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ホワイトドラゴンVSソーンクロウズ・フェニックス

「総助今どの街にいるの?」

「確かロンテリアとかいうとこだな」

バターロールにかぶりつき、コーヒーを一口飲み、そしてノートパソコンに映し出されたエンジェラに顔を向ける。

「エンジェラは?」

「ミシアだよ・・・ねぇ総助」

ドッグの情報じゃ、敵さんの規模は30から50人くらいで、内エネルゲイアは数人っつってたな。

「あ?」

「今夜会いたい」

「おいおい、まだ1泊しかしてないだろ」

地図が映し出された携帯用情報端末からエンジェラに目線を変えると、エンジェラはただモグモグと口を動かしたまま黙ってこちらを真っ直ぐ、睨み付けるように見つめていた。

「分かったって、じゃあ仕事終わったらこことそっちとの中間辺りのどっかで落ち合うか」

「うん、じゃあホテル予約しとくから、後でメールするね」

「あぁ。てか初仕事だろ?緊張してねぇのか?」

「んふふ。仕事よりも、デートで頭がいっぱいだよ」

まったく、こいつはほんと自信家だよな。

「教えたリッショウ、ちゃんとやれよ?」

「分かってるよ」

ん、電話か。

「悪ぃドッグからだ」

端末に出た通話マークをタッチし、端末を耳に当てる。

「もしもし?」

「オレだ。現場に行ったら、詳しい作戦はすべて現場の司令官に聞くようにしてくれ。その人の情報をそれに送る」

「あぁ」

派遣社員みてぇなもんか。

パンを口に運ぶエンジェラを見ながらコーヒーを手に取る。

「その連絡事項っての、これからエンジェラにも言うのか?」

「当然だろ」

「今エンジェラとテレビ電話してるから、今俺が言っても良いけど」

「・・・そう、か。じゃあ現場の司令官の情報を送るってこと、伝えてくれればいい」

「はいよ」

端末を耳から放すや、コーヒーを飲みながらエンジェラはすぐに話の内容を話すよう目で訴えてくる。

「現場の司令官の情報、端末に送るだとさ」

「それだけ?」

「あぁ」

食器を洗ってから窓の鍵を閉め、続けてカーテンを閉めてからノートパソコンの前に立つ。

「じゃあ、またな」

「うん」

部屋の鍵を閉め、鍵をドアノブの横にある小さなポストのようなものの中に入れておく。

ホテルみてぇだけど、ほんとは軍事基地だからな、鍵の管理なんてこんなもんでいいのかもな。

エレベーターで屋上に出ると、そこには十数機ものプロペラの無いヘリコプターが1列で並んでいて、ふとその内の1機の傍に1人の人間が立っているのが見えた。

「左手に乗り込んで、すぐにベルトを閉めろ」

プロペラが無いのにどうやって飛ぶんだよっ・・・と。

乗り込むと同時に扉は閉められ、ベルトを探している間にも男は操縦席に乗り込み素早く何かを操作し始めた。

「ベルトがねぇよ」

「肩の上だ、下に引っ張って股下に繋げ」

は?肩の上、これか?

両肩の上から2本のベルトを引っ張り、股下にある二又の挿し込み口にベルトを挿し込む。

「入った」

「おし出るぞ」

するとどこからか甲高い機械音を鳴り出すと同時に、ヘリコプターは小さなジェット音と共に浮き上がり始めた。

お?何でだ?ジェット音らしきものが聞こえるけど。

「どうやって飛んでんだ?」

「ミニマムジェットってのを積んでる」

ジェットか、何でわざわざヘリコプターの形にしてんだ?

浮き上がって間もなくするとヘリコプターは前方に進みだしたので、何となくゆっくり深呼吸した途端、突如身体の前面が強い重力に押しつけられた。

す、すげぇな・・・さすがジェット・・・ぅ。

にしても速ぇな。

ヘリコプターの速度が落ちたので窓から外を眺めるが、空き地や森も無く、高層ビルが幾つも立つ都会の街全体からは戦火の中心に置かれているとは思えないほど、寂れたような雰囲気などは感じられなかった。

