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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
完結章 次世代の希望
340/351

エネルゲイア四天王VS女神の勢力

蜂のような顔をしたカイザーに向かっていくと、まるで余裕を見せつけるように立ち構えている体勢から突如怒鳴るような一声を発した。

直後に目の前の空間が歪んだが、考える間もなく、まるで爆風のような重たい衝撃が胸元に響いた。

うあっ・・・く、何だ。

どういう力だろ。

風音が弾けるような音を立てカイザーが飛び出し、その素早さに思考は追いつかずとっさに腕を上げたものの、その拳は胸元に叩きつけられ体はコンクリートに激突していった。

更に飛び出したカイザーはそのまま追い撃ちをかけると思いきや、何やら衝突を避けるように急ブレーキをかけた。

え。

大きく息を吸い込んだその素振りに胸騒ぎは肥大し、とっさに腕を交差させてクウカクを張ると、直後にカイザーは目の前で咆哮を上げた。

「ラアァアアアアア」

うわああぁ。

クウカクの壁は曇りガラスの如くヒビだらけになり、魔力を注ぎ直す間もなく正にガラスのように砕け散ると、直後に全身は鋭い重圧、重たい風圧に襲われた。

何かにぶつかりながら吹き飛んで転がった体を起こし、ようやく視界が明るくなるとそこには何やら棚やら本やらパソコンやら瓦礫やらが散乱していて、コンクリートの壁を跡形も無く粉砕したカイザーを認識しながら、背後に感じる立昇の輪にふと意識を向ける。

気が流れ込む魔法の排気口に、もっと天魔の力を・・・。

「はあぁあっ」

その直後、宙に浮いてこちらを見据えていたカイザーはまるで危機感を感じたように身構えた。

「たかがディビエイトに、これほどの威圧。面白い」

「おいっ」

背後から聞こえた声に振り返るとその開かれた扉にはスーツの中年男性が立っていて、まるでやじ馬のようにその男性の背後に数人が集まった時、穴が空いたビルに吹き込む風音や微かな雑音は掻き消え、全身にカイザーの咆哮が響いた。

やばっ・・・よそ見しちゃ・・・。

気が付けば真っ暗で、瓦礫に埋もれている事が分かったが体は軽く、すぐに抜け出すとふと目に留まったのは、天井の落ちた最上階に敷かれた瓦礫の中から出た人間の腕だった。

ああっ。

「ちっ無傷か」

「罪も無い人達だったのにっ」

「知るかっ・・・戦争の中の小さな犠牲だ」

小さな・・・くっ。

「俺だって何の罪も無い人間だったんだ。だが突如ブルーオーガの奴らがエネルゲイアを作り、俺達は強制的に戦争の中だ」

・・・そう、だった、けど。

「だが今じゃブルーオーガの奴らでさえ俺は止められない。俺が世界を支配する。人生を変え、俺を支配した世界を支配仕返したって、咎められる謂れは無いっ。だから良い女は俺のもの、邪魔者は排除する」

え、うわぁ・・・そっち系・・・。



意のままに空を飛ぶ度、忍の如く身のこなしを発揮出来る度、全身を満たす妖力は2人への信頼と自信となるが、虫が持つ節足のようなものをこちらが弾くと同時に岩影が懐に飛び込んでも、バクトがマリアンヌと呼んでいた女は見えない何かで岩影を押し返し、直後に白火が黒光の刀から黒光の矢を放ってもマリアンヌは同じようにそれを弾く。

しかしその表情はどこか神妙を帯び、心ここに在らずといったもので、2人が節足を相手にしている間に懐に飛び込んだ時、マリアンヌは何やらこめかみに指を置きながらため息をついた。

「そんな心持ちで戦に出るな」

「余計なお世話ですこと。あなた方こそ、弱いくせに出てこないで頂けませんこと?」

何を?・・・。

言わせておけば。

バクト殿に教えて貰った、魔法とやらを、確かリッショウと言ったか。

ふうっ・・・。

直後に扇子を突き出してきたので素早く横にズレながら、弓を引く動きと共に藍色の光の矢を作り出す。

追うように扇子を向けてきた瞬間に再び横にズレながら藍光の矢を放つと、光矢はマリアンヌを覆うほどに激しく弾け、巨体のマリアンヌを押し退けた。

光矢は弾けるものではないと、ロード殿は言っていた。

ということは。

直後に意識が飛びかけるほどの衝撃が襲い、気が付けば建物の縁を抉りながら屋上を転がっていた。

捌かれたのか。

「理一っ」

ほう、さすがリッショウだ、傷も付かぬとは。

「平気だ。それより懐に飛び込むより魔法なるものの方が良さそうだぞ?」

立ち上がりながら白火に応えたその時に大木の如く太い節足が振り出されてきたが、直後に目の前に立った岩影が籠手から前後にそれぞれ3枚ずつ伸びる岩色の花びらを生やすと、後ろに伸びた3枚は腕を守るように広くなり、前に伸びた3枚の内の1枚が幅の広い大太刀の刀身となる。

