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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
完結章 救世主たち
350/351

龍帝に託される想い

ああ、くそ、どうすれば。

渋滞する車の列にミサイルが落ちて石ころのように車が吹き飛び、被害の免れた車からは痺れを切らして人々が逃げていく中、何をしていいか分からない苛立ちをぶつけるように、更なるミサイルで抉られるように吹き飛ぶビルやらをカメラに収めていく。

どこに逃げればいい、どうやってあっちに帰ればいい・・・。

エネルゲイアに頼むって言ってもな、軍服じゃないし。

一般人と見分けがつかない。

いやダメだダメだ、ビビるなオレ。

宇宙人にだって取材するんだ。

あっ。

向こうからこちらの方に飛んでくるミサイルが見えたその一瞬、何をする間もなく、ほんのりと死を連想した時にはすでにミサイルは目の前で、見えない壁にぶつかるように爆発する。

えっ・・・エネルゲイアか?

爆風が消え行く最中、ビルの合間からまるで怪獣映画の怪獣のようにその巨体を見せたマリアンヌは、昆虫類のようなその4本の腕を豪快に振り、小さい方でもマリアンヌよりも巨大なその飛行物体に突き刺し、そして近距離から群青色の光球を放ち飛行物体の一部を激しく砕き、爆炎を吹かしていく。

そんな中、ビルの上から浮遊するように人々の頭上に現れた天使が、右腕に着けられた銃身から光球を撃ち出す。

するとそれは真っ直ぐにマリアンヌの人体に直撃し、その巨体は轟音と瓦礫を吹き散らしながらビルに叩きつけられる。

その一瞬、天使への恐怖が募り、そしてそのまま動かなくなったマリアンヌというその状況に、傍観者だからこそ抱く虚しい敗北感が降りかかり始めた。

カメラを向け、ズームしていくと、マリアンヌの人体は焦げていて、それは正に焼死体のようだった。



案内役の男についていってとある部屋に入ると、その肌色の部屋の壁には突っ込むようにめり込みながらキレイに並べられた幾つもの何かがあった。

「お前もこれを着けろ」

そう言って天使の男は一角にある、CDラックのような並びから天使の輪っかを取り出した。

「どうやって?」

「頭にかざすだけだ、そうすれば体はアルミューラに加護される」

へ?

「アルミューラ?」

とりあえず受け取りながらそう聞くと、男は肌色の外套の胸元を摘まんで見せた。

「あー、で、これは何て言うもんだ?」

「テューナメイシュ」

ふーん。

とりあえず天使の輪っかを頭にかざしてみると、直後に日光に優しく当てられるような心地よさを感じたが、ふと厚手の服を着たような重さを感じた時にはすでに体は肌色の外套に覆われていた。

うほ、龍形態でも服が着れるとは。

スリットが入ったキツいロングコートに手まで隠れるケープ、フード、けどボタンが無い。

つまり脱げねぇってことか。

これが宇宙人のファッションか。

いくら龍形態でも、これなら味方だと分かるか。

「脱ぐ時はどうすんだ?」

「テューナメイシュに祈る」

「そうか」



うわぁ・・・。

すごいな、街が流れてく・・・。

「カイザーはどこだ」

んっと・・・。

あっディビエイトが向かってくる。

でもカイザーじゃない。

「違うの来たよ?」

直後に窓の向こうに上の方から飛んでいく黒煙を尾に引く炎の球が見えると、機械に覆われた黒肌のディビエイトは黒煙と爆炎に包まれ、更に別の方から来た反った剣を持つディビエイトは下から見え始めた発煙弾に襲われた。

「あれじゃねぇか?」

「うん、デミリー、あそこ」

しかし発煙弾に襲われたはずのディビエイトは爆風の中から飛び出し、持っている反った剣を振りかざしながら前面の窓から左へと姿を消す。

するとその直後、乗り物の中腹が衝撃音と共に激しく切り裂かれ、中に散りばめられた破片は途端にすごい風音と共に外に吸い込まれていった。

「俺が行く」

体を炎で覆いながらカソウが大穴に向かい始めると同時に乗り物は傾き、デミリーが立ち上がると椅子はそのまま流れていった。

「デミリー、もうだめなの?」

「浮力が保てない、落ちる前にこのまま不時着するしかない」

そんな・・・カイザーが近くに居るのに。

直後に足元から爆音と衝撃が響き、乗り物は激しく揺れるが、デミリーはまるで宙に浮いているようによろめくことはせず、手を取られ、思わず倒れそうになるのを助けて貰いながらも、街が迫ってくる窓の景色に思考は止まり、ただデミリーの手を強く握り返した。



