
うつむいた日向がふと空を仰ぐと、日向のすぐ頭の上を珍しい模様の蝶が横切る
「あ、ちょちょ!にぃ、ちょちょだよ!」
日向は蝶を追いかけて道路に出てしまった。
ちょうど信号機が赤に変わった道路に
「あ、日向!危ない!」
「え?」
日向に向かって大きなトラックが走ってくる、トラックの運転手は日向の存在に気付いていない
零は荷物を投げ捨て、日向を突き飛ばすと、日向は家の塀に頭をぶつけて気を失ってしまう、零はそのすぐ後、体から血を流し道路に倒れていた
「ひ、なた・・・だいじょ、うぶ、かな?・・・僕、日向に、ひどい、こと、しちゃっ、た、な、後で、あやまら、なく、ちゃ」
零が目を覚ました時にはすでに深夜の3時の病室だった、すぐそばには目を赤く腫らした日向が眠っていた
◇
「ってな感じで他にも足とか腹にも傷痕あるぞ?」
「だから零はしばらく学校お休みだったんだね、私と真沙斗で零がずる休みしてるって言ってたけど違ったんだね」
麻弥、そんな報告はいらないよ。
よし、明日真沙斗を一発殴ってやろう
「えっと、ごめんね、にぃの事頼りないって言って」
「いいよ、今じゃ俺は本当に頼りない兄貴だからさ」
本当に俺は心も体ももやしみたいだ、こんなので大切な人を守れるのかな?
「あらあら、日向は零に頼りきりなのに頼りないお兄ちゃんだと日向はすごく不安よね~」
「お母さんは余計な事言わなくていいの!」
まぁ、気にしても今は仕方ないか
「あ、酒月さんが川合さんを呼び出したのにいいとこで終わったぁ~!」
「じゃあ次回までのお楽しみってことで、二人とも風呂入れよ」
麻弥は母さんがキッチンの掃除を終わらせて風呂場に向かったのについていく、日向はソファーでゴロゴロしていて入る気配が全くしない
「ほら、麻弥と母さんが風呂に入りに行ったぞ?日向も早く行けよ」
「私、にぃと入るからいい」
・・・は?なんで日向は俺と風呂に入ると言ったんだ?二年前にもう一緒に入らなくなったのに
「急にどうした?さっきの事気にしてるのか?」
「違うよ、ただ、にぃとお風呂に入りたくなっただけ」
そうか、なんだか誤解を招きそうな発言だな
「日向、お前最近太った?」
「なっ、太ってないし!にぃのバカ!もう一緒にお風呂入ってやんない、私一人で入るから」
まぁ、小さい頃は怖くて一人で風呂も入れなかったから日向と一緒に入っていたけど、10歳でやっと一人で風呂に入れるようになったからな、今じゃその脅し文句は効かないぞ
「そうか、それじゃあ俺は日向に買ってきてやったはずの桜木製菓の饅頭でも食ってまってるよ、安心しな、ひとつは残して置いてやるから」
「うぐぅ、にぃのバカ!卑怯だよ、私の大好きなお饅頭を武器にするなんて!そんなに私とお風呂に入りたいの!?」
別にそんな事は無いんだが、ってか日向痛い、爪を刺してくるなって
「まったく、にぃがシスコンだったなんて、私も安心してにぃと一緒にいられないよ」
「確かに日向は可愛いけど、妹に手は出さないよ、犯罪になるし日向も俺みたいな男なんか嫌だろ?・・・日向?」
日向は俺に近づいてきてカプカプと腕を甘噛みしてくる。小さい頃は何度かあったが、何を表しているのか思い出せないな、何だったか
「日向、何してるんだ?」
「にぃの手、噛んでるの」
そうか・・・日向、小動物みたいで可愛いな、腕に力を込めたらどうなるかな?試してみるか・・・ふっ!
「むぐっ!に、にぃ!やめてよ、アゴが外れそうだったじゃん!ただでさえにぃの太くなっててくわえ難いのに、いきなり固くされたら私の口に収まりきらないよ!」
「悪い悪い、日向がをかじってくるからちょっとイタズラしたくなってさ、もう一回くわえるか?」
ん?廊下に続くドアの磨りガラスに人影が映っているな、あぁ、麻弥だな、廊下にタオルを巻き付けたままで何してんだ?
「麻弥、そこで何してんだ?入ってこいよ、風邪引くぞ」
「麻弥姉ちゃん?あ、ほんとだ、何してるのかな?」
麻弥はドアを開けて入ってくるが、顔が赤い、そんなに長く入っていた訳ではないはずだが、風呂の湯が熱すぎたか?それでもたれ掛かっていたのか?
「どうした?風呂、熱すぎたか?」
「え!?う、うん、そう、熱かったの」
麻弥の様子がおかしいな、そんなに熱かったのか?
「はぁ~、いい湯だったぁ~」
母さんが両手に女性用の下着を持って出てきた、40超えたおばさんの下着とは思えないほどかわいらしい下着だが、
母さんはちゃんと服着てるし
「麻弥ちゃん、はい、下着忘れてたよ?」
「え、うん、わかんなかった、ごめんね」
そういえば麻弥の着替え、麻弥の家に寄ってないから着替えがなくて母さんに借りたのか?にしてもな
「母さん、おばさんが穿くにしてはその下着、子どもっぽくないか?」
「にぃ、あれ私の下着なんだけど」
え!?日向のだったのか!?あれ
「何?何か文句ある?」
「いや、何も、高校生か20代の女の子が穿きそうな感じの下着だったから中学一年の日向がもってるなんて意外だなぁって思っただけだぞ?」
あ、そっぽ向かれた、気にしてたのか
「二人とも、早くお風呂入って来なさいな、アイス買ってあるから」
「アイス!?何?何があるの!?」
麻弥反応早いな、そんなに好きか
母さんの言うアイスって、でかいバケツに入ってあるからな、いちいち自分で食べる分取らないとだめだからめんどくさいんだよな~
「昨日、業務用スーパーで買ったの、安いし近いし便利よねぇ」
「にぃ、お母さんのこの話、長くなるから早くお風呂入ろ、麻弥姉ちゃんには悪いけど、私達は少しでもお母さんの話を短くできるように頑張らないと」
「そうだな、行こう」
今回は零と日向の過去を書いてみました
頭の中がスッカラカンで少々ヤバめです、あとがきで書きたい事がありません
一作目を見てない方でもわかる人にはわかると思います、作者の好きな物が何なのか
感想を書いて下さるとうれしいですが、書いて下さらなくても、おもしろいと思っていただけるとありがたいです




