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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第四章

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彼女は稲妻のように

タガリがそう応えると、オンダ中佐は少し表情を緩ませたが、まるで堪えるようにすぐにまたいつもの険しい顔に戻った。

「ところで、氷牙大尉に1つ仕事を頼みたい」

「あ、はい」

どうやら納得したみたいだな。

「現在、鎖国してる国の兵と思われる者が、南から我が国に侵略してくる危険性が浮上している」

鎖国の国の兵?

前にオンダ中佐が堕混と間違えた兵かな。

「南軍営所はその鎖国兵を迎撃するためだけに力を入れることになった。だから氷牙大尉は、東軍営所と共に堕混を迎撃してくれ」

「分かりました」

他にも国はあるし、問題は堕混だけとはいかないみたいだな。

「そして頼みたい仕事というのは、もし堕混の迎撃が鎖国兵の侵略より速く終わった場合、引き続き鎖国兵の迎撃に加勢して欲しいんだ」

「分かりました。そういうことならいくらでも」

「そうか」

険しい顔のまま頷いたオンダ中佐は席を立つとすぐに訓練室を出て行った。

「ふぅ」

するとミアンナとタガリは同時にため息をつく。

オンダ中佐ってそんなに怖いのかな?

「それで、ミアンナ少佐は何しに?」

タガリが口を開くと、ミアンナは安心したように微笑み出しながらタガリに顔を向ける。

「氷牙がDタイプAIと戦いたいって言うから、立ち会いに来たの」

「あそうですか」

やっと戦えるようになったみたいだな。

下に降りて訓練場の中央に行きオペレーター室を見上げると、4本の柱が上下2本の赤外線で結ばれてリングが作られた。

「翼、解放」

そういえばガルーザスやハルクはどこからか武器を取り出してたな。

しかも個人別に仕様が変わってたし。

「準備は良い?」

「あぁ」

タガリが機械を操作すると、赤外線から西洋の騎士みたいな外見のDタイプAIが現れた。

胸に手を当てて武器をイメージすると、空気を掴んでいた手の中に何かが現れたので、思わず強く握りしめたそれを見る。

何だ、ただの剣か。

イメージが足りないのか、それとも修業が足りないのかな。

するとAIが向かって来たので、振り下ろされた剣を弾いてすぐに剣を振り抜くが、AIは滑るような動きで素早くそれをかわす。

回り込んだAIが背中を切りつけてきたみたいだが、氷にピックを刺すような音と共にAIの剣は背後で止まっていた。

おっと、そうだった、ブースターは無いんだった。

半歩動きが遅れたせいか、振り上げた剣は軽々とAIにかわされる。

いつもはブースターを使った動きが中心だから、この場合は先手に出るより後手に回る戦術に変えないとだめか。

剣道は誰に教われば良いかな。

防壁に剣が刺さった瞬間に1歩前に出ながらAIの剣を下から弾く。

すぐにもう1歩前に出ながら素早く、且つ力強く剣を振り下ろす。

重たく響いた鈍い音と共にAIの肩に剣が当たるが、一瞬腰を曲げただけでAIはすぐに回転し、こちらの剣を弾いてきた。

硬さも極点氷牙の鎧と同じなのかな。

ブースターも無いのにその場でこんなに速く旋回するのは、ブースターを使ったときと同じ動きを再現してるということかな。

そして素早く距離を取ったAIにまた先手を打たせるため、1歩も動かずに剣を構える。

そういえば皆、力を使うときに球みたいなのを撃ってたな。

右手の剣でAIの攻撃に備え、その間に左手に天魔の力を集中させてみる。

動き出したAIに注意しながら左手を見ると、光と闇が球のように形作られながら渦巻いていたので、振り下ろされた剣を弾き、AIの胸元に蹴りを入れて動きが鈍った直後、AIに向けて光と闇の球を撃ち込んだ。

