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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第三章

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反射女子

そわそわとしたような素振りを見せるカズマは、話をし始めながら隣の椅子に腰掛けていく。

「何?」

「ちょっとミサさんに頼んで欲しい事があって」

ミサに頼み事?

「うん」

「うーん・・・まず、連れてきてくれないか?実際に見て貰った方が早いし」

何度か会議室をちらちらと見ながらも、カズマはその表情に少しずつ落ち着きを取り戻していった。

カズマはあんまりミサと話したことないから、直接頼むのは気まずいのかな。

「分かった」

カズマと共に会議室に向かい、静かに扉を開ける。

「ミサ、ちょっといいかな?」

ユウジが話を止め、ミサが少し驚いたような顔でこちらに振り向く。

「一緒に来て欲しいんだけど」

「・・・でも、まだ会議が終わってないのよ」

「行ってくれば?もう本題は終わってるし」

ユウジがいつものような軽いトーンでそう言うと、ミサは申し訳ない気持ちを目配せするように皆と顔を合わせてから、素早く席を立った。

会議室を出たミサにカズマを会わせると、ミサはどこか困ったような眼差しで小さく首を傾げる。

「えーと・・・確か、妖精の」

「カズマだよ」

「そうよ、カズマだわ、ふぅ、スッキリした」

そう言いながら安心したような笑みを浮かべたミサを連れ、カズマと舞台を下りていく。

「カズマも行くの?」

「あぁ、実はカズマにミサを連れてきて欲しいって頼まれたんだ」

それを聞いたミサは目を細め、まるで警戒するような眼差しをカズマに向けていく。

「何よ、用って」

「まずは見て貰った方が早いでしょ?」

少し緊張した様子で応えるとすぐに背中を見せたカズマに、ミサは不満げな表情を浮かべながら小さく唸り出した。

「そういえば、妖精さんは?・・・えーと、確か」

「レベッカだよ」

そう言うとミサは不満げな表情をこちらに向けながら腕を掴み、こちらの耳を自身の口元まで引き寄せてきた。

「・・・今そう言おうとしたのよ」

「まぁ・・・」

するとカズマは再びそわそわとした素振りを見せると共に、何やら言いづらそうに口ごもり始めた。

何となく様子が少しおかしいな。

廊下に出てすぐ左手にある階段を上がると、カズマはポケットから財布を取り出す。

どうやら行き先はカズマの部屋らしいな。

カズマの部屋に着くと、カズマはそのまま鍵を開け部屋に入っていった。

「レベッカ」

リビングの方に行きながらカズマが名前を呼ぶが、レベッカはカズマの下には飛んで来ない。

具合でも悪いのかな。

立ち止まったカズマの目線の先に顔を向けると、そのベッドの上にはシーツで体を隠した、裸の女性が座っていた。

誰・・・いや、どっかで見たような。

「連れてきたよ」

「うん」

カズマが親しげに話しかけたその女性をよく見ると、背中からは透明な4枚の羽が生えていた。

もしかして・・・。

「・・・レベッカ?」

「え?」

ミサは大きな声を上げてこちらに顔を向けてから、まじまじとその女性を見つめ始める。

「うん」

するとその女性は恥ずかしそうに微笑みながら小さく頷いた。

でかいな、成長でもしたのか。

「ほんとに?」

ミサが近づきながら声を掛けると、レベッカは不安げな表情を浮かべながら再び小さく頷く。

「鉱石を使ったらいきなり大きくなってさ」

両手を腰に当てながら、カズマは困ったような顔でレベッカを見る。

鉱石か・・・。

カズマがパワーアップしたからレベッカが大きくなったのかな。

「そしたら服が破れたから」

そりゃそうだな。

「ミサさん、レベッカに、服、貸して貰えないかな?」

言いづらそう苦笑いを浮かべながらカズマがそう言うと、ベッドに座りながらミサは優しい微笑みをカズマに向けた。

「そういうことだったら、いくらでも貸すわよ」

「そっか、良かったね、レベッカ」

「うん、ミサ、ありがとね」

レベッカが満面の笑みを見せると、ミサも笑顔でレベッカに頷き返す。

「じゃあ今から持って来るから、もう少し待っててね」

「うん」

レベッカが笑顔で頷いたのを見てから立ち上がったミサは、歩き出すとすぐに鋭い眼差しをこちらに向けてきた。

