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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第四章

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不穏の訪れ

少しうなだれるような口調で小さくニヤつきながら話すその男性の横で、ふとミアンナが何かを思い出したように耳をピンと立ててこちらを見た。

「あ、今喋ってるのがジャトウで、こっちがレジイラだよ。2人は私の同期なの」

「そうか、どうも」

「おう」

落ち着き払っている態度で挨拶を返したレジイラを見たジャトウと呼ばれた男性も、慌てて小さく手を挙げながらこちらに挨拶を返す。

「あんたは演習とか行くのか?」

冷静に物を見るような眼差しのレジイラが口を開くと、眉をすくめながらジャトウも興味がありそうな表情でこちらを見る。

「どうかな、僕は堕混を捜すための手段が手に入れば、それで良いし」

少し眉間にシワを寄せたレジイラが頷いていると、ジャトウは何やらこちらの顔をまじまじと見始める。

「お前、よく見れば結構若いな。歳いくつだ?」

「20だよ」

「ほんとかよ、見えねぇな。てっきり17かそこら辺だと思ってたけど」

そう言ってジャトウはどことなく半信半疑を思わせるような表情で首を傾げているが、その態度には揺るぎない陽気さが伺えていた。

「2人共、これから訓練でしょ?」

ミアンナが口を開くと、ジャトウはよそよそしく頭を掻き始める。

「あ、あれぇ?・・・そうだったかぁ?」

「おいおい」

レジイラが呆れたような口調でそう言うと、ジャトウはすぐに手を下げあっけらかんとしたニヤつきを見せながらミアンナに顔を向ける。

「お前、体とか鈍ってないか?最近」

「ううん、暇なときに訓練室に行ってるから」

「おお、何だそうか」

ジャトウと親しげに話すミアンナの気を許したような笑顔に、ふと今まで見たことのないほどの深さが伺えた。

「じゃ、またな」

「うん」

そしてミアンナと少し話をした2人はミアンナの笑顔に軽く手を挙げながら食堂から去って行いった。

「ミアンナは訓練には行かないの?」

「うん、少佐になってからは、訓練より会議に出ることが多くなったの」

「そうか」

暇だが、トランシーバーを貰うまでは下手に遠くには行けないか。

そんな時、ミアンナのトランシーバーから呼び出しと思われる声が聞こえる。

その声を聞きながらミアンナは胸ポケットから取り出した懐中時計を見ると、何やら嬉しそうに微笑み出した。

「これからレモンに会うけど、一緒に来る?」

「良いの?」

「うん」

笑顔で頷いて立ち上がったミアンナについて行き、軍営所の門を抜けると、門前には頭に被った布で耳を隠したレモンが居た。

ミアンナを確認して笑顔になったレモンは、続けてミアンナの後ろにいたこちらの顔を見ると驚いたように布を被せられた耳を立てた。

「あ、師匠、軍に入れたんですね?」

「まあね」

街を歩くときは獣人であることを隠したいのかな。

でもシルエットで大体は分かるけど。

「レモン、みんな元気だった?」

ミアンナがレモンに近寄ると、レモンの腰に巻かれている布がめくられ、真っ直ぐ立った尻尾があらわになった。

「うん、お母さんもお父さんも元気だよ」

まぁ嬉しい気持ちは隠せないということかな。

「いつもこの時間に会いに来るの?」

2人が歩き出したときに何となく聞いてみる。

「うん、この時間はお姉ちゃんは仕事が無いの」

振り返りながらレモンは満面の笑みでそう応える。

「そうか」

世間話が絶えない2人について少し歩き、広場に着くと、店先にテーブルと椅子が並んでいるカフェのような店に入る。

するとミアンナを見たカウンター越しの店員がすぐに背筋を伸ばし、その表情にも緊張を伺わせた。

「いらっしゃいませ」

顔を上げた店員が続けてこちらを見ると、店員はすぐに不思議そうに眉間にシワを寄せて見せた。

「レモン何がいい?」

「私、ニルミラテ」