そして人を隠すほど幅広い大太刀は軽々と振り上げられ、その節足を豪快に斬り裂いた。

おおっ。

「何ですって、あたくしの体を」

「気を抜いておるからだ」

しかし直後に節足の切断面から節足が生えて元通りになり、マリアンヌはようやくその表情から闘志と引き締めた眼差しを見せた。

「あなた方に構ってる暇などありませんことよ?あの方に怒鳴られてからというもの、何やら胸がドキドキして・・・」

何故そんな事を言い始めたのかと思った矢先、マリアンヌははっとしたような顔をしてから口を閉ざす。

胸がドキドキ、だと?

「だったら尚の事ここに居るべきではない」

「戦いの場に居れば、あの方とまたお会い出来るもの」

あの方?



「ディストゥルベッド・チルキオ」

ただ真っ直ぐ振り下ろされただけにも拘わらず、直後に公爵の周囲に風を切る音が鳴り、水拳、雷眼、そしてこちらの体は一斉に水平に斬り裂かれた。

「皇炎斬」

それでも瞬時に斬り離された胴体を繋げながら伸ばした鉤爪を振りかざし、水拳はバルディッシュを振りだすが、公爵は見えない斬撃を振り撒きバルディッシュも鉤爪も弾き返す。

雷雨(らいさめ)

その間に天に掲げられた雷眼の掌から一筋の雷光が昇るとそれは直後に6つに分かれ、その6つは更に6つずつに分かれ、そして瞬時に無数に分かれた雷光達は更に無数に分かれながら、正に雨の如く公爵に矛先を降ろしていった。

雷光の滝に呑まれて姿が見えなくなり、沈黙という名の緊張が流れ出して少しした後、雷光が流れ切ったその跡には服もボロボロで血だらけにも拘わらず、何故か宙に浮きながら気絶している公爵の姿があった。

やった、よな?

すると直後公爵は光となり、瞬時に大きな白い狐となった。

・・・・・・はぁ?

尻尾の多い、瑠璃色の瞳のライオンほどの、妖怪の九尾と思われるようなその白い狐の出現に空気は止まり、雷眼と水拳は顔を見合わせる。

「どゆこと?」

「これが私の真の姿。私はオリジナルではなく、鉱石を使ってエネルゲイアになったのだ」

「妖怪か?」

「人間からすればそういうことになるだろう。ディストゥルベッド・・・」

やべっ・・・。

「ペンテっ」

放射性にざわざわとうねった白い尻尾が目に留まった時にはすでに視界は投げ出されていて、明らかに斬撃範囲の異なるそれに思考は麻痺する中、自分の腕や翼や脚が落ちていくその視界に映っているビルも、突如としてまるで斬撃を受けたように斬り裂かれ、瓦礫は道路に轟音を立てて散らばっていく。

これが、真の姿の力かよ・・・。

同じようにバラけた体を直していく2人の傍にあったビルも屋上や角が乱雑に斬り裂かれていて、まるで地面にお座りしているかのように宙に浮く公爵は、どこか女神に似た威圧を放っていた。

「私には近付けないよ。ディストゥルベッド・ペンテは、1度に5閃の斬撃を放つ業。この9本の尻尾はそれぞれに意思を宿し、そのものが剣として斬撃を放つ」

「9刀流か?」

「物分かりが良いのは感心だが、その分絶望も理解出来るだろう、つくづく哀れだな」

「妖怪が、何故人間の戦争に首を突っ込む」

雷眼の問いに、公爵は狐の姿でも貴族たる気品と威厳が伝わるほどゆっくりと顔を向けていく。

「人間がエネルゲイアとなり、戦争を始めると、人間達は妖怪にまで刃を向けてきた。ただでさえ弱く、しかも罪も無い動物を殺し、人間に友好的な妖怪さえも戦争に巻き込み、多くの命が失われた。だから私は鉱石を使って力を得て、人間を退け、滅ぼした。それから人間に化け、人間の中に入り込み、人間を滅ぼす。私はその為にここに来たんだ」

ふとエリザベスを思い出しながら、鞭で叩かれたバクトの変わりようを思い出す。

今頃、エリザベスは妹と国で幸せにやってんだろうか。

てか妖怪でも効くのか?