激しく飛ばされたもののAIはすぐに体勢を立て直し、こちらを見据える。

でも球じゃ普通過ぎるかな。

もっと違う使い方で試してみようかな。

今度はこちらから前に飛び出すとすぐにAIも向かって来て、剣を振り下ろすとAIは難無く剣で受け止める。

すぐさまAIの胸元に膝を突き出し、少し後ずさりした隙を突いて前に宙返りしながら剣をAIの背中に叩きつける。

するとAIは足を踏ん張り、衝撃を打ち消してすぐさま急速旋回して剣を振り抜いてきたが、防壁に多少のヒビが現れたと同時に剣はその場で止まった。

宙返りした勢いのまま、下からAIを切りつけると、顎を叩き上げられたAIは後ろに宙返りしながら飛んで行った。

体勢を立て直して後ろに振り返ると、AIは何事も無かったかのように見事に着地した。

試しに剣先に光と闇を集めてから飛ばしてみると、剣状に集まった光と闇は尖ったような形になってAIに向かって飛んで行った。

しかしAIは滑るように動き出し、素早く尖った光と闇をかわしていく。

そうか、別にわざわざ手に集める必要も無いのか。

AIの剣を弾きながら回り込むが、すぐにこちらの剣も受け止められる。

だけど、この姿じゃ機動性も攻撃力も絶氷牙以下かな。

フェンシングのように連続的に剣を突き出しながら、尖った光と闇を飛ばしていく。

防壁の強化は予想外の収穫だったけど。

しかしAIは剣を弾いて尖った光と闇の軌道をずらしたり、瞬発的に滑ったりしてすべての攻撃を防いでいく。

さすが極点の動きだな。

とりあえず今日の天魔の修業はこれくらいで良いだろう。

AIが距離を取ったときに翼を消し、すぐに絶氷牙を纏い、AIが向かって来たときに極点氷牙を纏う。

超低温の衝撃波を受けたAIは動きを止めると、頭から腕、そして脚からもゆっくりとバラバラに崩れていった。

倒しちゃったか。

もう1回AIを作って貰おうかな。

「おーい」

タガリの声が響いたのでオペレーター室に顔を向ける。

「ミアンナ少佐が相手したいって言ってるけど、良いか?」

「あぁ」

まあ良いか。

すると4本の柱から赤外線が消え、ミアンナが降りて来た。

「ねぇ氷牙ってベンデュッセに行ったことある?」

初めて聞く名前だ。

「無いよ」

片耳を下げながら、ミアンナは不思議そうに頷く。

「さっきの剣の扱い方がね、ベンデュッセの剣術に似てたから」

「そうか」

さっき?

でもそこまでフェンシングを意識した訳でも無かったんだけどな。

でもフェンシングだったら、天魔の剣より氷牙の氷槍の方が似合ってるかな?

「じゃあ始めよ」

「あぁ」

そういえばミアンナとやるのは初めてかな。

ミアンナは体中に電気をほとばしらせると、全身をほんのりと光らせると共に髪も少し逆立てた。

お、何かユウジみたいだ。

それにレモンよりもグレードは上みたいだな。

ミアンナが足を踏ん張った瞬間に両手に紋章を出し、ミアンナが動き出した瞬間に手を前に出したが、すでにミアンナの拳は胸元に突きつけられていた。

速いっ。

ブースターを噴き出して反動を打ち消し、すぐにミアンナに蹴りを繰り出すが、難無く足を掴まれたので再びブースターを噴き出してそのまま押し退け、急速旋回して尻尾を振り回す。

しかしミアンナはとっさに上体を後ろに引き、間一髪で尻尾をかわした。

直後にミアンナが跳び込んできたのでとっさに紋章を前に出すが、紋章の目の前でミアンナは素早く跳び上がった。

これは単にジャンプ力だけじゃないな。

するとミアンナは滞空時間も無く、しかもジャンプしたときと同じくらいの速さで落ちてきたので、とっさにブースターを噴き出しながらもう片方の紋章でミアンナの拳を受け止めた。

