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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第二章

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キングス・ウィズアウト・グリード4 エニグマ

「ギブアンドテイクっていうのは、料理を振る舞う代わりにラフーナを3つ貰うって感じかな」

「えぇー」

するとアリシアは笑みを浮かべながらも少し嫌そうな声を出した。

「まぁ、何にしてもタダで何かを貰えるほど世間は甘くないんだよ」

「そんなぁ」

肩を落としながら落ち込むようにアリシアが呟くと、そんなアリシアを呆れたような表情と優しい眼差しで見つめるアゲハがふと目に留まった。

「いくら何でも、アリシアだって無条件で天使の力を人間に分け与えないでしょ?」

「うーん・・・ものすごく仲良しなら・・・良い・・・かなぁ」

さすが天使だな。

「アリシアはすごく優しいんだね」

「えへへ」

するとこちらを見ながら微笑んだアリシアは照れながらうつむいていく。

噴水広場に戻ると、魔界に続くものとはまた別の、天使城の左脇に作られたアーチ状の塀門をくぐった。

ここが天魔界だな。

広場の中央に作られた噴水を見ると、白と黒を使った、2つの国のものとはまた違った新しいデザインになっていた。

「姫様っ」

すると間もなくしてアゲハの下に天魔と思われる1人の男性が近づいてきた。

「あぁログ、どうしたの?」

「異世界からの来訪者をご案内するためにここで待つように申しつけられました」

「それならこの人だよ」

アゲハがこちらに指を差すと、丸いフレームのメガネが印象的でやや小柄な中年男性がこちらに顔を向ける。

「そうでしたか。お待ちしておりました。女王様の下にご案内させていただきます」

この人が女王の使いの者か。

「あぁ」

「それではこちらへどうぞ」

ログと呼ばれた使いの者の後について歩き出す中、ふと三日月のオブジェが中央に飾られた噴水に目を向ける。

3つの噴水広場が、それぞれの国の玄関口みたいなものなのかな。

そういえば噴水の水はどこから来てるんだろう。

「あっ、と、氷牙、いきなり止まらないでよ」

反射的に振り返ると、すぐ目の前に立っていたアリシアは戸惑うよりも心配するような眼差しでこちらを見ていた。

「あ、ごめん」

「どうしたの?」

「この水はどこから来てるの?」

「地下から引いてるんだよ」

噴水を見てからアリシアはすぐに笑顔を浮かべてそう応えた。

「そうか」

地下?下の階層とは別に地面に下があるのか、なら下の階層とはどうやって繋がってるんだろう。

城に入ると、基本的な内装は他国と変わらないものの、女王の下に続く絨毯は気品のある黄色になっていた。

赤と青の中間だから紫って訳ではないみたいだ。

「それじゃあ、あたしは一足先にお母様の所に行くね」

「あぁ」

軽く手を振りながらアゲハが女王の所に走って行くと、アリシア達も左手にある壁沿いに作られた階段の方へと歩き始めた。

「じゃあ私達も特等席に行くね」

「あぁ」

「それではこちらへ」

中の作りはどこの国も変わらないんだな。

統一感を持たせてより三国間の隔たりを感じなくさせてる訳か。

「女王様、連れて参りました」

「えぇ、あなたはもう下がっていいわ」

「はい」

ログが深く頭を下げてから階段に向かうと、女王は気高く力強い眼差しでこちらを見下ろした。

「よく来たわね。ところであなた、天魔の力が欲しいらしいわね」

「はい」

豪華な刺繍が施されたドレスの上にアクセサリーのような装飾のある鎧を着けたその姿に、どことなく2人の王とは違う強い個性を感じた。

それに2人の王よりも若々しく見えるかな。

「それなら、傭兵になったら天魔の所属にするからそのつもりでね」

厳粛な雰囲気や威厳のある髭が無いからか、何となく親しみ易さを感じた。

「分かりました」

「この世界について聞きたいことがあるなら聞いて良いわよ?特別に答えてあげるわ」

すると女王は微笑みながら、まるでリラックスしたように柵に肘を乗せた。

「でしたら、4つの国以外に国はありますか?」

すると女王は頬に手を当て首を傾げる。

「それはまだ分からないわ?古文書にはそれらしい記述があったみたいだけど。どうしてもって頼まれて派遣した調査隊もまだ帰ってきてないし」

