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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第三章

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隣人たちの名もなき抗争2

ふとテロ組織の敷地内を覗いてみると、目の前には隠れる場所も無いほどの広々とした場所があり、入口の反対側には横に長い廃墟の建物があった。

敷地に入っていった2人を覗いていると、間もなくして10人くらいの武装した人間が建物から姿を現すと共に、その人達は遠くから2人に拳銃を向けて威嚇し始めた。

それにしても、あんな数の武器をどうやって手に入れたんだ?

いや、能力者が絡めば、もはや難しくはないか。

2人が前に動き出した途端に銃声が響いたが、すべての目線を釘付けにする静寂が訪れた直後、その1発の銃弾は1人のテロリストに向かって跳ね返るように飛んでいった。

すると1人のテロリストが勢いよく後ろに倒れ込んだのをきっかけに、2人に向けて一斉に銃が乱射されていく。

しかしサカハラは磁力を、セイシロウは重力を反発させると、2人に向けられた銃弾はすべてテロリスト達に跳ね返っていった。

2人の前方にいるテロリスト達が発砲を止め、傷を負った人を抱えて下がり始めると、同時に入れ替わるように2人の男性が建物から出て来るのが見えた。

武器を持ってないところを見ると、恐らく能力者だろう。

「能力者が出て来たよ」

「そうか、ならお前も出ろ。様子を見て後からまた人を出す」

敷地内に入ったとき、ふと廃墟の建物の3階辺りの位置にロケットランチャーを構えている人が目に入った。

その直後にロケットランチャーが発射されたが、セイシロウ達は磁力と重力を合わせ、まるでブラックホールのように周囲のものをすべてを引き寄せる、強い空間の歪みを上空に生み出していく。

しかしロケット弾がその空間の歪みに到達した瞬間、そのロケット弾は空間の歪みをものともしないかのように難無くそれを通過した。

あれ?

仮面を被り、ブースターを噴き出したが間に合わず、目の前の地面に落ちたロケット弾の激しい爆風に襲われたと思った直後、目を開けると、視界には煙でぼやけた青空が映っていた。

何が、起こったんだ?

誰かの声が遠くから響いてくるのが分かり、起き上がって何となく顔を横に向けると、そこにはノブの顔があった。

「っ・・いっ・・聞こえるか?」

「・・・あぁ」

周りを見ると、煙で少し視界が悪いみたいだが、近くには倒れているサカハラとセイシロウが見えた。

2人が、やられてる?

