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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第三章

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反射女子と剛腕男子

「もうちょっと試していい?」

「あぁ」

「じゃあ、ちょっと逃げてくれない?」

「あぁ」

期待を寄せるようなニヤつきを見せるヒカルコは、こちらに向けた人差し指の前に、小さな透明の薄い板を先程と同じような配列で並べていく。

ブースターに意識を集中させながら、いつでも素早く動けるように構えていると、間もなくしてヒカルコの人差し指から小さな閃光が放たれた。

その瞬間にブースターを噴き出して素早く動き出すと、直後に細い濃い色の光線がすぐ横を通り過ぎていった。

一旦ブースターを止めると、狙いを定めるように眼差しを鋭くして見せながら、ヒカルコは再び人差し指から閃光を放った。

ブースターの出力を上げて光線をかわしながら光線の行き先に目を向けると、その光線は遠くに浮いていた小さな透明な板に吸収されると共に、その透明な板がほんのりと光を帯びる。

あれは・・・。

すると直後にその透明な板は、まるで反射させるようにその光線を放ってきたので、とっさに体をのけ反らせ、間一髪で光線をかわした。

しかしそのまた向こうにある透明な板に反射した光線は瞬く間にこちらの胸元に直撃し、体は勢いよく地面に落とされた。

小さいのにそれなりに威力があるみたいだな。

立ち上がってヒカルコを見ると、ヒカルコは小さく頷きながら、若干の優越感を感じているような顔でこちらを見ていた。

「いくら氷牙でも、光の速さには敵わないみたいだね」

「そうだね」

「じゃあ・・・今日はこれくらいでいいかな。戻ろうよ」

満足げな表情を見せながらそう言って手招きするヒカルコに歩み寄りながら、鎧を解く。

「あの透明な板みたいなものは何なの?」

「あれは、私の光も反射出来て、しかも邪魔にならないように透けて見えるように作った特別な鏡だよ」

一見すると落ち着いた態度に見えるのの、得意げに話すヒカルコのその表情には嬉しさが滲み出ていた。

「そうか」

動き回らない戦法か、賢いヒカルコならではだな。

ホールに戻り、同じテーブルの椅子に座って少し話をしていたとき、ふとシンジがテーブルに近づいてきたのが見えた。

するとシンジに気が付いたヒカルコは、黙ってシンジに顔を向ける。

「おう氷牙」

覇気が満ちているような顔のシンジの手元に目を向けると、その右手首にはブレスレットが着けられていた。

「あぁ」

「ブレスレット貰ったから、闘技場行こうぜ」

またか。

「あぁ」

シンジがヒカルコに顔を向け、2人が目を合わせると、まるで海が凪いだような沈黙が流れた。

「・・・あんたも来ないか?ブレスレット貰ったんでしょ?」

「んー・・・じゃあ行こうかな」

小さくニヤつきながらゆっくりとそう応えたその表情は、戦い慣れしてないヒカルコでもどこか嬉しそうだった。

「また行くの?」

「うんまぁ、シンジが相手じゃまた違うし」

「そうか」

再度闘技場に入り中央に立つと、シンジはすぐに右腕を巨大化させると共に、胸元から右腕にかけてを朱い外殻で覆った。

「どっちから行く?」

シンジは右肩を回したり屈伸したりしながら、こちらとヒカルコに目を向けていく。

「じゃあ私が行く」

ヒカルコがそう言うと、シンジはまるで軽くあしらうような素っ気ない態度で頷きながら、ヒカルコから下がり始めた。

そんなシンジをニヤつきながら見ていたヒカルコも下がっていったので、邪魔にならないように2人から離れる。

「あんたから動いて良いぜ?」

シンジの表情や声、佇まいの至る所から余裕が満ちているのが見てとれる。

ブレスレットはそれほどまでに自信に繋がるのか。

ヒカルコは掌ほどの透明な鏡を数枚、手首を囲むように出現させ、前に出したり配列を変えたりと色々動かした後に人差し指をシンジに向けた。

あれを出す気かな。

ヒカルコの人差し指から小さな閃光が放たれると、その閃光は一瞬のうちに指に向けられた数枚の鏡に反射し、より質量が膨大になって光、そして光線となってシンジの左胸に直撃していった。

