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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第十章

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始まりの朝

交わす言葉こそ少ないものの、布巾で拭き切った皿を手渡してくるエンジェラに安らぎを感じながら、キレイな皿を重ねていく。

「さて、これからすべてのディビエイトの顔合わせをする」

そう言って奥の部屋から出てきたドッグを見てからゆっくりと皿を棚に戻し、相変わらず冷静さで澄みきった表情で再び奥に消えたドッグについていく。

いよいよディビエイトの奴らを全員拝めるのか。

こいつらのやり方は、シンゴ達の組織とは違って何かしらの不満や復讐心に付け込んで、自ら力を望ませて仲間に引き入れるもんだ。

もしかしたらあっちの組織の奴らみてぇな仲間意識を持たない奴も居るかもな。

光の球が消えるとそこは以前来たダンスホールのような雰囲気を漂わせる場所だったが、誰も居ないことを特に気にすることもなく、ドッグはそそくさと壁際の階段へと向かい始めた。

改めて見ると、レッドカーペットとか柱とか突き当たりの真ん中から両側に這うように作られた階段とか、まるで城のエントランスみてぇだな。

どうやら階段は地下にも繋がっているようで、幅広い階段に隠れるように掘り下げられた階段を黙って下りていくが、辿り着いたそこはダンスホールの雰囲気の欠片もないまるで水族館のような場所だった。

何だよこれ、どう繋がってんだよ、けど明るいな。

だだっ広いその空間のすべての壁の向こうには大小様々な魚が泳いでいたが、それよりも気にかかったのはふと目に留まった機械の腕をした女の、遠くを見つめるように魚達の前に立つ姿だった。

「とりあえずここで待ってろ」

「あぁ」

まだ集まりきってねぇのか。

ん、あいつは・・・。

「ようやくまた会えたな、総助殿」

「・・・そうだな。確か、エイゲンだったか」

袖の中で腕を組むエイゲンはどこか嬉しそうに小さくニヤつくと袖から腕を出し、腰に挿している刀を鞘ごと抜き取った。

おいおい・・・。

「ここでやんのかよ」

「心配するな。翼の解放はしない、刀も抜かぬ。お主は何で戦うのだ?」

「まぁ魔法っつうか、熱気かな」

とりあえずリッショウだけでもやっとくか。

ふっ・・・。

直後にエイゲンの眼差しは鋭くなり、その気迫はこちらまで否応なしに気を引き締めさせた。

「ほう、妖術にその気迫か、よかろう。ならばこちらから行かせて貰う」

そう言うとエイゲンは左手で持った刀を背後に引き、腰を落としながら右手を前にして構えた。

うお、何で左手持ち・・・。

てかあの構えは、下から払い上げるつもりか。

しかしこちらが姿勢を落とすと同時に刀は上から振りだされたので、とっさに右腕の周りに空色の光を纏って刀を振り払う。

それでもエイゲンの眼差しは一点の陰りもなく、間髪入れずに右手に持ち替えられた刀は勢いよく振りだされた。

うおっ。

とっさに手で刀を叩き返しながら下がりエイゲンから距離を取ると、落ち着きと闘志に満ちたエイゲンは背筋を伸ばすと再び左手で刀を持ち、そして腰を落としながら刀を頭上に回し右手を前に構えた。

沖縄の、エイサーみたいだな。

「つまり両利きってことか」

ただ微笑みを返したエイゲンはまるでこちらの出方を促すように顎を小さく上げて見せたので、懐にタックルを仕掛けようと低い体勢で走り込むとすぐ様右のこめかみに刀が叩き込まれ、思わずエイゲンから顔を背けると直後に膝がこちらの腹に向けて突き当てられた。

