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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第三章

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つかの間の目覚め

堕混が再び吹き飛び地面を軽く転がると、その瞬間に街の隅からジェイクの戦いを見ていたやじ馬から小さな歓喜が湧く。

強くなったジェイクとなら、レイと一緒にベイガスを倒したときみたいに、堕混を倒せるかも知れない。

反撃の隙を与えないように追い打ちをかけるジェイクの後に続き、絶氷槍を堕混の翼目掛けて突き出す。

しかしジェイクの拳と絶氷槍を同時に受け止めながらジェイクを見上げる堕混の眼差しには、少しの陰りも伺えることのない闘志に満ちていた。

その瞬間、堕混の体に纏う白黒の鎧のあちこちに亀裂が入ると同時に、その亀裂からまるで噴火する前のマグマの如く光と闇が洩れ出す。

そして直後に堕混の分厚い鎧が弾け飛ぶと、脚や腕、肩から胸元にかけての一部分に暗い金色に反射する鎧が現れた。

何だ?脱皮か?

再び何かを喋ったジェイクが押さえられてる拳を押し返そうと力み始めるが、強くなったジェイクの力にさえも力負けしない堕混に、ジェイクは次第に怒りをあらわにしていく。

気合いのぶつけ合いという名の沈黙が流れ始めると同時に、堕混の体に暗い金色の光が立ち込める。

何て力だ・・・ブースターを全開にしてもまったく動かない。

「らあぁっ」

その瞬間に体が軽々と振り回され、直後にその勢いで巨体を有するジェイクが天高く放り投げられた。

そして再び軽々を振り回されてから宙に放り投げられると、その先には今まさに大きな放物線を描いているジェイクが居た。

ぶつかるっ・・・。

ジェイクに背を向けブースターを噴き出したとき、こちらを見上げながら胸元に光と闇を渦巻かせる金色の球を作り出す堕混が視界に入ると、直後にこちらに向けてその光と闇を纏った金色の球が撃ち出された。

何かまずそうだな。

とっさに迫りくる金色の球を紋章で受け止め、金色の球の軌道を斜め上にずらしたその瞬間、あまりの衝撃の強さに勢いよく視界が回転してしまう。

その後にぶつかった何かがジェイクだと分かった直後、まるで何百ものダイナマイトが同時に爆発したような音が上空から轟き、そして直後に金色に瞬く爆風が視界を覆っていった。

くっこれは・・・。

押し潰すような風圧で地面に叩きつけられた頃には、金色に瞬く風は過ぎ去っていたものの、ふと空を見上げたときに映った数々のビルの先端が、まるで鋭利な何かにえぐり取られたかのように大きく欠けていたことに気が付いた。

あれはまずいな、世間的に。

立ち上がりながらジェイクに目を向けると、地面に倒れ伏しているジェイクは動く気配を見せず、微動だにしない。

気を、失ったか。

きっとダメージが相当積もってたんだろう。

ビルの瓦礫があちこちに落ちている街の中で、すべての目線を集める堕混に体を向けると、堕混もこちらに狙いを定めるように真っ直ぐ睨みつけてきた。

仕方ないな。

ブースターを噴き出し、いびつな金色の剣を作り出して待ち構える堕混に向かっていく。


極点氷牙、氷結!


いびつな金色の剣を振り上げたときに超低温の衝撃波を浴びた堕混は、そのままの体勢で凍りつくように動きを止めた。

「くそぉっ」

金色の光が堕混の全身に立ち込めると同時に、紋章を堕混の胸元にぴったりと押し当てる。

「蒼月」

耳の奥まで突くような氷砕音と共に視界が青白く染まると、その青白い爆風は瞬時に辺り一面に地面を這うような氷柱を作り上げていった。

「ぐ・・・」

もし死神じゃなくて悪魔なら、心操術を解くために手加減しないとな。

消えかかる青白いそよ風の中から金色の光が立ち込めた直後に、青白いそよ風を吹き飛ばす突風が噴き出したので、ブースターを軽く噴き出しながら姿を現した堕混を見据える。

こちらを睨みつける堕混の表情にふと疲労感が伺えたとき、堕混は力が抜けたようにゆっくりと地面に膝を落とした。

「くそ・・・体が重たい・・・」

「君は、死神なの?」

堕混が顔を上げると、すぐにその疲労感に耐えようと歪ませる顔の眉間に小さくシワを寄せる。

「・・・馬鹿な、私は、死神ではない」

お、三国の人か。

さっきの堕天使の女性は殺しちゃったけど、この人は三国に連れて帰れるかもな。

「ユリは、何処だ」

ん、花?

