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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第三章

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ポラロイド

「ていうか、私がただ見ててあげる訳ないでしょ」

知性の伺える男性の動きを見張るようにナカオカが身構え、炎を纏った手を振り上げた直後、突如そこに振り上げられたナカオカの腕を掴むがたいの良い男性が現れた。

ナカオカが振り返り、がたいの良い男性が殺気の込められたニヤつきを見せたその一瞬の後、ナカオカはまるで苦しむような声を上げながら素早く自身の胸元を握りしめた。

「つーかまーえた」

「あっ・・・がぁっ・・・ああっ」

「苦しいか?」

な、何が起こったんだ?

「まんまとハマったな、アイツはお前の気を引くための囮だったんだよ」

囮?・・・それにしても、あの人、瞬間移動でもしたのか?

「はぁ、はぁ、はぁ、ぐぁ、な、にを」

「私に何をしたかってか?俺はな、触れた相手の心を握り締めることが出来るんだ」

「がぁっ」

また少しナカオカの表情が歪むと、がたいの良い男性はまるで嬉しがるような笑い声を漏らした。

心を、握り締める?

「不思議だろ?心が握り締められてるだけなのに、実際に息苦しいし、全身に力が入らない。それに完全に心を握り潰せば、お前は・・・くっはははっ」

「おい、さっさと殺せ」

知性の伺える男性ががたいの良い男性に歩み寄る頃には、すでにナカオカは地面に座り込み、まるで力が抜けたかのようにうなだれて動かなくなっていた。

「いや、コイツは人質にする。それに、せっかくのいい女だ、このまま殺したらもったいねぇ」

そう言うとがたいの良い男性はナカオカの腕を掴んだままナカオカの髪を掴み、顔を上げさせた。

「俺達デストロイ屋に手を出したのが運の尽きだったな、アリサカを潰した後は、死ぬまで俺の玩具にしてやるよ」

・・・デストロイ屋?

確か・・・アリサカが前に戦ったって誰かに聞いたような・・・。

「・・・やっぱり君達がテロリストだったの?」

こちらに顔を向けたがたいの良い男性は嫌悪するように睨みつけてくると、何かを指図するように知性の伺える男性に顔を向ける。

すると知性の伺える男性は素早く腕を振り出し、こちらに向けて衝撃波を飛ばしてきた。

その直後、瞬く間に押し寄せてきた砂埃と突風に視界が覆い尽くされ、やじ馬の悲鳴が辺りに響き渡る。

絶氷牙を纏った後に視界が晴れると、ただ一人強風に堪えた立ち姿に、2人の男性は一瞬にしてその表情に驚きと怒り、そして敵意を伺わせた。

「デストロイ屋って、前にアリサカが戦ったって聞いたけど」

知性の伺える男性が、まるで責めるような眼差しを向けると、がたいの良い男性はその表情に少しだけ焦りを感じさせた。

「・・・確かにあいつはアリサカにやられたけどな、デストロイ屋ってのは、別にリーダーが居る訳でも、ましてや誰かの通り名って訳でもねぇ。考えに賛同する奴、全員がデストロイ屋なんだよ」

「そうか」

つまりは、簡単には潰せないテロ組織って訳かな。

「それで、お前は何だ?アリサカの仲間でもねぇのに、こいつを庇うってのか?」

「いやいや、だからテロ鎮圧に来ただけだって」

がたいが良い男性が知性の伺える男性に顔を向けると、知性の伺える男性はその目配せの意味をすぐに理解したかのように体勢を低くし、こちらを見据えた。

ナカオカを捕まえてるあの人、どうやら前線に立つタイプじゃないみたいだ。

知性の伺える男性が走り出し、右腕に空間の歪みを風のように纏わせたときに、素早く紋章をがたいが良い男性に向け、絶氷弾を撃ち出した。

氷の弾ががたいの良い男性の顔に直撃し、氷が砕ける音と共に氷の爆風が男性とナカオカを包むと、知性の伺える男性はすぐさま怒りをあらわにするように声を上げる。

「おらぁっ」

そして殴り掛かってきた知性の伺える男性の右手がこちらの胸元に突きつけられたとき、男性の右手に纏っていた空間の歪みが勢いよく弾け出され、まるで何かが胸元で爆発したような衝撃が全身を襲った。

・・・っと、なるほど、衝撃波を溜めて威力を上げられるのか。

ブースターを噴き出して何とか倒れずに地面に降り立ったとき、突如背後から囁くように呼びかける声がしたので、その方に顔を向けると、そこにはこちらの手首を掴むがたいが良い男性が立っていた。