いや龍でも効いたしな・・・。



テリーゴとロードと共に一斉に弓魔法を放つが、直撃を受けてもトウ・ファンザの体は傷付かず、両手のスピーカーから小さな光の球を高速連射し、テリーゴが回転する闇のナイフを放ち、ロードが2色の光球を放ち、その全てが命中してもトウ・ファンザの体は傷ひとつ付かず、トウ・ファンザは1歩ずつこちらに歩み寄ってくる。

真っ直ぐこちらを見据えながら、武器も持たず、走り出す訳でもなく1歩ずつ確実に近付いてくるその姿は思わず緊張せずにはいられず、クウカクを目の前に張り、それにぶつかったトウ・ファンザが足を止めると、同時に背後からやんわりとした明るさを感じた。

「雷光天貫、その名を大地に轟かせろ、エクスカリバー」

クラスタシアが剣を作り出してもトウ・ファンザは狂気の無い真っ直ぐな力強さを伺わせ、それでもまるで勝つことが分かってるような余裕に満ちた立ち姿で、武器も出さずにクラスタシアを見上げる。

「3人共、常にクウカクを意識だよ。カイル、3つ数えたら行くよ?」

うん。

「1、2、3っ」

翼を意識するように体を飛ばすとトウ・ファンザは初めて身構えて見せ、体の側面をトウ・ファンザに向かせながらクラスタシアのエクスカリバーが振り下ろされるのを横目に見ていると、振り下ろされたエクスカリバーを受け止めようとトウ・ファンザは腕を交差させ、直後にその場は爆発するように吹き上がる眩さに包まれる。

やったっ・・・。

更に巻き上がったその眩しさの中に目を凝らすと、そこには全身をただ銀色に染めたトウ・ファンザが傷も無く立っていた。

そんな・・・。

「この世の全ての鉱物を含み、精製された俺の体は、どうやら女神では打ち壊せないようだな」

え?

そう言って残念そうにクラスタシアを見上げながらトウ・ファンザは手を伸ばし、手から銀色の何かを撃ち出した。

「ああっ」

クラスタシアの声が頭上で飛び、直後に屋上に倒れ込んだクラスタシアが見えると、そのお腹には切っ先だけの剣の破片が刺さり、血が流れ出していた。

クラスタシアぁっ。

そんな、クラスタシアが、やられるなんて。

「カイ、ル、帰るよ」

うん。

「貫通させるつもりだったが、まぁいい」

そう言うとトウ・ファンザはこちらの足元を通してクラスタシアを見るものの、追い撃ちをかけることなく何故かその場で腕を組んで立ち尽くした。

何で来ないの?

「何で・・・」

「俺のモットーは相手を一撃で殺すこと。だが、次に会う時の俺が今の俺だと思うなよ?それまでにはこの体は更に精製されている」

クラスタシアの転送筒でカソウ達の家の傍に戻り、自分の体に戻ると、すでに周りには心配するようにこちらやテリーゴ達を見るシドウ達が居た。

「シドウさん」

「今裏にペチコ向かわせたからな」

ふぅ。



「フォース・グングニルぁっ」

手を広げたカイザーが上を向いて叫んだ直後、その声は背中から吹き出した4本の半透明の槍となった。

弧を描き矛先をこちらに向けてきた1本をかわすとそれはビルを抉り、瓦礫を散らし、悲鳴を湧かせた。

くっ・・・。

立て続けに矛先を変えてきた半透明の槍を、クウカクを纏わせた拳で殴りつけるとそれは爆発し、衝撃に戸惑っている間にも続けて槍は体に刺し込む。

4本目の槍が胸元を突き爆発した頃には体はビルにめり込んでいて、訪れたその静寂は真っ先に強い痛みを全身に覚えさせた。

ふぅ、ふぅ・・・。

こんなに強いエネルゲイアが居たなんて。

その場から動かず、こちらを見据えた後、カイザーは大きく息を吸い込んだ。

「フォース・グングニルぁあっ」

くっ、やられるっ・・・。

しかし直後、こちらに向けられてきた半透明の槍は空から撃ち落とされてきた黄色い光線によって尽く消滅させられた。

何だっ。

とっさに見上げると、そこには羽毛のある黄色い翼に黄色い鱗、そして銃身の長い黄色い拳銃を持ったディビエイトが居た。

その瞬間、ふと脳裏に雷眼の姿が浮かび上がると同時に、まるで記憶の泉が吹き上がるようにルーニー、ソウスケ、そして雷眼と共に居たディビエイトの姿も浮かび上がった。

・・・アテナ?・・・。

どこか憎めない敵、カイザーがそんな印象になればいいですかね。

ありがとうございました。

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