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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第四章

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アンノウン・エネミー2

「アカサム、ニアンォク、イオゥグタウト」

意味は分からないけど、少し苦しそうに喋ってるから、私達が有利ってことかな?

よく見ると白い鎖国兵が押さえている肩からは血のようなものが流れている。

やっぱり普通の人間なんだ。

ふと遠くの赤い鎖国兵が動き出し、こちらに銃口を向けたのが見えた。

「危ねぇっ」

その瞬間は何が起きたのか分からなかったが、地面に倒れる直前に見えた細長く一直線に伸びた光線と、レジイラの叫び声にすぐに状況を理解させられた。

「ジャトウっ」

地面に倒れながらジャトウを見ると、ジャトウも同じように地面に倒れていたので、すぐに起き上がりジャトウに駆け寄る。

「ジャトウ?・・・大丈夫?しっかりしてよっ」

「・・・はっ・・・はっ・・・ミ、ア」

すごい出血・・・。

胸を撃ち抜かれてる。

「喋らなくて良いから」

「ミ・・ア・・」

どうしよう、どうしよう・・・。

「くそおおっ」

レジイラが怒りに顔を歪ませて銃口を赤い鎖国兵に向けるが、すぐさま白い鎖国兵がレジイラの前に立ちはだかる。

しかしレジイラは構わず白い鎖国兵にプラズマを撃ち込み、白い鎖国兵が吹き飛んだと同時に重武装兵が2人、こちらの下に駆け寄ってくる。

「少佐っすぐに運びましょう」

重武装兵に顔を向けてからジャトウに目線を戻したときには、ジャトウはまるで眠っているかのように澄んだ顔をしていて、腕を掴んでいた手にもすでに力は失われていた。

「・・・もう、だめだよぉっ」

その直後、重武装兵が強く地面を叩いた音が妙に耳に入った。

「ミアンナ前向けっ」

銃撃音の中で聞こえたレジイラの声に素早く顔を向けると、白い鎖国兵と赤い鎖国兵はレジイラと重武装兵の銃撃を受けながらもゆっくりと立ち上がり、こちらを見据えた。

心の底から怒りが込み上げでくる。

どうしてこんなこと・・・。

許せない。

何とか立ち上がり短剣を拾い上げ、強く柄を握りしめながら赤い鎖国兵を睨みつける。

「援護してよ?」

「はい」

重武装兵を後ろにつかせて、レジイラと共に鎖国兵と向かい合う。

・・・許さないっ。



「焼き尽くしてやるぁぁあっ」

堕混の火炎放射がより一層激しくなり、蒼月光は完全に押し返されて5つの紋章で炎を防いでいる中、龍牙を出して反撃の機会を伺う。

そう言えば、あの堕混は普通に喋ってるし、表情だって普通だ。

死神なら、力を出し惜しみする必要は無いか。

その直後、爆発音が聞こえると同時に火炎放射が止むと、すぐに堕混がロケット弾に撃たれたことが理解出来た。

「目障りなんだよっ」

まずいっ。

龍ノ咆哮を撃ち出そうとしたときには、すでに6発のミサイルが地上に向けて撃ち出されていて、弾丸のように撃ち出された氷の槍が堕混の翼を貫通したときには、すでに連続的な爆発と衝撃が街の一角を呑み込んでいた。

遅かったか。

「くそっ」

ん?

こちらに体を向けた堕混だが、傾いている堕混はすぐにゆっくりと地面に向かって下がり始めた。

浮力が、保てないのか?

「ちっ仕方ねぇな」

するとこちらに先端を向けていた6本の鉄管の内の、上段と中段の4本が堕混の背後へと向きを変える。

あの管、動かせたのか。

そしてその4本の鉄管から、ジェットのように炎が噴き出されると、まるでバランスが取られたかのように堕混は再び宙に浮き留まった。

「さっさと終わらせてやるよ」

「それはこっちのセリフだよ」

今頃ミアンナ達はどうなってるかな?

