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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第三章

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セカンド・ラウズ2

席を立つとすぐにミサに手首を掴まれたので顔を向けると、ミサは何やら強気な眼差しを真っ直ぐこちらに向けてきた。

「どこ行くのよ」

「ユウジのとこ、大事な話を忘れてた」

一旦椅子に座って応えるが、ミサは手を放さずに、依然として強気な眼差しを見せている。

「後にして、そろそろ夕食が来るわ?」

まぁ今言っても混乱させるか。

それより、ミサ、どうかしたのかな。

「そうか。ライムミントから何か聞いた?」

「う、ううん」

するとミサは何故か照れるように微笑み、うつむくように目線を逸らした。

何かは聞いたみたいだけど、どうやら堕混の事ではないみたいだ。

「皆さんこんばんは」

ユウジだ。

料理が運ばれる直前で、皆だいたい集まってるから、今紹介しようと思ったんだな。

「皆さんに新しい仲間を紹介します。ある事情でこの組織に住むことになりました。双子なんですけど、右目の泣きぼくろが特徴の妹のライムさんと、姉のミントさんです」

喋り終えるとユウジが横にズレながらマイクに手を差し出し、2人をマイクの前に立たせる。

「あの、ライムです」

「ミントです」

最初に少し戸惑った様子でライムが喋ると、代わったミントは笑顔を浮かべながら自己紹介し、2人がマイクから離れると再びユウジがマイクの前に立った。

「詳しい事情は夕食の後でゆっくり話します。以上です」

間もなくして料理が運ばれて来たので取りに行くと、トレーを取る時にようやくミサが手首から手を離した。

料理を取っているときにふとユウジがライムミントを連れてやって来るのが見えると、ユウジは2人にバイキングについてを教え始めた。

そういえば三国にバイキングはあるのかな?

さすがに下界にはあるだろうし、もしかしたらミントだけはバイキングのことを知ってるかもな。

料理を持ちテーブルに戻ってきたと同時にシンジが隣に座ると、シンジは何やら自信に満ちた眼差しで微笑みかけてきた。

「氷牙、今度こそ倒してやるよ」

「そうか」

力を進化させたみたいだし、相当自信があるみたいだな。

「シンジったら強くなったのよ」

「聞いたよ、第二覚醒だって?じゃあ結局まだ鉱石は使ってないの?」

「あぁ、使う前の最後の修業で運良く覚醒したからな」

ステーキを切りながらそう応えるシンジの醸し出す雰囲気のようなものに、ふと以前には感じなかった余裕と言えるような凛々しさを感じると同時に、何となくシンジが大人っぽく見えた。

