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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第十章

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イン・ウィンドビレッジ

「おいっ」

振り返るとすでにそこには2人の男が立っていて、2人に体を向けるやすぐに頭に巻いたバンダナが目立つ方が、まるでヒーローを思わせるような銀色のメタリックスーツで全身を包んだ。

たったふた・・・。

突如頭に強い衝撃を受け、つんのめって思わず片膝と片手をビルの屋上に着いてしまうと、直後にすかさず銀色の男が跳びだし、殴りかかってきた。

とっさに手を出して銀色の男の拳を受け止めると、同時にその衝撃はまるで鉄球が地面に叩きつられたような鈍い音を響かせた。

その間にレザージャケットを着た方が両手を突きだし、手の前に炎の球を作り出したので、銀色の男を押し飛ばしながらレザージャケットの男にジェットエンジンの排気口を向ける。

その男が炎の球を飛ばした直後に光線を発射し、炎の球もろともレザージャケットの男をビルの外へと吹き飛ばすと、続けて銀色の男にも光線を撃ち込む。

2人がビルの下へと姿を消すのを見てから上空に目を向けるが、空にはすでにそれらしい人物は居なかった。

張り合いねぇなぁ。

間もなくしてふと気配を感じた方に顔を向けると、二車線道路を隔てた向こうのビルの隣にはその3階建てのビルと同じくらいの身長を有する白い石の巨人が立っていた。

おやおや、2倍以上の大きさで反撃ってか。

巨人の隣に立つビルの上に、ふとこちらを見据える1人の人間が立っているのに気が付くと、直後にその人間から上空に向けて赤く輝く一筋の光が打ち上げられる。

赤い光が見えなくなった直後、空気を切る音と共に頭に感じた衝撃に思わずよろめいてしまう。

さっきの、あいつか。

ビルの上に立つ人間に顔を向けたものの、すでに石の巨人がこちらの居るビルの前に立ち、今にも殴りつけようとその拳を振り上げていた。

後ろに跳び素早く拳をかわし、前に向けた6つの排気口から巨人に向けて一斉に光線を放つ。

ひゅー、楽勝っ。

やっぱ最大限のリッショウやってっとすべての感覚が違うな。

通行量の無い道路に盛大に散らばった石片を見下ろしていた時、その向かいのビルのすぐ上空に瞬時に2体の何かが駆けつけてきた。

おおまた来た。

どんどん来い。

ビルの上に滞空する2体の内の、緑のオーラと大きな翼が目立つ方に光線を放ち勢いよく吹き飛ばすと、もう一方の6枚の青い羽が目立つ方が素早くこちらに向けて数え切れないほどの細い光線を放った。

無数の細い光線がこちらの体に届く直前に腕を勢いよく広げ、無数の光線を弾き飛ばしながら、両手に光を集める。

そらよっ。

ビルの上すれすれを抜けるように6つの排気口と両手から最大限の太さで光線を放つが、空色の光線が空に消えるとそのビルの屋上は激しく焼け爛れていた。

大分熱が降りかかっちまったか。

「それがお前の本気か」

あ?

振り返ると屋上には反対側の柵に両肘を乗せながら余裕を見せつけるように立つ、アロハシャツを着た1人の若い男が居た。

何かいかついのが来たな。

「試してみろよ」

「言っとくが、オレはカソウより強い」

「・・・誰だよ。てかそっちこそ退屈させんなよ?」

「ちょちょちょっと待て。カソウ、知らねぇのか?戦ったんだろ?」

え?戦った・・・。

「だとしても、いちいち名前なんて聞かねぇよ」

小さく頷いたその男はまったく緊張や恐れを伺わせない態度で腰に手を当て、目線を落とした。

「そうか・・・何だ、ほら、背中から花を咲かす、炎の鳥人間」

はぁ?・・・あー、あのフェニックス野郎か。

「で、そのカソウが何だって?」

「まぁそいつとオレはライバルとして競ってるってことはお前には関係ないが、要はカソウがやれなかった奴がいるならオレがやるってことでな」

ライバルか、なら実力だって似たようなもんだろ。

「あっそ」

自信を見せつけるようにニヤついた男は手に黒く淀んだ風を集めると、光なのか液体なのか分からないそれを剣の形に固めて見せた。

「ふぅ」

直後に男の全身が黒く淀んだ色をした、西洋風のきつめな鎧に包まれると、男はまるで跳び上がろうとするような体勢を見せた。

男が足に力を入れようと踏み込むその一瞬のタイミングで光線を放つが、光線に貫かれた男は瞬時に霧となって消えた。

ちっ・・・。

バリアを張った途端、突如側方にまるで吹雪が吹き付けられるような風音が鳴る。

吹雪・・・氷系か?