「炎帝ノ(いばら)

無数に枝分かれした白熱する鉤爪を振り回し牽制した直後、稲妻が走るような爆音を鳴らしながら飛行船型は高層ビルを抉り、墜落していった。

くそ、2人共・・・。

普通のよりも体格がでかく、両肩、両腕にミサイルハッチを携えた黒肌のディビエイトが、腕輪のような円いミサイルハッチからミサイルを連射してきたので、全身から棘を噴き出してミサイルを迎撃しながら墜落した飛行船型に向かっていく。



衝撃が収まったので周囲に作ったクウカクの壁を解くと、デミリーは不思議そうな表情でこちらを見ていた。

「今のは魔法だよ?」

「魔法・・・」

そう呟くとデミリーは手を放し、フードに入れていた仮面を取り、何となく難しそうな顔を隠すように仮面を着けフードを被った。

「助かった、ありがとう」

「うんっ」

「先ず武器庫に行く、脱出はそれからだ」

キレイな内装が無惨に破壊された乗り物の中を浮遊するように飛んでいくデミリーを追ってとある部屋に入ると、そこは広くはない、武器庫と言うには質素な部屋だった。

真っ先にとある方に向かい、天使達の頭上に浮く輪っかを壁から取り出したデミリーはそれを手渡してくると、そそくさと別の方へ向かっていく。

「それを頭にかざすんだ」

え、と。

こちらの戸惑いなど構わずに別の壁に並ぶ何かに右手を突っ込むデミリーの背中を見ながら、とりあえず頭に輪っかをかざしてみる。

わっ何だろ・・・ありゃっ。

服が、一瞬で・・・デミリーと同じだ。



あ?

「カイルっ」

カイルも天使になってら。

滑るように墜ちた飛行船型の大穴から無事に出てきた2人を見てから素早く振り返り、手を組みながら広げた6本の鉤爪を黒肌のディビエイトに向ける。

皇輪(こうりん)爆彩光(ばくさいこう)

白い閃光に風や塵が燃え行く中、ビルの上に登ったカイル達に刀を持った武者のようなディビエイトが向かっていくが、カイルが両手からマシンガンのように放つ光球と、デミリーがライフルのような銃身から放つ光球にディビエイトは旋回し逃げ始める。

くそカイザー、あそこか。

「カイル」

「火爪さんもこれ着けて、頭にかざすんだよ?」

え?天使の輪っかじゃねぇか。

でも俺、今人体じゃねぇしな。

出来んのか?

「あぁ」

まぁやってみっか。

移動しながら輪っかを頭上に持っていくが特に何も感じる事はなく、気が付けば肩には肌色のケープがかかっていた。

「おいおい、何で俺はケープだけなんだよ」

しかし案の定カイルはただ表情を曇らせ、デミリーに至っては仮面で表情すら分からない。

まぁいっか。

「カイザーぁっ」

2人がディビエイトを相手にしている間にディビエイト姿のカイザーに声をかけると、建物を2つほど挟んだ、十数メートル先のカイザーはこちらを見るなり体も向けてきて、その素振りから見るからに戸惑いを伺わせた。

