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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
完結章 次世代の希望
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エネルゲイア四天王VSバスター

ふと公爵が遠くを気にする素振りを見せたのに気が付き、何となく振り返ると、その先には翼も無く、背後に浮かせた1つの黒いクリスタルが目を引く、鱗の無い焦げ茶色にオリーブ色のアクセントが入った肌をしたディビエイトが居た。

何だあいつ、見たことねぇ。

「新手だな。退屈しのぎにはなってくれよ?私はテトレ・テ・ペトレ公爵である」

「・・・変な名前」

ぷっ・・・。

「アハハっ」

直後に鋭い衝撃が体に走り、腕を斬り落とされるが、公爵はこちらに顔を向けておらずディビエイトを真っ直ぐ睨んでいた。

くそっ黙って切るな、何か言え。

「ワラはタウロス。狐だからって手加減せんかんね、クー・・・カクっ」

若々しく勇敢そうな少年のような声でそう叫んで両手を真横に伸ばしたものの、タウロスの体には変化は無く、その場には静寂と緊張が流れたが、直後に公爵の尻尾がざわつき、風音が鳴り、タウロスは衝撃に体を波打たせる。

ん?

「ミラー・・・ジュ・ボルトっ」

しかし素早くタウロスが両手を突き出すと、重たい電撃音のようなものが響いた時にはすでに公爵の方に漆黒にほとばしる細い閃光が放たれていて、それでも風音を鳴らしながら素早くそれをかわした公爵は、どこか嬉しがるような感心げな声を漏らした。

「私の斬撃を、自分色に染めて跳ね返すとは、時間の無駄にはならなそうだ」

すげぇっ、何だよあいつ。



降り立った直後、頭を飾る櫛と何本ものかんざし、振袖のように垂れる腕の鱗が目を引く、赤を基調として華やかな色合いのディビエイトは突如屋上の地面を一踏みし、建物を窪ますほどのその音でもってその場に静寂を呼び込んだ。

「人の波も世の波も、月夜の下じゃ凪の闇。音無き至福にその身を委ね、今日もまた独り、はっ空の下ぁ」

すると再び地面を一踏みし、腰を落とし、右手は肘を立てて引き、左手を前に突き出した。

「月影のイザナギ、ここに見参っ」

なんと・・・。

マリアンヌを見るとただ呆気に取られていて、岩影と白火を見てもその沈黙は正に役者の口上を見守る客の如く静寂を流していた。

「ふぅ、決まった。あなたがディビエイトを殺すと息巻いてるエネルゲイアだな?」

ん、声を聞く限りでは・・・。

「女子か」

こちらを見下ろすとイザナギと名乗ったディビエイトは再び身構え、何やら右手を天に掲げた。

「女と甘く見ることなかれ。雷光天貫、月下を舞い、その名を大地に轟かせっ・・・エクス、カァリバーぁっ」

なんと・・・。

拍子木の音が聞こえてきそうなほどの上手い言い回しに思わず感心してしまいながら、再び締まりのいい一踏みを聞かせるイザナギの手に現れた、赤い鱗を被った太く大きな刺々しい刀を見上げる。

「あっ」

ん?・・・。

しかし何やら声を上げた直後、そんなイザナギに目もくれずマリアンヌはどこかへと飛んでいき始めた。

「私は無視かーっせっかく名乗ったのにっ」



「あなたは戦争を止める為にここに居るの?それともただ戦う為?」

「例えレッドブルー抗争が終わっても、別の世界に行き戦いに身を投じるだろうな。この力は、強き者を殺す為の力だ」

「そっか。じゃああなたを止めるには・・・」

「殺すしかないな」

ミレイユにそう応えるとトウ・ファンザは微笑み、まるで出来るものならなと言わんばかりの闘志と自信を見せつけたが、そのどこか嬉しげにも見える笑みがふと気にかかった。

単に戦うのが好きなのか・・・。

ミレイユと顔を見合わせ龍形態になると、ミレイユは白い光で全身を包み、光が形を成していると思うほど美しく透き通った翼膜を張る翼や、その同じような透き通った白い膜を背中や尻尾から生やした姿の龍形態へと変身を遂げる。

するとそんな中、ふと遠くからマリアンヌが飛んでくるのが見えた。

「ファンザっ」

トウ・ファンザが振り返ると、マリアンヌはトウ・ファンザの背後に降り立ちながら何やらこちらを見ていた。

「あなたは後ろに行って頂けて?」

「断るっ俺はこいつらに狙いを決めたんだ、邪魔するな」

「何よっあなたが目を付ける前からあたくしが目を付けてたの」

「知るかっ」

「あなたの意思など関係無くってよ」

「何だって?」

何だよ、いきなり仲間割れか?

