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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第三章

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ストーリー・オブ・ドリーム

ふと数人が舞台を上がっていくのが見えると、その人達を追うようにまた数人が舞台に向かっていった。

持つだけで良いって事は、幾つも持って戦ったらどれくらい変わるのかな。

「よう、氷牙」

「あぁ」

「暇だろ?闘技場行こうぜ?」

「あぁ分かった」

席を立ちノブについて行くと、闘技場への扉の前にはヒロヤと1人の知らない男性が居た。

「おう」

「あぁ」

「君とやるのは初めてだな」

何となく若い男性には似合わないような、メルヘンチックさを感じさせるネックレスが印象的なその知らない人は、若さの感じる顔立ちから敵意のない強気な眼差しを見せる。

「そうだね、君もリーグ戦出なかったの?」

「まあね、最近になって力の増強の幅が増えたから、戦いに興味が湧いて来たんだ」

その男性が得意げに微笑んでそう応えているとノブが歩み寄って来た。

「そうか」

「まぁ、とりあえず行こうぜ、タツヒロ」

ノブがそう言うとヒロヤが闘技場への扉を開ける。

タツヒロ?この人がそうなのか。

「またバトルロイヤル?」

「・・・いや、シンジから聞いたぜ?お前、第二覚醒してるんだってな。だから是非とも手合わせしたくてな」

ノブはいつものような明るい口調で応えているが、何となくヒロヤの表情には曇りのようなものが伺えた。

「まさか、3対1?」

「いやいや、3連戦ってところだな」

「そうか・・・まぁそれなら良いよ」

「おうそうか、じゃあ行く順番決めようぜ」

そしてノブはヒロヤとタツヒロと共にじゃんけんを始めた。

もし絶氷牙が倒されたら、極点氷牙で3対1にでもしようかな。

「オレが1番か。じゃあとりあえずお前らは控えて置いてくれ」

「あぁ」

手を挙げて応えたヒロヤがタツヒロを連れてノブから離れていくと、ノブはまるでスイッチが切り替わったかのようにその表情に真剣さを纏わせた。

「準備は良いか?」

そう言ってノブは膝上までの両足に、西洋の甲冑のようなイメージを感じさせる、光沢のない白くくすんだブーツを出現させた。

「あぁ」

氷牙を纏い構えると、ノブは離れたその位置からこちらに向けて蹴りを繰り出し、同時に足の底からまとまった衝撃波を飛ばしてきた。

ブースターを使い、横に流れるようにそれを避けてノブに氷弾を撃つと、ノブは足の底から地面に向けて衝撃波を出し、高く跳び上がった。

そしてすぐに空中を蹴るようにして衝撃波を出し、方向転換をして突っ込んできたので、ノブに向かって氷弾砲を撃つが、ノブはその場で宙返りしながら衝撃波を撃ち出し、氷の弾を迎撃する。

その瞬間、ノブを覆うほどの氷の弾の爆風は衝撃波に押し出され、視界は瞬く間に青白く染まった。

すぐに回り込んでノブに氷弾を構えるが、その直後、ノブの足の底はこちらの顔に着くほどの距離に出現した。

何っ・・・。

まともに衝撃波を顔面に食らい、地面を転がるが、すぐに立ち上がりノブを視界に納める。

おかしいな。

瞬間移動でもしたのか。

ノブに氷弾を撃つと同時にノブも衝撃波を撃ってきたので、上に飛びながら氷弾砲を構え、ノブが上に跳び上がった瞬間に氷弾砲を撃つ。

空中で足踏みするように衝撃波を撃ち出し、横に間一髪で避けたノブに、すぐさま氷弾砲で追い撃ちをかけるが、氷の弾がノブに当たると思った瞬間、再びノブの足の底が突如目の前に出現した。

やはり瞬間移動か。

体の前面を強く押し付けてくる衝撃波を背中のブースターから噴き出す空気で相殺しながら、とっさにノブの足を掴む。

「何っ」

ノブが口走ると同時に氷弾砲を構えるが、その瞬間に背中に激しい衝撃がのしかかり、同時に掴んだノブは残像として消えて行った。

地面に落ちる時に上空に振り返ると、そこにはノブが居た。

分身か?

ブースターを噴き出そうとした瞬間にノブが衝撃波を撃ち出し、勢いよく地面に叩き落とされたが、すぐに立ち上がり、足の底から微弱な衝撃波を噴き出しながらゆっくりと地面に降り立つノブを視界に納める。

「それが新しい力?」

「あぁ、まあな、言っただろ?時間を跳ぶんだ」

その瞬間に相手の動きを見据えるような眼差しを見せるノブの顔から、優越感がかいま見えた。

「タイムスリップ?」

「まぁ・・・簡単に言や1秒だけだけどな」

そう言ってノブは目線を落としながら、少し照れるように表情を緩ませる。

1秒だけって、たった1秒で一体何が出来るんだ?