シンジは反応して右腕を動かしたものの、光線の直撃を受けると勢いよく突き飛ばされ、そのまま強く地面に倒れ込んだ。

すぐに起き上がったものの、驚きの表情を浮かべながらヒカルコを見たシンジからは、先程の自信が薄れたように見えた。

「何だ今の」

そして立ち上がりながらシンジはその表情を真剣さで固めていく。

「じゃあ次はシンジから良いよ」

自信満々のニヤつきを見せるヒカルコが、そう言いながら掌の前で数枚の透明な鏡を動かしていくと、シンジは少し考え込むような表情を浮かべてからゆっくり走り出し、右腕を後ろに引き下げていく。

その間にヒカルコは数枚の透明な鏡を隙間なく、八角形になるように並べ、そしてその八角形の内側全体に光を当てていく。

するとその八角形は手から常に放たれていく光を、鏡同士で永遠に反射し続けていくと共に、光の質量を膨大させ続けていくと、やがて光は不透明さを増していきながら物理的な壁となった。

シンジは右肘のブースターを使わずに光の壁に軽く拳を突きつけたが、宙に浮きながらヒカルコの前に立ちはだかる光の壁は、全く微動だにしない。

再度右腕を引き下げたシンジは、ブースターを噴き出しながら光の壁を殴りつけるが、それでも光の壁はヒビすら入ることもなかった。

顔色を変えたシンジは再び少し下がって右腕を引き下げると、今度はブースターを噴き出して回転しながら、思いっきり光の壁にその拳を叩きつけた。

しかしシンジの巨大な拳は一瞬にして勢いが失われ、辺りには鈍く重たい衝撃音が響いただけだった。

あの光の密度は侮れないみたいだな。

「くそっ」

「どう?」

ヒカルコがニヤつきながら口を開くと、シンジは依然として宙に浮き留まっているその光の壁に歩み寄り、角度を変えながら光の壁を眺め始めた。

「厚いな。でも守ってばっかじゃダメだな」

「何言ってんの?最初私にやられたの忘れたの?」

光の壁を消しながらヒカルコがすぐに言い返すが、シンジはヒカルコの強気な眼差しに真っ向から向かい合うように、同じような強気な眼差しを返している。

「あんなのやられたうちに入らないし」

ヒカルコが黙ると、強がるように頬を小さく膨らませながらシンジを睨みつける。

「じゃあ特大の出してあげるよ」

「あぁやってみろよ」

するとシンジは吐き捨てるようにそう言って走り出し、再びヒカルコから距離を取っていった。

2人はあんまり仲は良くないのかな。

ヒカルコが両手を前に突き出しながら数枚の透明な鏡を出現させると、シンジは拳を地面に突き立てながら、右腕を盾にするように構えた。

ヒカルコの両手から放たれた閃光が周囲を囲む鏡に反射して両手に戻り、濃くなった光が光線となってシンジに放たれると、シンジの右腕をも覆い尽くした光線は、何かに阻まれるようなこともなく真っ直ぐ壁まで突き進んでいった。

光線が消えるとシンジは拳を地面に当て、腕を杖代わりにしながらゆっくりと立ち上がった。

「そろそろ一点突破じゃ、厳しいんじゃない?」

近づいてきたシンジにヒカルコが優しく声を掛けると、考え込むような険しい顔でヒカルコを見つめるシンジのその眼差しには、先程の怒りや小さな敵意は見られなくなっていた。

