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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第四章

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孤独な少女は優しく手を伸ばす

「僕は殺そうとしてないでしょ?」

「そんなの分かんないもん」

困ったな。

どうやら人間不信ということみたいだけど。

何となく目に留まった丸太に腰掛けると、少女はその場から動かずこちらにナイフを向けている。

何て声をかけたら良いのやら。

「お母さんとかお父さんは?」

「死んじゃった」

「そうか」

孤児ってことかな。

無意識でなのか、少女は少しずつナイフを降ろしていく。

「ずっと1人で生きてくの?」

少女は黙ってうつむき、ナイフに目を向けるとまたゆっくりとこちらに目線を戻してきた。

「でも・・・もうずっと1人だし」

ゆっくりと喋り出した少女の髪の色が少しずつ変わっていくと同時に、ドレスの色も変わり、更に袖やスカートの丈も少しずつ小さくなっていく。

何だ、この子。

「でも友達が欲しいんじゃないの?」

小さくため息をついた少女の髪が肩の辺りまで短くなると共に、髪色が少し紫がかると、ドレスはキャミソールほどの大きさにまで小さくなって薄い紫色に色づいた。

「ほんとにあたしのこと嫌いじゃない?」

そして顔を上げた少女の肌は少し灰色に色づき、頭からは細くて先端が矢印みたいに尖った触角のような角が2本現れた。

「あぁ・・・それより、変身が解けてるよ?」

少女が慌てて自分の体を見渡すと、すぐに諦めたかのようにため息を漏らしながら空を見上げた。

「はぁ、もういいや」

そう言ってナイフをしまった少女はこちらに近づき、隣の丸太に座り込んだ。

どうやら落ち着いたみたいだな。

少しの間沈黙が続くと、少女は頬杖をついてこちらに顔を向けてから、すぐにまた空を見上げた。

「この姿に戻るとね、みんな、逃げ出すか襲いかかってくるの。だからあたしはみんな殺してきたの」

独り言のように喋り出した少女に顔を向けると、純粋に寂しそうな顔をしていた。

「みんなって?」

「え?氷牙みたいに迷い込んできた人間だよ」

ということは、迷い込んできた人間に近づいて、襲われたり化け物を見るような目で見る人間を今までずっと殺してきたってことかな?

「僕は迷い込んできた訳じゃないよ」

「そうなの?」

少女は驚いたような声を上げてこちらに顔を向けると、脚を伸ばして地面に目を向ける。

「あたしはただ、話し相手になって欲しかっただけなのに」

「どうして1人になったの?」

すると少女は地面を見たまま黙り込んだ。

グリムの中にも、人間に近いものがいるんだな。

「・・・お母さんはあたしを産んだときに死んじゃって、お父さんとお兄ちゃん達は人間の戦争に巻き込まれて死んじゃったの」

「そうか」

戦災孤児ってことかな?