2本の鉄管の先に光と闇が渦巻いた直後、放たれた白黒に色づいた火炎放射は、先程のただの炎のものよりも一層激しさを増していた。

何だって?今まで本気じゃなかったのか。

5つの紋章を盾にしたものの、濁流のように視界を覆う炎の勢いに少しずつ押されていく。

これじゃキリが無いし、ちょっと試してみようか。

紋章を消すと同時に上空に飛び上がり、堕混と少し距離を取ると、火炎放射を放つのを止めた堕混はすぐにこちらに体を向ける。

「龍ノ咆哮」

龍牙の根元に紋章を出し、堕混に向けて氷の槍を撃ち出すと同時に、堕混はこちらに向けて2発のミサイルを撃ち出した。

逃げ切れないっ。

ブースターを全開にして噴き出し、真正面からミサイルを受ける。

これが本気か、さっきの6発よりも衝撃が凄まじいなんて。

すぐさま爆風と煙を抜けるが、手に集めた光と闇で氷の槍を受け止めていた堕混はこちらの姿を確認すると投げ飛ばすように氷の槍を受け流していった。

やっぱり、1発だけじゃだめなのか。

ならこれなら・・・。

龍牙の根元に紋章を2つ重ねて出しながら、矛先を堕混に向ける。

そして氷の槍を撃ち出すと同時に、堕混はミサイルを1発撃ち出し氷の槍を迎撃するが、連続的に撃ち出されたもう1本の氷の槍が堕混を襲った。

「何っ」

煙でよく見えないが、氷の槍は堕混の肩を強くかすったみたいだ。

「つぅ、くそぉ」

煙が晴れると堕混は肩を押さえながらこちらを睨みつけていた。

これなら、いける。

「邪魔しやがって、てめぇは何なんだよ」

「天魔女王直属の兵士って言えば、分かるかな?」

「天魔女王の・・・そうか、なるほど」

すると堕混は今まで見せていた、どこか焦りと苛立ちが伺えた表情から、まるで何故か気を緩ませたかのように純粋な闘志を宿した表情に変えて見せた。

「どうやら、退屈はしなさそうだな」



白い鎖国兵の後ろに回り込むとすぐさま鎖国兵は剣を振り回して来たが、その時にはすでに鎖国兵の頭上に跳び上がっていて、鎖国兵がこちらに気づく前に鎖国兵の頭にかかとを叩きつける。

よろめいた白い鎖国兵の背後に再び回り込み、剣が着いている方の腕を短剣で切りつけると、すぐさま立て続けに背中や脚にも切り傷をつけていく。

「アグァッ」

情けなんてかけない。

こちらに背中を向けてひざまづいた白い鎖国兵の背後に立ち、首元目掛けて短剣を振り上げた瞬間、ふと赤い鎖国兵のこちらに向けられた銃口が目に入った。

とっさに横に飛び込んだ瞬間に重武装兵の居る方から何かの発射音が聞こえ、それと同時に赤い鎖国兵の銃から細長い光線が放たれる。

細長い光線が腕を抜けていったのが見えた直後、重武装兵の撃ち出したロケット弾が赤い鎖国兵に向かって行った。

無意識に短剣を落としていたのでその方に目を向けた途端、凄まじい痛みと熱さが腕を襲った。

「いぃいっ」

その瞬間、爆発と共に赤い鎖国兵が吹き飛んで行くのが見えたが、すぐに腕に目線を戻すと小さくとも円く空けられた腕の穴から溢れる血は、瞬く間に肌や服を赤く染めていった。

