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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第四章

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ゴスロリグラタンと猫顔の軍人

「・・・何だあれは」

「あれがヒョウガです」

オンダ中佐は険しい顔のまま、ヒョウガとAIの戦闘を眺めている。

「レベルはどこまで行ったんだ?」

「8で中止してDタイプに切り替えました」

「そうか」



結構しつこくついて来るな。

極点の動きに劣らないなんて、さすがAIだな。

もしさっきまでの戦闘データで動いているなら、龍ノ咆哮や蒼月光は通じるかな。

龍牙を解いて両手で蒼月を構えると騎士のような人形は左右を気にするように一瞬だけ動きが止まり、同時に蒼月を2発撃つと騎士のような人形は前に飛び出してこちらに向かってきた。

その瞬間に、こちらもブースター全開で前に飛び出して、騎士のような人形の胸元に膝を突き出す。

騎士のような人形が思いっきり吹き飛んだのでその瞬間に紋章を5つ、外側を一点に重ねながら花のように円形に並べ、そしてそこから限りなく噴き出るレーザービームを放つ。

青白い光が騎士のような人形を包んだ瞬間に蒼月光を放つのを止めると、騎士のような人形は軽い鉄の鎧が崩れるような音と共に、ゆっくりと地面に散らばっていった。

切り札だったのに、こんなところで使うとは。

すると散らばった破片が細かい編み目状に薄くなって消えると、周りにある4本の柱の信号も消え、柱は再び音を立てて地面に引っ込み始めた。

終わったのかな。

「テストは終わりだよ。上がってきて」

「あぁ」

鎧を解いて階段を登り扉を開けると、ミアンナの隣にはオンダが立っていて、オンダは険しい表情でこちらを見ていた。

「お前は、ミアンナ少佐の判断で軍の方で雇うことになった。配属はこの南軍営所だ」

「そうか」

どうやら上手くいったみたいだな。

「聞きたいことがあれば、ミアンナ少佐に聞け」

「分かった」

するとオンダは早々と立ち去り、再び軍人達が下に降りていくと、席の空いたソファーにミアンナと座った。

「一応軍舎の部屋を使えるようになるけど、私の実家に居ても良いよ?私の部屋、空いてるし」

「いや、軍舎の部屋を使うよ。レモンの父親にもそう言ったし」

少し耳が下がっているミアンナは、頷くとどこか安心したように微笑んだ。

「そっか、分かった・・・じゃあ、まず空いてる部屋に案内しようか」

「あぁ」

訓練室を出ると2階に向かい、まるで組織のホテルのように長く続いている廊下を進む。

「何か聞きたいこととかある?」

半分体をこちらに向けながら、ミアンナはそう言って微笑みを見せる。

「食堂とかあるの?」

「あるよ。部屋に案内したら、そっちにも案内するね」

「あぁ、それと、何か特別な価値がある石、とかあるかな?」

するとミアンナは耳を片方立て、ふとした表情をこちらに向ける。

「イシって・・・石ころのイシ?」

「あぁ」

「うーん・・・」

少しして壁の模様や廊下の柄の雰囲気が変わったのが分かると、扉の数が多くなった辺りでミアンナがふと立ち止まり、こちらに振り向いた。

「ここが軍人に支給される部屋があるエリアだよ」

「そうか」

壁が白から薄い赤茶色になり、床もタイルみたいな模様になっている廊下をまた少し進み、木製だが質素感のない扉の前で立ち止まる。

「ここが空いてるよ」

「あぁ」

058か。

部屋に入ると、1つのベッドで部屋の半分のスペースを埋め尽くすくらいの狭さで、引き出しのある棚と長い机が繋がったものと、机の下にしまい込める椅子が1つ置いてあるだけだった。