ミアンナに応えながらレモンが店員を見ると、店員はレモンの言葉を復唱しながら、レジのような機械を操作していく。

「じゃあ私はホットコーヒー」

聞き慣れた言葉だ。

「氷牙は?」

メニューを見てみると、聞き慣れた言葉と聞き慣れない言葉の組み合わせが多く見られた。

「ホットセルスミルク」

「以上でよろしいでしょうか?」

店員の問いにミアンナが微笑んで頷くと、店員は頼んだものを再度復唱した後に料金を請求する。

3人分なのにずいぶんと安く感じるな。

ミアンナがお釣りを貰うと店員は同じくその場に居る店員に指示を出し、そして手際良く番号札をミアンナに渡した。

店先のテーブルの椅子に座り、少しして頼んだものが運ばれてくると、店員は丁寧にお辞儀してから番号札を持ち去って行った。

飲んでみると少しとろみがあってスープみたいなミルクだな。

「そういえば、さっきも払って貰って悪いね」

「あ、ううん、軍人は安くなるから大丈夫だよ」

一口飲んでコップをテーブルに置きながら、ミアンナはそう言って微笑みかけてくる。

「そうか」

「師匠も訓練とかするんですか?」

飲み物を一口飲んだときに一瞬耳を下げたレモンは、そう喋り出しながら落ち着いた微笑みを見せる。

「どうかな、するつもりはないかな」

「じゃあ暇ですか?」

するとレモンは片耳を上げると共にすぐに嬉しそうにニヤつき出した。

「まあそうだね」

「じゃ、じゃあその、もし良かったら・・・」

そしてニヤつきながら両耳を下げ、レモンは少しずつ上目遣いを見せていく。

「少しなら修業に付き合うよ」

レモンが照れながら嬉しそうにコップを手に取るのを見たミアンナは、少し困ったような表情でこちらを見る。

「良いの?迷惑じゃない?」

「まぁ、訓練とも言えるし」

「そっかぁ、ありがとね、レモンに構ってくれて」

まだ少し眉をすくめているが、ミアンナは安心したように頷く。

「あぁ」

「そういえばお姉ちゃん、レゴ達はどう?元気にしてる?」

「うん、この前も狩りの仕方を教えたの」

獣人の村ってのは、どれくらいあるのかな?

「そうなんだぁ、久しぶりに会いに行ってみようかな。あ、その時は師匠も一緒に行きましょ?」

ミアンナに応えている笑顔のままで、レモンは何気なくこちらに顔を向ける。

「良いのかな?僕人間だけど」

「全然平気ですよぉ、あの姿になれば、皆にも受け入れて貰えますよ。ね、お姉ちゃん?」

少し上を向いて考え込んだもののミアンナはすぐに納得したような笑顔をレモンに見せる。

「うん、それはそうかも知れないね」

しばらく姉妹の世間話に相槌を打っていると、突如ミアンナのトランシーバーからノイズ音が聞こえてきて、そして続けてトランシーバーからの声を聞いている内に、ミアンナとレモンの耳が少しずつ下がっていく。

「お姉ちゃん・・・」

不安げにレモンがミアンナの顔を覗くと、ミアンナも少し申し訳無さそうに耳を下げてレモンを見る。

「ごめんねレモン、行かなくちゃ」

「そっかぁ、もう会議の時間なの?」

「うん、じゃあまたね」

立ち上がりながらそう言ってミアンナが歩き出すと、レモンは耳を下げながらも笑顔でミアンナに手を振った。

「毎日会ってるの?」

「んー毎日じゃないかな。前は会ったときに修業の相手もしてくれたんだけど、忙しくなってからは、たまに会って話すだけになったの」

また一口飲み物を飲んだ後にゆっくりと応えるレモンから、少しずつ耳の張りが緩んでいくのが確認出来た。

「そうか」

飲み終わったコップを店員に返すと、レモンと共に村の近くにあるという、レモンの修業場という場所に向かう。

布が巻かれた木が見えてくると、その木の近くには皮が剥がれるほど座り込まれた太い丸太も見えてきた。

この木、改めて見ると相当打ち込まれてるな、新しい布が何十にも巻かれてる。

「ここにはグリムとか出るの?」

「あ、いえ、村に近いので、グリムも警戒して近寄らないです」

頭に被せられた布と腰に巻かれた布を取りながら、レモンは淡々と応える。

「そうか」

「じゃあ師匠、行きます」

「あぁ」

ネオグリムの事はレモンは知ってるかな?

