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天女の微笑み

この矢印は一体、どこからどこへの矢印なんだ。

いや、試しに行った方が早そうだ。

「おーいベイガス」

降りてくるガルガンを見上げると、降り立つ前からガルガンは何やら嬉しそうにある方角に指を差していた。

「何か見つけたか」

「あれ見ろよ」

しかしガルガンが指を差した方に見えるのは遠くに見える、木造の高台だった。

「高台?」

「あぁ、あの高台、その地図の真ん中の矢印の元の置き石じゃねえか?」

ん、あの高台がこの置き石?

では矢印は・・・。

「じゃああの高台から、矢印の方へ行けば何かあるということか?」

「多分そうだ。すげぇ小さいけど、矢印の方にも穴が見える」

なるほど、そういうことか。

「だが矢印は2つある。どちらに行くんだ?」

「あー、二手に分かれるか。お互いの居場所は分かるんだ、なら手掛かりが無くなったと思ったらお互いの気配を追えばいいだろ」

「分かった」

再び森林を眼下に飛んでいくと、やがて見えてきたのは3つの大きな城が目を引く広大な街並みだった。

さ、三国・・・。

矢印の内の1つが三国なら、もう1つは死神界か。

その時に何故か別れ際に寂しそうにこちらを見つめるユリが脳裏に浮かぶと、気が付けば足は黒を基調とした街並みの外壁の上に降り立っていた。

高台には休むように座り込む兵士が居て、居住区の中に作られた小さな広場にははしゃいでいる数人の子供達がいた。

特に、異常は、無さそうだ、ん?

ふと城の方から外壁に向かってきた4人に目を向けると、すぐにその内の1人の女が死神だということが分かった。

・・・どういうことだ。

何故、三国に死神が、しかもあんなに親しげに。

「じゃあまたね」

「うん」

笑顔で手を振り合い、しかも三国の兵士の女と共に三国を後にした死神の後を追っていくと、死神と三国の兵士の女達は親しげに話しながら死神界とは別の方へと向かっていった。

確かバクトは三国の兵士として反乱軍と戦っていたと言っていた。

その時にバクトはレイと共に俺と戦っていた。

もしかしたら俺が死んでから三国と死神界の間に何かあったのだろうか。

「この前ね、クレラって子がイビルと友達になったって言ってたの」

「えっイビルと友達に?喋ったの?」

「ううん、何か、エニグマのお肉を分けあったって」

「へぇーっ」

2人の向かう先にも小さいが城が見えたので、2人よりも先にその城がある広場に入ると、そこにはまだ発展途上ではあるものの正に死神界を思い出させる街並みがあった。

ここは、何だ。

死神界?いやでも、小さ過ぎる。

居住区と無心兵の生成場を抜けて城に入ると、左手の部屋からエントランスに入ってきたレイとサイジールが視界に入った。

レイ・・・。

「今日は助かったよ。無心兵の黒衣だけはどうもまだ足りなくてな」

「まぁこっちもイビルの情報は必要だから、と言っても少しずつで悪いが」

何故王子派と王派が・・・。

「まぁ距離は置いてるが、王子も王の独立には反対しないようだし」

王の独立だと?

レイとサイジールが城が出ていくのを何故か追いかけることは出来ず、ただ少しの間だだっ広くはなくなったエントランスを見渡していた。

「おぉ、ここに居たか。何だよここ、死神界か?」

「王が死神界から独立してここを作ったらしい」

「ま、まじか。・・・ふーん、それで、これからどうするよ」

「現状は大体分かった。俺はもういい」

「・・・そうか。まぁオレももう何かすっきりしたよ。それに大して変わってることは何も無かったしな。じゃ、戻るか」



「んーなるほどねぇ」

クラスタシアは終始感心したり、嬉しそうにほくそ笑みながら、大きな四角い板状のものをこちらの体全体にゆっくりとかざしてくる中、ふと窓の外に居るテリーゴとロードに目を向けてみる。