っぐ・・・。

そして顔を上げると同時に胸ぐらを掴まれると、反撃する間もなく体は宙に投げられた。

こいつ、柔道も出来んのか。

上手く転がって片膝を着きながらエイゲンに体を向けたとき、ふと目に留まった床に転がる刀は一瞬でエイゲンの手の中に移動した。

「それ、本物の刀じゃねぇのか」

「我らは皆、ディビエイトになるときにこの血晶に外部の力とやらを入れるであろう?拙者は刀を外部の力としたのだ。故にこの刀は刀でもあり、拙者の妖力が形を成したものでもある」

なるほどな。

「さぁ来い。これきしの事ではお主も満足せぬだろう」

ちょっと力を使ってやるか。

軽く手を振り瞬間的に撃ち放った空色の光線が勢いよくエイゲンの左肩を突くと、瞬時にエイゲンは眼差しに殺気を宿し、直後に再び光線を放つも今度は反射的に動くような素早さで光線を避け、そして素早く走り込み刀を振りだした。

速ぇっ・・・。

レーザービームかわすって何だよ。

とっさに空色のバリアで刀を受け止めるが、直後にエイゲンは鞘を掴むと、掴んだ鞘をバリアに押し付けたまま刀を引き抜いた。

おい・・・。

鞘から離れた刀が引き下ろされると同時にバリアはその跡を引くように亀裂を生み、そして素早く振りだされた刀の一太刀にバリアは砕けるガラスの如くその形を失った。

「おいっ刀抜かないんじゃねぇのかよ」

あぶねぇっ・・・。

ゆっくりと背筋を伸ばし、刀を鞘に納めながらため息をついたエイゲンだが、その落胆した表情の中には何かに対する若干の期待が伺えた。

「やはり本気でないと意味が無いようだな。此度は拙者の負けだ、刀を抜かぬと言いながら頭に血が上り、抜いてしまった」

「いや、引き分けでいいだろ。俺は力でこそ負けねぇが、あんたほどの身のこなしは真似出来ねぇ。まぁ技では俺は多分あんたには敵わねぇよ」

「ふっ・・・拙者は幼い頃から剣の腕を磨いてきたからな。剣の道ではそこいらの者に劣る気はしない」

満足げにそう言いながら刀を腰に挿すエイゲンから、ふとこちらの方に近づいてきたスキンヘッドの黒人に目線を移す。

この前居た奴か。

「私はハリス・バンデル。馴れ合うつもりはないが、我々ディビエイトは味方同士だということは肝に命じて置くべきことなのでな」

差し出された手を取り握手を交わすと、ハリスはそのままエイゲンにも手を差し出す。

味方・・・か。

「姓はシシオウ、名はエイゲンだ」

「もっとも、敵を逃がすような者が居てはこの先何かと不安は拭えないが」

そう言いながらハリスは何やら見せつけるように何食わぬ眼差しをこちらに向けてくる。

「・・・え、あ?ディビエイトは味方ってんなら、あの3人も敵じゃなくていいだろ」

「何を言うのだ。謀反は立派な罪ではないか」



「ねぇ、あの子に話しかけてみようよ」

そう言うとエンジェラは依然として水槽を見つめて立ち尽くす、1人の女性の下へと向かっていった。

すると水槽に映る3つの人影に気がついてか、その女性の前で立ち止まると同時に機械に覆われた右腕が印象的なその女性は、ゆっくりとこちらの方に体を向けた。

「あたしはエンジェラ。こっちはハオンジュ、こっちはナオ。よろしくね」

「えぇこちらこそ。あたしはセレナよ」

警戒心も見せず、すぐに若干の戸惑いが混ざる上品な笑顔を見せてきたセレナに警戒心が薄れていく中、ふとセレナの右腕を覆う精密に組み上げられた機械に目が留まる。

これって・・・武器なのかな。

「これは義手みたいなものよ」

そう言いながらセレナはまるで人間の腕を扱うようにその大きな腕を動かし、そして滑らかに手を開いたり閉じたりして見せた。

義手・・・。

「あたし、産まれた時から右腕が無かったのよ」

え・・・そんな。

それでもセレナはその表情から哀しみではなく、思い出を語るような穏やかさを見せる。

「でもディビエイトになる時に元々の義手を血晶に入れてからこの機械もあたしの細胞の一部になって、今じゃもう普通に神経が通ってるけどね」

この機械も細胞の一部?何かすごいな。

そういえば、ソウスケがドラゴンと言い争ってたときに居た右腕の大きいディビエイト、セレナだったのか。



「私達ちょっとした会議があるからぁ、ハルクちゃん達はみんなで待っててねぇ?」

「あぁ」

何やら壁の向こうがすべて水に満たされた広い空間で去っていくバード達からソウスケ達、そしてセレナ達に目を向けていったとき、ふと別の階段から別のチームが下りてきたのが見えた。

ん、あいつは・・・。

見覚えのある人物に歩み寄っていくと同時に、その女性もふとした表情をこちらに向けてきて目が合うと、すぐにその女性も驚きや嬉しさ、寂しさに表情を伺わせながらこちらの方に駆け寄ってきた。

「ディレオ大尉っ」

「リリー」

ようやく三国の生き残りに会えたか。

「良かった、ディレオ大尉も生きてたんですね」

・・・も?