やっぱり、瞬間移動か。

「お前はここで殺してやるよ、男には興味ないからな」

殺気に満ちたその笑みが疑惑を感じたように歪んだのを見てから、勢いよく後ろに振り回した肘をがたいが良い男性のこめかみに当てる。

勢いよく倒れ込んだがたいが良い男性に顔を向けた、知性の伺える男性が再び走り出してきたので、すぐさまその男性に紋章を向け、絶氷弾を数発撃ち出していった。

鎧を解き、胸元を押さえながらゆっくりと立ち上がったナカオカに歩み寄ると、涙を流しているナカオカは倒れているがたいが良い男性に目を向けてからこちらを睨みつけた。

「殺したの?あの、クソ変態」

「いや・・・」

がたいが良い男性に顔を向けたとき、その男性は喉を鳴らすように唸り声を小さく出しながら、ゆっくりと起き上がり始めた。

「てめぇ・・・つぅ、ぶっ殺してやる・・・」

ああは言ってるけど、もうまともに動けそうにないな。

呟きながら膝を着き、上半身を起こしたがたいが良い男性が、頭を押さえながら顔を上げたその直後、一瞬にして稲妻のような光線ががたいが良い男性の左胸を貫き、そして小さな落雷音が尾を引くように虚しく鳴った。

左胸に小さな焦げ跡が付いたがたいが良い男性が力無く倒れ伏すと、ため息をついたナカオカは鼻を啜りながら涙を拭き始めた。

「・・・ありがと」

「え、あ、あぁ」

その時に突如右耳に発信音が鳴ると、すぐにイヤホンからタツヒロの声が聞こえてきた。

「もしもし、僕だけど、今巨大動物を見てるんだけど、そこにカサオカが居るんだ」

えっと、確か恩賜庭園だっけか、タツヒロが居るのは。

それより、カサオカか・・・。

「あぁ、こっちにもアリサカの仲間が居るよ。あのさ、カサオカ、こっちに呼んでくれないかな?」

「えっそれは・・・」

タツヒロが驚くような声を上げると同時に、ナカオカがこちらに顔を向ける。

「どういうこと?」

「ナカオカがさ、テロリストにやられて、迎えが来た方が良さそうだから、頼んで貰って良いかな?」

「でも・・・」

タツヒロの声が途切れ、ナカオカの涙が止まった頃、どこからともなく救急車とパトカーのサイレンが聞こえてきた。

「分かったよ」

「あぁ」

「・・・何で?仲間でもないのに」

「アリサカの仲間、だからかな」

ざわめきと緊張感に気が紛れてるやじ馬から離れていくナカオカについていくと、ふと見覚えのある場所に辿り着くと同時に、見覚えのある人物にも目が留まった。

「もしもし、氷牙、今どこら辺?」

「森の方だよ。鳥類園の入口の近くかな」

見覚えのあるその女性が近づいてきたのが目に入るが、その女性がこちらではなくナカオカに顔を向けているのにふと気が付いた。

「リアちゃん」

え・・・。

「あ・・・ウミ」

このカメラの人、ナカオカと知り合いだったのか。

「え、リアちゃんもこの人と知り合いなの?」

「ううん・・・アリサカの知り合いだって。この人もって、ウミも?」

ウミと呼ばれた女性は嬉しさが伺える落ち着いた笑顔を見せているが、ナカオカは疲れからか、どことなく気の抜けたような面持ちをしていた。

「でも、知り合いってほどじゃないの」

「そう」

「そういえば、ナカオカって何しに来てたの?」

こちらに顔を向けたナカオカは小さく眉間にシワを寄せたものの、まるで怒る力も無いかのようにただ小さなため息をついた。

「巨大動物の調査とかかな。でももういいよ、今日は。疲れたし」

「そうか」

「それに、これからカサオカが来るんでしょ?」

その時に素早くこちらに顔を向けた、ウミと呼ばれた女性の眼鏡越しの眼差しが、一気に煮えたぎる情熱のようなものに満ちたのが伺えた。

「カサオカさんがここに来るんですか?」

「多分ね」

遠くで鳴り響くサイレンが公園に馴染み始めた頃、何かを見つけたように遠くを見つめ始めたナカオカの目線の先に目を向けると、その方にはこちらに近づいてくるカサオカとタツヒロの姿があった。