「そろそろ本気出せよ」

ノブは再び表情を引き締めていくと、まるで無意識にしているかのようにさりげなくブーツの爪先で地面を軽く突くが、鈍く消え入るその小さな音は静寂に包まれた闘技場の中では妙な存在感があった。

「そうか」

絶氷牙を纏うと、ノブは強気な微笑みを浮かべてから強く地面を蹴り、前に跳び出した。

こちらも前に飛ぶが、すぐに後ろに振り返ながら絶氷弾を構えてみると、そこにはまるで相手の背後を取って油断しているかのような表情のノブが居た。

やっぱりな。

すぐさま絶氷弾を撃つと、ノブは驚きの表情を浮かべながらもとっさに上体をずらすが間に合わず、体を掠めて破裂した氷の弾の爆風に吹き飛んだ。

「くそっ何でだっ」

ノブは立ち上がりながら地面を軽く殴りつけて声を上げる。

掠ったとは言え、生身に絶氷弾は厳しかったかな。

「・・・殺気かな?」

「何?」

焦りが伺え始めたもののノブは素早く深呼吸し、再び冷静さの感じるものに表情を引き締める。

どうやら速さでは敵わないみたいだし、もしかしたら逆に動かない方が良いのかも知れない。

ノブは衝撃波を撃つとすぐ跳び上がったが、その場から動かずにブースターの出力を上げ、衝撃波の勢いを無効化していく。

衝撃波が消えてすぐに絶氷弾をノブに構えるが、ノブはすでに後ろへ回り込もうとしていた。

追うように紋章をノブに向けていった瞬間に背中に衝撃が襲ってきたが、すぐさまブースターを衝撃が来た方向と逆の方向に吹き出して衝撃を無効化し、後ろに居るであろうノブに向けて絶氷弾を2発撃つ。

「ぐっ」

すると1発の絶氷弾に当たったノブは吹き飛ばされ、そのままヒロヤ達を通り越していった。

どうやら連続的にタイムスリップは出来ないみたいだな。

タツヒロがノブの下に駆け寄っていくと、ノブは必死ながらも起き上がろうとし始める。

するとそんなノブを見て安心したのか、ヒロヤがこちらの方にゆっくりと歩み出した。

「次はヒロヤだね」

「あぁ」

そう応えながらヒロヤは身長ほどある、ただの光が形を成したような剣を作り出した。

しかしヒロヤはその光の剣を手には直接持たず、手の動きに合わせて動かすように浮遊させた。

なるほど、間合いが取りづらいようにした訳か。

ヒロヤが光の剣を横に振ると、その瞬間に遠い距離を詰めるほどに剣が伸びてきたので、紋章を出して光の剣を受け止める。

いや、元々ヒロヤに間合いなんて要らなかったか。

光の剣を押さえながら絶氷弾を撃つが、ヒロヤは瞬く間に光の剣を縮ませて氷の弾を斬り落とした。

あんなに伸び縮みする剣じゃヒロヤは動き回る必要はないし、今度はこっちが動かなきゃだめか。

しかしヒロヤはもう1本同じような光の剣を作り出しながら、こちらに向かって走り出した。

おっと、動かない戦法じゃなかったか。

両手に絶氷槍を出し、振り下ろされた光の剣を受け止め、すぐに振り出されるもう1本の光の剣も続けて捌いていく。

ヒロヤも負けじと2本の氷の槍を受け流していくと、突如ヒロヤは1本の光の剣を更に大きくさせると共に、その光の剣を勢いよく振り下ろしてきた。

2本の絶氷槍で大きな光の剣を受け止めると、同時にヒロヤは素早く距離を取りながら、もう1本の光の剣をこちらの懐に投げ込んだ。

するとこちらの腹目掛けて真っ直ぐ突き刺さった光の剣は、爆発するような衝撃を生み出しながら先端から砕け散り始めた。

ブースターの出力を上げて衝撃の反動を相殺すると、頭上で大きな光の剣を押さえて両手が塞がれていることに加えて、前後から押し合う力にふと動けないことに気がついた。

あれ、どうしよう。

するとヒロヤはそんな状況を冷静に見据えながら、両手を天高く掲げた。

「ソル・ラグナロク」

あのラグナロクか?