「火爪っお前、侵略者は女神の仕業かっ」

相変わらず声が通る奴だ。

「んな訳ねぇだろっ俺の方から仲間入りしたんだよ」

近付きながらそう応えるとカイザーは胸を膨らませながら背を少し反らす。

ヤベっ来るかっ。

「ハァッ」

なっ・・・。

球状になって吐き出された半透明なものを、まるで相手にしてない奴に石を投げるような態度に少しムカつきながら受け流す。

「エイゲン、ハリス、そいつら頼んだ」

ちっ・・・。

「おいカイザーっ、停戦宣言しろよっ、支配者なんだろ?ハーレムでも何でもいいから、ちゃんと支配しろっ」

「うるせぇっ」

くっそ、罵声に衝撃波乗せんな・・・。

「カイザーさんっ」

お?カイル。

「カイザーさんが戦いを止めれば、天使の皆さんも戦いを止めます」

「はぁ?そっちがケンカ吹っ掛けてきたんだろ?何故こっちから戦いを止めなきゃならない」

カイルが言葉に詰まる頃には刀を持ったディビエイトが飛び掛かり始めていて、皇炎穿を撃ち出すも勢いは止まらず、白熱する炎を体に浴びながらもディビエイトはカイルに向けて刀を振り下ろす。

手をかざしたカイルの目の前で空気にぶつかるように、ディビエイトの刀が砂利が擦れるような音を鳴らしながら止まった瞬間、側方からデミリーの光球がディビエイトに撃ち込まれる。

見た目よりも高い威力にディビエイトが激しく吹き飛ばされる中、デミリーに向けて放たれた、黒肌のディビエイトの数発のミサイルはカイルの光球によって迎撃されていき、直後に放たれたデミリーの光球が黒肌のディビエイトを吹き飛ばした後、2人は休む間もなくカイザーに歩み寄る。

「カイザーさんだって、停戦したいんでしょ?天使の皆さんだって戦争を無くす為に来たんです、本当なら戦う必要なんて無いんです」

「馬鹿かお前は。戦争を無くす理由が違うだろ。そいつらは人類が居ない世界が平和だと思ってる、だが俺らは人類だ。そいつらは、人類と仲良くするつもりは無いんだ、そうだろ?」

再びカイルが黙り、デミリーに悲しげな表情を見せる中、カイザーはこちらの方に体を向け、更に相手として意識するかのようにビル1つ分まで歩み寄ってきた。

「この戦いの総指揮官は将軍だ。つまりお前の言った価値観は将軍だけのもの、将軍に反感を持つ者は沢山いる、私もその1人だ」

「だから何だ、隊はリーダーのものだろ、例え派閥があろうと、あそこに居るリーダーのあいつがその気なら、戦いは終わらない」

その時にふと随分と遠くの空からサメ型1機と飛行船型4機の1隊が向かって来るのが見えると、直後にその群れの中からジェットエンジンが特徴的なディビエイトの、ホワイトドラゴンが飛んでくるが、輪っかを頭上に浮かし、肌色の外套を纏い、天使の格好をしたホワイトドラゴンに、カイザーでさえも言葉なくただ見つめていた。

「ソウスケさんっ」

まじかよ、バクトと一緒に居るっつうあのディビエイトもかよ。

「よおカイザー、お前がどんな奴か知らねぇが、戦争を起こすのは神じゃない、人間だろ?だから戦争を止めるのも人間だ、もうそろそろ冷静になれ。このまま」

「うるせぇええっ」

うあっくそ・・・。

風圧に重圧に衝撃波、怒りがそのまま表れたような圧力にカイザーの足元はめくれ上がり、コンクリート片が全方位に散らばり、カイル達とソウスケは突風に顔を背け、黙り込む。



あっ火爪。

んっソウスケ、えっカイルまで、宇宙人の服着てる。

「カイルーっ」

「あっバクトさん」

すごいな、天使が本当に天使になっちゃったみたい。

ふぅ、やっと見つけれた。

「ハルンガーナにも来てるよ?宇宙人」

「えっ」

「だから呼びに来たんだ」

カイルが困った顔で火爪に顔を向けると火爪もいかにも困ったように頭を掻き出す。

「まだ戻れねぇな」

え?

カイザーと戦ってるからかな。

ていうか皆、いや、カイルが宇宙人の仲間になってるって事は、宇宙人は悪い人じゃないのかな。

ならカイザーが戦いを止めれば・・・。

「カイザー」

「黙れ」

「何にも言ってないじゃんっ」

「うるせぇどいつもこいつも、んな事分かってる。お前」

そう言ってカイザーはカイルに指を差す。

どうなってんの?

「お前があのリーダーを止めろ。あっちが止めれば俺だってすぐに攻撃を止める」

あら?どうなってんの?