上空に意識を向けると、落雷音を轟かせながら瞬時に頭上に移動した男はその場で素早く剣を振りかぶる。

素早く跳び込んでその場から離れると、直後にそこには眩く光る無数の雷が轟音と共に落ちていった。

おぉ・・・。

男に向けて光線を放つが、男は再び霧となって消えると直後にまた再び落雷音と共に別の上空に姿を現す。

しかし男は剣の形を崩すと、光なのか液体なのか分からない状態に戻ったそれを辺り一面に振り撒いて消していった。

何だ?

瞬く間にビルの屋上が吹雪に包まれ、空も周りの景色も見えなくなるほどになると、吹雪のドームの中で屋上に降り立った男は足元から周囲に向けてオレンジ色の炎を燃え上がらせ始めた。

何だこいつ、だがこんなもんは、一気に吹っ飛ばす。

ふぅ・・・。

バリアを消して自分の足元を淡く光らせた途端、男はその瞬間にすかさずこちらに向けてオレンジ色の炎を浴びせかけてくる。

くっもっと、広く。

足元の空色の光を平たく伸ばすように全方位に広げていくと、オレンジ色の炎を放ちながら、更に男は無数の雷光を放った。

ぐぅ、もっとだ・・・。

「うおぉらぁっ」

足元から視界を呑み込んだ空色の光が消えると、吹雪や炎、落雷のどれもがその姿を消し、更にはキレイに白く塗られた屋上や柵もその形をすべて失っていた。

あーあ、体中の鱗がボロボロだ。

「はっ・・・くそ」

お、生きてたか、けどその様じゃ・・・。

服も燃え、体中から血を滲ませて倒れている男に背を向け、別のビルに移る。

さてと・・・お次は誰かな。

遠くの空の色が薄くなってきた頃、迷彩服を着た数人に連れられて軍用車に乗る。

こんな日が、これから毎日続くのか?