稲妻が地面を叩いたような音と共にミアンナの拳の勢いが失われたので、強く押し退けて後ろに少し飛ばすと、着地したミアンナは落ち着くために素早く深呼吸した。

でもユウジみたいに電気を操る訳じゃなくて、あくまで格闘能力が基本みたいだな。

そして再び構えると同時に、ミアンナはニヤついて見せた。

「私の動きについて来れる?」

そう言って地面を蹴ったミアンナは、電気が走るような音に乗って瞬く間にすぐ横を通り過ぎた。

後ろを振り返ると同時に再び電気が走る音と共にミアンナが後ろに回り込んだので、すぐにその方に顔を向けるがそこにはもうミアンナの姿は無い。

とっさに上を向くが、すでに目の前に来ていたミアンナの足に胸元を蹴られると、思いっきり地面に背中を叩きつけられた。

起き上がろうとしたが更にミアンナはその場で跳び上がり、その反動は瞬く間に全身を駆け巡った。

落雷のような速さと衝撃か、でもかろうじて反応は出来るみたいだ。

それならちょっと試してみようかな。

立ち上がるとミアンナがすぐに構えたので、攻撃に使うための5つの紋章をすべてブースターの紋章に転換し背中に配置した。

「ふぅ」

ミアンナが力を入れて足を踏ん張り、強く地面を蹴った瞬間、ブースターを全開にして噴き出してミアンナの拳をかわし、更に素早く後ろに回り込んで背中に蹴りを入れる。

地面を転がって受け身を取るとミアンナはすぐに立ち上がりこちらに飛んで来たので、ブースターを全開で噴き出しミアンナの打ち込みを捌いていく。

これならミアンナの電光石火にも追いつけるみたいだな。

跳び上がったミアンナはまた頭上から蹴りを繰り出して来たので、最低限の動きで後ろに下がり、ミアンナが着地すると同時に急速旋回して尻尾を振り回す。

「うぅっ」

腹に直撃を受けたミアンナは思わず声を上げながら後ろに倒れ込んだ。

目を見開いて獲物を見るような目つきから徐々に表情が緩んでいくと、ミアンナの体からほとばしる電気が消えていった。

鎧を解くとミアンナは腹を軽く摩りながらゆっくりと立ち上がる。

「ふぅ、さすがだね」

「どうも」

耳は下がっているが、気を緩ませたように微笑んだミアンナと共にオペレーター室に戻った。

「ふぅ・・・そろそろ、お昼ご飯の時間かなぁ」

小さめのタオルで汗を拭きながらミアンナは少し嬉しそうに喋り出す。

「そうか」

「とりあえず食堂行こうよ。タガリも」

笑顔でそう言いながらミアンナはタガリにも顔を向けていく。

「ああはい」

タガリも連れてミアンナと共に食堂に行き、世間話をしながらカウンターの前に立つ。

「あれ、あんた払わないのか?」

ミアンナが2人分のお金を払っているところを見たタガリは、少し驚いた口調でこちらの顔を伺うようにそう聞いてきた。

「まあね」

「うーん・・・ああ、もしかしてあんたら・・・」

ゆっくりとミアンナがタガリに顔を向けると、耳を大きく下げながらこちらに目を向けてから慌てたようにまたすぐにタガリに目線を戻す。

「ち、ち違うって」

「え?ああじゃあ・・・そういうことか」

タガリは自分の中だけで納得したように頷くと、そんなタガリにミアンナは眉をすくめて首を傾げる。

「・・・な、何?」

「え、いや、昼メシ代を賭けてたんじゃないんですか?さっきので」

黙って考え込むように上を向いたミアンナは、理解したかのように目線をタガリに戻すと落ち着いてゆっくりと首を横に振った。

「それも違うの」

「そうですか」

料理が出て来たので、トレーを持ちながらセルフサービスの飲み物がある場所に行く。

「じゃあ何でなんですか?」

コップに飲み物を注ぎながら、タガリは何気なく話すような口調でミアンナに問い掛ける。

「だって、異世界から来たから、そもそもこの世界のお金は持ってないんだって」

「ああ、なるほど、それはそうですね」

そう言うと誤解も解けてちゃんと納得出来たような顔で、タガリはテーブルに向かって歩き出した。

やっぱり通貨は異世界共通じゃないみたいだしな。

料理をテーブルに置いて椅子に座ると、向かいに座ったタガリは何気なくこちらに顔を向ける。

「まぁあんたも大変だなぁ」

「まあね」

お金を稼ごうと思えば出来るかも知れないけど、確か鉱石が採れるのはアーリックの北の方だって言ってたな。

「これからまた訓練室に行くの?」

「どうかな、まぁやることも無いし」

ミアンナに何気なく応えながら、何やら鮮やかな赤い色をした角煮みたいなものを口に入れる。

生って訳じゃないみたいだな。

「あんた、気を抜き過ぎじゃないか?いつ堕混が出るか分かんないんだろ?」

「まぁでも、出るまで待つしかないし」

料理に目線を置いて話していたタガリは、まるで落ち着いた態度に驚いたように顔を上げる。

「まぁそれもそうか」

しかしその表情はすぐに変わり、タガリはあまり関心がなさそうに頷きながら、すぐにパンのようにふっくらとしたものにかぶりつく。

ライオンのような顔つきの獣人は皆、電力を操れるようになると決まってるそうです。

ありがとうございました。

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