「氷牙、何してるのよ、行くわよ?」

「あ、あぁ」

ミサならたくさん服を持ってるみたいだし、頼んで正解だろう。

廊下に出た途端、ミサは何やら目を細め、見下すような冷たい眼差しをこちらを向けてきた。

「氷牙、レベッカの事ジロジロ見てたでしょ」

「服着る時に、あの羽は少し邪魔だなって思ってただけだよ」

「ほんとかしら?」

しばらくしてミサの部屋に入ると、ミサはキッチンの向こうにある開けっ放しにされている扉に向かっていく。

この扉もストッパーが嵌められてるみたいだけど、ここはやったらまずいんじゃないかな?

ホテルの部屋とミサの家の部屋の境界線に立ち、タンスを開けているミサを見る。

「ちょっと、早く来なさいよ」

一瞬こちらを見たミサはそう言うと、すぐにタンスの中の服を眺め始めた。

「あぁ」

「んー・・・これと、これと・・・」

呟きながら服を選び、タンスから服を出していくと同時に、ミサはその服をこちらに差し出してくる。

荷物持ちって訳か。

差し出されてくる服を受け取っていたとき、ふとタンスの上に置いてある写真が目に入る。

どうやらミサは三姉妹らしい。

2人用の少し長めの椅子には末っ子と思われる少女と若いミサ、椅子の後ろには長女と思われる女性が立っていて、その写真を見ていたときにふとミサの手が止まったのに気が付いた。

「それ5年前の写真よ。あたし姉と妹が居るのよ」

喋り出したミサに顔を向けると、こちらに顔を向けたミサはどこか嬉しそうな笑顔を見せていた。

「そうか」

「あ、そうだわ、背中が空いたワンピースも持って行こうかしらね」

見た感じ1週間分くらいの量だろうか。

服と靴を持ってカズマの部屋に戻り、ミサが扉をノックすると、すぐにカズマが出迎えた。

「持って来たわよ」

「あ、うん」

カズマの後についてレベッカの下に向かい、ミサの指示に従って服をベッドに置く。

「何してるのよ、早く出てって」

「あ、うん」

少し慌てて歩き出したカズマと共に廊下に出るが、扉を見つめるカズマのその表情は、終始小さな不安を感じさせていた。

「カズマは覚醒したの?」

「え?してないけど」

驚くようにこちらに振り向いたカズマだが、表情は変えずにすぐにそう応える。

「でも鉱石使ったんでしょ?」

「あ、オレじゃなくてレベッカがね」

「そうか」

レベッカが鉱石を使ったのか。

召喚しただけで、カズマとは特別な繋がりとかは無いのかな。

少しして沈黙を破るようにドアノブの中から重厚な音が聞こえ、ゆっくりと扉が開かれると、そこには安心感に満ちた笑顔を浮かべるミサが立っていた。

「良いわよ」

「うん」

カズマは部屋に入ると足早にレベッカの下に向かったので、安心感の中に嬉しさが見える笑顔のミサと共にゆっくりとカズマについていく。

「どうかなぁ」

レベッカは照れながらもカズマにゆっくりとターンして見せる。

「すごい似合うよ」

カズマも照れながら笑顔でそう言うと、レベッカは嬉しそうにミサに顔を向け、そんな微笑み合う2人や、レベッカの服装を眺めるミサも、どこか満足げだった。

「カズマ、ちゃんと洗濯してあげなさいよ」

「あ、分かってるよ」

カズマが戸惑うように頭を掻いていると、ミサがこちらに近づいてきた。

「ほら行くわよ」

「あぁ」

「それじゃレベッカ、何かあったらまた呼んでいいからね」

「うん、ありがとね」

優しく微笑むミサに笑顔で手を振るレベッカを後にしてホールに戻ると、そのままミサは舞台に上がっていったのでホットミルクが出る機械の下に向かうが、適当に椅子に座ったときにはミサは舞台を下りてきていた。

「もう終わったの?」

「えぇ、正確にはもう終わってたのよ、それでちょっと話を聞いただけよ」

「そうか」

間もなくして夕食が運ばれてきたのでミサと共に取りに行き、料理を持ってテーブルに戻ったとき、ふと廊下から出てきたカズマとレベッカが見えた。

ちょっと羽が目立つけど、それ以外は違和感は無いみたいだな。

「皆さんどうも」

食事が終わりミサと話していたとき、ふとした静けさを破るようにユウジの声が会場に響き始めた。

「他の組織、または警察からの応援要請に積極的に応える人は、出来れば鉱石の使用またはブレスレットの装着を積極的に考えて欲しいと思います。ブレスレットの数も少し増えたので、欲しい人は会議室までお願いします。以上です」