「そういえば名前、何て言うの?」

こちらに顔を向けた少女は安心したような表情をしているが、悲しみがこびりついたような眼差しをしていた。

「レンヴィルカ・ローゲンシュタインだよ」

・・・聞き返すのはやめておこうかな。

「そうか」

「レンで良いよ」

そう言ってすぐにレンは地面に目線を戻す。

「あぁ・・・そういえば、レンって自由に姿を変えられるの?」

「んー、姿っていうより、体の色とか髪の量とか、身に着けてる物を少し変えられるだけだよ」

空を見上げたまま、レンは微笑みも浮かべずに応えているが、声色はさっきより半音高くなったような気もする。

「なるほど」

「ねぇ、何で氷牙はあたしのこと怖がらないの?」

そう言ってレンはゆっくりとこちらに顔を向ける。

「まぁ、僕もある意味人間から恐れられるようなものだし」

「どういうこと?」

血の石を包んだ葉っぱを肩から外して地面に置き、座ったまま絶氷牙を纏ってレンに顔を向ける。

眉をすくめて少し体を引いたレンは黙ってこちらを見ると、何かを思い出したかのように眉を上げた。

「・・・あれって氷牙だったんだね」

「あれって?」

「ずっと向こうでネオグリムを殺したでしょ?グリムかと思ってたけど、氷牙だったんだね」

指を差しながら喋っているレンの話を聞きながら鎧を解く。

「まあね」

血の石を包んだ葉っぱを肩に掛け直すと、レンは微笑みこそ浮かべないが、何となく期待感を寄せるような表情になった気がした。

これも何かの縁かな。

こっちの人は平気だとは思うけど、一応聞いてみないとな。

「レン、さっきも言ったけど、僕はこれから帰るけどついて来る気はない?」

レンは少し不安げにこちらに顔を向けると、ゆっくりと地面に目を向ける。

「きっと友達がたくさん出来るよ」

「・・・この世界の人間なんて、みんな同じだよ」

うつむいたままのレンは小さく首を横に振りながらそう応える。

「実は僕、この世界の人間じゃないんだ」

「え?」

「僕の世界には、僕みたいに人間から恐れられるような力を持った人間がたくさんいるんだ。その人達なら、きっとレンのこと怖がらないよ」

するとレンは一層寂しそうな表情を見せてから、地面に目線を戻した。

「無理にとは言わないけどさ」

「・・・たい」

空を見上げるとレンが何かを喋ったみたいなので、レンに目を向けるとすぐにレンもこちらに顔を向ける。

「ん?」

「行きたい」

「そうか、まぁ戻りたくなったら、いつでも言って良いからね」

そう言って立ち上がるとレンもすぐに立ち上がる。

「うん」

頷いたレンの口角が、一瞬ほんの少しだけ上がったような気がした。

よし・・・帰ろ。

歩き出してしばらくすると、レンが急に立ち止まって周りを見渡し始めた。

「どうかした?」

「何か聞こえた」

レンがまた耳を澄ませるように周りを見渡し出したので、何となく周りに耳を澄ませてみた。

「・・・っ・・・っ」

小さくて分かりづらいが、規則的に何かを啜るような音が聞こえる。

・・・泣き声かな。

するとレンはおもむろに歩き出し、茂みを覗くようにうずくまったので、レンの隣に行き茂みを覗いてみると、そこには4枚の透明の羽を生やした小さな人が座り込んでいた。

レベッカみたいだ。

「妖精さん、どうしたの?」

レンが優しく話しかけると、妖精はレンとこちらの顔を交互に見て、うつむきながら涙を拭くと再びレンに顔を向けた。

やはり妖精か。

「お守りが・・・」

小さい手で指が差された方を見ると、わりと上の方にある木の枝に小さな何かが引っ掛かっているのがかろうじて見えた。

「空飛べないの?」

「羽が・・・傷ついちゃって」

こちらに顔を向けた妖精を見ると、確かに羽が1枚傷ついているのが見える。

「氷牙、取ってよ」

「あぁ」

氷の仮面を被り枝のところまで飛んでいくと、ペンダントみたいなものが枝に挟まっていて、首にかける紐の部分が切れているのが分かる。

慎重にペンダントを取り、地上に降り立って仮面を外しながら妖精に渡すと、受け取った妖精は満面の笑みを浮かべた。

「ありがとう」

「あぁ」

すると妖精は目を閉じ、大事そうにペンダントを胸に当てる。

「これ・・・レベッカから貰った大事な物だから、ほんとに良かった」

・・・レベッカ?

同じ名前で同じ妖精っていう偶然は無いことはないかも知れないけど。

「良かったね妖精さん」

「うん」

「レベッカと知り合いなの?」

満面の笑みを浮かべてレンに応えていた妖精は、すぐに驚いたような顔をこちらに向ける。

「幼なじみだけど、レベッカのこと知ってるの?」

すると妖精は立ち上がり、今にも飛び上がりそうな勢いで身を乗り出す。

「僕もレベッカって言う名前の妖精と知り合いだけど、同じ人かどうか分からないよ」

「んーそうだよね、その、あの、いきなり村から違う所に来たとか、言ってなかった?」

「実は、知り合いの人間が偶然レベッカをこっちの世界に呼び出しちゃって、帰そうと思ったけど、レベッカは村の風習があるからって帰らずに今もこっちの世界で暮らしてるんだ」

妖精は強くペンダントを胸に当てて座り込むと、体を震わしながら静かに泣き出した。

「良かった・・・っ・・・レベッカ・・・うぅ」

相当レベッカを心配してたみたいだな。

「もしレベッカに何か伝えたいことがあれば、僕から伝えようか?」

涙を拭って葉っぱで鼻をかむと、妖精はゆっくりと立ち上がる。

「・・・ほんとに?」

「あぁ」

すると妖精は満面の笑みを浮かべると握りしめているペンダントに目を向ける。

「じゃ、じゃあ、渡したい物があるから・・・私の村まで来てくれない?」

「あぁ」

妖精は飛び上がろうと羽ばたいたが、すぐに体勢を崩すとそのまま地面に尻もちをついた。

「あーあ、どうしよ」

「妖精さん、あたしの手に乗りなよ」

するとそう言いながらレンは妖精に向かって手を差し出した。

意外と優しいんだな。

相手が人間じゃないからかな?

