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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第四章

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アンノウン・エネミー

眉をすくめたまま言葉に詰まったジャトウは、諦めたかのようにゆっくりとスチール製のお椀のようなものを口に運んだ。

「あんた、鎖国してる国のことは聞いたのか?」

落ち着いた声色でレジイラが喋り出したので、ゆっくりとレジイラに目を向ける。

「あぁ、堕混を倒した後は、鎖国兵の迎撃にも援護するって話でしょ?」

「おいおい、新兵器を信用してないのかぁ?」

するとすぐにジャトウがレジイラに顔を向け、うなだれるような口調で話しかける。

「個人的には、新兵器より、援護の確実性の方が気になるけどな」

「私訓練室で氷牙と戦ったけど、すっごい強かったよ?」

冷静に応えたレジイラに、ミアンナはすぐさま自信を見せるような表情で2人の話に入っていく。

「でもなぁ、単体数で言えば、俺達と鎖国兵の数は3対1には変わりないだろ?」

するとミアンナは言葉に詰まると耳を下げ、頬を少し膨らませる。

戦いは早めに終わらせた方が良いのかな。

しばらくして食事も終わり、少しの間3人の話に加わっていたが、遅くなる前に部屋に戻ることにした。

さっきの食堂の空気からして、鎖国兵とやらの襲撃が近いのかな?

まあでもさすがに夜中には来ないだろうな。



何だろ、誰かが扉を叩いてる。

扉を開けるとそこにはジャトウが立っていた。

「どうしたの?」

「ちょっと、良いか?」

するとジャトウはうつむきながら、どこか緊張したような表情で言いづらそうに口を開いた。

何だか様子がさっきと違うけど。

「・・・うん」

部屋に入れるとジャトウは静かに机側に座ったので、ベッドに背中をつけて向かい合うように座った。

喋り出すのを待っていると、ジャトウがゆっくりと顔を上げ、こちらを見つめてきた。

「あのさ・・・」

喋り出すとジャトウは再びうつむき始める。

何だか息が詰まっちゃう雰囲気かも。

「無事に鎖国兵を撃退したら・・・その・・・俺と付き合ってくれねぇか?」

「・・・え」

付き合うって・・・。

照れ臭そうに頭を掻きながらジャトウが顔を上げると、目を泳がせながら微笑みかけてきた。

「・・・良いの?私、獣人だよ?」

手を下ろしたジャトウは少し真剣な表情に変わるが、その眼差しは優しさを宿していた。

「関係ねぇよ・・・それでもお前が好きなんだ」

ふぅ、目を合わせてると耳が少しずつ熱くなっていく。

あ、ジャトウの耳も赤くなってるみたい。

「・・・あ」

「え?何だよ」

人間と付き合うなんてお父さんに言ったら、きっと、いや絶対許してくれる訳ないな。

「んー」

「だ、ダメか?」

不安げに眉をすくめながら、ジャトウは身を乗り出す勢いでそう問い掛ける。

「お父さんは、人間と付き合うなんて許してくれないよ」

もしかしたら軍人も辞めさせられるかも知れない。

ジャトウは少しうつむいて唸ったが、小さくため息をつくとまた真剣な顔でこちらに目を向ける。

「・・・お前の気持ちはどうなんだよ」

私の気持ち・・・。

「・・・すごく・・・嬉しいよ」

「なら、それで良いんじゃないか?」

きっと最後には許してくれるよね。

隠せないほどの照れを感じながら黙って頷くと、安心したようにジャトウも照れ臭そうに微笑み出した。

「じゃあ」

部屋を出るときにジャトウはまた照れ臭そうに小さく手を挙げる。

「うん」

あれ?

今、ジャトウの後ろに誰か居たような。

こんな夜中なのに。

ベッドに座り、ふと窓から外を眺める。

軍に入ってもう3年になるけど、いつから私のこと好きになったのかな?



太陽が昇る前に目が覚めたので食堂で待っているとミアンナが来たので立ち上がるが、ミアンナのその表情はどこか緊張を感じているようなものだった。

しばらく食事していると他の軍人達も食堂に入って来て、食堂はすぐに賑やかな空気に変わっていく。

「あんた、いつもそんなに早く起きてるのか?」

「まあね、何となく目が覚めるからね」

レジイラは小さく頷きながら、一口大のピンク色をしたから揚げのようなものを口に運ぶ。

今日の日替わり定食は魚介類がメインみたいだな。

随分と肉厚な白身魚を食べていると、ふとあちこちで緊迫感のある話が聞こえた。

どうやら皆、今日中に鎖国兵が来ると思っているらしい。

すると無線機からノイズ音が流れ、一瞬にして食堂の空気が止まった。

「鎖国兵迎撃隊に告ぐ、対鎖国兵の新兵器が届いたので、特攻隊は武器庫まで取りに行くように。並びに重武装隊も食事が終わり次第配置につくように」

重武装?