ふと後ろを振り返ると、ミアンナが何かを思い出したかのように微笑んだ。

「ちなみに向かい側が私の部屋だよ」

「そうか、普通に女性も同じ場所なんだね」

「うん、南軍営所は4つの内で1番小さいから、あんまり施設は充実してないの」

部屋を出ながらミアンナがそう応え、扉を閉めると再び廊下を進み始めた。

「そうか」

「あ、特別な価値かどうかは分からないけど、人間も知らない特別なグリムがいるのね」

一瞬だけ片耳をパタパタを動かした後、ミアンナはどこか落ち着きのある笑みを見せながらそんな話をし始める。

特別か・・・。

「そのグリムの血液が空気に触れて酸化すると、石みたいに固まって、それを持つと精霊の加護を受けられるとか言われてるの」

「なるほど」

お土産にでもしようか。

「まぁただの言い伝えだけどね」

階段を降り始めながら、肩を小さくすくめてミアンナは一言加えた。

人間も知らないってことは相当山奥なのかな。

「その特別なグリムは別の呼び方とかあるの?」

「んー確か、ネオグリムだったかな。地域や人によって呼び方違うけどね」

「そうか、生息地とか分かる?」

するとミアンナは耳を下げながら首を傾げる。

「んー村長なら知ってるかもね」

売ってたとしても、お金も無いし、自分で採りに行くしかないか。

ミアンナがそう応えた後に、左手に長いカウンターが構えられた、たくさんのテーブルが並んだ広い部屋に入る。

食堂っぽいかな。

「ここが待機中の軍人が休憩所と兼用してる食堂だよ」

「そうか」

組織のホールよりかは小さいかな。

カウンターの上にはメニューのような札が並んでいて、ふとテーブルの方に目を向けると、食堂は疎らに埋まっている席で静けさを物語っていた。

ミアンナは何気なく椅子に座ったので、テーブルを挟んでミアンナの向かいに座る。

「あ、そうだ、後でこれ渡されると思うけど」

そう言いながらミアンナはトランシーバーのようなものを肩にある小さなポケットから取り出す。

「何か事件が起こったときや、召集がかかったときに司令部からこれに連絡が来るの」

「そうか」

堕混が出たときにすぐ連絡が来るのは有り難いな。

「そういえば、前に堕混が出た場所って分かる?」

首を傾げた方向に両耳を傾けながら、思い返すような微笑みを浮かべたミアンナに、ふと何故かユウコの姿が脳裏に浮かんだ。

「確か、東軍営所から少し北に行った辺りだったかな。今でも街の復旧作業が続いてるから、見たら分かるよ」

「そうか」

そんな時にミアンナのトランシーバーからノイズ音が流れると、続けて誰かからの呼びかけと思われる声が聞こえてくる。

少し顔つきが変わったミアンナがその声を聞き終えると、ピンと張った耳を緩めながら、その真剣さの纏う眼差しをこちらに向けてきた。

「召集かかったから行くけど、終わるまでここに居る?」

「あぁ」

「分かった」

ミアンナが席を立ち食堂を出ると、何人かも同じように食堂を出ていく。



「なぁ、あれじゃ全然足りねぇよ」

「だけど、全部やったら何も分かんなくなるよ」

呑気な口調でラビットに言葉を返されると、そいつは少しいらついた様子で窓の方に歩き出した。

「それにしてもちょっと間を開けすぎだろ」

「それもそうだねぇ」

そう言ってラビットは腕を組み、真剣さと寂しさを感じさせる表情を見せる。

「だろ?何もいきなり全部やることはねぇんだよ。あん時よりちょっとでかいくらいでさ」

「そうだね。そろそろ良いかな、でもあと2日くれない?」

「まあ・・・良いか」

そいつが軽く頭を掻きながら渋々そう応えると、ラビットは小さく頷きながら安心したような顔色を見せた。

「そのあとはガルガンに任せるからさ」

「あぁ・・・そういや、こいつは良いのかよ」

少しため息まじりに応えたガルガンは話題を変えるような声色でそう言いながら、こちらに指を差す。

「良いんだ。人には役割ってものがあるからさ」

「あっそ」

そしてガルガンは窓際の椅子に座り窓の外を眺め始めると、ラビットは少し困ったようにこちらに顔を向けた。

「ちょっとシープを呼んで来てくれないかな?そろそろお昼ご飯の時間だし」

「あぁ」

小屋を出て周りを見渡すと、膝ほどの高さしかない小さな木の傍でうずくまってるシープが見えた。

「そろそろ起きなって」

ゆっくりとこちらに振り向いて微笑んだシープは、またゆっくりと立ち上がり、小屋に向かって歩き出した。

「ねぇ、ハルクは太陽と月どっちが好き?」

この白髪を見るとたまにあいつを思い出す。

「え?・・・太陽かな」

