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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第四章

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パトロール

しばらくして食事を終えると、ちょうど演習から帰ってきたジャトウ達が食堂に入って来た。

一気に賑やかな空気に変わったな。

料理を運び出したジャトウとレジイラは特に空席を見渡すことなく、自然とミアンナに並ぶように椅子に座っていった。

「よお、緊急召集は終わったのか?」

ジャトウは料理に手をつけながら何気なくミアンナに話しかける。

「うん」

「やっぱ堕混の話?」

「ううん、鎖国してる国の兵がね、エネカトに現れたらしいの」

するとジャトウとレジイラは驚いたような顔で揃ってミアンナに目を向ける。

「すぐそこか」

「ていうか何で今になって動いたんだ?」

「・・・多分午後からの演習で聞かされるかもね」

ジャトウの問いが宙に浮くが、レジイラとミアンナが特に気にすることもなく料理に戻すと、ジャトウはゆっくりとレジイラに顔を向けた。

「いやだから何で今更・・・」

「知らないよ、本人達に聞けば良いだろ」

確かオンダ中佐が、南軍営所は鎖国兵と戦うって言ってたし、やっぱり2人も戦うのかな。

「本人達って、あいつら、この大陸の言葉話せんのかな」

「なら、まずは言葉を話せるかを聞けば良いだろ」

「ああそうか。いやそうかじゃねぇよ。もし言葉が分かんねぇなら、言葉が話せるかどうかの問い掛けも出来ねぇじゃねぇか」

ピンク色のカレーライスを頬張りながらジャトウがそう言うが、ジャトウに顔を向けたレジイラは落ち着いたその表情を全く崩そうとしない。

「なら、ジェスチャーでもしたらどうだ?」

「ああそうか。いや、ていうかあいつら、この大陸のジェスチャーは通じるのか?」

しばらくして空の食器を乗せたトレーを戻して来ると、話し込んでいたジャトウ達は再び演習に向かうために席を立った。

するとミアンナも2人の後に続いて立ち上がり始める。

「ミアンナも演習?」

「うん、今日は私も行く日なの」

こちらに振り向いたミアンナはすぐに微笑みながらそう応える。

「そうか」

ミアンナ達が食堂から出て行くと、タガリはすごく落ち着いた表情で飲み物を飲んでいる。

「タガリは行かないの?」

「まぁ、俺は事務員だからな」

「なるほど」

ちょっと街でも見回ろうかな。

おもむろに席を立ったときにタガリがこちらに顔を向ける。

「パトロールか?」

「まあね」

外に出て空を見上げると、太陽は雲に遮られ、街は穏やかな日陰に覆われていた。

そういえばエネカトってどんな所かな?

とりあえず広場の案内板に行き、方角を確認してから南に向かう。

しばらく進むと森と民家を塀が仕切る地域に入り、関所みたいな場所が見えてくると、同時にそれぞれの国境のギリギリの位置に立てられている両国の国旗が見えた。

見る限り関所の鉄の扉は頑丈に閉められているみたいなので、とりあえず窓口に立ってみる。

受付の男性がこちらを見ると、まず軍服を見てから顔に目を向けたが、そのまま沈黙が流れた。

「もしかして、初めてですか?」

「あ、はい」

「じゃあ所属と名前、エネカトに向かう目的を言って下さい」

そう言いながら受付の男性は机に目を向け、事務作業を始めた。

「南軍営所の氷牙です。実は、パトロールしてて何となくここまで来ました」

すると手の動きが止まった受付の男性はこちらに顔を向けると、気を緩ませたように微かな笑みを浮かべた。

「ああそうでしたか、それはご苦労様です」

少しゆっくりとした口調で喋り出しながら、受付の男性が軽く会釈をすると、どこか退屈そうな顔色を見せた。

「どうも」

せっかくだし、ちょっと聞いてみようかな。

「あの、1つ聞いて良いですか?」

「はい」

「鎖国してる国の兵が、南から攻めて来る可能性があるらしいんですけど、何か不審な人物とか来ましたか?」

喋っていると受付の男性は徐々に顔色を変え、背筋を伸ばしていく。

「いえ、私が見た限りでは、今段階で不審人物は確認しておりません」

「そうですか、どうも」

こっちには来ないのか、それともまだこっちには来てないのか。

「はい」

受付の男性が敬礼したので、軽く会釈してからその場を後にした。

関所を通らなくても国境って越えられるのかな?