「いや、こっからが粘りどころだな」

しかし左手で頭を掻きながらシンジはニヤつき出すと、むしろその表情からは期待感と自信を伺わせた。

シンジはまだ諦めないみたいだな。

「ふーん、まぁシンジらしいけどね、じゃあ私、ホールに戻るよ」

親しげな微笑みを見せながら、そう言ってシンジに背中を向けたヒカルコの態度に、ふと先程とは対照的な雰囲気を感じた。

何だ、仲が悪い訳じゃないんだな。

「やっぱりヒカルコみたいな、自由自在系が1番有利だね」

「それでもオレは右腕にすべてを賭けるぜ」

シンジは右手を開いたり閉じたりしながら、自信に満ちた顔でそう応える。

「そうか」

「ほら、始めるぞ」

「あぁ」

そう言うとすぐにシンジは離れていったので、絶氷牙を纏い、走り出すような構えを取るシンジに向かっていった。

「おいどうした?避けてばっかだな」

しばらく戦っていると、シンジは拳を振り回しながらふとそう口を開いた。

「それにさっきから遠距離攻撃してないな」

紋章を斜めに傾けてシンジの拳を受け流すようにかわしながら、ブースターで素早く回り込んでシンジから距離を取る。

「僕もシンジみたいに、基本的な動きに磨きをかけようと思って」

するとシンジは話を聞こうとするかのように一瞬動きを止める。

「そうか」

そう言うとすぐに動き出して拳を突き出してきたので、紋章を拳にかすらせて機動をずらしながらシンジの右側に回り込む。

するとシンジはすぐに肘を後ろに回してきたので、1歩下がってギリギリの距離でかわすと、シンジはすぐに腕を伸ばし、素早く手の甲を振り回してきた。

膝を地面につけて上半身を後ろに倒しながら腕をかわし、シンジに向けた尻尾から絶氷弾を2発撃ち込んだ。

シンジは衝撃で少し飛んでいったが、すぐに地面を蹴って前に飛びながら、こちらに向けて腕をまっすぐ伸ばしてきた。

とっさにブースターを出して横に避けようとするが間に合わず、拳の外側が肩に当たり、勢いよく回転させられながら斜めに吹き飛ばされた。

立て直しの速さも反応も、以前より上達してる・・・。

ブースターを出して反動を相殺していきながら、倒れることなく体勢を立て直し、絶氷弾を撃ちながらシンジに近づいていった。

しばらく戦った後にホールに戻ると、遠くにいるノブに呼ばれたので、シンジと共にノブの下に向かう。

「氷牙お前、ブレスレット着けてんのか?」

シンジと共に椅子に座り始めたときにそう問い掛けてきたノブの眼差しに、ふと小さな緊張感を感じた。

「着けてないよ」

「1つくらい着けろよ。ユウジも言ってたじゃねぇか」

うなだれるような口調でノブが言葉を返してくるときに、シンジがノブに顔を向けたのが見えたが、シンジのその表情は、どこか冷淡さが伺えるほどの落ち着きに満ちていた。

「氷牙には第二覚醒の力があるから、良いんじゃないの?」

「そういやそうだよな、まぁこいつは特別だしな。お前だって明日のために貰ったんだろ?」

するとノブはまるで当たり前かのようにシンジにもそう声を掛けた。

明日のため?

「うん、オレは1つ着けてくから」

明日のって、テロ組織に行くやつかな。

「ならまあ良いか、お前も第二覚醒してんだしな」

「シンジもテロ組織に行くの?」

「あぁ行くけど」

するとシンジはすぐにこちらに顔を向け、平然とそう応える。

「そうか。そういえばここからは何人行くの?」

「4人だな。オレとシンジとお前とセイシロウだ」

「そうか」

セイシロウも、意外と学校には執着しないタイプなんだな。

「じゃあ、オレは部屋に戻るかな」

ノブが席を立って歩き出すと、残りのジュースを一気に飲み干したシンジも立ち上がった。

「オレも戻るよ」

「あぁ」

ホットミルクを一口分注いですぐに飲み干し、部屋に向かう。

扉を開けると暖房の熱気は伝わって来なかったが、扉を開けた音を聞いたのか、ミサがリビングからこちらに向かって歩いてくるのが見えた。

「氷牙、すぐにシャワー浴びなさいよ」

靴を脱いでからミサを見ると、ミサは少し困ったような目つきでこちらを見ていた。

「まぁそう言うなら」

「ほら」

背中を押されながら脱衣所に入るとすぐに扉を閉められたので、とりあえず服を脱ぎ、脱いだ服をドラム式洗濯機の隣にあるステンレス製の網棚に置かれた、精密に編み込まれたような竹籠に入れる。

浴室に入り、蛇口の横にある水の温度を調節出来るバーを回しながら、何となくシャワーを浴びる。

フェイスタオルで頭を軽く掻きながらリビングに戻ると、ミサは窓の向かい側のソファーに座りながらテレビを見ていた。

ミサを通り過ぎてミサの向かい側にあるソファーに座ろうとしたとき、ふとミサが驚くような声を小さく上げる。

ミサに顔を向けると、ミサは若干の困惑さを纏った鋭い眼差しをこちらに向けていた。

「ねぇちょっと早くないかしら、戻ってくるの。ちゃんと体洗った?」

ヒカルコとシンジの仲は発展するんでしょうかね。でもそれより気になるのはユウコとシンジの発展でしょうかねぇ。笑

ありがとうございました。

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