「ほんとにっ?うん分かった。あの、カイザーさんも一緒に来てよ。その方がすぐに終わるよ?その方が絶対良いよ?」

んー・・・話が見えてこないな。

舌打ちしたもののカイザーからは殺気は感じられず、飛び上がり始めた一同についていきながらソウスケに近付く。

「何で宇宙人の服着てるの?」

「いやそれがさ、ただ空に居るだけで攻撃してこないから、ちょっと言ってやったらさ、何か、進言者は責任を持って援護しろってなって、こうなった」

んー・・・ん?

「攻撃、してこないの?ハルンガーナは無事なの?」

「とりあえずそうっぽいぜ?何か自然溢れる国は攻撃しないとか言ってたし」

へぇー。

映画みたいな、ただの侵略者じゃないのか。



軽い相槌で納得したような態度を示すバクトがカイルに近付いていくと同時に、ふとカイザーに近付いてくる見覚えあるディビエイトが見えた。

お?

エイゲン、ハリス・・・。

結果はどうあれ、レッドを裏切った。

「カイザー殿、どこへ行くのだ」

「大将の下だ、援護頼む」

「よお、久し振りだなエイゲン、ハリス。てかハリス、でかくなったのか?」

少し威圧を込めて声をかけてやったからか、自責の念があるからか、2人は気まずそうに一瞬黙った。

「・・・あぁ。エネルゲイアになる、鉱石とやらを使った」

うほ、まじかよ。

「エイゲンもか?」

「いや、拙者は、ソークアップで鍛練した」

ま、占拠の手助けしただけで、オスカーやら幹部やらを殺した訳でもねぇし。

「何で、裏切った」

「カイザー殿には力がある。国を治め、戦を止める力があるカイザー殿に、賭けてみたくなった」

賭け・・・か。

「ハリスもか?」

「敵だろうと味方だろうと、強い者が国を支配するのが当然だ、私がエイゲンに協力したのは、エネルゲイアからオスカーを守る為」

ちっ・・・良い様に話しやがる。

「そうかい。カイザー、俺は元々、エネルゲイアだったんだ」

「なん、だと?」

「けど転生して、エネルゲイアだった頃の魂は消滅し、成り行きでディビエイトになった。だからブルーにもレッドにも、怨みが無いって言ったら嘘になる。お前の事も少しは分かる」

「説教する気か?」

「はは、そんなんじゃねぇよ」



死にかけていた、いや、死んだはず・・・。

焼死体のようになったにも拘わらず、マリアンヌは無傷と成り変わって群青色の光球を飛行物体に飛ばしていて、別の方ではミサイルの爆風に呑まれ、吹き飛び、人形のように倒れ込んだ幼い男の子と若い母親も、瓦礫を掻き分け走り込んできた迷彩服の少年によって、触れられただけで無傷と化す。

そんな情景を写すカメラの目線をゆっくりと空に向け、ビルの上に立つ、軍艦の大砲ほどの銃兵器を体1つで支え、反動も感じずに砲弾を撃ち出す制服姿の女子高生、その女性の背後から空に飛び出していく、背中に魔方陣を浮かせ、飛行物体からのミサイルを瞬時に周囲に出現させて撃ち出す氷柱で迎撃する、妖艶できらびやかなドレス姿の女性を撮っていく。

とりあえず電話・・・。

「おいミケエラ大丈夫かっ」

「今すげぇとこだ」

ユギタ?

「女神勢力のエネルゲイア、追放されたディビエイトが天使の服を着てカイザーに接触、んで今その全員でボス機に向かってる」

・・・どうなってんだ?

天使の服を着た、エネルゲイアにディビエイト?

「そっちはどうだ」

「お前らが無事ならそれでいい。こっちはブルーと天使の戦争の真っ只中だ、とりあえず撮ってる」

くそ、どう帰ればいいか分かんないし、カメラマンとして、帰れない・・・。

あれは、トウ・ファンザ?

次々と天使を一刺しで殺していく。

近付いてみるか。

今更ながら、エネルゲイア×ディビエイトの×の意味はひとつじゃないってことですね。

ありがとうございました。

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