「はい戻ってー」

感覚も無い、光そのものに変化している体を元に戻しながら、その様を真剣な表情で釘付けになっているクラスタシアを見る。

「んー」

ふぅ、戻ったときは疲れるけど、変わってるときは何かまるで浮いてる感じなんだよなぁ。

窓を開け、リッショウをしながら瞑想しているテリーゴと、それを見ているロードを見る。

「そうかぁ」

「何か分かったの?」

「うん。カイルのあの姿、100パーエネルギー体だね」

エネルギー体・・・。

「多分、取り込んだルーベムーンの膨大なエネルギーが溢れて、でも何らかの作用で体の形に納まったってことだと思うよ?」

溢れたけど、すぐに納まったか。

「僕の世界の力のお陰かな」

「んー、でもカイルの世界の力は堕混になったときに役目を果たしてるから・・・他に心当たりは?」

え、うーん。

あの時に使ってた力って、堕混の力と、あ。

「お、その顔は何かあるのね」

「リッショウ、かな」

「あー、例の魔法ねー。それって詳しくどんなものなの?」

「ロードなら知ってるよ。おーい」

外から窓枠に肘を掛けたロードに歩み寄るクラスタシアを見ながら、依然として瞑想し続けているテリーゴをふと見てみる。

「リッショーってどんなの?」

「力の流れに排気口を作り、循環や放出の効率を上げる、といったところだろう」

「ほー。そっか、じゃあやっぱり溢れた膨大なエネルギーの循環と放出が安定した形なんだ、あれ。しかも吸収と蓄積の能力を持つイビルの細胞が仲介役となって、エネルギーと体が完全融合したと」

確かに、もの凄く力が満ちてるのに落ち着いてるような感じなのは、そういうことだからなのか。

「やっぱりすごいねクラスタシア、何でも分かるんだね」

「へへーん」

腰に手を当てながら、こちらまで嬉しく、安らぎを感じるほどクラスタシアは自慢げに、楽しそうに笑顔を見せる。

「だが、肝心なのは、どうすればその形を作れるかだ。単純にルーベムーンで得た力とリッショウを同時に出せば出来るなら、俺達も使えてるはずだろ?」

「それはさ、ロード」

そう言ってクラスタシアは自信を見せつけるようにニヤついて見せ、ある言葉を連想させる。

「気合いじゃん」

あは。

落胆するように笑みを溢したロードは背を向けて翼を解放すると、テリーゴのようにリッショウしながら瞑想し始めた。

「そーだなー。名前は、エネルギー形態ってとこかな」

エネルギー形態・・・。

「何か凄そうだね。そういえばクラスタシアはルーベムーン使ったの?」

「うん。見たい?」

「うん見たいっ」

小屋を出ていくクラスタシアについていくと、クラスタシアは目をつむり立ち尽くすテリーゴ達の近くで立ち止まり、手を叩いた。

「あたしもルーベムーン使ったから見てよー」

「おー、そういえばオイラ見てないなクラスタシアの変わった姿」

「実はね、みんなには内緒で、ちょっとした秘密兵器作ってたんだ」

秘密兵器?

するとテリーゴはすぐに期待を湧かせるように表情を更に明るくして見せる。

「それって、オイラにもくれるのか?」

「え?あげないよー、戦い慣れてるみんなは秘密兵器なんて要らないの。だからこれはあたしの」

「えー」

残念そうに落ち込むテリーゴをよそに、クラスタシアは自信と嬉しさが滲み出るような笑みを浮かべながら、手を小さく広げた。

「翼解放」

生えた翼がクラスタシアを包んだ瞬間、クラスタシアを包む白い光は瞬時に思わず顔を背けてしまうほどの風圧と砂埃を生み出した。

「うおっ」

テリーゴの声が虚しく消えていったところで砂埃が晴れるが、天使のような白い鎧を纏ったクラスタシアには翼は無く、代わりにまるでそこにあるのに触れないと思わせるような、見えない重厚感に満ちた1枚の長い布状の光が、首から掛かりそのまま両脇に垂れ下がるような形で浮くように体にまとわりついていた。

翼が、なくなった?