堕混は倒したけど、別の世界にも出るなら、また異世界に行かなきゃな。

またこの世界に来ないとも限らないけど、反乱軍を壊滅させないと女王も安心出来ないだろう。

「じゃああたし会議室に行くわね」

「あぁ」

またブレスレットでも編みに行くのかな。

「よぉ氷牙」

声を掛けてきたノブに顔を向けると同時に、ノブは隣の椅子に腰掛ける。

また闘技場かな。

「ちょっと頼みたい事があるんだ」

しかし腕を組んだノブは落ち着いた表情をしていると共に、その眼差しは少しだけ真剣さを纏っていた。

「そうか」

「明日、神奈川の奴らと一緒に、テロリストのアジトに乗り込もうと思ってんだよ」

もうそんな計画があるのか。

「初めて警察と協力してテロ鎮圧する案件だから、お前も来てくれないかと思ってな」

「そうか、テロリストの人数とか分かる?」

するとこちらに顔を向けたノブが、少し期待を寄せるような顔つきになった気がした。

「はっきりとは分からないな。だけど能力者と普通の人間が混ざってるらしいから、少なくはないだろうな」

「そうか」

本格的なテロ組織なのかな。

「じゃあ朝また詳しく話すから、そういう事で」

「あぁ」

ノブは席を立つとそのまま他の人と闘技場に入って行った。

異世界はこの後でもいいかな。

考えてみると、テレビとか見ないせいもあるのか、全く世の中の事が把握出来てないな。

異世界に行ってる間は情報なんて知れないし、むしろ異世界から帰ってきた時はテイラーみたいに積極的に情報を集めた方が良いのかな。

もし日本の情勢を把握するとしたら、1番知るべきことは何だろうな。

各テロ組織の動向?それとも、世界全体を見通すための情報?

「またぼけーっとしてるの?」

どこか嬉しそうにニヤつきながら、ヒカルコはそう言って前の椅子に静かに座った。

「・・・そうだね」

何だか機嫌が良さそうだな。

「なかなか着け心地が良いみたい」

手首に着けたブレスレットを見せながら、ヒカルコは零れるような微笑みを浮かべる。

「良かったね。2つ貰ったの?」

「うん・・・ちょっと・・・闘技場に行かない?」

そう言ってヒカルコは少し目を逸らし、恥ずかしそうにニヤつき出す。

早速力を試したいのか。

「あぁ」

そういえば、ヒカルコと闘技場に行くのはリーグ戦以来なかったな。

闘技場の中央に着くと、ヒカルコは緊張しているかのように表情を引き締めながら、ゆっくりと周りを見渡し始める。

「じゃあ・・・尻尾出して下がってよ」

「あぁ」

絶氷牙を纏ってヒカルコから距離を取っていくと、ヒカルコは両手を前に出しながら、念じるように一点を見つめた。

ヒカルコの両手が光に包まれると、同時に両手首に着いてある鉱石も共鳴するかのように光り出し、そしてやがてヒカルコの全身が光に包まれた。

すると透明な薄い板状のものが数枚、両手の前に、両手の方を向くように傾きながら、両手を囲むような円になるように並んで現れていった。

何だろ、あれ。

直後に両手から閃光が放たれ、透明な薄い板に反射して光を帯びたように見えたその瞬間、数枚の薄い板の光は一瞬の内に両手に戻りそして両手から1本のかなり太く濃い色の光線となって前面に放たれた。

逃げる間も無く、遥か遠くの背後の壁まで凄まじい圧力で押し潰される。

そうだった、ヒカルコは質量がある光を操るんだった。

すぐに光線が止んだのでヒカルコに近寄ると、ヒカルコは驚きと不安が入り混じったような表情でこちらを見つめていて、ふと後ろを振り返ると、背中を打ち付けた壁には大きな浅い窪みが出来ていた。

「大丈夫みたいだね」

損傷の無い鎧を見ながら、ヒカルコは少し安心したように口を開く。

ミサの服のセンスはどんなんでしょうね。笑

ありがとうございました。

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