あいつを思い出すと必ずミレイユを思い出す。

「そっかぁ」

少し嬉しそうにシープはゆっくりと歩いている。



「そろそろお昼ご飯だね、何か頼もうよ」

「あぁ」

ミアンナが食堂に戻って少し経つと、そう言ったミアンナと共にカウンターの前に向かう。

色々なメニューがあって理解出来る料理名はあるが、やはり使っている食材が何なのかは分からない。

「おばさん、私クナイダケのピラフね」

「はいよ、そっちのお兄さんは?」

「じゃあ、ウミシュラグラタン」

「はいよ」

すると白い布で頭を覆い、割烹着のようなものを着たおばさんが早々と奥に歩き出し、若い料理人に指示を出していく。

海ってことは魚介類なのだろうか。

あ、お金無いや。

「ミアンナ、お金って必要?」

「え、うん・・・あ、お金無いんだっけ?」

「あぁ」

するとミアンナは困ったように微笑み、カウンターの向こうとこちらを交互に見る。

「じゃあ私が払うね」

「あぁ悪いね」

トレーに乗せられた料理が出されると、そのまま左手の角を曲がり、奥にあるセルフサービスの飲み物を取る。

「村には帰ったりするの?」

「ううん、別の獣人の村で用が出来てからは、村には帰れてないかな」

「そうか」

何だかエビみたいな食感がするものがあるな。

こっちのベシャメルソースの代わりは鮮やかなピンク色をしていて、チーズの代わりはテカりのある黒色をしているみたいだ。

それにこっちのパスタの代わりは赤くて気泡がたくさんあるパンみたいな感じがするが、全体的な味は普通にグラタンだな。

「ねぇ、何で異世界に来てまで堕混を捜すの?」

ピラフを頬張ったミアンナはどこか嬉しそうに片耳を一瞬動かした後にそう問い掛けてきた。

「んー任務の延長というか、半分趣味も入ってる感じもあるかな」

「そうなんだぁ、任務ってことは、氷牙の世界じゃ氷牙は軍人なの?」

「いや、また別の世界では兵士だったよ」

するとミアンナは不思議そうな顔で耳を小さく下げながら、眉をすくめてピラフを頬張った。

そういえば、街を見た限りはあまり緊迫した空気は伝わって来なかったな。

「この国って、どこかと戦争とかしてるの?」

「この国は中立国だからしてないけど、北のアーリックと、北西のシニックデルゼンが戦争してるよ」

「そうか」

「あと、南の方でも、何か色々あるみたい」

少し考え込むように耳を下げたミアンナだが、困ったような表情を浮かべるとすぐにそれを隠すように微笑みを見せた。

「そうか」

まぁ複数の国がある限り、戦争が無い世界なんて有り得ないか。

食事が終わると、ちょうど食堂の地下の位置に当たる、ロッカールームのような倉庫に連れられる。

「一応軍に入るんだし、軍服ぐらいは着ないとね」

そう言いながらミアンナは1つのロッカーから一着の小綺麗な紺色のジャケットを取り出した。

「そうか」

肩には金色の装飾があり、同じような金色のボタンには軍の紋章が彫り込まれている。

袖を通してボタンを閉めるとすぐに倉庫を出て食堂に戻った。

「それっていつ頃貰えるかな?」

トランシーバーを指差すと、ミアンナはそれに目を向けてから耳を下げ、首を傾げる。

「んー・・・手続きが今日中に終われば、明日の朝には貰えると思うよ?」

「そうか」

堕混を倒してからの方が、ネオグリムを余裕を持って探せるかな。

「ミアンナは暇なときはずっとここに居るの?」

「うん・・・そうだね、ここに居たり、自主的にパトロールしたりするかな」

そこは意外と原始的なんだな。

「そうか」

「よおミアンナ」

ミアンナが顔を向けた方に目を向けると、軍服の男性が2人、ミアンナに近寄って来た。

「うん」

2人が安心感のある笑顔を浮かべるミアンナに並ぶように椅子に座ると、すぐに1人の男性がこちらに顔を向ける。

「さっき聞いたんだけど、こいつ、レベル8まで行ったんだって?」

こちらに親指を差しながら、ミアンナに近い方に座っている男性はそう言ってミアンナに目線を戻していく。

「うん、獣人になって戦うんだよ」

「ほんとかよ」

その男性は陽気な雰囲気で喋っていて、驚いたような声を上げてこちらを見たがその表情は至って落ち着き払っていた。

「あれだろ?レベル6以上が対獣人用プログラムだろ?8なんてクリアした奴、中央軍営所でもまだ出てないってのに」

ここから少しずつハルクの運命が変わっていくんですよねぇ。

ありがとうございました。

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