一体何故・・・。

「今からマナミを呼ぶから、お前は下がれ」

「いや、戦える」

とっさにそう言ってすぐに立ち上がる。

「そうか、でもセイシロウ達にはマナミが必要だ」

やっとノブの声が耳に入ってくると、同時にノブの真剣さに満ちた眼差しと、緊迫感に引き締まった力強い表情が見えてきた。

「じゃあノブはマナミを呼んで来て?僕は2人を運んで置くから」

「あぁ」

ノブが携帯を取り出して電話をかけ始めたのを見てから、セイシロウの下に向かう。

砂埃も晴れてきたので改めて見渡すと、シントとシンジと男性が2人、敷地内に入ってテロリスト達と対峙していた。

意識のないセイシロウを抱き上げると、見覚えがある女性は地面から鎖を湧き出させ、そしてそれを蛇のように扱ってサカハラを持ち上げた。

「こっちに運ぼう」

女性はこちらに顔を向けると頷き、セイシロウの隣にサカハラを置いた。

それにしても何であのブラックホールみたいなのが効かなかったんだろう。

磁力ならまだしも重力まで無視するなんて。

しかも氷の防壁も無視されたみたいだし。

「君は大丈夫なの?」

ふとその見覚えある女性がこちらに顔を向けて声をかけてきた。

「あぁ、ノブが来るまでここを任せていいかな?」

「あ、はい」

敷地内に入ったときにふと1発の銃声が聞こえると、視界の片隅に入っていた1人の自警団の男性が勢いよく倒れ込んだのに気が付いた。

「・・・っぐ」

男性が押さえつけている肩からは溢れるように血が出ているので、反対の腕を掴んで男性を立たせ、素早く敷地の外に連れていく。

振り返ったときに目の前の氷の防壁に瞬く間に銃弾が3発撃ち込まれたが、構わずに進んでいくと、また1人のテロリストが廃墟の建物から出て来たのが見えた。

あいつはどこかで見たことがあるような。

ふと目を向けたシントは地面の砂を浮かせて壁を作り、銃弾を防ぎながら、また別の砂を集めて尖らせ、テロリストに向けて飛ばしていく。

なるほど、シントは砂を操るみたいだな。

黒い炎を体に張り巡らすように纏ったテロリストは腕を一振りさせると、黒い炎を自分の前面に噴き出し、シントが飛ばす砂を打ち消していく。

炎でも人によって色々あるんだな。

次に目を向けたシンジは自警団の男性と共にテロリストと戦っていたが、シンジは後から出て来たその見覚えのあるテロリストに向かい始める。

するとシンジに気付いた見覚えのあるテロリストは、ニヤつきながらどこからともなく身長ほどの柄がある巨大なハンマーを出現させた。

あの時の・・・渋谷のテロリストだ。

シンジが離れ、1人になった自警団の男性は背中から4本の鉄で出来たようなアームを動かして戦っていたが、隙を突かれて怯んだ上に、窓から構えていたテロリストに狙撃されてしまう。

すぐに氷牙を纏って男性を狙撃したテロリストに向けて氷弾砲を撃ち、男性の下に駆け寄りながら更に男性と戦っていたテロリストに氷弾砲を撃つ。

負傷した男性を抱えて一旦敷地から出ようとした時、飛んでいったテロリストを見たハンマー男がすぐにこちらに顔を向けた。

その瞬間にシンジの赤黒い拳がハンマー男に向けて振り回されたが、間一髪でハンマーの柄でそれを防ぐと、シンジに目線を戻しながらハンマー男はそのまま後ずさりしていった。

「大丈夫?」

「あぁ・・・悪いな」

敷地から出ると鎖の女性が出迎え、負傷した男性は鎖によって運ばれた。

ふと敷地内を見渡したとき、日光に反射するように瞬く、小さな光が見えた。

あれは・・・。

とっさに鎖の女性の前に立ちはだかるように身を乗り出した瞬間、こみかみに衝撃と金属音が響いたので、すぐに鎖の女性を塀に隠れさせた。

「大丈夫?」

こちらを見ながら鎖の女性が血相を変えてそう声を上げる。

「平気だよ」

しかしそう応えると鎖の女性は急に笑顔になった。

「やっぱり、あの時渋谷で助けてくれた人だったんだね」

「あぁ、まあね」

そういえば、前にハンマー男に会ったときにこの人も居たな。

すぐに敷地内に戻ろうとした時、風を貫くような音と共に目と鼻の先にある塀の端から瞬間的に小さく破片と粉塵が舞い、思わず顔を背ける。

これが、戦地っていうものなのかな。

遠くに見えるガラスの無い朽ちかけた窓からテロリストが銃を構えているのが目に入った途端、小さな衝撃が右肩を襲う。

ちょっと目障りかも。

撃ってきたと思われるテロリストに向かってすぐに氷弾砲を撃ち返すと、氷の弾は銃口に直撃し、窓枠を覆う爆風と共にテロリストは窓から姿を消した。

ふと大きな爆発音が聞こえた方に目を向けると、すぐにシンジが飛ばされていったのが見えた。

舞い上がった砂が収まると、すでに立ち上がっていたシンジの前方には、ハンマー男と少し疲労が見えるテロリストの男性が立ちはだかっていた。

加勢しようか。

シンジの下に駆け寄ると、ハンマー男がこちらにゆっくりと顔を向けたが、その直後にハンマー男は睨みつけるように表情を歪ませる。

「てめぇは・・・あの時の・・・」

あっちも覚えてたか。

「肩は治ったみたいだね」

やっぱり、そっちにも傷を治す役割の能力者が居るのか。

すると一瞬目を逸らしたハンマー男は、こちらに目線を戻しながら更に怒りを込み上げるように顔を歪ませた。

「ぶっ壊すっ」

そう叫ぶと同時にハンマー男の体がほんのりと光ると、胸元や腕脚の関節に灰色の鎧が現れ、更にハンマーは銀色に変わると共に、槌部分の周りを囲むように刺々しい装飾を纏った。

・・・覚醒か。

ハンマー男がすぐにハンマーを振り上げ、その場で素早く水平に振り抜くと、その瞬間に小さく歪んだ空間が砂埃を上げながらこちらに迫ってきた。

とっさに紋章を出して衝撃波を受け流しながら氷弾砲を撃つが、ハンマー男に届く前に突然爆発が起こり、氷の弾は瞬く間に消し飛ばされた。

何だ今の・・・まさかハンマー男か?

