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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第四章

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そして少女は旅立った

そしてレンが素早く引き金を引くと、銃弾はコクーンのグリムに当たった瞬間に轟音と共に爆発した。

弾も装填してないのに、しかも爆発する特殊な弾を出すなんて・・・。

体に大きく穴が空いたコクーンのグリムはすぐに動かなくなって地面に転がり、そしてまた地面に固定されたスナイパーライフルは瞬く間に小さくなって拳銃に戻ったので、静かに鎧を解いた。

なるほど、これも身に着けている物を少し変えられるっていう力のうちの1つなのかな?

拳銃をしまったレンはゆっくりとこちらに顔を向ける。

「これでもあたしのこと怖くないって言える?」

「あぁ・・・それより、銃の知識ってどこかで学んだの?」

驚いたように少し眉をすくめたレンは、寂しそうな眼差しでこちらを見つめる。

「・・・うんまぁ、お父さんから色々教えて貰ったし、本とかたくさん読んだし」

「そうか」

確かに自由に変えられると言っても、仕組みとか知らなきゃ出来ないだろうしな。

それより村の方角を確かめないと。

「レン、ちょっと待ってて」

地面に置いた血の石を包んだ葉っぱを持ち上げながらそう言ってレンを見る。

「え?」

「ちょっと空から村を見てみるよ」

「そ、そのまま逃げたりしない?」

するとレンは少し慌てるような声色でそう聞いてきたので、血の石を包んだ葉っぱをレンに渡す。

「じゃあこれ持っててよ、すぐ戻るからさ」

血の石を包んだ葉っぱを受け取ったレンは不安げな表情で小さく頷いたので、氷の仮面を被ってその場から上空に飛んで周りを見渡す。

コクーンのグリムがたくさんいた巨大な大木と同じ位置くらいまで来ると、人間の街と、獣人の村と思われる木が生えてない開けた場所が見えたのでレンの下に降り立った。

「・・・分かったの?」

「あぁ、この方角を真っ直ぐみたいだね」

レンから血の石を包んだ葉っぱを受け取り、肩にかけてから歩き出してしばらくすると、少し空が赤みがかってきた。

・・・夕焼けか。

そういえば、前に異世界から帰ったときも、皆が学校とかから帰ってきてた時間だったし、やっぱりその方がすぐに説明出来るしちょうど良いのかな。

「氷牙、村に着いたら、すぐにその氷牙の世界に行くの?」

「まあそうだね」

すると木々の向こうに家が見えてきたので村に入り、裏から回ってレモンの家の玄関の前に出たとき、家に入ろうとしていたレモンとばったりと出くわした。

「レモン」

「・・・師匠ぉっ」

耳を真っ直ぐ立てて驚きの声を上げたレモンは固まったままこちらを見つめるが、すぐに安心するように耳を下げていった。

「・・・やっと帰れたんですね。怪我とか無いですか?」

「あぁ」

やっと?

まぁ朝に出て夕方に帰ってきたからかな。

「あ・・・」

レモンが後ろに居るレンに気づくと、レンに軽く背中のシャツを掴まれた。

「師匠、知り合いですか?」

「あぁ」

レンを見たレモンは怖がることもなく、耳を下げながらレンに微笑み掛ける。

「師匠、どうぞ入って下さい」

「あぁ」

レモンに連れられてレンと共に家に入ると、レモンはすぐに母親を呼び出した。

「ああ氷牙君、よく帰って来たね」

キッチンから出て来たレモンの母親も、何故か少し驚いたように耳を立てながら歩み寄ってくる。

レモンの母親がこんなに驚くなんて珍しいな。

ネオグリムに会いに行くのは相当危険なことなのかな。

「ほんとに怪我は無いのかい?」

「はい」

「いゃぁ、良かったよ、2日経っても帰らないから、てっきり別の村にでも行ったかと思っていたんだだよ」

・・・2日?

レモンの母親は安心したように耳の力を抜き、レモンと微笑み合っている。

「そう、ですか」

朝に出て、夕方に帰ってきたんじゃないのか?

もしかして・・・あの時、気を失ったまま2日も経ったのか?

