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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第二章

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奇妙なポテトと3人の兵士

「王は無事か?」

「はい、2人が傍で護っています」

陽動じゃないのか?

いや、目的が王の命じゃないってだけか。

だとしたら、狙いは・・・。

「おいっレイ」

声がした方に振り返ると、王子派の死神が使うエントランスへの通路からサイジールが姿を現していた。

「あぁ、サイジールか。どうした?」

まさか今王子派が来るとはな。

「どうしたじゃねぇよっどういうつもりだ?」

するとサイジールは突如怒りに表情を歪ませ、怒鳴るような声を上げながら歩み寄って来た。

「何でそんなに怒ってるんだ」

そっちがエニグマを放したくせに。

「とぼけるなっエニグマを放してその隙に王子の命を狙ったんだろ?下手な陽動しやがって」

何の、話だ?

「は?エニグマは1番街に来てたんだぞ?そんな事する暇無いだろ?」

サイジールは一瞬驚いたような顔をしたが、落ち着きを取り戻し始めたその表情は依然として怒りをあらわにしている。

「何言ってんだ?エニグマは北から2番街の塀を壊して来たんだ」

北の2番街?

2体だけじゃなかったのか。

「じゃあこっち側にエニグマが寝てるけど、見るか?」

「・・・本当か?」

するとサイジール同様、後ろの兵士達も戸惑いを見せるように顔を見合わせ始めた。

「王派は無益な戦いはしない。王子を殺してどうする?」

「じゃあ何故エニグマを放した?」

サイジールは落ち着きを見せてはいるが、再び責めるような口調で再び問いかけてくる。

「知らないよ。じゃあお前は何故俺らを襲わないんだ?王子を護るんだろ?」

「あぁ?階段の前で待機させて、エニグマを片付けたから戻ったが、何も起こってないからこっちに来たんだろ」

慎重派のこいつが指揮をとってて助かったな。

「俺もそうだ。陽動だと思ったからこいつらをここに待機させて、それで今来たんだ」

どうやら一杯食わされかけたようだ。

「・・・何だって?じゃあ、一体誰が」

「きっと内戦でもさせようとしたんだろう」

「まさか・・・この前の人間と共に国を出て行った裏切り者か」

「あぁ恐らく、その新たな勢力の仕業だと考えるのが妥当だな」

サイジールが深くため息をつくと、その表情からはすでに怒りや威圧感は伺えなくなっていた。

「・・・そうらしいな。戻るぞ」

「はい」

だとしたらまた、何らかの形で攻めてくる可能性があるだろうな。

王子派と手を組むことが無理なら、早いとこ三国と手を組んだ方が良いな。

サイジールがふと通路に入る手前で足を止めると、おもむろにこちらに振り返った。

「レイお前、変わってないな」

「何の事だ?」

「12年前の三国との戦争から、何か変わってないな」

「変わってない?いや、お前が変わったんじゃないのか?王子が部隊を率いるって言った途端に王子側に寝返ったんだし」

「はっそうだな」

すると何故か噴き出すように笑い声を上げながら、サイジールは通路へと去って行った。

何だあいつ。

・・・12年前か。

確かにそうかもな。

「宿舎に戻るぞ、王の護衛を呼んで来い」

「分かりました」

アリシアのことを思い出しながら待機室に入り、しばらくするとエニグマの処理を命じていた兵士達が戻って来た。

「終わったのか?」

「はい、エニグマの処理は済みましたが、塀や建物の修理に人手が足りませんので、援助お願いします」

「分かった」

再び兵士を集めて崩れた塀や建物の片付けを始め、昼時になるといつものように一旦家に帰る。

「病気が治ったら、もう様子を見に来なくても良いんじゃない?」

「いや、俺がこうやって一緒に昼飯を食いたいだけだよ」

満足げな笑みを浮かべるルリを見ていると、瓦礫の片付けで溜まった疲れが一気に吹き飛んだような気がした。

「私は嬉しいけど、尻に敷かれてるって思われてないかな?」

「俺はそれでも良いよ」

「ほんとにー?」



「見つかったか?」

「いや何も無いよ」