直後にヒロヤの遥か上空に巨大な光の球が現れる。

まだ腹で砕けてる光の剣は半分も残ってるし、今あれが来たら、逃げられないな。

そしてヒロヤが両手を思いっきり振り下ろすと、同時に光の球は散るように弾けながらまるで太陽のように光り輝く、ジャンボジェット機ほどの光の剣をこちら目掛けて生み落とした。

何っ・・・まずいな、でか過ぎる。

絶氷槍を解くと同時に尻尾から頭上にある大きな光の剣に絶氷弾を撃ち、ブースターを止めると、腹で砕け散っている光の剣の衝撃で体は勢いよく後ろに押し出されていった。

直後にジャンボジェット機ほどの光の剣は、頭上の大きな光の剣を巻き込みながら頭上に向けて構えた4つの紋章に激突する。

ジャンボジェット機ほどの光の剣の軌道を僅かにずらせた感覚はあったが、気が付けば辺り一面には墜落したジェット機が引き起こす大爆発のような、視界いっぱいの光の爆風に満たされていた。

ようやくガラスの爆竹が泣きわめくような音と地響きが収まると、水蒸気のように消えゆく光の向こうには、若干の落胆さが伺えるヒロヤが立っていた。

「まさか間一髪で避けるとはな」

「あれは危なかったね」

「まぁ試したい技は出したし、それじゃあそろそろバトンタッチだな」

落ち着きの中にも満足げな表情を見せたヒロヤはそう言うと、ゆっくりとこちらに背を向け、2人の下に歩き出した。

「そうか」

最後はタツヒロか。

どんな力なのかな。

そしてヒロヤと入れ替わったタツヒロは、妙に好奇心を伺わせる顔でこちらと向かい合った。

「その姿に名前とかあるの?」

見下すように少し顎を上げ、ニヤつきながら口を開くタツヒロに、ふとシンジやユウコと同じくらいの若さを感じた。

この人も高校生かな。

「絶氷牙だよ」

「ふーん」

タツヒロはそう言って掌にきらびやかな光を湧かせると、その光からメルヘンチックさを感じさせるデザインの、普通のよりかは大きめなリボルバー式の拳銃を出現させた。

おもちゃには見えないけど、個性的過ぎるデザインだけに何かプラモデルみたいな感じだな。

「タツヒロも名前とか考えてるの?」

「あぁそうさ、この銃の名前はストーリーオブドリームって言うんだ」

嬉しそうに応えるタツヒロからは先程までの威圧感はなく、その表情からは純粋に無邪気さがあるだけだった。

「そうか」

「行くよ」

そしてタツヒロはこちらに銃口を向けた。

とりあえずは出方を見るかな。

「はじけろっ」

タツヒロがそう声を上げると同時に銃口から丸い弾が発射されると、丸い弾はこちらに近づくに連れて瞬く間に花火のように広範囲に弾けて広がっていった。

避け切れないっ。

とっさにブースターで横に飛ぶが、1秒も経たないうちに数十もの数に分かれた丸い弾の衝撃は、そのひとつひとつでもかなりの重さを感じさせた。

ニヤつくタツヒロの背後に回り込み絶氷弾を撃つが、すかさずタツヒロがこちらに向けて銃を撃つと、氷の弾はほんのりと光を放つ弾の花火に巻き込まれて呆気なく消えていった。

素早く逆方向にブースターを噴き出し、素早く弾の花火から遠ざかる。

最初の弾速は普通の銃とあまり変わらないみたいだけど、弾けていくにつれて弾速は落ちるみたいだ。

こちらを追うようにタツヒロが銃を連射すると、瞬く間に数百もの光る弾膜が張られていく。

弾け切っても、数秒間は宙に浮いたままか。

これじゃ近づけないな。

「踊れっ」

タツヒロがさっきとは違う言葉を上げながらこちらに向けて銃を撃つと、銃口から同時に放たれたきらびやかに光る数発の弾達は、各々自由に動き回りながら流星の如く速さでこちらに向かって飛んできた。

何だこいつら、まるで全部の弾の性格が違うみたいに動きが不規則過ぎて、全く予測が出来ない。

ブースターを使って逃げるが、1発当たると動きを鈍らせるには十分の衝撃があり、直後に動きが鈍った敵に追い撃ちをかけるように次々ときらびやかに弾ける弾達に襲われていった。

どうやら弾は全部で6発みたいだな。

向井 龍宙(ムカイ タツヒロ)(17)

高校生。

ゲームよりもディズニーが好き。その顔立ちからクラスの一部の女子からはホストと呼ばれている。人よりも動物に優しくする傾向がある。


ありがとうございました。

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