「そうですか」

やっぱり外界には興味ないのか?・・・。

いや、たまたま3人の王がそういう性格なだけか。

「他にはあるかしら?」

「じゃあ、僕の他に異世界からはどんな人が来ましたか?」

「そうね、最近だと3年くらい前で、確か、獣人という方だったわ。その前はサムライという方で、一番古いのでは機械人と名乗った方だったわね」

獣人か、興味深いな。

「そうですか」

「サムライはあなたと同じ、一見人間だから話を聞いて驚いたのよね」

女王が記憶を振り返るように天を仰ぎながら物思いにふけっていると、見兼ねたログが静かに女王の背後に歩み寄る。

「女王様」

「あっそういえば、先の試練では三銃士と渡り合って、翼を解放したハガン大尉を倒したって聞いたわ。本当なの?」

「そうですね」

「すごいわね・・・じゃあ最後の試練はちょっと相手を変えようかしらね」

どことなく不敵な笑みを見せた女王はゆっくりと後ろを振り向き、ログを呼びつけた。

相手を変える、か。

兵士以外に戦える奴がいるのか・・・。

「ログ、エニグマを用意しなさい」

「えぇっ、エ、エニグマを・・・ですか」

するとログはまるで怯えるような顔色を見せると共に、慌てふためくように辺りを見渡し始めた。

「さっさとしなさい」

「あ・・・は、はい」

ログが奥の扉に小走りで去って行くと、こちらに目線を戻した女王はより一層怪しげな笑みを深めた。

「気をつけてね。殺さないと死んじゃうわよ」

相手が野生の生き物なら、そういうことになると思うけど。

「望むところです」

「うふふっまぁ頑張ってね」

だけど動物を連れてくるだけでそんなに慌てる必要が・・・そういえば、アリシアがここの動物は巨大なものだって言ってたな。

闘技場の仕切りとして鉄の柱で囲いが出来ると、更に隙間を埋めるようにもう一周、同じように鉄の柱が飛び出した。

厳重だな。

ログが戻って来て、女王に耳打ちをする。

「準備は良いかしら?」

氷牙を纏っておこう。

「はい」

うっすらと笑みを浮かべた女王が再度ログに顔を向け頷いて見せると、ログは握り締めている何かを口元に寄せ、まるでそれに話しかけるような素振りを見せた。

あれは・・・。

直後に迫り出した2階の真下の壁から、まるで木製と思われる機械仕掛けの何かが動き出したような重低音が鳴り出す。

何だ?・・・。

そして同時にその壁はゆっくりと床下へ下げられていった。

あれ、開くのか・・・。

するとその壁の向こうにはゾウのように太い脚と先が5本に分かれた尻尾を持つ、恐らく3メートルはある巨大なサソリのようなものが居た。

そのエニグマという巨大な生き物は、闘技場に出て少し見渡すとすぐにこちらの存在を確認した。

何だあれ、恐竜みたいな頭してるけど、サソリだよな。

「ガアアアァ」

まるでビルの倒壊を思わせるような声が闘技場にこだますると、その一瞬にして闘技場の外にまでも緊迫感が広がっていった。

まぁとりあえず殺して終わりってことだな。

ブースターを全開にして噴き出し、氷槍をエニグマの脳天に突き立てるが、その瞬間、氷槍の先端は音を立てながら砕け散った。

おっと硬いな。

その直後に巨大な鉄球のようなものが先端に着いた尻尾に勢いよく叩きつけられ、凄まじい衝撃を受けながら鉄の柱に激突した。

なるほど、鉄の柱が二重になった訳が分かる。

だがどんな生き物でも頭が無くなれば死ぬだろう。

頭を狙って氷弾砲を数発撃ち込む。

「ガアアッ」

エニグマが頭を振って顔全体に凍りついた氷を払うと、まるで怯む様子も見せずに睨みつけるようにこちらを見据えた。

効いてないのか。

少し近づいて氷弾砲を構えたとき、エニグマは大きく開けた口から突如巨大な炎の球を吐き出した。

でかい、避けきれない。

再び直撃を受け鉄の柱に強く叩きつけられる。



「やはりエニグマには敵わないか」

「そんなに負けたのが悔しいの?」

ミレイユが後ろから囁いてきたので振り返ると、ミレイユはからかうように小さくニヤついていた。

「俺達はまだ負けてない。解放もしてないのに、負けなんか認めてたまるか」

でもまぁ、喰われそうになったら助けてやるか。

俺が負かす前に死なれちゃ困るからな。

「でも、ハガン大尉は解放しても負けたって聞いたよ」

「何だって?」

ガルーザスが、負けた?

翼を解放しても?