アリシアが聞いた事が本当なら、この方角で合ってるはずだよな。

「注意しろよ、無心兵もいるかも知れない」

「あぁ」

まぁこの姿じゃ無心兵に感知されないみたいだが。

もしこの辺りにあるのなら、ちょうどそこから見て前方の左右に三国と死神の国があるということだな。

「あ、待て、無心兵だ」

ホルス大尉がしゃがみ込んだので辺りを見渡してみるが、目に見える範囲には拠点らしきものは確認出来ない。

「さまよってるだけじゃないの?」

一応片膝をついて姿勢を低くする。

「周りは何も無いか?」

「・・・あぁ」

「じゃあ頼む」

無心兵に近づき絶氷槍を左胸に突き刺すと、無心兵は瞬く間に形を失い音も無くただの黒い布切れと化した。

こんな暗殺をしながら拠点を探して、感覚的に何時間位経っただろうか。

「お前はほんとに便利だな」

静かに立ち上がり、警戒する周りを見渡しながらホルス大尉が呟く。

「ホルス大尉、今の発言はちょっと・・・」

「はいはい、分かってますよ、アルマーナ中尉」

また始まったみたいだ。

「ダメですよ。仲間なんですから、そんな人を道具みたいに・・・」

「いいよミレイユ」

今ならハルクとミレイユの間に立つヴィルの気持ちが少しは理解出来るかも知れない。

「氷牙少佐は甘いです。ホルス大尉は所々上官らしからぬ言動が・・・」

「すいませんでしたね」

頭を掻きながら怠そうに口を挟むホルス大尉に、ミレイユはすぐさま鋭い眼差しを向ける。

「今の本当に心を込めてますか?」

相変わらず折れないな。

「あー何でエナが別の任務なんだよ」

背を向けながら再び呟いたホルス大尉に、ミレイユは更に目を細めて厳粛さのある怒りをあらわにする。

「ルカ少尉が何ですって?」

「ミレイユ」

なだめるように呼びかけると、こちらを見たミレイユは少し目を泳がせながらうつむいた。

ハルクを自分の手で捜したいのは理解は出来る。

多分このやりとりのせいで、より時間が経った感覚がするのだろう。

「あれか?」

しばらくするとホルス大尉が何か見つけたみたいなので、大木の裏に隠れながらホルス大尉の目線の先を目を向ける。

「氷牙、見えるか?」

すると踏み固められたような道が続いている先の木々の隙間からは、明らかに建造物と思われるものが見えた。

「門が見える」

「そうか。アルマーナ中尉は?」

「確認しました」

「よし、戻るぞ」

交差する2つの輪が付いた鍔が印象的な短剣を持つホルス大尉が、木に印をつけながら城に戻っていく。

「ホルス大尉、氷牙少佐を呼び捨てにするのはいかがなものでしょうか。上官なんですからもっと敬意を表するべきですよ」

「俺、あんまりそうゆうの苦手なんだよな」

ホルス大尉は頭を掻きながら困ったように応えている。

ミレイユはほんと真面目だな。

「そ、そんな、苦手だからってダメですよ。氷牙少佐からも言って下さい」

上官って言ったって形だけだしな。

「別に僕は全く気にならないな」

「なっ・・・」

するとミレイユは驚いた表情のまま固まり言葉を詰まらせた。

「それに、兵士としてはホルス大尉の方が先輩だしね」

「ほら、氷牙もそう言ってるしさ」

「そんな・・・良いんですか?それで」

「まぁ、僕もそうゆうの苦手だし」

どことなく膨れっ面のようなものを見せながら、ミレイユは黙って何かを訴えようとする眼差しを向けてくる。

「アルマーナ中尉も少し肩の力を抜いたらどうだ?あいつを想う気持ちは分かるが、私情を挟みすぎると・・・」

「分かってます・・・説得出来ない時は、私の手で・・・」

結構思い詰めてるみたいだな。

「それが力入りすぎだって言ってんだよ」

ミレイユがホルス大尉に顔を向けると、ホルス大尉の横顔はふといつもの気の抜けたような雰囲気をあまり感じさせなかった。

「背負うなとは言わない、無理なら逃げても良いんだよ。何だったらあいつの側に行ったって良い」

「それは・・・」

「気楽にやれとは言わないが、あまり思い詰めるなよ」

ホルス大尉でも真面目な事が言えるんだな。

「・・・はい。何か、ありがとうございます」

少し強張っていたミレイユの表情が何となく緩んだ気がした。

エントランスに入るなりホルス大尉の姿に気がついた女王はすぐに席を立ち、迫り出した2階から身を少し乗り出した。