いやぁ、疲れたな、はは。

「おいおい何笑ってんだぁ?」

「え」

「楽しいことでもあったのか?」

「何でだよ、普通に疲れたんだ」

楽しいことか、まぁそれはこれからだけどな。

トラックの荷台の中、他愛もない話で笑いながらふとアロハの男のことを思い出す。

「それじゃあ帰ったら爆睡だろ。大変だなディビエイトってのも。オレはこれから彼女とデートだ」

「ああ、この前クラブでナンパしたって女だろ?」

「いや、俺だってこれから彼女と会うしな」

2人が感心するようにニヤつくのを見ながら、ふと血だらけの男の下に瞬間移動してきた1人の女を思い出す。

「ディビエイトにも女が居るもんなんだな、何か妙だな」

妙って・・・。

「ご苦労だったな総助。期待通りの実力だ。オスカーも衛星の映像を通して観てることだろう」

大人の落ち着きの中にも満足げな表情を見せながらふと椅子から立ち上がったサルマンは、角に立つコート掛けからコートを取った。

「マーケイン、後は頼む」

通信機の前に座る人物が、ヘッドホンを片方だけ外しながらサルマンに頷いて見せると、すぐにサルマンは歩き出しながらこちらに顔を向ける。

「私は支部に戻るが、来るかね?」

「いや、俺はこれから用がある。そんで聞きたいんだが、こっからウィンドビレッジって近いのか?」

「近くはない。君の配属された支部はどこだ」

「ロンテリア」

「なら一旦ロンテリアに戻った方が良いだろう。4番テントのジェットヘリを使うといい」

夕焼けが広がっているのを見ながら4番テントに向かい、バッグから取り出した携帯端末で地図を見る。

時間がどれくらいかかるか分かんねぇからなぁ。

んー、こっから車で3時間くらいか。

待ち合わせ場所に龍形態で行くなんてバカな事出来ねぇしなぁ。

4番テントに入ると、くつろぐように座っていた2人の男がゆっくりとこちらに顔を向けた。

「ロンテリアまで頼んでいいか?」

「タクシーだと思ってんのか?」

ふとテーブルに置いてある数本のビンが目に留まったとき、すぐにそれがお酒だということが分かった。

「あー飲んでんのか。じゃあいいや」

「飲んだら飛べねぇとでも思ってんのか?」

そう言って大柄の男が立ち上がり歩き出すが、その男が別のテーブルに置かれた書類に手を乗せると書類は滑り、男は勢いよく書類の置かれたテーブルを腹で押し出した。

「いいって、俺1人で行けっから。てか飲んだら飛べねぇよ」

「ロンテリアだろ?庭先に出るようなもんだ」

男の肩を軽く叩き、椅子に座らせて適当に取ったビンを手渡す。

「ひっ・・・はあお前ほんとに行けんのか?」

それはこっちのセリフだろ。

「ビットは座ってろ。オレが飛ばす」

お、まともそうだけど、飲んでるのには変わりねぇよな。

「あんたも飲んでるんだろ?」

「何言ってんだ、2人とも飲んでる訳ないだろ」

おお、そうか。

夕焼けが消え去る前にヘリポートに降り立ったジェットヘリを降り、支部を出て携帯端末で地図を見る。

目立たねぇように少し飛ぶか・・・。

高層ビルの屋上から非常階段沿いに飛び降り、路地から人通りの多い大通りに出る。

どこだ、ウィンドビレッジホテルは・・・。

この通りだよな・・・。

結構人居るんだな。

携帯端末と街並みを交互に見ていき、それらしい建物の近くまで来ると、すぐに正面入口のロータリーの前で立ち尽くす1人の女に目が留まった。

あれ、朝と服が違う。

ほんとにあいつか?

胸の底から急激に膨らんだ安心感と嬉しさ、そして緊張を感じながら、こちらに気付き小さく手を挙げたエンジェラに歩み寄る。

か、可愛い・・・。

「どうしたの?」

「怪我とか、してないか?」

不自然じゃないほど赤く色づいた唇と頬が目につくエンジェラが微笑みながら首を横に振ると、胸の中の安心感は無意識に手を伸ばさせ、エンジェラを抱きしめさせた。

「大丈夫に決まってるでしょ?・・・そういえば総助、テレビに映ってたよ?」

「いつ?」

「3時頃かな、あとハオンジュも話題になってたよ」

そうなのか。

ロータリーに入り、入口とその両側まで広くガラス張りになっているホテルを見上げる。

「それって、普通にマスコミも俺らを撮ってたってことだよな?」

「そうだね」

じゃあ、ハオンジュもAM作戦に参加したのか?

ホテルに入ったときに何となく人目が気になりながら、ふと低いテーブルとソファー、観葉植物、階段に敷かれたレッドカーペットが高級感を醸し出すエントランスを見渡す。

「いらっしゃいませ」

「予約したエンジェラです」

「お待ちしておりました。それではチェックイン用紙にお客様方お2人のサインをお願いします」

そういや、エンジェラって、英語か?

何となくペンを持ち名前を書き始めたエンジェラの手を見ていると、記入欄にはアルファベットと何かが混ざったような自体が繋げて書かれた。

堀の深さは日本人かハーフと思われても不思議じゃないが。

どういう国の奴なんだろう。

「あの、お客様の国籍は」

異世界って、言ってもな・・・。

エンジェラが戸惑う様子もなく、バッグから取り出した軍支給の携帯端末の裏を見せると、すぐに受付の女はそれに釘付けになった。

「非公開ですけど、ダメですか」

「いえ、失礼しました」

おー、すげぇ、何だ今の。

ペンを取り、エンジェラの名前の下に総助と書く。

「えっ、それが総助の名前?」

「そうだよ」

「お客様、上の欄にふりがなをお願いします」

「あぁ」

「・・・そうすけ様ですね、ではお支払いの方をお願いします」

えー、国籍聞かれないのかよ。

エンジェラが軍支給のカードを渡すと、女はそれを受け取り、コンピューターらしきものにカードを挿し込む。

俺も見せたかったな、警察手帳みたいに。

「こちらが10階、1026号室のお部屋の鍵になります。すぐに向かわれるのであればご案内致しますが」

「総助、先にレストラン行きたい」

「あぁ」

「後でにします」

「かしこまりました」

いやぁ・・・レストランか、なるべく堅くないのがいいが、ホテルがこれじゃ全部堅ぇよなぁ。

「総助の名前、何かカッコいいね」

「まじか、日本っていう国の言葉だ。てかエンジェラの国はなんつうんだ?」

「スライニツィカ」

あ?・・・。

一瞬の沈黙の後、エンジェラは聞き取れなかったのを責めるように、いつもの鋭い目つきを見せる。

「・・・スライニツィカ」

「分かったよ」

「言って、はい」

「スライ」

「ニツィカ」

ふーん。

まぁ日本からしたらモロ外人だな。

ハルクにはミレイユが居ますが、ハオンジュの恋愛事情はどうしましょう。笑

ありがとうございました。

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