特にがたつきもなく静かに降り立ったヘリコプターから下り、何となく深呼吸してから10階相当の高さから再び街を眺める。

「行くぞ」

「おう」

えっと、ドッグが送った資料の顔写真は・・・っと。

名前はダン・マックレーか。

ヘリコプターの操縦士の後についてエレベーターに乗りながら、エンジェラからのメールを開く。

ウィンドビレッジホテル、か。

場所は・・・。

「なぁ、ウィンドビレッジの、ウィンドビレッジホテルってこっからどれくらいだ?」

「・・・ウィンドビレッジホテル?・・・車で行けば30分くらいじゃないか?」

「そうか」

エレベーターを出ると、ハリウッド映画に出てくるようないかにも指令室を思わせるフロアに入ったが、写真を見たお陰か、事務員やら武装隊員やらが沢山居る中でもすぐに司令官が確認出来た。

「来たか、お前には基本的に対エネルゲイアの人員として動いて貰うが、戦闘機などの撃墜にも携わって貰うからそのつもりでな」

「分かった」

要は戦力を削りゃいいんだよな。

「おいハンダーっ」

司令官の目線の先に顔を向けると、そこにはライフルを背負った武装した男が居た。

「ディビエイトを連れてポイント3へ。それからは行きながら教えてやれ」

「イエッサー」

あ?随分覇気の無い返事だな。

ハンダーと呼ばれた男に歩み寄るが、どこか迷惑そうな眼差しでこちらを一瞥したハンダーはそそくさと指令室の出入口へと向かい始めた。

軍人のプライドってやつか?

司令官を出るとすぐに3人の武装した男女と合流し、一同は無言のままエレベーターの前に立った。

エレベーター待ちかよ、緊張感ねぇなぁ。

「ポイント3に着いたら一先ずは派手な奴を捜せ。ろくに武装してない野郎が居れば、そいつがエネルゲイアだ」

派手な奴・・・。

「エネルゲイア、追っ払えばいいんだろ?」

「甘いな。戦争なんだよこれは。そんなんじゃ死ぬぞ?」

こちらを一瞥することすらせずそう言い放ち、ハンダーはエレベーターに入っていく。

いや、だってな・・・。

「こっちの司令官には殺すのが目的じゃないって言われてるんだがな」

「過信だな」

確かに戦ったことはねぇから、そりゃ分からねぇけど。

「相手が軍人なら難しくはない。何故なら相手が軍人ならそいつらの持つ武器、動きがどんなものか大体の予測が出来る。だがエネルゲイアは違う。全く想像出来ないようなものが武器になってることだってある」

「そりゃ分かるよ」

俺の世界で散々見たからな。

「それでも負ける気がしねぇ。だからここに来た」

「ふん。期待させといて呆気なく死んだら許さねぇからな」

そう言ってハンダーはこちらに顔を向けながら、どこか挑発するように口元を緩ませて見せた。

「俺はハンダー。こいつがバレッタで、ピータ、ネスト」

南米系に見える女、強張っている若い白人男、ガムを噛んでいる年上に見える体格の良い男の顔ぶれを見ていく中、皆はハンダーほど冷酷さは見せず、各々頷くだけの会釈をして見せた。

「俺は総助」

基地を出ると街には人気が無く、ハンダー達は各々違う方向を見ながら素早く背負っていたライフルを構え、佇まいのすべてから緊張感を見せつけていった。

ほんとに、あのオスカーのおっさんの言う通り、すべての攻撃を無力化出来んのか?

てか、さすがに基地の真ん前で交戦はねぇだろぉ。

・・・ああそうか、相手はエネルゲイアだしな。

だったら見えない程度のバリアでも張っとくかな。

ふと空を見上げたとき、雲と雲の隙間に打ち上げられたような小さな光の玉が見えた気がした。

あっちでやり合ってんのか?