「他にも生き残りが居るのか?」

「はい、この前のチーム合同作戦で、アイデロ大尉と一緒でした」

ソルディも生きてたか。

「もうすぐ来るんじゃないですか?」

ちょうどその時に階段を下りてくる別のチームが見えると、管理者の後ろに続いているその男性へとすぐに目が留まった。

「来ましたね。アイデロ大尉ーっ」

「じゃあこっちはこっちで用があるんでな、ちょいと待っとってくれ」

「あぁ」

陽気な態度で去っていく管理者からこちらに目を向け、すぐに歩み寄ってくるその佇まいからどことなく安心感を伺わせるソルディに、ふと三国の居心地を思い出した。

「ハルク、久しぶりだな、生きてたか」

「あぁ、お前こそ元気そうで良かったよ」

「他に生き残りは?」

「ここには来ないが、俺の知ってる限り天使ではカイルとライムとミントの3人だ、それ以外で誰か生き残ってる奴を知ってるか?」

小さく頷いたその表情はすぐに1つの答えを連想させ、そして何も言わずソルディは小さく首を横に振った。

「悪魔の、ルケイル、ミーシア、オルゲル、天使ではユリが死んだことは管理者から聞いた。後は知らない」

ユリ・・・腕はまだまだだが責任感が強く、よく後輩に慕われていたな。

「そうか」

「リリーは他に知らないか?」

「分かりません。後は、天魔のクララとジェスですよね」

ここに来ないという時点で生存は絶望的か。

「その、カイル達は何してんだ?来ないって・・・」

「管理者を殺したディビエイトの話は知ってるだろ?」

「あぁ」

「その中にカイルが居る」

「えぇっ」

ソルディよりも速くそう声を漏らしたリリーが深刻そうに表情を曇らせると、そんなリリーと顔を合わせたソルディも小さく眉間にシワを寄せ、重々しいため息をついた。

「きっと、オレ達以上に苦しい思いをしてきたんだろう・・・それで、双子の方は」

「聞いた話だが、正気に戻った後に一度三国に戻ったが、すぐに国を出て今は正気に戻してくれた奴の世界で普通に暮らしてるそうだ」

「そうなのか、それは良かった」

「ジェス達のことは管理者に聞けば分かるんじゃないか?」

「確かにそうだな」

リリーと安堵の伺える穏やかな笑みを見せ合ったソルディが、ふとこちらの背後の方に目を向けた時、突如その表情は驚きに染まる。

「何だあれ」

その目線の先に何となく目を向けると、そこにはソルディと同じように皆の視線を釘付けにさせる、言葉を失うほどの身長を有した男性が居た。

・・・な、な、何だありゃ。

「わぁ、私の倍くらいありまよ、あの人、すごいなぁ」

その大男の存在で場の空気が静まり返る中、ふと大男の背後についている管理者の女性に目が留まった。

少しの恐怖を感じながらも大男の方へと歩み寄っていくと、ソウスケ達も好奇心が伺える声を漏らしながら大男に近づいていった。

「よぉ、俺はソウスケってんだ。あんたは?」

「えっと、ボクは、フレッドです」

「お、おう、そうか」

何だ、見かけによらず大人しい奴なんだな。

「悪い、ちょっと良いか?」

「え?」

管理者を連れて大男から少しだけ離れ、どことなく迷惑そうな顔色を見せる、黒光りする上着に金色の髪が特徴的な女性に顔を向ける。

「手短にしてよね」

