微笑み
好きな人が出来た。
それは抗いようもなく
どっからどう見ても同じ女の子で。
別に否定なんてすることもないけれど
周りと違う自分を受け入れるのは少しこわい。
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彼女との出会いは至って普通。
特にこれといった"奇跡的な出会い"
なんてものはなかった。
「下の名前なんて読むの?」
彼女と初めて交わした言葉がこれだった。
テストの答案用紙が前から順番に流されてくる。
後ろから二番目の席ということもあり必然的に後ろの席の子の名前が見ようと思わなくても見えてしまうのだ。
ー透枷ー
読めなくもないんだけど
ここから話しが繋がれば良いなという
思い付きからそんな質問をしてしまった。
『・・・とうか。鈴波 透枷』
少し間を置いてから応えが返ってきた。
すずなみとうか
なんか涼し気な名前
夏は良いけど冬は寒そうだなあ
とかなんとか考えてたら
少し戸惑いながら、でもどこか嬉しそうに
『クラス替えして初めてクラスの人に声掛けられた』
とポツリとこぼした。
いつもどこか遠くを見ているようで
誰とも話そうとせず、一人でぽつんと
教室の隅にいるような子
(に見えるから)皆、変に遠慮していたのかもしれない。
実をいうと結構前から気にはかけていたのだけど。
やっぱり、なかなか話し掛けに行く勇気もなく
席が前後になることで動き出せた次第。
あまり笑わない子なのかと思ってたら
こんなに可愛らしい笑顔で微笑むんだもの。
ずるいね。必殺技をいきなり発動させるなんて
ちょっとフリーズしかけて
意識を取り戻したときには手遅れで。
好きって気持ちが勢いよく走り出して
私の心は透枷に奪われてしまっていた。
確信を得たのが帰宅して、ふと耳にしたラジオから流れていた恋愛ソングだったなんて恥ずかしくて誰にも言えない。
さて明日からどうしたものか…