いや、人の名前か?

重たい首を回すようにゆっくりと街を見渡した堕混は、ふとその表情に何かを心配するような寂しさを伺わせる。

「あいつは天使で、死神の術にかかっている。だから、三国に、帰してやらないと」

その瞬間に銃声が響き、何かが堕混のこめかみを貫いた。

あ・・・。

それが銃弾だと理解出来た頃にはすでに堕混は倒れ伏していて、銃弾が飛んできた方に目を向けると、そこにはスナイパーライフルの構えを解いていくゲイルが居た。

ゲイルか、撃ったのは。

こちらに歩み寄り始めたゲイルが持つスナイパーライフルが、突如瞬く間に崩れ出し、そしてコンクリートの塊や鉄屑となって地面に散らばっていく。

しかしそんな事を気にする素振りすら見せずに、ゲイルは鎧を解いたこちらの目の前で立ち止まった。

小さなトランシーバーで誰かと話した後、ゲイルはジェイクに指を差してからある方へと促すような手振りを見せた。

その方に目を向けると遠くには先程の少女を連れたテイラーが見え、その時にゲイルの言いたいことが何となく分かった。

「氷牙、ジェイクを彼女の元に連れて来て下さい」

「分かった」

そこから手を挙げるテイラーに手を挙げて応え、絶氷牙を纏ってジェイクの下に飛んでいく。

気を失っても巨大化したままなんて・・・。

ジェイクの腕の下に潜り込み、ブースターを噴き出してジェイクを運ぶ。

あの子をこっちまで連れて来れば良いんじゃないのかな?

少女の目の前でジェイクを下ろすと、少女はジェイクの頭の傍に歩み寄り、小さく膝を曲げる。

「ジェイクっ」

そして少女はジェイクの頬を勢いよく叩いた。

あれれ、叩くのか。

テイラーが少女に声を掛けると、2人は揃って肩をすくめて微笑み合った。

「息吹き掛けないの?」

こちらに顔を向けながらイヤホンマイクに指を当てるテイラーは、微笑みながらも少し困ったような顔色を見せる。

「彼女の力は、意識がある時にしか効果が無いんです」

なるほど、厄介だな。

「他に傷とか直せる人は居ないの?」

「そういう力を持った人達は、皆国に雇われて戦地に行っています」

イングランドじゃ、もう国が能力者の存在を容認してるのか。

戦地って言っても、恐らくは能力者絡みの戦争なんだろうけど。

ゲイルがテイラーの下に歩み寄ると、2人は話しをしながら堕混の遺体がある方へと顔を向けた。

何となく堕混の遺体がある方へ目を向けると、翼が消えていた堕混の遺体は、武装した警官によって救急車に担ぎ込まれようとしていた。

仕方ないか、三国の王達は堕混を許しても、この国の人間は誰ひとりとして堕混を許さないだろうし。

「テイラー、僕はこれで帰っても良いかな?」

こちらに顔を向けたテイラーが歩み寄ってくると、テイラーは安堵感の伝わる表情で喋り出した。

「応援に来てくれて、本当にありがとう。氷牙が居なければ、もっと被害が出てたでしょう」

「また何かあったら、呼んでよ」

テイラーが頷き、親しさに若干の色気が混ざった笑みを見せると、ゲイルに何かを告げてから組織に繋がる扉がある場所へと歩き出した。

「日本でも戦争をしてるんですか?」

「大きな戦争はしてないと思うよ。今は小さなテロが絶えないだけかな」

戦争か、こうしてる今も別の堕混がどこかの世界でテロを起こしてるのかな。

しばらくしてある角を曲がったとき、依然としてざわめきの止まない空気に、テイラーもどこかそわそわとした素振りで周りを見渡しているのに気が付いた。

「氷牙、朝ご飯はもう済ませました?」

「あ、いや、日本じゃもう夕方だと思うし」

するとテイラーは照れるような笑みを浮かべながら、何かを言いたそうな表情で目を小さく泳がせた。

「私はまだです」

そう言うとテイラーは何かを訴えるような眼差しで笑みを見せつける。

「じゃあ、どっかで食べる?・・・って言っても、僕、お金持って無いけど」

「大丈夫です。組織の料理は無料ですから」

とあるビルの非常口から組織に戻り、テイラーに続いてすぐ左手にある扉を抜けると、そこはカウンター越しに調理場の見える、明度の高い照明が全体に行き届いた大きなレストランに繋がっていた。