「いきさつは、まぁこいつから後で聞くから、とりあえず世話になったな」

「あぁ」

困ったような表情の中にも、どこか安堵を伺わせる顔色のカサオカを見ていたとき、突如森の方から何かの鳴き声が聞こえてくる。

そのただならぬ音量の鳴き声に皆の目線が森へと向けられた直後、森から上空へと飛び上がったのは、4枚の翼をはためかせる尻尾の長い巨大な鷲だった。

おっと、このタイミングで巨大生物か・・・。

「あいつは、確かホンマがマークしてた奴だ」

カサオカが呟いたときに巨大な鷲が急降下し、集まってきたやじ馬の前に降り立つと、その瞬間にカサオカの表情は引き締まり、辺りはまるで地雷を見つめるような張り詰めた緊張感が流れた。

えっと、あの鷲が、人を襲うかどうかが問題なんだよな。

カメラのシャッター音が鳴り始めると共に、少しずつやじ馬が巨大な鷲を囲んでいくと、巨大な鷲はそんなやじ馬を見据えるようにゆっくりと人間達を見下ろしていく。

どうやら、大人しい性格の鷲みたいだけど。

カサオカ達が気を張ったように鷲を見つめ始めた、そのふとした沈黙を破るように鷲が雄叫びを上げると、その巨大な鷲は突如怒りをあらわにするようにやじ馬の1人に勢いよく体当たりした。

何だ?いきなり怒り出した・・・。

鷲の鳴き声とやじ馬の悲鳴が混ざり、一瞬にしてその場に緊迫感がほとばしると、重々しいため息を吐き、ゆっくりと歩き出したカサオカの背中から、瞬時に闘志が溢れたのを感じた。

右手には鋭く伸びた青い光の手刀を、左手には三角形の青い光の盾を作り出したカサオカが巨大な鷲の前に立つと、カサオカを見下ろした鷲は一瞬だけ動きを止めてから、再び威嚇するように雄叫びを上げる。

やじ馬という名の闘技場の中で、巨大な鷲の虚ろな雄叫びが雲ひとつ無い青空に消え入り、地面を打ったその巨体が歓喜に包まれたとき、ふとウミと呼ばれた女性が持つ1枚の写真が気に掛かった。

するとウミと呼ばれた女性が手に持つその写真を静かに破り、ポケットにしまったとき、ふと目が合ったウミと呼ばれた女性は、どこか冷酷さをも感じるような冷静さに満ちた表情をしていた。

「ここの鷲も、勝手に興奮し始めたか」

巨大な鷲の亡き殻を写真に収めようと再びやじ馬が集まり出し、カサオカがナカオカの顔色を伺うような素振りを見せたと同時に、ふと両手に持つカメラを握り締めるウミと呼ばれた女性も、そわそわとした素振りを見せ始めた。

「それじゃ、警察が来ないうちに行くか」

「・・・あの」

カサオカが振り返り、一同がウミと呼ばれた女性に目を向けると、一瞬だけこちらに顔を向けたその女性は、更に緊張するようにそわそわとして見せた。

「あの・・・カサオカさん、写真、撮って下さい、一緒に。ファンなんです、私」

「・・・ふふっ」

カサオカが緊張感の抜けたような安堵した表情を見せ、一瞬沈黙が流れた後、カサオカはゆっくりとナカオカに顔を向ける。

「おい今、何で笑ったんだよ」

「ううん、別に」

「まぁ・・・写真くらいなら、良いけど」

「ほんとですかっ」

すると嬉しそうにそう言いながらも、どこか落ち着きのある態度のウミと呼ばれた女性は首に掛かる紐を外し、カメラをナカオカに差し出した。

「リアちゃんお願い」

「うん」

「絶対に他の人が入らないようにしてね」

「じゃあ、こっちからかな」

カサオカとナカオカが去り始め、カメラから排出されたポラロイド写真を眺めるウミと呼ばれた女性にふと顔を向けると、その女性は次第に表情を緩め始めると共に押さえるような笑い声を漏らし始めた。

「それじゃ、僕は戻るよ。もうちょっと調査してみる」

「あぁ」

さてと、ここの疑わしい巨大生物は死んだみたいだし、あとは恐らく現場に居ると思われる、巨大生物を操る能力者か。

いや、もしかしたら、操るからってここに居るとも限らないけど。

「ふふっ・・・うふふ、くく」

まだニヤついてるのかこの人。

「くふっ・・・くはは、あはは・・・もう最高」

ここらへんは、わりとタツヒロが準主役みたいな感じになるんですかねぇ。主役であるタツヒロを別の主人公の目線で描いていく、というところがポイントだと、言わせて下さい。笑

ありがとうございました。

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