怒りを満たした眼差しを見せるハンマー男の隣に立つ、こちらに掌を向けるテロリストの存在にふと気が付くと、直後に突如爆音と衝撃、そして熱風が顔面を覆った。

・・・っと、なるほど。

視界が晴れたのを確認しながら、再びこちらに掌を向けるテロリストを視界に収める。

「シンジ、ハンマー男を任せて良いかな?」

「あぁ」

「うるせぇぇ」

ハンマー男はシンジの返事と同時にハンマーを地面に叩きつけると、再び歪んだ空間が衝撃波となってこちらに迫ってきた。

シンジが勢いよく横から歪んだ空間を叩くと同時に、ブースターを噴き出してシンジの後ろからテロリストの男性に向かって回り込む。

ハンマー男はこちらに顔を向けたが、シンジが突っ込んでいくとハンマー男は素早くシンジに向けてハンマーを構える。

同時にテロリストの男性がシンジに向かって掌を向けたので、すぐに氷弾砲を撃ち男性の邪魔をする。

こちらに顔を向けたと同時に氷の弾を受け、テロリストの男性が吹き飛んでいくと、シンジの拳を振り払ったハンマー男がこちらに向けて歪んだ空間を飛ばしてきた。

間一髪で歪んだ空間をかわしたものの、ハンマー男はハンマーを振り回したそのままの勢いで槌先をシンジに向ける。

体勢を立て直してテロリストの男性が飛んでいった方を見ると、必死に起き上がろうとしているみたいなので男性に近づいていく。

するとこめかみに衝撃を受けたのでその方にすぐさま氷弾砲を構えるが、足に何かが当たったのでそっちに目を向けてみる。

・・・手榴弾。

爆音と共に衝撃を受け、激しく吹き飛ばされたが、すぐに立ち上がってテロリストの男性を見ると前方は砂埃で何も見えなくなっていた。

目くらましか。

前方に氷弾砲を数発撃つが手応えが分からない。

するとかなり広い範囲の砂がシントに向かって集まり始めると、砂埃もシントに向かって消えていったが、テロリストの男性の姿はすでにそこには無かった。

逃げたか、ならこの建物に入ってみるか。

歩き出そうとしたときに突如目の前に影が出来たので、後ずさりながら空を見上げてみると、突如そこにはゴリラのようなものが大きな音を立て地面に降り立った。

しかしそのゴリラは真っ赤な毛並みをしていて、大きさも普通のゴリラの2倍はあるように見える。

野生の巨大生物が迷い込んだのかな?

いや、けどここは都会の真ん中だ。

目が合った途端にそのゴリラはこちらに向かって走り出したので、すぐに氷弾砲を撃つが、そのゴリラは一瞬のけ反っただけでまたすぐに動き出す。

紋章とブースターを出してゴリラのはり手を受け止め、氷弾砲を数発撃ってゴリラを後ずさりさせながら、更に氷弾砲で追い撃ちをかける。

胸元が凍りついたゴリラは急に怒って暴れ出すと、深く息を吸い込だ後に炎の球を吐き出した。

なかなかタフだな。

紋章を斜めに傾けて炎の球を受け流すと、ゴリラは間髪入れずに何度も炎の球を吐き始めた。

何発か受け流した後に氷弾砲をゴリラの顔に向けて撃ち返すと、ゴリラは大きくのけ反り、直後にゴリラの口元で燃え盛る炎の球が暴発するようにで破裂した。

その拍子にゴリラは後ろに倒れるが、すぐに立ち上がると鼻息を荒くして見せながら再び突撃してきた。

ゴリラの渾身のはり手をかわしながら氷弾砲をゴリラの顔に撃ち、怯んだ隙にブースター全開で氷槍をゴリラの左胸に突き刺し、そしてそのままその矛先から氷弾を撃つ。

しかしゴリラは雄叫びを上げながら氷槍を掴んできたので、更にそのまま胸の中に氷弾を撃ち込んだ。

そして巨大なゴリラはゆっくり後ろに倒れると、少しの間抗うように体を動かしたが、やがてそのゴリラは動かなくなった。

一体どこからやって来たんだろう。

すると動かなくなったそのゴリラは急に溶け出し、すぐに原形が無くなるほどの赤い液体と化した。

溶けた?

しかもこの液体、何だろう。

血にしては、少な過ぎるような。

シントが相手をしていたテロリストもシントの手によって建物の壁の下まで飛ばされていて、起き上がらないところを見ると倒れされているのが見てとれた。

シンジもシンジで、だいぶ学校の出席日数が落ちてるようです。笑

ありがとうございました。

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