するとマリアンヌは手に持つ短い棒を振り、見えない何かでトウ・ファンザを横へと軽く突き飛ばす。

「ふざけんなっ何してんだっ」

「あたくしはハルクに用があるのよ。邪魔なあなたが悪いんでなくて?」

お、俺?・・・。

「は?俺の獲物だ」

「ちょっとっ」

ミレイユが声を掛けると2人はミレイユに顔を向ける。

「ケンカはだめ。それでハルに用って?」

「ハル?あなたは何者でいらして?見たことのないディビエイトですが」

「私はミレイユだよ。新しく出来たディビエイトのチーム、バスターの1人なの」

「そんなことどうでもいいですわ。ハルクにとって何者かと聞いてますの」

どうでもいいのか・・・。

「えっ私は、ハルの婚約者」

するとマリアンヌは何故か表情を凍らせ、自然と力が抜けるように短い棒を下ろしていった。

「そ、そう・・・」

ん?どうしたんだ?いきなり大人しくなったが。

しかし直後、何やら怒りを宿したように表情を引き締めると、同時にまるで指を差すようにその短い棒をこちらに向けてきた。

「なら、ハルクはあたくしの胸をときめかせ、恋をさせた償いをして頂きますわ」

・・・・・・は?

「え」

漏れるように小さな声を出しながらミレイユがこちらに顔を向けた時、噴き出すようにトウ・ファンザが笑い出す。

「黙らっしゃいっ」

マリアンヌが短い棒を振りトウ・ファンザを黙らせた時、マリアンヌの後ろからこちらの方に回り込んできた見たことのないディビエイトと、同じような気配を感じるもディビエイトでもない3体の何かにふと目を留める。

バスターは分かる、だが天魔の気配があるあいつらは?・・・。

「お前、何敵に恋してんだ、バカじゃないか」

「うるさいですこと。あたくしは生まれて1度も怒鳴られたことが無かったのですわ。しかし先日、そこのハルクに怒鳴られてからというもの、あまりの衝撃に胸がドキドキして」

怒鳴られたから、恋をした?

どういうことだか。

「恋煩いだったのか」

くすんだ青色をした鎧に身を包んだ男性がそう口走ると、マリアンヌはその男性を一瞥するように見下ろしてからこちらに短い棒を突き出してきた。

「覚悟なさい」

「ハルクは俺の獲物だっ」

「雷光天貫っ」

トウ・ファンザが走り出してきたと同時にエクスカリバーを作り出し、手から細い水を矢のように飛ばしトウ・ファンザの勢いを抑えてからエクスカリバーを振り上げて剣身から水の刃を放つと、白黒に光る水の刃はトウ・ファンザを覆い、ビルを抉り、そのままマリアンヌをも軽く押し退けた。

「ミル、援護頼む」

「ううん」

しかし水の刃が消えてもそこには全身を銀色に染めたトウ・ファンザが無傷で立っていて、ミレイユを見ると龍顔で表情が分かりづらいものの、茶色に澄んだ瞳と獰猛なその眼差しには若干の狂気さがあり、そんな目つきに初めて感じたほんの小さな恐怖にふと言葉を失った。

「私はハル達よりも強く出来てるんでしょ?それに自分の力試したい」

「そうか、分かった」

「たぁーっ」

イザナギと分かる一声と共にイザナギが刺々しい反った剣を振りかざしマリアンヌに向かっていくと、同時にミレイユは拳の脇から伸ばした光を弓のように長く反ったものへと形作り、更にその弓の外側には剣身を作り出し、内側には翼膜と同じような美しい膜を生やした。

「あなたの相手は私だよ」

「どちらでもいい、2人共俺が殺してやる」



飲み物を飲んで落ち着いたように見えるものの、ソファーに座るクラスタシアは終始口を閉ざしたままテレビに映るトウ・ファンザ、ハルク、アルマーナ大尉を見ていく。

「大丈夫だよ、もっと魔法を練習すれば、きっと勝てるよ」

しかしクラスタシアは真顔のままテレビを見ながら固まっていて、肩に手を乗せるとクラスタシアはようやくこちらに顔を向けた。

「あ、ごめん聞いてなかった」

・・・えっ。

そう言うとすぐにクラスタシアは照れ臭そうに笑顔を見せる。

「落ち込んでないの?」

「え?落ち込んでなんかないよ。とりあえずちょっとあいつの動きを見てから、力を強化しないとね」

「あは」

「なぁに?カイル、あたしが落ち込んだと思った?」

そのからかうような笑みはすでにいつもの自信を見せていて、ふとテリーゴとロードの寛いだ微笑みに少しの恥ずかしさを感じた。

「う、うん」



アテナが翼から黄色い鱗粉を前面に撒き、カイザーの咆哮を難無く防ぐ中、両手で持ったその鱗の拳銃の背を目線に沿わせ、まるで軍人のように構えた一瞬の後、カイザーは宝石が鳴らすような甲高い音と共に黄色い光線に撃たれていく。