あの深そうな森まではさすがに関所は構えてないだろうな。

しばらく見回ってみると、どうやらこの国は両隣を森に挟まれていることが分かった。

広場に行き時計台の丘から街を見下ろすと、遠くに小さく見える、民家の何個分もあるような巨大な施設に目が留まった。

そういえばまだ行ってないし、次はあっちの方に行ってみようかな。



「それ以上は危ないって、もう戻らないと」

「んー・・・そう?」

無邪気に微笑んでいるが、生身なんだし、怪物が出たら危ないよな。

「でも、ハルクが付き添ってくれてるじゃん」

「まぁ、そうだけど」

シープがこちらに微笑みかけていたとき、遠くに草や葉が揺れる音がすると、不意にシープもそちらに目を向ける。

するとまた草が踏まれるような音と共にうめき声のような声も聞こえてくると、木の陰から2本足で歩いている、とても鋭そうな爪と牙を携えた何かが茂みから出て来た。

どうやらまだこちらには気づいてないみたいだが、シープに声をかけたら怪物にも聞こえるだろうし。

呆気にとられているのか、後ずさりしていたシープは気づかずにこちらに軽くぶつかる。

「あっ」

直後にその生物が素早くこちらに顔を向け、真っ直ぐ睨みつけてくると、恐怖感からかシープは固まったままその生物に目を向けていた。

得体は知れないが明らかに威嚇している顔なので、念のため手に光と闇を集めていると、間もなくしてその生物は獲物を見るような目つきでこちらの方に走り出した。

とっさに光と闇の球をその生物に当てると、水のように弾けた光と闇の衝撃により生物は吹き飛ばされ、激しく木々にぶつかりながら地面を転がって行った。

「何か、ちょっと可哀相だったかもねー」

小屋に帰る道すがら、シープは手を後ろに組み少しうつむきながら喋り出す。

「仕方ないだろ」

「うん、それよりさっき生えてた白いきのこ、美味しそうだったよね」

急に微笑み出すとシープはいきなりそんな話をし始める。

さっき?