「あぁ、三国の兵士の行方を知りたいんだ。ここにいる仲間と確認したんだが」

「三国?って、あんた、オリジナル?」

オリジナル?・・・。

「・・・あぁ」

すると腕を組み、面倒臭そうな顔色を見せるものの、その態度からは若干の落ち着きを伺わせた。

「オーケー、で?」

「・・・クララとジェスという兵士の行方だけ分からない」

「クララ?んー、あー確か血晶を使わない方の中の2人かな」

お、知ってそうだな。

「タイガーの担当だったから、詳しくはタイガーに聞けばいいけど、何か最初の任務でアオパツの奴に殺られたって聞いたけど」

やられた・・・じゃあ、死んだのか?

「アオパツ?」

「うん、青い髪の奴ってことしか聞いてないから私。詳しくはタイガーに聞いてよ」

「そうか・・・ありがとう」

「うん、じゃあフレッド、ちょっとここで待ってな」

不安げに頷いたフレッドを見届けてから去っていく管理者の背中から、ふと視界の隅に入ってきたソルディに目線を移すと、話を聞いていたのかソルディは残念そうに小さくため息をついた。

「残念だったな」

「あぁ、あいつらのためにも、俺達は絶対に生き残らなきゃならない」

鼻を啜る音にふとリリーに顔を向けると、リリーは必死に息を殺すように泣き、涙を拭いていた。

「リリー、俺達3人で、絶対に生き残るんだ」

「・・・はい」

何となくセレナ達からソウスケ、そしてフレッドへと目を向けていく中、ふと遠くの壁際に立つ1本の大きな柱から管理者達が出てくるのが見えた。

「あの」

フレッドの声に何気なく振り返り、そしてふとその体格とは似つかわしくない不安と緊張に包まれた表情のフレッドと顔を合わせる。

「ボク、フレッドです」

「あぁ、俺はハルク・ディレオ。よろしくな」

「はい、よろしくお願いします」

「こっちはソルディでこっちがリリーだ」

そう言うとフレッドは若干の緊張感を伺わせながら黙って2人に会釈して見せた。

体格のわりには威圧感もなく、素直なんだな。

「こいつはレテーク」

耳をピンと張り、目を見開くレテークにもフレッドは緊張した笑みを浮かべ、大人しく会釈する。

「集まってくれ」

管理者の1人がそう声を張ったのでゆっくりと歩み寄っていくと、やがて各々の速さで歩きだし集まったディビエイト達の前に、管理者達を背後に従え、その中で最も指導者らしい張り詰めた空気を感じさせる1人の中年男性が立った。

「私はオスカー。君達を管理する者達のリーダーだ。まず始めに、管理者及び、ディビエイト計画の責任者の1人として、君達に謝りたい」

ん?・・・。

「中には望まずに力を得た者や戦いの場に立たされた者もいるだろう。そんな者達にも、また再び戦いの場に立たせなければならないことをまずこの場でお詫びする。もし今すぐに私達と縁を切りたいというのなら私達は止めない。しかし、その前にどうしても私達が君達を必要としている理由を聞いて欲しい」

一瞬だけ目線を落とすと同時にオスカーは小さなため息をついた。

第十章の序盤は、交わることなく2つの世界に生きる主人公達が交互に入れ替わっていきます。

ありがとうございました。

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