レモンの拳を紋章で受け流すと、素早く一歩下がり、レモンの蹴りをかわす。

僕も一回くらいパトロールしてみようかな。

運よく堕混に鉢合わせすることなんて無いとは思うけど。

上体をずらしてレモンの拳をかわしたとき、レモンは素早く高い位置に回し蹴りをしてきたのでとっさに腕で受けようとしたが、レモンの足は腕に着かずこちらの脇腹へと繰り出された。

おっと、この動きは。

すると木に背中を勢いよく着けるこちらを見ながらレモンは嬉しそうにニヤつきながら一歩下がった。

「えへへ・・・新しいフェイント技です」

「そうか、さすがだね」

レモンは耳を下げ、照れるように微笑んでいる。

「何か前より動きが良くなってない?」

「そ、そうですかぁ?」

やっぱりミサにでも一回くらいは空手習おうかな。

「続きやろうか」

「はいっ」



「やはり鎖国してる国の仕業でしょうか」

「証言をまとめれば、そういう見方も出来るという事だが、ミアンナ少佐はどう思う?」

それでも緊迫したような表情すら見せず、オンダ中佐はおもむろにこちらに顔を向けてくる。

「被害を受けたベンデュッセも、その隣国も見たことのない兵器だと言っているところを見ると、やはり私も鎖国してる国の兵の仕業だと思います」

「そうか・・・ようやくと言うか、今更と言うか」

ずっと他国と交流してない国ということしか知らないから、動きを見せた理由なんて分からないな。

「理由は何にせよ、こうして被害を出しているなら、こっちとしても何もしない訳にはいかないか」

すると手を挙げた1人の軍人にオンダ中佐が目を向ける。

「何だジェンナイ少佐」

「我が国の西と東には人間や獣人をも阻む、精霊の森という鉄壁がありますので、ダイレクトに狙われる可能性は低いんじゃないでしょうか?」

確かに、いくら何でもネオグリムの中を抜けては来ないか。

「アーリックもエネカトも、それなりの軍事力はあるからな。今はまだ様子を見るしかないか」

鎖国ってやっぱり秘密に戦力を増強するためかな。

「この事に関しては動きを見ながら中央軍営所で再度会議を行う。それまで見送りだ」

「はい」

今回の襲撃はベンデュッセもそんなに被害が出なかったらしいから、また来る可能性は高いのかな。

ダコンの事もあるのに・・・あれ?鎖国してる国とダコンって関係あるかな?

・・・考え過ぎかな。



「ふぅ・・・師匠・・・体力、ありますね」

「まあね」

レモンがバテて来たみたいなので鎧を解き、丸太で一休みしてから村に入り井戸に向かう。

「・・・ふぁあ・・・生き返ったぁ」

タオルで顔を拭く前に激しく髪を振るのは、獣のなごりなのかな。

「師匠も、水、飲みます?」

「そうするよ」

レモンが船の舵みたいな形のものを回すと、釣竿のリールのように1本の紐が井戸の上に吊り下げられた水車みたいなものを回し、やがて水車に掛けられたその紐は括り付けられた小さいバケツをゆっくりと井戸の中から持ち上げてきた。

水を手で掬い、口を手元まで持っていき水を飲むと、少し甘めの味が舌に残る気がした。

「お前らまた修業かよ」

レモンと共に声がした方に目を向けると、小さなカゴを背負った、今まさに山菜採りから帰って来たかのような格好のユキが居た。

「おおっそれより氷牙、お前軍人になったのかよ」

こちらの服に気づいたユキは、驚いたように声を上げながら歩み寄ってくる。

「まあね」

「すげぇな」

呟きながらユキは目を輝かせ、軍服をまじまじと眺める。

ユキは軍服に興味があるのかな。

「ユキ」

その声で我に返ったようにユキが後ろを振り向くと、ユキはすぐにその方に駆けていく。

「じゃ」

「うん」

走り出しながらユキがこちらの方に顔を向けて手を挙げると、レモンが応えるのを見てからユキは走り去って行った。

そんな時にレモンがふと鼻を利かせるように何かの匂いを嗅ぎ始めた。

「そろそろ夕焼けかな」

なるほど、そこは獣の血の特徴かな。

「じゃあ僕は宿舎に戻ろうかな」

「えぇっ・・・夕食、食べてって下さいよぉ」

するとレモンは耳を下げながら上目遣いを見せ、寂しそうな声色でそう言ってきた。

「良いのかな?」

「夕食ぐらい何にも問題無いです」

しかし家の方をちらちらと見ながら応えるレモンの表情から、次第に不安感が見られていく。

「そうか」

「んー、んー・・・一応聞いて来ますから、座ってて下さい」

氷牙が何故ホットミルクにこだわるかは、僕にも分かりません。笑

ありがとうございました。

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