バズーカとかかな?

まさか戦車とか出るのかな?

「どうやら間に合ったようだな」

食堂が静かになると、真剣な表情で喋り出したジャトウの声色には、若干の安心感が混ざっていた。

そして食事が終わり食器をカウンターに返したミアンナ達は足早に食堂を出て行く。

すぐにまた静かな雰囲気になったな。

そういえば新兵器ってどんなのだろう。

鎖国兵は確か南から来るんだったな。

何となく外に出て、門の前の噴水の周りにあるベンチに座る。

侵略するのに、律儀に関所なんて通って来るかな?

氷の仮面を被り、この場からふと目に留まった1番高い建物に飛んで行った。

仮面を外して座り込み、一応怪しそうな人物が出て来ないか街を眺める。

少しの間眺めていたときに門が開く音が聞こえたので目を向けると、門から出て来たのはミアンナ達だった。

見たところ、ミアンナはナイフぐらいの大きさの反り曲がった剣を腰に携えているみたいだ。

新兵器にしては少し小さい気もするな。

すると突如無線機にノイズ音が流れたので耳を澄ませた。

「特攻隊に告ぐ、たった今南の関所から森で不審な騒音が聞こえたとの連絡が入った。鎖国兵かも知れない、至急配置につけ」

無線機からの声を聞いた途端、ミアンナ達は関所の方へ走り出し、少しすると重そうな装備と武器を抱えた人達が関所を包囲するように展開して行った。

住民に避難勧告とかしないのかな?

そういえば鎖国兵の迎撃にも援護を頼まれてたんだった。

ミアンナ達について行った方が良いかな?

関所の方角を見ながら立ち上がったとき、遠くで爆発音がしたのですぐにその方に目を向ける。



今の爆発音は何?

「もしかして、ダコンも、出たのか?」

後ろで誰かが口を開いたので思わず足を止める。

ダコンも出たなんて、ちゃんとヒョウガはそっちに行ったかな?

再び爆発音が聞こえたので後ろを振り返ったとき、ジャトウが優しく肩に手を乗せてきた。

「前、向けよ」

その優しい微笑みに心は自然と落ち着きを取り戻したので、黙って頷く。

「じゃあみんな、配置について」

「はっ」

展開し始めて数分も経たない内に森から轟音が聞こえると、倒れてくる木と共に人影が見えてきた。



絶氷牙纏ったから、無線機が使えないけど、まあいっか。

あの広い校庭みたいな場所は、演習場かな。

あっちに敵を誘い込めないかな?