だがあいつが手加減するはずは無いしな。

「誰から聞いた?」

「え?本人から・・・だけど」

まさか、それが本当なら、俺が解放してもサシで勝てる保証はあるか?

いや、だがエニグマには押されているか。

まぁ仕方ないよな。

エニグマは本来、3人以上の隊を編成しなければ、戦う許可が下りない。

女王様は、あいつを買い被ったな。

「あーあ、また吹き飛ばされたね」

「退屈か?」

「そうでもないよ、ハルがいるし」

「そうか」



まったく、見た目通りの化け物だな。

氷槍も砕かれて、氷弾砲もたいした効果が無いなんて。

仕方ないな。


絶氷牙、氷結。


そしてブースター全開で飛び込みながら顎に向けて拳を突き上げると、エニグマはその巨大な体を大きくのけ反らせる。

更にブースター全開で回転して、尻尾を思いっきり喉元に叩きつけると、エニグマは轟音を立てながら豪快に横に倒れた。

しかしエニグマはすぐに立ち上がると尻尾を振り回してきたので、紋章で受け止め、尻尾に絶氷槍を突き刺した直後に槍の先端に紋章を出して絶氷弾を撃つ。

すると氷の弾の破裂と共に尻尾の球の根元が砕け、球は鈍く重たい音を床に響かせた。



「何あれ・・・」

静かに呟きながら、ミレイユはただ呆然とヒョウガの戦いを眺める。

何だあれは?

背筋の骨格が曲がり、尻尾が生えた。

あれは人間か?

しかもさっきと動きがまるで別物だ。

次々と尻尾を砕いていってる。

スピードもパワーも格段に上がって、まるで俺達の力の解放のようだ。

あれが、ヒョウガか。

やはり下界の人間じゃないのは確からしいな。

「なぁミル、ガルーザスはあれにやられたのか?」

「え?ううん、そんな話は聞いてないよ?」

何、翼を解放しても敵わない姿よりも強い形態があるだと?

異世界の人間ってのは皆ああなのか?

少しの間ヒョウガの動きを見ていたミレイユがおもむろにこちらに顔を向けた。

「最初に私達が翼を解放してたら、あの姿でも三銃士のチームワークには敵わなかったんじゃない?」

余裕の表情を見せるミレイユを前に心が落ち着くのを自分でも感じた。

それもそうだな。

「だけど、まだ何か隠してるかも知れないな」

「うーん」



最後の1本の尻尾を掴み、ブースターの出力を上げながらエニグマを振り回して投げ飛ばすと、エニグマは鉄の柱に叩きつけられるがすぐに立ち上がり、炎の球を吐いて反撃してくる。

見た目通りタフだな。

絶氷弾で炎の球を迎撃していき、最後に頭に絶氷弾を撃ち返す。

「ガアァ」

怯むかのように顔を背けたエニグマの顔はだいぶ凍りついたが、それでもエニグマはすぐに頭を振り氷を振り払う。

これでも完全に凍らせることは厳しいみたいだな。

飛んできた尻尾を紋章で受け止め、背中に思いっきりかかとを落とすと、エニグマはその大きな脚を蹴り出して反撃をしてきた。

しつこいな。

再度顎に向けて拳を叩き上げ、のけ反ったときに懐に潜り込み、ブースターの出力を上げてエニグマをひっくり返した。

「絶氷弾砲」

氷弾砲に更に紋章を重ねた氷の弾をエニグマの胸元に撃ち込むと、氷の弾の爆風はエニグマをも覆い尽くし、瞬時に数メートルも高くそびえ立つ氷山を作り上げた。

終わったかな?

エニグマは氷山にのしかかられる状態になり、既に凍死したように固まっている。

動く気配は無いな。



エニグマを・・・1人で倒したか・・・。

チームでならまだしも、1人でエニグマの相手が出来るなら隊長クラスの実力者ということになるが。

「くそっ」

何だこの感じは?

まさか、嫉妬?

そんな馬鹿な、たかがエニグマを倒しただけだろ?

3人でかかれば、あのヒョウガにだって勝てるさ。

「・・・ハル?」

「行くぞ」

「うん」

天界へ続く裏庭に入ったときにふと声が聞こえた方に顔を向ける。

「あぁ、ガルーザスか。そういやお前、負けたんだってな」

「油断しただけだ。それより、少し良いか?」

ガルーザス・ハガン(28)

階級は大尉。

悪魔兵の精鋭として魔王に絶大な信頼を寄せられている。部下からも頼られるよき先輩だが、1人で行動することが多い。

身長208cm体重99kg


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