「おや、その子は」

レンに顔を向けながらそう言ったレモンの母親は、まるで何かを理解したかのように少し耳を立てながらただ小さく頷いた。

「たまたま、森で会いました」

「そうかい、まぁ夕飯の支度が出来るまでゆっくりしてな」

「・・・あの、せっかくですが」

「お父さん」

レモンに言葉を掻き消されたので後ろを振り向くと、そこにはいつもの威厳を醸し出している表情のレモンの父親が居た。

「お帰り」

「あぁ」

レモンの父親がレモンに応えて歩き出すと、レモンの母親もレモンの父親に目を向ける。

「お帰りなさい」

「あぁ」

「氷牙君、今帰って来たところなんだよ」

レモンの母親は少し嬉しそうに喋り出すと、レモンの父親が表情を変えずにこちらに目を向けたが、ほんの一瞬だけ安心感が伝わってくるような眼差しになったように見えた。

「そうか」

レモンの父親がそう言って歩き出すと、すぐにレモンの母親が奥に入って行ってしまったので仕方なくレンをソファーに座らせた。

「夕飯、ご馳走になろうよ」

レンはこちらの顔を見つめると、小さくため息をついた後に小さく頷いた。

「お名前は?」

「・・・・・・レン」

レンに歩み寄ったレモンが膝に手を置いてそう聞くと、レンは一瞬固まるが、すぐに警戒を解くように眉をすくめてそう応えた。

「そっか、私と似てるね、私、レモンだよ」

耳を下げながら優しく微笑むレモンを、レンは寂しそうな眼差しで見つめる。

「・・・あたしのこと、嫌いじゃない?」

するとレモンは小さく首を横に振りながら、優しくレンに微笑みかける。

「嫌いじゃないよぉ、種類は違っても、同じ獣人じゃん」

「そうなの?」

グリムじゃないのか。

レモンがこちらに顔を向けて体を起こすと、何かを思い出そうとするかのように首を傾げた方に両耳を傾ける。

「確か、デーモニシアンってずっと西の方にいる獣人だって、お姉ちゃんが言ってたよ」

「そうか」

「レモン」

奥から母親の声を聞いたレモンはすぐにその方に駆け寄っていく。

「はーい」

ずっと西に生息している種類なら、レンはどうして1人であの森に住んでたんだろう。

「レンって、獣人だったんだね」

「そうみたい」

レンはこちらに顔を向けても微笑みこそ浮かべないが、半音高い声で応えたその様子に若干の嬉しさを感じた。

だとしたら、レンは・・・ヒューマンタイプかな。

しばらくして夕飯の席に呼ばれ、血の石を包んだ葉っぱを後ろに置きながら座ると、レンはすぐ隣に座り込んだ。

ゆっくりとお椀を口に運び、溶き卵色のスープを飲んだレンはゆっくりと大きくため息をつく。

「レン、美味しい?」

優しく微笑んだレモンに顔を向けたレンからは、安心したように表情の強張りが解けていったのがはっきりと伺えた。

「うん」

「そういえば氷牙君、ネオグリムには会えたのかい?」

優しい眼差しでレンを見ていたレモンの母親は思い出したかのように片耳を上げると、ふとそんな話題を切り出しながらこちらに顔を向けた。

「えぇまあ。あ、そうだ、これ」

肩にかけるために結んだ長い葉っぱを広げ、血の石を包んだ葉っぱを1つ、レモンの母親の下に置いた。

「おや、これは何だい?」

「まぁ今までお世話になったお礼です」

レモンの母親は箸を置いてゆっくりと葉っぱの結び目を解き、葉っぱを広げ、蓋のように覆い被さった鱗を持ち上げる。

「まあっこれは・・・お父さんっ」

レモンの母親が驚いてレモンの父親を見ると、レモンの父親は身を乗り出す勢いですぐにその方に目を向けた。

「まさか本当に血の結晶を持って来るとは」

「ほんとに貰って良いのかい?」

一旦鱗を被せると、申し訳無さそうに少し耳を下げながらレモンの母親がこちらに顔を向ける。

「はい。沢山摂れたのでおすそ分けです」

「師匠、ネオグリムとも戦えるなんて、すごい」

お椀と箸を持ち、食事を再開させると、レモンがお椀を降ろしながらそう言ってこちらに顔を向ける。

「レモン、修業は励んでる?」

「ううん、最近は相手が居ないので」

「そうか」

するとレモンは耳を下げながら、不安げな上目遣いを見せてくる。

「この後はすぐに帰っちゃうんですか?」

「そうだね」

「そうですか・・・レンは師匠について行くの?」

少し落ち込むように肩を落としたレモンはふとレンに聞くと、レンは色とりどりの豆を口に運びながら黙って頷いた。

「いいなぁ・・・私も行きたいなぁ」

レモンは少し声の音量を落としながら、上目遣いで母親の顔を伺う。

「何言ってんだい、ダメに決まってんでしょ」

「分かってるよ」

耳を下げて更に肩を落としたレモンは少しふて腐れた様子でお椀を口に運ぶ。

食事が終わると残りの血の石を包んだ葉っぱを持って家を出る。

「もう会えないんですか?」

「多分ね」

大きく耳を下げて手を振るレモンに手を振り返し、レンと共に歩き出す。

もうすっかり夜みたいだな。

「氷牙、もう真っ暗だよ?」

「大丈夫だよ、道なら分かるから」

確かこの方向に進めば街に行ける広い道に出るはずだ。

茂みに入るとレンに小さく袖を掴まれたが、真っ直ぐ進むと予想通りに広い道に出られた。

街に行く道とは逆に行けばすぐに石碑があるはず。

ふと空を見上げると星がよく見え、そしてその夜空にはまるで天の川を思わせるようなものが飾られていた。

こっちのものと同じものだとは思わないが、違う次元の世界でも、普通に惑星や宇宙があるのだろうか。

「あたし、照明弾作れるけど、出そうか?」

レンに顔を向けたが、真っ暗で輪郭さえも捉えることが難しい。

「大丈夫だよ、このまま真っ直ぐだし、それにもうすぐそこだよ?」

「なんだそっか」

半音高い声で応えたレンの、シャツの袖を掴む力が少しだけ強くなったように感じた。

そして少し経つと、目が慣れてきたのか、何か身長ほどの壁みたいなものが立っているのが何となく見えてきた。

あれだな。

目の前に立つと空気が変わった気がして、風を感じなくなった。

「行くよ?」

後ろに振り返ってそう言うと、レンは少し眉をすくめて黙って頷いたように見えた。

レン(推定14)

本名はレンヴィルカ・ローゲンシュタイン。

産まれたときに母を亡くし、父と2人の兄と共に暮らしていたところ、 人間との戦争で父と兄達を失い、捕虜にならないようにと1人で村を飛び出してからは、父からの教えや与えられた本で得たサバイバルの知識や銃器に関しての知識を頼りに各地の森を転々としていた。

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