「よく戻ったわ、どうだったの?」

「はい、潜伏拠点と思われるものを発見いたしました」

「そう、場所は?」

「南々東に。死神の国からは南々西に位置していますので、両国の間のちょうど南になると思います」

2つの国との戦争を想定してるんだろうか。

「分かったわ・・・ホルス大尉はどう思う?・・・やはり敵として見るべきかしら?」

するとミレイユが不安げな表情を浮かべながら少しうつむいた。

「今朝のエニグマの襲撃を考えると、やはり反乱軍からの宣戦布告と捉えるのが妥当だと思います」

「そう、じゃあ2人の王に相談して、明日にも攻めようかしらね」

そう公言した女王は、いかにもやる気を感じさせるような微笑みを浮かべる。

攻めようって決めてる時点で相談する必要があるのだろうか。

「明日ですか?」

ホルス大尉がすぐに聞き返すが、女王はその自信が伺える微笑みを更に深くして見せた。

「おかしくないかしら?何故すぐに攻めないで、エニグマだけを放したりしたのかしら?」

もし時間稼ぎなら、あえて騒ぎを起こすのはリスクが高すぎるしな。

「まさか・・・攻めさせようとしてるということですか?」

「罠だとしても、精鋭を集めれば何とかなるわ?それに、あっちで戦わせてくれるんだから町の被害も出ないし、いい機会じゃない?」

それもそうだな。

「そうですね・・・」

ホルス大尉が悩みながら返事をしていると、女王が足早に階段を下りて来た。

「早速相談するから、それまで待機してなさい」

「分かりました」

すごい決断力だな。

女王がログを連れて颯爽と階段脇の扉に去っていくと、ミレイユは緊張の糸が切れたように小さなため息を漏らした。

「攻めるのは良いが、死神も同じ所に攻めて来たら精鋭だけで足りるのか?」

ホルス大尉が珍しく考え込んでいるみたいだ。

死神が攻めて来たら、反乱軍と死神との三つ巴ってことか。

「もしヤバくなったら、三国に戻ればいいよ。死神も新しい勢力がいるから、追っては来ないよ」

「そうだな・・・とりあえずバーにでも行くか。アルマーナ中尉は?」

ん、ミレイユは何やら上の空みたいだ。

「・・・あっじゃあ、ご一緒します」

反乱軍か、下界の人間が首謀者とは考えられないな、人間がエニグマを操れる訳が・・・。

いや、まだ断定するのは早いか、死神と人間が共謀して演習場を襲撃したのなら、反乱軍には人間も含まれているだろうし。

「そういえばヴィルは別の任務なの?」

「そうですね。ハルがいなくなってから、一緒に任務に就くことが少なくなりました」

胸当てを脱ぎながら応えるミレイユからはいつもの気丈さを感じたが、その眼差しはどこか寂しそうだった。

「ヴィランテの家は農家だからな、そっちでも忙しいんだろ」

ホルス大尉はラフーナサワーを飲みながら何気なくそう口を開いた。

「そうか、意外とよく知ってるんだね」

ウェイトレスがテーブルに運んできたものに目を向ける。

この世界のフライドポテトは緑色なのか。

「精鋭同士で一緒に任務に就くこともあるからな」

「そうか」

味は普通にフライドポテトだ。

夜になるとお客も増えてきて、昼間とは違ってバーならではの賑やかさが満たされていく。

「そろそろ、メシでもオーダーするかぁ?」

ホルス大尉は酔っても変わらないみたいだけど。

「そうだね、おつまみだけじゃ寂しいねー」

「ミレイユさん、ちょっと服がはだけてます」

エナが合流して時間が経つけど、どうやらエナは世話役みたいだ。

それに比べてあれだけ上官がどうの言ってたのに、お酒が入るとミレイユが1番フレンドリーだな。

「おーいリコリーース」

「あーもう、すぐ後ろにいるんだから、叫ばないでよ」

近くでテーブルを拭いていたリコリスが不満げに応えながらホルス大尉の傍に駆け寄る。

「あ?そこに居たのかぁ・・・オーダーして良いかぁ?」

「あ、はい・・・あ、氷牙少佐」

「あぁ」

「今日もオススメですか?」

するとリコリスは嬉しそうに満面の笑みを見せてくる。

レストランで働く者にとっては、指定されたメニューよりも任せてくれるようなオーダーの方が嬉しく、やる気が出るようです。笑

ありがとうございました。

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