ビルの角を曲がったとき、すぐに確認出来た通行人に驚きを感じたが、同時に若干の安心感を感じた。

「人が居ていいのかよ」

「まだここは交戦地区じゃないからな」

んだよ、警戒する意味ねぇじゃねぇか。

「気を抜くな。直接基地が襲われることだってあるんだ」

「まじか。そのポイント3は近いのか?」

「あと2キロくらいだ」

遠いな。

小走りで街を進んでしばらくした頃、小さく銃声が聞こえる中で突如足を止めたハンダーはこちらに顔を向けると、すぐにある疑問を湧かせる眼差しを見せてきた。

「ポイント3だ、ここからは1人の方が動き易いだろ?」

「・・・まぁな」

「俺らは俺らのチームに合流するから、お前はお前で存分に働いてくれ」

「オッケー」

存分に、か。

さすがに緊張してきたな。

「緊張してんのか?」

「初仕事だからな」

「ハハッ・・・じゃ、死ぬなよ?」

何で笑った・・・。

「あぁ・・・ふぅ」

小さく手を広げると、離れ始めたハンダー達はまるで興味を示すようにこちらを見ながら足を止めた。

「翼解放」

空を見上げ、深呼吸し、目を閉じながら巨大化に意識していく。

「ほら行くぞ」

さて、リッショウもやっとくか。

宙に浮き、低めのビルの上から街を眺めたとき、ふと遠くに激しく燃え盛る何かが見えた。

派手な奴ね。

特に激しく建物を破壊するような活動もせず、ただ武装された軽トラのような車と対峙している、フェニックスを人型にしたような風貌の奴の下に向かう。



な、何だよ、ありゃ。

光沢もなく、顔から尻尾、そして宙に浮かせた6つのジェットエンジンのようなものまですべてが真っ白に染められたその竜は、全身をほんのりと青く光らせながら、軍人達が乗る武装された軽トラの背後に音もなく素早く降り立つとすぐに軽トラの荷台に乗る軍人に近づいた。

「ここからは俺に任せろ」

喋るのかよ、てことは、まさか、エネルゲイア、なのか?

4メートル前後、俺より少しでかいが、まぁそれはいいか。

それよりエネルゲイアだとしたら、裏切り者、だよな。

「お前、エネルゲイアか?」

「いや・・・俺はエネルゲイアじゃねぇ」

エネルゲイアじゃねぇだ?

そういや、オーナーの兄ちゃんが言ってたな。

「確か、ディベ何とか」

「ディビエイト、知ってんじゃねぇかよ」

じゃあ、普通に敵か。

まぁ軍人より退屈はしねぇな。

「ちょうど暇だしな、いいぜ、相手してやるよ」

この世界の統一はスタートだしな、こんなところで負けてらんねぇ。

「お前は、世界統一の為の侵略をどう思う」

軽トラが後退していった後、白い竜は落ち着いた声色で口を開いた。

あ?何だよ。

「侵略は戦争を生む。戦争が起これば、多くの血が流れるだろ?」

・・・そりゃあ・・・。

「けど、世界を統一出来るなら、他の世界でも、圧倒的な力で、血を流さずに勝つことも出来る」

「今のどこが圧倒的だって?」

・・・ちっ。

「それはこれから証明してやる。来いよ」

殺さずに、圧倒的に勝つ。

小さく首を傾げ、渋々頷いた白い竜が腕を組むと、翼を連想させるような位置で浮いていた小さなジェットエンジンは一斉にその先端をこちらに向けた。

あれが主力の武器か?

そしてその直後、ジェットエンジンの1つから青く光る何かが発射された。

強い衝撃を肩に受け、思わず倒れそうになるがとっさに地面に手を着けて体勢を立て直す。

強ぇ・・・。

ま、痛みは感じないから問題ねぇけど。

「皇炎穿」

翼手から白く輝く炎を飛ばしたが、それは白い竜の周囲で青く歪みながら消えていった。

ちっバリアかよ。

しょうがねぇ。

「炎帝剣」

両手に白く輝く炎の鉤爪を作り出し、翼からジェットのように炎を吹き出して白い竜に詰め寄っていった瞬間、突如周囲に青い霧のようなものが発生する。

ん・・・。

そしてその直後、全身が頭上から注ぐ凄まじい重圧に襲われた。

ぬあぁ・・・っ。

重圧が消え、すぐに立ち上がろうとしたとき、ふと目に映った自分の翼が、まるで炙られて萎んだように変形していたのに気が付いた。

まさか、この俺の体が、焼かれただと?

炎を司るこの俺が?

くそっ。

「皇炎斬」

更に濃く輝いた白炎の鉤爪を瞬く間に数メートル伸ばしながら振り上げるが、青い柱状のバリアは切り裂いたものの、白い竜の手を覆う青い光に鉤爪の勢いは呆気なく失われてしまう。

俺の爪を、直に掴んだ?

そしてその直後、再びジェットエンジンから放たれた光に体は吹き飛ばされてしまう。

何なんだこいつ。

「万華、繚乱」

背中に咲いた大輪の花から這い出した蔦や花びらが硬化し、体の所々を守る鎧となっても、白い竜は再び腕を組み、その佇まいから余裕を見せつけた。

先手を譲ったこと、後悔させてやるよ。

「炎帝ノ棘」

やっとエネルゲイア×ディビエイトらしくなって来ました。火爪にエネルゲイアか?って聞かれた総助は、内心どう思ったんでしょうね。

棘はイバラと読んで下さい。

ありがとうございました。

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