「わぁ、ありがとう」

満面の笑みで妖精がレンの手に乗りレンが立ち上がると、妖精の指差す方へと歩き出した。

そういえば妖精は全くレンを怖がらなかったな。

「妖精さんの村って近いの?」

「うん、この山の麓にあるよ」

この山の麓?

もし蛹に襲われたら大変だな。

妖精の言う通りに進んで来たが、麓と言っても険しい岩場で、絶壁が目立つ場所に辿り着いた。

村らしきものは見当たらないけど。

「ここで降ろして」

レンが絶壁の前に妖精を降ろすと、妖精は絶壁に向かって歩き出した。

もしかしたら、入口が妖精サイズなのかも。

すると伸ばされた妖精の手は絶壁の岩には着かず、まるで岩など無いかのように中に入っていく。

なるほど、妖精というだけあって生態も特殊なんだな。

岩から半身を出した妖精が手招きしたので、身を屈めながらレンと共に絶壁を抜ける。

するとそこは鮮やかな黄緑色をした空の下に繋がっていて、小さな木がまばらに立つ広大な草原にはレンガ造りと思われる家がたくさん立っていた。

ここが妖精の村か。

「ちょっと待っててね」

「あぁ」

笑顔でそう言った妖精に応えると、妖精は村の奥に走り出して行った。

「レンってグリムなの?」

「どうかな、人間達はあたしのことデーモニシアンって言って怖がってたよ」

「そうか」

デーモ・・・デーモン?・・・悪魔か。

そう言われれば、ちょっと小悪魔っぽいな。

「そういえば、今まで食べ物とかどうしてたの?」

「1人分の山菜ならどこでだって採れるし、たまにグリムも焼いて食べたし」

気軽に応えているところを見るとやっぱり純粋に1人が寂しかっただけだったのかな。

「そうか」

「そっちの食べ物ってどういうのがあるの?」

「たくさんありすぎて言葉じゃ言い表せないから、実際に見た方が良いよ」

「そっか」

しばらくすると妖精が戻って来たのでしゃがみ込んでみると、黄緑色をした宝石のようなものが真ん中に嵌め込まれた、円いペンダントを渡された。

妖精サイズだし、無くさないようにしないとな。

「これレベッカに渡して欲しいの」

「分かった」

硬そうだし、潰れることは無さそうだな。

「そういえば名前聞いてなかったね」

「私、ニミィって言うの」

「分かった、じゃあ渡しておくよ」

満面の笑みで頷いて手を振るニミィに軽く手を振り返し、妖精の村を出た後に山を見上げる。

山の下にあんな空洞があったなんて。

レベッカもユキもこの世界の住人なら、ガスタロもこの世界にいるのかな?

山を守るように生い茂る木々から、ふと彼方まで変わることのない景色を見せる森を見渡す。

このままだとずっとこの山の麓を回っちゃうことになるかな。

「レンってここらへんの地形に詳しいの?」

その瞬間に山の上から木を薙ぎ倒すような音が響き、すぐにその方に目を向けると、同じように山を見上げたレンはゆっくりとベルトに手を回す。

すると木の間から蛹のグリムが暴れ狂うように山を降りて来たので、すぐに血の石を包んだ葉っぱを地面に置き絶氷牙を纏った。

「コクーンだ」

・・・ここではそう呼ばれているのかな。

そう呟いたレンは腰から銃を取り出し、コクーンのグリムに銃口を向ける。

たった1丁の自動式の拳銃で、果たしてあのコクーンのグリムに立ち向かえるのだろうか。

レンが銃を構えた途端、突如機械が組み替えられるような音と共に拳銃は瞬く間にライフルほどの大きさになり、同時に銃身が伸びると共にグリップは三又に分かれながら地面へと伸びていった。

レンに会えたから、ニミィにも会えたってことですよね。

ありがとうございました。

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