・・・腕が・・・撃ち抜かれた。

痛みに耐えながら左手で短剣を拾い上げ、白い鎖国兵に目を向ける。

「おいっミアンナ」

血相を変えたレジイラが周りに警戒しながら駆け寄って来たときに、再び重武装兵の持つ武器から銃撃音が鳴り響く。

「大丈夫かよ・・・」

そう呟きながら銃を地面に置いたレジイラが素早く布を取り出して傷口を縛り始めたとき、何となく動かなくなったジャトウに目を向けようとする。

「見るな、戦えなくなるぞ?」

そう言ってレジイラは腕を強く締め付ける。

「ああぁぁっ」

「しっかりしろっ」

爆発音に紛れたレジイラの声が、何故か耳の奥にまで響いてきた。

痛くて、痛くて、背筋が震えて吐き気がする。

ふと白い鎖国兵を見ると、白い鎖国兵は足を引きずりながら、辛そうに赤い鎖国兵の下に歩いていっていた。

もう、あいつは、戦えないな。

「行けるか?」

レジイラが話しかけてきたので目を向け、痛みに耐えながら黙って頷いた。

赤い鎖国兵を見ると、赤い鎖国兵はゆっくりと立ち上がり、転がっていった銃を拾いに向かっていた。

素早くその方に跳んで行ったときに赤い鎖国兵がこちらに気づき、とっさに飛び込みながら銃を拾うと、素早く立ち上がりながらすぐにこちらに銃を向ける。

しかしすでに赤い鎖国兵の上空に跳び上がっていて、頭上から短剣を振りかざすと、それに気付いた赤い鎖国兵はまたすぐにこちらに銃を向けようとする。

「ォスクッ」

やった。

斜めに切り落とされた銃身を見ながら地面に降り立ったとき、突如横から強い衝撃に襲われて吹き飛ばされる。

痛っ・・・。

腕の痛みを感じながらとっさに受け身を取り、赤い鎖国兵の方に目を向けると、そこには赤い鎖国兵を庇うように立つ白い鎖国兵が居た。

まだあんな力が・・・。

しかし力が抜けたように膝を地面に着けた白い鎖国兵を見た赤い鎖国兵が、白い鎖国兵の腕に着けられた剣を外すと、銃を捨てた代わりにその剣を自身の腕に着け変えた。

赤い鎖国兵はまだ動けるみたい。

ちょっとまずいかも。

レジイラの下に後ずさったとき、別の特攻隊の1人がこちらの下に駆け寄ってくる。

「少佐、やばいっす、防戦一方っすよ」

かなり疲労が溜まっているみたい。

短剣と拳銃タイプの出力機を持ったクロウドの先に目を向けると、一般的な大きさの長剣を持った青い鎖国兵が、クロウドを追うようにゆっくりとこちらに向かってきていた。

「他のみんなは?」

「・・・やられました」

いくら新しい剣を開発したって、結局は剣術が勝った方が勝つのか。

続けて別の方から特攻兵と重武装兵が1人ずつこちらに逃げて来ると、その向こうには両手に剣を持った黒い鎖国兵が見えた。

囲まれたけど、こっちはまだ7人居る。

それにさすがに鎖国兵も疲労が溜まっているはず。

そして、3人の鎖国兵は一斉に歩き出した。

その瞬間、突如上空のどこからか、赤い鎖国兵の足元に1発の何かが撃ち込まれる。

砂埃が舞うその一瞬の中で連続的に何かが撃ち落とされ、再び瞬く間に砂埃が巻き上がっていくと、最後に撃ち落とされたその1発が、赤い鎖国兵の腹をえぐったのが微かに見えた。

「ゥガァァッ」

砂埃の中から叫び声が聞こえた途端、すべての目が上空へと向けられる。

するとその上空には、まるで地面に立つように浮かぶ、尻尾の生えた人影があった。

・・・まさか。

直後にその人影から青白い光が放たれると、集束された日光のように振り注がれるその光は、一直線に青い鎖国兵の足元へとその手を伸ばした。

青い鎖国兵がとっさに顔を隠すように両腕を交差させたが、青白い光が止むと、全身が白く染まった鎖国兵はその体勢のまま動かなくなった。

鎖国兵が、一瞬にして凍っちゃった・・・。

「今だ撃てっ」

レジイラがそう叫び、直後に重武装兵の武器からロケット弾が撃ち出されると、激しく立ち上った炎が消え広がったその場所には、ただ砕け散った氷の塊が転がっていただけだった。

「アァアアッ」

怒り狂ったような叫び声を上げ、切り掛かってきた黒い鎖国兵からとっさに離れたものの、すでにロケット弾を撃ち出した重武装兵の背中からは、2本の光沢の無い剣が突き抜かれていた。

「くそっ」

レジイラが放ったプラズマが黒い鎖国兵を襲い、重武装兵から剣が抜かれたものの、倒れ込んだ重武装兵の目は今にもその光を失おうとしていた。

「ぐ・・・ふっ・・・」

これ以上、犠牲は出したくないっ。

私がやらなきゃ、例え、相打ちになってでも。

「レジイラ、援護して」

「分かってる」

限りなく薄く、広く伸ばした意識を全身に向け、作り出した電気を体に纏う。

黒い鎖国兵が深呼吸し、真っ直ぐこちらを見据えたその直後、鎖国兵との間に砂埃を吹き上がらせるほどの勢いでヒョウガが地面に降り立った。



「氷牙」

どうやら、ミアンナは右腕を怪我したらしいな。

「あぁ、一応堕混は倒したよ」

堕天使が居なかったのが少し気掛かりだな。

「そっか」

小さく頷いたミアンナはまるで無理に作ったような笑みを浮かべて見せる。

何かあったのかな?

「ォノミニァンド?」

何だ?

声がした方に目を向けると、そこには鎖国兵と思われる、黒いラインが印象的な鎧を全身に装着した人がこちらを見ていた。

外国人かな。

「アルティォクォン、アマカンァク?」

「ミアンナは下がってて。後は僕がやるよ」

「うん」

先手を切った鎖国兵が剣を振り下ろして来たので、龍牙を出して受け止めようしたものの、その光沢の無い刃に龍牙の先端は綺麗に切り落とされた。

何だ?この切れ味。

剣を払い退け、もう1本の剣を紋章で受け止めた直後に鎖国兵を蹴り飛ばす。

鎖国兵の言葉は日本語をローマ字にして逆から読んだものです。単語と接続詞は別で考えて訳せば、たぶん分かります。ベタですけど。笑

ありがとうございました。

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