「氷牙は知ってますか?ロシアとアメリカの中間辺りの海上で、両国の能力者が頻繁に戦闘していることを」

「いや、海外の情報はあまり入ってこないから」

小さく頷くとテイラーは、カウンター越しに受付を構えるように立つウェイトレスに話しかけた。

「氷牙は何を食べますか?好きなものを言えば何でも出てきますよ」

メニューも無いのかな。

「テイラーは何にするの?」

「私はラムチョップにします」

ラムって、羊だよな。

「じゃあ僕は鶏肉を焼いたものでお願いするよ」

焼き鳥出るかな?

再びウェイトレスに話しかけたテイラーはカウンターの角を曲がり、飲み物が出る機械が並ぶ場所に向かった。

「このままでは、いずれ大きな戦争が起こると誰もが心配しています」

「そういう状況は世界中であると思うから、もしかしたら近いうちに本当に戦争が始まるかもね」

しばらくするとウェイトレスが、受付をするカウンターから右に曲がった受付とは別に仕切られたカウンターの方に頼まれた料理を出していった。

あら、普通にプレートで来たか。

料理を受け取ったとき、すれ違い様に空いたお皿を持った人がカウンターに訪れると、その人は空いたお皿を料理が出てきたカウンターに置いて立ち去っていった。

なるほど、こっちは受け取りとお皿の返却の専用口ってことか。

「テイラーは世界情勢の情報も集めてるの?」

「はい。そういった情報を知っておいても損はありませんから」

それはそうか。

「もしアメリカとロシア間に戦争が起こったら、日本もアメリカから支援要請が来ます。だから氷牙も早い段階からの情報収集は怠らない方が良いですよ」

「そうだね」

国同士での戦争にならないようにしようとしても、能力者が政府に手を出したら政府も黙っていられなくなるだろうし。

第三次世界大戦も遠くはないか。

しばらくして日本の組織に続く扉の前に立つと、テイラーは何かを喋りながら手を差し出した。

「また近いうちに助けを求めると思います」

「あぁ」

握手するとテイラーはイヤホンマイクを返してきたので、イヤホンマイクを受け取り、手を振るテイラーに応えながら扉を閉めた。

「お帰りなさい」

「あぁ」

翻訳機をおじさんに返し、会議室への扉を開けると、真っ先にこちらに顔を向けたマナミは黙って小さく手を振った。

マナミを見たミサがこちらに顔を向けるが、ミサはすぐに喋っているユウジの話に集中しようと、ユウジに目線を戻す。

「だからやっぱり俺は量より質派だなぁ、その方が目が行き届きやすいしね」

ホールに出ようとしたとき、ユウジに顔を向けていたはずのミサに呼び止められる。

「イングランドには行ったのかしら?」

「まあね。堕混も死んだよ」

「まあ。でも話は出来なかったでしょ?」

落ち着き払ったような表情のミサは、暖かさの感じる眼差しでこちらを見上げている。

「いや、イヤホンマイクくらいの自動翻訳機を使ったから、全く問題は無かったよ」

すると一瞬眉間にシワを寄せたミサは、何故か不満げな表情を見せながら目を逸らした。

「あらそう」

「へぇ、そんな物どこで手に入れたの?」

するとユウジは興味を湧かせたのか、目を輝かせながらこちらに顔を向けた。

「おじさんに言ったら、普通に貸して貰えたよ」

「おお、サミットぐらいでしか見れないと思っていたけど、案外簡単に手に入るんだね」

腕を組んで嬉しそうに頷いてユウジが呟いているのを見ながらホールに出る。

ホットミルクを飲みながら適当に椅子に座っていると、ふとカズマが少し慌てた様子でホールに入ってくるのが見えた。

直後にカズマと目が合うと、カズマは何やらひらめいたような顔をして小走りで近寄ってきた。

「氷牙」

「何かあったの?」

「ま、まあね・・・あのさ、ちょっと頼みがあるんだけど」

結局おいしいところを持っていったのはゲイルってことになるんでしょうかね。笑

ありがとうございました。

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