「ああ、あれか・・・食えるのかな?」

「んー・・・」

唸りながらシープが小屋に入ると、シープとこちらに目を向けたラビットは少し安心したような表情を見せる。

「あぁ、帰って来たみたいだね」

「ガルガン達は?」

「うん、2階で作戦会議じゃない?」

何気なく応えながらラビットはコップを口に運ぶ。

作戦か、そんなもの考える奴じゃないような気がしたが。

「ラビットぉ、小腹空いたよ」

そう言いながらシープはテーブルを挟んでラビットの向かいに座る。

「お菓子あるよ」

2人ってどんな関係なんだろうか。

兄と妹って訳でもなさそうだし。

「ハルクも食べる?」

「あぁ」

そう応えて隣に座ると、シープは掌ほどの大きさの、少し太めの管が繋がって円くなったようなものを皿に乗せる。

「はいどうぞぉ」

そう言ってシープはナイフをフォークと共にその皿の隣に置いた。

「あぁ、ありがとう」

しかも最初に居た人数より随分と減ったな。

肌色に似た色をした、真ん中に穴の開いた円いものにフォークを刺すと、ゆっくりと刺さっていき、ナイフも簡単に入っていく。

それに火の玉を降らせた奴は旧魔城に行ったときから見てないしな。

フォークが刺さった所から一口大になるように切って口に運ぶと、ほんのりと甘く、柔らかい食感だが水分が感じられない。

するとシープが飲み物を置いてくれたので、水を一口含んだ。

ラビット達の世界にはこういうお菓子があるのか。

単調な味だが、それゆえに飽きが来ないのかも知れないな。

「これは何て言うものなんだ?」

「ドーナツ、だよ」

こちらに振り向くとシープは笑顔でそう応える。

「そうか、シープの世界にはこういうお菓子があるんだな」

「ん、私達のとは、ちょっと違うかな」

「そうなのか」

ふと扉が開いた音がするとラビットがその方に目を向けたので、つられて後ろを振り返ると、玄関前にはラットが立っていた。

ラットは帰って来るなり台所に行き水を1杯飲むと、落ち着いた表情でラビットの近くの椅子に座る。

「何か情報入った?」

「あぁ何か、鎖国してる国の兵がこの国に攻めて来るかも知れないんだって」

静かに口を開いたラビットに対し、ラットはまるで話の場に居たかのような話し方で喋り出した。

「しかももしここに来たときには、新開発した武器を使って戦うんだって」

「へぇー新兵器かぁ、ちょっと気になるな。どんなものか分かる?」

ラビット達は、武器や兵士を集めて一体何をする気なんだろうか。

「実物は無かったけど、剣と銃の2タイプって言ってたから、大きさは普通に手に持てるくらいだと思うよ」

「そっかぁ、分かった、ありがとう」

「あぁ」

ラットが席を立ちソファーに向かうと、ラビットは落ち着いた表情のまま考え込み始めた。

ドーナツを食べ終わるとシープが食器を洗い場まで持って行ったので、同じように目の前の食器をシープの下に持って行く。



もうすっかり夕方だな。

ここらへんはあまり民家は無いみたいだ。

どうやら中央軍営所は隣接している病院と繋がってるらしい。

だからあんなに大きく見えたのか。

赤十字のマークは異世界共通なんだろうか。

見渡してみると馬車は多く見えるが、やはり自動車どころか、バイクや自転車も見ることがない。

生活面より兵器の開発が優先なのかな。

でもミアンナはこの国は戦争をしてないって言ってたか。

何となくここまで来たけど、強盗とか殺人とか、事件的なことには全く出くわさなかったな。

共産主義なのかな?

それより暗くなる前にそろそろ戻らないと。



「お前、どっち使うんだ?」

「んー、やっぱり短い方かな。私は剣より拳だし」

「そういやそうだな」

レジイラが頷いていると、軽く天を仰いでいたジャトウがおもむろにこちらに顔を向けた。

「大丈夫だって、俺だって前線に立つし、レジイラだって後ろから援護してくれるしな」

「うん」

2人となら上手く連携が取れると思うし、重武装兵も後ろで待機してるし、きっと何とかなるかな。

演習を終えて南軍営所に戻り、食堂に入る。

ヒョウガ、居ないのかな、もうすぐ夜なのに。

「エネカトのカダに出たってことは、ここに来るまでには速く見積もっても2日か3日はかかるか」

何気なく喋り出しながらジャトウが椅子に腰掛けると、レジイラはジャトウの隣に座ったので、レジイラの向かいに座る。

「ってことは、もしかしたら明日にも来ちゃうってことになるんじゃない?」

「そうだよな、まずいな、新兵器、間に合わないんじゃないか?」

ジャトウは一瞬眉を上げると、すぐにうなだれるような口調で不満げにそう応えていく。

もしかしたら、ダコンより速く来るなんてこともあるかも知れない。

もし、堕混と同じ時間帯に来たら、ヒョウガの援護は受けられないな。



やっと着いたな。

食堂に入った途端、すぐに少しピリピリとした空気が漂っているのを感じた。

どうやら皆食事中みたいだが、ミアンナの耳を見つけたので近づいて行く。

「あ、氷牙」

ミアンナの声を聞いたジャトウとレジイラも素早くこちらに顔を向ける。

「おしょかったね」

「あぁ、急いだつもりだったんだけど」

モグモグと口を動かしながらミアンナが眉をすくめて頷く。

「あ、そっか、お金払わないとね」

「お、おいミアンナ」

ミアンナが立ち上がると少し慌ててジャトウが引き止めたので、ミアンナが顔を向けると、ジャトウはゆっくりと自身の口元に指を当てた。

「ついてるぞ」

ジャトウの見よう見真似でミアンナが自身の口元に指を当てると、耳を下げて照れるような笑みをジャトウに見せながら、ソースがついた指を舐める。

そんなミアンナを見て一瞬ジャトウも照れるように口元を緩めたが、すぐに目線を料理に落とした。

ミアンナと共にカウンターに行き、頼んだ料理と飲み物を持ってミアンナの隣に座る。

「お前、あんまりうろつくなよ。いつ堕混が出るか分かんねぇんだし」

「一応パトロールしようとしてたんだけど」

基本的に軍人達のパトロールは徒歩と決まっているようです。

ありがとうございました。

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