背中から前方に伸びた鉄の管が6本、あれがあいつの新しい力か。

辺りを見渡すとどうやら堕混1人だけみたいだ。

しかも今は滞空しながら地上からの銃撃に気を取られているみたいだな。

絶氷弾砲を堕混の背中に撃つが、衝撃を受けて前に飛んだ堕混はすぐに反動を打ち消したように浮き留まり、素早くこちらに体を向けてきた。

何、まるでダメージが無いなんて。

絶氷弾砲を撃ちながら演習場に飛んで行くが、堕混はその場から動こうとはせずに、銃口のように伸びた鉄管から光と闇の球を撃ち出し、すべての氷の弾を打ち消していく。



本当に来た。

3人は近接型、1人は遠距離型の武器か。

「あいつらか」

そう言いながらジャトウは素早く剣型の出力機の鞘から剣を抜き、腰巻きからコアカートリッジを取り出す。

そして柄の底にコアカートリッジを差し込むと、刀身の片側が小さく開き、同時に緑色に輝く光が刀身の片側を縁取った。

「なるべく、離れちゃだめだよ」

少し反り曲がった短剣を抜き、柄の底にコアカートリッジを差し込むと同時に体に電気を纏う。

「あぁ分かってる、レジイラも良いな?」

「あぁ」

2人の鎖国兵は別の隊に目を向けたみたいだけど、後ろに立つあの銃器を持つ鎖国兵は動かないのかな。

レジイラも構えたのでゆっくりと前に進むと、こちらを見据えていた鎖国兵の1人も、腕に着けられた自分の身長ほどある幅広く伸ばされたひらべったい剣を構える。

3対1なら、いくら鎖国兵でも勝機はあるはず。

直後にその鎖国兵は両足首から空気を強く噴き出し、滑るようにしてこちらに突っ込んで来た。

まるでヒョウガみたいに動いてる。

鎖国兵が剣を振り下ろすと同時にジャトウが前に出て、鎖国兵の剣を受け止める。

「ィナン?」

小さく首を傾げたものの、体中から小さく空気が噴き出すと同時に鎖国兵が強く押しつけ始めると、ジャトウは徐々に押されていく。

「・・・くっ」

とっさに落雷の速さで鎖国兵の顔に膝を突きつけると、衝撃を受けて後ろに吹き飛ぶがまるで舞うように宙返りした鎖国兵は見事に着地する。

その瞬間にレジイラが鎖国兵に向けて銃から凝縮されたプラズマを放つと、重い電撃音と共に太く短い光線が鎖国兵を襲った。

体中に電気を走らせながら鎖国兵が激しく吹き飛ばされたが、地面を転がると鎖国兵はすぐに立ち上がり始める。

ゆっくり立ち上がるところを見ると、全く効いてない訳じゃないみたい。

すると後ろに立つ、赤い線の塗装が印象的な鎖国兵が、ひらべったい剣を持った白い線が印象的な鎖国兵の肩に手を置くと、自身が白い鎖国兵よりも前に出てライフル銃のようなものの銃口をこちらに向けた。



あの6本の鉄管から同時にミサイルを出されると、うっとうしいな。

堕混は見下すようにニヤつきながらこちらを見据えている。

「お前、たいした攻撃力じゃねぇのに、しぶといんだな」

「どうも」

あの鉄管、凍らせちゃおうかな。

「そろそろ、終わらせてやるよ」

「それはどうかな」

前に飛び出すと堕混が鉄管から光と闇の球を撃ち出して来たので、紋章で受け流しながら絶氷弾で応戦して背後に回り込む。

すぐにブースターを全開にすると、慌てて堕混が旋回したときに前に飛び出し、堕混の目の前で極点氷牙を纏った。

「くそぉ」

思わず顔を背けながら吹き飛ばされたものの、ゆっくりと手を下ろした堕混はこちらに睨みつけながらも小さくニヤつき出す。

「ぐうぅ・・・」

すると堕混の体から湯気が立ち込め、体に張りついた氷が溶けていくと、直後に6本の鉄管から凄まじい勢いで炎が吹き出て来た。

「ぅらぁっ」



いくら鎖国兵でも中身は人間のはず。

赤い鎖国兵がこちらに銃口を向けた瞬間、落雷の速さで後ろや上と移動して、狙いを定められないようにしてから最後に赤い鎖国兵のこめかみに膝を叩きつける。

「ガッ」

赤い鎖国兵が地面に転がったときにジャトウの方を見ると、白い鎖国兵の剣をジャトウが受け止めているときに、レジイラと後方の重武装兵が鎖国兵の胴体に銃を撃ち込んでいる。

このまま行けば、倒せるかも知れない。



あの6本の鉄管から放たれる火炎放射が、あの森の焼け跡を作ったんだな。

それにあの火炎放射に当てられちゃ、蒼月の威力も大幅に下げられるか。

「はっそんなもんかっ」

ブースターを全開にして回り込み、蒼月を撃っていくと、炎を吹き出したまま堕混が旋回を始めた。

氷に炎じゃ、相性が悪いな。

しかしこのまま回ってる訳には行かないしな。

紋章を5つ、手の前に出してすぐに逆方向に飛び出して炎をくぐり抜ける。

まだ炎の向こうに居ると思っているのか、堕混は旋回を続けていて、その直後に堕混はこちらに背中を向けた。

「蒼月光」

堕混がこちらに振り向く前に青白い光を堕混に浴びせる。

「何っ」

青白い光の衝撃に耐えながら堕混がすぐにこちらに体を向けると、火炎放射でかろうじて青白い光を受け止め始めた。

「くそぉぉお」

すると堕混の激昂に合わせて火炎放射の勢いも増していく。

蒼月光もまともに効かないか。

しぶといな。



緑色の光で縁取られた短剣で白い鎖国兵の背中を切りつけると白い鎖国兵の力が一瞬抜け、その隙にジャトウが白い鎖国兵の剣を弾いて緑の光の剣で白い鎖国兵の肩を切りつけた。

「グァッ」

すると白い鎖国兵は思わず身を引いてジャトウと距離を取る。

ミアンナの国はそこまで大きくはないので、今回は戦争というよりかは人知れぬ戦いって感じですかね。

ありがとうございました。

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