何度目かの銃撃の後にカイザーは二車線道路に落ちるが、それでもゆっくり立ち上がりアテナを見上げた後、車が走り、通行人も居るその場で大きく息を吸い込んだ。

まさかっ・・・。

「くそぉおおおお」

地面は窪み、車は吹き飛び、ガラスは割れ、通行人などは街路樹の木片と共に風埃と化し、すぐにビルを飛び降りていくが、その直後にカイザーの体がほんのりと光を帯びる。

するとその咆哮はまるで車のギアを変えたように更に重圧を増し、轟音を掻き立てながらまた更に地面を突き上げていき、その衝撃は思わず足を止めてしまう。

「ハッハッハ、遂に、遂にこの俺も、臨界突破だあぁっ」

臨界?・・・。

粉塵が舞う視界がようやく晴れると、身長や体格は変わらないものの、カイザーの体は両肩のクリスタルと同じものを全身の所々に飾るような姿に変わっていた。

「ハッハッハッハッハ」

まさか・・・。

「覚醒?」

「覚醒を知ってるんだな。まぁどうでもいいが。フォース・グングニルっ」

うわっやばっ。

背中から半透明な槍が噴き出した瞬間にクウカクを張ると、半透明の槍はこちらに矛先を変えながら更に4つに分裂した。

えっ。

直後に空から黄色い光線が撃ち落とされるがその間にも別の槍が分裂し、瞬く間にクウカクの壁は砕かれ、爆発に体は吹き飛ばされていく。

リッショウの排気口に天魔力を注いでも、クウカクを張っても歯が立たないなんて・・・。

ふと薄れかけた意識が戻ると何やら赤い膜の中に居て、その瞬間から痛みが引いていくとすぐに目の前に居る人影がストロベリーだと分かった。

ふぅ・・・。

「ありがとう」

「うん」

気が付くとビルの上に居て、縁から地上を見下ろすと同時にアテナが飛び上がるように視界に入ってきて、それを追うようにカイザーが背中から半透明の槍を噴き出してもアテナは翼から撒いた鱗粉で難無く防ぎ、拳銃から黄色い光線を放っていく。

しかしカイザーは先程までのように吹き飛ばされることなく、立ったまま持ち堪える。

・・・互角、かな。



「セー・・・ンクウラっ」

頭を伸ばす独特な発音が何かしらの技だと内心勘づいていく中、手を広げ背筋を伸ばしたタウロスの背後のクリスタルから、黒いオーラのケーブルに繋がれながら両肩に乗る2つの黒いクリスタル製の大砲が突き出ると、その一瞬の後に砲口から交互に黒くほとばしる光球が連射されていく。

魔法での遠距離攻撃が主体か?

「バー・・・リスタっ」

尽く公爵に斬られた光球が黒い爆風と化す中、そんな声の直後に2つの砲口から同時に鋭く尖った黒いレーザービームが、公爵を覆う爆風の中に更に撃ち込まれる。

すると吹き飛ばされるように公爵は爆風まみれで落ちていくが、空中で足を踏ん張ると素早く尻尾をざわつかせてこちらまで斬り裂くほどの広範囲斬撃をタウロスに返していく。

てか俺ら、完全にギャラリーじゃねぇか・・・くそぉ。



ミレイユが弓から、ディビエイトになる前とはまるで違う太さの光矢を放つ度、トウ・ファンザは押されるように後退りするが傷は無く、息を整えようとミレイユが動きを止めたその一瞬、トウ・ファンザは走り出した。

思わずエクスカリバーを握り締めるほど緊張が走る中、ミレイユは飛び掛かった瞬間のトウ・ファンザに弓で斬りかかり、更に蹴り飛ばすと同時に弓を引き、立ち止まったその隙に至近距離から光矢を放つ。

しかもその光矢は当たると同時に光を散らすような爆発を起こし、トウ・ファンザを勢いよく転がした。

うん、爆発する光矢は今も健在か。

強力な得意技に、さすがのトウ・ファンザも立っては居られないようだな。

「ふっこれくらいでいい気になるなよ?」

それでも多少息が乱れる程度か・・・。

「ふう」

真っ直ぐ立ち、トウ・ファンザを見据えるミレイユの横顔に見とれてしまったことにふと気付く中、イザナギの一声という名の喧騒が少し遠くなるほど、トウ・ファンザの走り出そうとする姿勢に緊張が走る。

エネルゲイアとディビエイトの決戦です。でもまだ完結章、1つ残ってますけど。

ありがとうございました。

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