「バクトみたいだな。翼解放と言いながら、翼が無くなるとは」

そう言葉を溢したロードに落ち着いた笑みを見せながらクラスタシアが歩み寄ってきたが、その瞬間にクラスタシアのその布状の光は無意識に1歩後退りさせ、生唾を飲ませた。

「それ、なんか、翼の気配はするけど」

「うふふー気付いた?これ、あたしが自分で翼を改造したの」

改造・・・え。

強気な笑顔でそう言いながらクラスタシアはゆっくりと回り始める。

「何、そんなことが出来るのか」

「出来るのかって、出来てるの。まぁ簡単に言うと、翼を媒体にして、常にルーベムーンを核解放させてる感じかな」

ルーベムーンを核解放・・・。

「それだけなの?」

「まあねー」

「なぁそれは、エネルギー切れにはならないのか?」

「ならないよ?ルーベムーンのエネルギーとあたしの力は融合してるからねー。ていうかみんなもそうじゃん。ところでさ、ロード、あたしにもリッショウ教えてよ」

「あぁ」

「じゃあ、2人がエネルギー形態になれたら、行こうか。あの世界に」



決意を宿した力強い眼差しのカイルを思い出しながらロートレ支部の屋上に降り立ち、翼を消す。

今回はカイル達じゃなかったか。

仲間の為に戦う・・・あんな強い眼差しのカイルは初めてだったな。

「ディビエイトによって危機は回避されたが、襲撃の直前、ブルーの目撃情報は無かった。そこでエネルゲイアによる襲撃も視野に入れる為、ディビエイトのハルクをリーダーにしてチームを作り、襲撃した未確認部隊を調査してくれ。チームは・・・マルシア、タンク、シーティー」

司令官が指を差していく人達を見ていくと、その人達も緊張感のある眼差しで各々目を合わせてくる。

そして静寂が足音という名の雑音に変わると、目を合わせた3人が歩み寄ってきたのでとりあえず銃を肩に掛ける男性に手を差し出す。

「ハルクだ、よろしくな」

戸惑いを見せながらも握手を交わした男性の眉間のシワが緩まると、他の2人も同じように表情の強張りが緩んだ。

「・・・マルシア」

茶色い短髪と顎髭が特徴的なマルシアから、暗い緑色の布を額に巻いた小太りの男性に手を差し出す。

「よろしくな」

「オレはタンク。スナイパーだ、狙撃は任せろよな」

「あぁ」

両頬に深い緑色の線を縦に描いている堀の深い女性は、握手をすると同時にそのまま力を入れ始めた。

「あたしはシーティー」

い・・・。

「いてーよ」

「あんた女には優しいタイプだろ?そんな感じする」

え・・・。

「女だからって甘く見るなよ?」

ふっ頼もしいな。

「分かったよ。で、俺が見た限りじゃ、あいつらは赤い鉄で足を覆ってて、逃げ足が速かった」

「飛んで逃げた訳じゃないのか?」

そう聞くとシーティーはパソコンとやらが並んだ長テーブルの椅子に座り、パソコンを指でなぞり始める。

「あぁ」

「他には何覚えてる?」

「俺が見た限りでは3人。全員、右が緑、左が赤の仮面を着けてた。それと全員マシンガンを両手に持ってた」

シーティーがパソコンを操作していくと同時に、ふとタンクが自信ありげに唸り出したのに気が付く。

「機動力での隠密って時点で、狙いはディビエイトじゃなくて人間、つまりは要人の暗殺だったんだな」

「いや、要人の暗殺なら、マシンガンではなくSLだ」

すかさず言い返したマルシアの冷静な言葉に、タンクはふて腐れるように遠くを見つめていく。

「エスエル?」

「サウンドレス。ピストル専用の最新式サイレンサーだ、それを使えば全く音が出ない」

なるほど。

「そうだねぇ、現に殺られたのはほとんど格下だったし、要人暗殺じゃなくて虐殺目的だったのかもね。なぁハルク、他には無いの?特徴」

「いや・・・ああ、追いかけようとしたんだが、支部から飛び降りたときにはもういなかった」

「んー屋上からは30メートルくらいだしねぇ、それに夜明け前だったし・・・」

そう言いながらシーティーはからかうようにニヤついて見せる。

「あんたが寝ぼけてたんじゃないの?」

「な・・・」

まったく・・・。

「・・・んーこれかな」

すぐに真剣な眼差しを見せたシーティーが指を差したパソコンを見てみると、そこには緑と赤の背景の中央に紋章が描かれた国旗が映し出されていた。

これは・・・。

「セーグリーン。だがあそこはレッドブルー抗争には全く関わっていない。もしそうだとしたら、何故8000キロ離れた国にちょっかいを出す」

マルシアの言葉に頬杖を着いたシーティーと腕を組んだタンクが一様に黙り込むが、マルシアはただ眉間に小さくシワを寄せながら目を逸らしていった。

「さすがに違うか。後を追っかけた奴とかいないのかなぁ」

「なら他の支部からも情報を集めればいい。他のディビエイトだって、そいつらに接触してるんじゃないのか?」

「そうだな、聞いてみるよ」

「シーティーはそのまま情報を集めて、タンクと俺も別の支部で聞き込みだ、司令官の指示だと言えば問題無いだろう」

仏頂面だが、頭の回転は速いみたいだな。

現時点で主人公は10人、どこをどう切り取り、繋げるか、ちゃんと出来てるか心配ですね。

ありがとうございました。

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