「そうか」

「氷牙は鉱石使ったんだろ?ミサさんが言ってた」

それに何か、何となく少しだけフレンドリーになった気もする・・・。

「まあね」

「ならその切り札も引きずり出してやる」

お、威勢がいいな。

「そうか」

久々のホールでの食事に何となく懐かしさを感じると同時に、所々空いている席にふとアリサカ達のことを思い出した。

「シンジは、その力を何の為に使うの?」

するとシンジは突拍子もない問いに驚いたような顔でこちらを見た。

「何だよ急に」

「何となく気になっただけだよ。強い力があるなら、気に食わない物を全部壊せるよ?」

真剣な表情を見せ始めると同時に、シンジは先端にお肉が刺さったフォークをゆっくりと下ろした。

「・・・まぁ、善人より悪人の方が数が多いし、倒しがいがあるだろ?」

「そうか」

まぁ彼なりの正義があるんだろう。

「皆さん、どうも。先程の事ですけど、皆さんには内緒で、ある人に極秘の任務を頼んでました。内容は、おじさんの技術で次元を越えられるかどうか、という事です」

ユウジの言葉に会場がざわついていると、何かを感づいたような目でこちらを見たヒカルコと、ふと目が合った。

「結果は、異世界というものが存在し、また、行き来が可能という事になりました。先ほど紹介したミントさんとライムさんは、異世界からの来訪者になります」

ライムミントに注目が集まるが、2人は特に動揺する様子もなく黙ってユウジの話を聞いていた。

「ですが、2人はある事情で国に帰れなくなってしまい、たまたま知り合った折りにこっちに住まわせるという事になりました」

正直に話すのは良いけど、問題なのは異世界に行きたいと言う人が出て来てしまうという事だよな。

「次元を越えるのは極めて危険なので、もし次元を越えるならおじさんの許可がいるという事をご了承して下さい」

面接でもするのかな。

「その道中、偶然にある事が確認されました。それは鉱石をただ持つ事で、今持っている力が増幅されるという可能性があるという事です」

すると会場にはまた違ったざわめきが湧き立ち始める。

このまま上手く話を逸らせられるかな。

「そこで実験を行い、その可能性を証明出来れば、鉱石をアクセサリーの様に身につけるだけで、覚醒や鉱石を使うことなく力を強くするということが出来るという事になります」

上手くたたみ掛けられたかな。

会場の所々に小さい歓喜が湧いている会場の空気は、徐々に実験に期待するようなものになり、見る限りでは異次元のことについてのざわめきは無いように感じた。

「まじかよ」

シンジが呆れたような口調で口走ると、ユウジを見るミサ達の横顔も、どことなく半信半疑で話を聞いてるような表情に見えた。

「実験の詳細については、明日伝えるのでそのつもりで。最近、テロ組織も活発になっているので、もしまた神奈川の組織から援軍要請があったら力を貸して下さい。以上です」

そしてユウジはその場を立ち去り、そそくさと会議室に戻って行った。

「ここまで行くと、うさん臭いわね」

確かにこんな都合の良い事はない。

でももし鉱石の発見自体が偶然じゃないとしたら、能力者と鉱石は何か深い関係でもあるのかな?

「でも氷牙が嘘をつく訳ないわよね?」

「ミサの気持ちも分かるけど、違和感があったのも確かなんだ」

「あ、貴方を疑う訳無いじゃない」

するとミサは慌てるようにそう言って微笑みを向けてきた。

「ふーん、異世界に行ったんだ」

目を向けるとヒカルコは、まるで嘘をついたのを責めるかのような冷ややかな眼差しをしてきた。

「まあね、ユウジがどうしてもって」

「そっかぁ」

ヒカルコが納得したように頷いていると、ふとミサが笑いをこらえるような微笑みを浮かべながらこちらを見たのに気がついた。

「氷牙、そろそろ行こうぜ」

「あ、ちょっと待って。ユウジに話があるんだ。すぐ終わるからさ」

「あ、うん、分かったよ」

シンジが少し気が抜けるように応えながら再び椅子に腰掛けると、そのままくつろぐように深く背もたれた。

そんなシンジを見ながら席を立つとすぐにミサも席立ち、歩き出すとミサは隣につき同じように舞台に向かい始めた。

「大事な話ならブレインとして聞かなきゃだわ」

「そうか」

会議室に入ると、ユウジはマジックペンを持ちながらホワイトボードの前に立ち、アキと何やら話をしていた。

その直後、音もなく開かれた扉に感づいたのか、アキが落ち着いた表情のままこちらに顔を向けた。

「何か用かな?」

アキの言葉に、ホワイトボードに文字を書いていたユウジが驚くようにこちらに振り返る。

「あぁ、もう1つお土産話があって」

「そうかぁ」

ミサが椅子に座るとユウジも静かに椅子を引く。

「まぁ感覚的にはテロ組織に近いものが、あっちの世界で誕生したんだ」

「それで?」

するとユウジは椅子に座るのを止め、マジックペンのキャップを取った。

「僕と同じように、異世界から来たと思われる人間がいたんだけど、その人間達が兵士を集めて反乱軍を結成したんだ。話を聞いた限りじゃその軍は色んな異世界に散らばったってことになるから、もしかしたらここにも来るかなって」

ユウジが考え込むと、ミサはこちらを見たまま呆気にとられたような顔で固まっていた。

「その組織についてはどれくらい分かってるの?」

するとアキが緊張感のある引き締まった表情で口を開く。

「人数は十数人くらいで、主力部隊は自らを堕混と言ってて、胸元に赤い宝石がついてるのが特徴だよ。赤い宝石が無く堕混よりかは戦力が劣る人達は、区別するために堕天使と名付けられたよ」

説明と同時に、ユウジはホワイトボードに要点をメモしていく。

「ユウジ、ダゴンじゃないよ。堕天使の堕に混沌の混だよ」

「あ、そうなのか」

「実はライムミントは心を操られて反乱軍に居たんだ。正気には戻ったけど、自責の思いから国には帰らないって聞かないから、連れてきたって訳だよ」

「へぇーそうか」

アキが納得するように大きく頷いているときに、ふとホワイトボードに目を向けてみる。

するとそこには世の中の問題や、これから取り組む事柄についてが箇条書で書き出されてた。

「ふぅ」

ホワイトボードに書き終わったユウジはペンを置き、再び椅子を引いた。

「それじゃ僕はこれで」

「ちょっと待って、強いの?堕混って」

会議室を出ようとすると、ユウジは興味を示したかどうか分からないあっけらかんとした表情でそう聞いてきた。

「すごい強いよ」

「でも帰って来れたんなら、倒したんでしょ?」

すると口を開いたミサは、まるで自信を通り越して安心しきったような笑みを見せつけてくる。

「何とかね。でも1人じゃ厳しかったよ」

「あら、尻尾を出しても?」

「まあね」

それでもミサはまるで謙遜心を感じ取ったかのような微笑みを浮かべていく。

「尻尾って何?」

ユウジが聞いてきたときにホールへの扉が開いたので、ふとその方を見ると、扉の向こうには待ち兼ねているかのような態度を見せるシンジが居た。

「じゃあシンジと闘技場に行くから、見てれば分かると思うよ」

「そっか」

「そんなに待たせたかな?」

「早くしないと空きが無くなるからな」

シンジはそう応えながら4番の扉を開ける。

今は結構修業がブームなんだな。

「シンジ、援軍には行ったの?」

「あぁ、おとといな」

「そうか」

闘技場の真ん中に着いてお互いに離れると、すぐにシンジは右肘、右肩を上げ、固まっていくマグマのような赤黒く色づいた外殻を右腕全体に纏った。

「行くぜ」

すると走り出すような体勢のままシンジが、更に右腕全体の周りに暗めに色づいた朱色のオーラを発生させる。

直後に暗い朱色のオーラの一部がシンジの肋骨全体を覆うほどの大きな胸当てに形作られると、続けて右肩にかけても朱い外殻が覆っていく。

そして右肩の骨格が少し上がると共に、暗い朱色のオーラは更に巨大な腕へと形成されていった。

太くもなったけど、長さが前より大幅に変わったみたいだな。

肩から肘までだけでもシンジの身長と同じくらいなのに、肘から手までもそれと同じくらいだなんて。

重くないのかな?

ていうか何かちょっとメギドラグの腕みたい。

最後にシンジの左肩に突起した蕾のようなものが出たと思ったとき、それはまるで花のように6枚に分かれ始めた。

足にも部分的に朱い鎧が覆われたみたいだな。

けど、何か、相当アンバランスだな。

「自分の姿、見たことある?」

「氷牙はあるのか?」

「そういえば無いね」

「気にすることはない。それより早く鎧出せよ」

そう言ってシンジは右肩を軽く回しながら、目つきから佇まいまで至る所から闘志を感じさせていく。

「あぁ」

氷牙を纏ったのを見たシンジが拳を握り、それを後ろに引き下げると、強く地面を蹴ると同時に肘の辺りにあるブースターが音を立てて吹き出し、その岩石のような巨大な拳が勢いよく突き出された。

速いな。

紋章を出したものの、盾などお構いなしかのように吹き飛ばされて背中が勢いよく壁に激突すると、粉塵と共に氷の鎧の破片が前に吹き出すのが見えた。

鎧を直しながらブースターを全開にしてシンジに近づき、氷弾砲を撃つが、氷の弾は岩壁のような巨大な手の甲で軽々と払われた。

あんな巨大な腕を軽々と振るうとは。

シンジの後ろに回り込みながら氷弾砲を構えると、突如シンジの左肩にある花のようなものから強く空気が噴き出す。

あ・・・。

するとシンジは素早く旋回しながら腕を振り回してきたので、すぐに上昇するが間に合わず、鉄球のような拳は体を強く掠る。

そして視界が回転するほどの風圧に襲われ、ブースターを使って体勢を立て直したときには、シンジはすでに殴る体勢で、素早く拳を突き出していた。

シンジが何故氷牙が誘拐されたと思ったんでしょうか、謎ですね。笑

ありがとうございました。

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