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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第二章

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サラウンデッド・バイ・ブラック・フーズ

これまでのあらすじ

テロリストと戦う中、少しずつ世界の変化を実感し始める氷牙。そんな折、とある生物の調査で手に入れた鉱石を使うため、氷牙は異世界への出発を決意する。

霧の壁をくぐり抜けるとすぐに辺り一面に生い茂る木々が視界を覆うが、日光が十分に届いていないのか、少し薄暗さを感じた。

振り返ってみると、そんな森の中の目の前には身長ほどの石碑のような物が不自然に1つだけ立っていた。

結界なのだろうか、石碑の周りには草木が生えていない。

再び林を見渡し、何となく木々の間隔が開いているように見える方に進むと、突如今まで感じたことのない異様な空気が流れ出したのを感じた。

結界から出たからなのだろうか、何やら殺気を感じるが、そのときに遠くの茂みの向こうに明るい場所があるのが微かに見えた。

まずはここから抜けようか。

「・・・ニン・・・ゲン・・・」

歩き出した途端、遠くの後ろの方から声のようなものが聞こえた気がした。

「・・・クウ・・・」

するとその声は前方からも聞こえてきた。

恐らく複数だな。

その直後、風でもないのに、まるで何かが迫ってくるかのように草木が揺れる音がし始める。

近づいてくる・・・。

すると突如前方の茂みから、全身を黒い布で覆った何かが、何かを振り上げている格好でこちらの方に飛び込んできた。

そして理解する間もなく、黒い何かが何かを振り下ろすと、氷の防壁に勢いよく刺さったそれは、鎌だった。

しかも相当大きい。

まるで死神だ。

うつむき加減にこちらを見るその何かが被る黒いフードは、顔の大部分を覆っていて、その中はむしろ頭が無いと思わせるほどに真っ暗だった。

「・・・ナンダ」

しかしその黒いフードを被った何かは篭ったような低い声で喋り出した。

「・・・クウ」

するとその直後、その声と共に後ろから横からと、次々に鎌が防壁に刺さっていった。

クウは気合いのかけ声なのかな。

前方の死神のようなものに氷弾を撃ち1人が飛ばされると、他の奴らは一斉に離れてこちらから距離をとった。

統率力は高いみたいだけど、恐れるに足らないな、気にせず進もう。

歩き出すと死神のようなもの達は再び一斉に襲って来たので、防壁の至るところに鎌が刺さるのを見ながら左右の2人に同時に氷弾を撃つ。

地面を激しく転がり、木に勢いよくぶつかったりするが、死神のようなものはまるで息の乱れもなくすぐに起き上がり始める。

こいつらより、何となく氷弾の爆風がいつもより大きい気がする方がちょっと気になるな。

それに防壁に入るヒビも小さい気がする。

近くに指示を出しているような者が見当たらないのにも拘わらず、黒いフードを被った死神のようなもの達はお互いにちょうど良く間隔を取りながらこちらの動きを伺っている。

目障りだし、一気に叩くか。

氷の仮面を被ると、それを見た目の前の黒いフードの奴の動きが止まった。

「ニン・・・ゲン?」

相変わらず顔が見えないが、どうやら混乱はしているみたいだ。

紋章を重ねた氷弾を撃つと、黒いフードの奴は氷の弾の破裂と共に、まるで覆うものを失ったように地面に舞い落ちるただの黒い布切れと化した。

何だこいつ・・・人間じゃないのか?・・・。

周りの黒いフードの奴らにも同じように氷弾を撃っていくと、先程と同じように黒い布切れと化して地面に落ちた後、黒い布切れは空気に溶けるようにその姿を消していった。

おじさんに言ったキーワードは天使と悪魔だ。

天使とか悪魔って、精神体のようなもので肉体は無いものだと思うし、もしそうなら、この世界の人は死んだら皆こうなるのか?

・・・とりあえず先に進むか。

「・・・ニン・・・」

しかしすぐにまた遠くの方から先程の奴らと同じような声が聞こえてくる。

仕方ない、走るか。

微かに光が洩れる方に走ると、後を追うように殺気も近づいてくるのを感じ、後ろを振り返ると先程と同じ黒いフードに覆われた奴らが浮遊するように飛びながら追いかけて来ていた。

どうやら、人間じゃないことは確かだな。

少しの間走り、微かな光が洩れる高くそびえる茂みの中に飛び込んだ。

すぐに立ち上がると、林とはまるで別世界のように明るい場所に出て、ふと木々を見ると、その木の枝には凄まじく密集するように葉っぱが生えていた。

あれなら光が届かないのも理解出来る。

すると追いかけてきていた黒いフードの奴らも林から一斉に飛び出て来る。

「・・・ウ・・・」

一瞬動きが止まるところを見ると光が苦手みたいだが、獲物を前にすると関係ないみたいで、こちらを見ると大鎌を振り上げて素早く狙いを定め始めた。

「あっ」

声がしたので反射的に後ろに振り返ると、そこには体に巻いた布を固定するように薄手の鎧を着けた格好の人達が居た。

「だめっ逃げてっ」

白い布と鎧を着た方が喋り出すと同時に、黒いフードの奴が大鎌を振り下ろしたが、大鎌が防壁に刺さる直前、突如黒いフードの奴が何かに貫かれるように吹き飛んで消えていった。

何だ?

「・・・アク・・・マ」

すると別の黒いフードの奴が黒い布と鎧を着た方を見てそう声を出した。

悪魔?

続けて黒いフードの奴らが次々と鋭くまとまった黒い何かによって打ち消されていったので、再度後ろを見ると、黒い布と鎧を着た方は何やら弓を構えていた。

な、一体どこから武器なんて・・・。

「来るっ」

黒い方がそう呟きながら鋭い眼差しを林に向けたとき、10を越えるほどの数の黒いフードの奴が一斉に林から飛び出て来た。

・・・多いな。

「・・・テン・・・シ」

ふと後ろの人達を見た黒いフードの奴の1人が、白い方を見るとそう声を発した。

天使?

「・・・クウ」

そう言ってその黒いフードの奴は先陣を切るように単身で白い方の人に向かっていく。

「やっ」

しかし白い方の人もすでに弓を構えていて、とても慣れた手つきでどこからともなく出現させた白い矢を放ち、黒いフードの奴を消し飛ばした。

これがこの世界の住人の力か・・・。

黒いフードの奴を撃ち抜いた白い方は残りの黒いフードの奴らに目を向けながら、こちらの方に駆け寄ってきた。

「早く逃げてっ」

けど女性が2人だけの方が危険だと思うが。

「僕は大丈夫だよ。2人は逃げて」

「何言ってんの。人間が敵う訳ないでしょ」

同じように駆け寄ってきた黒い方がすぐに言葉を返す。

その口ぶり、この2人も人間じゃないということか・・・。

それはそれとして、まあ、普通の人間ならあの大鎌は無理だろうな。

「お前らやめろっ」

その声に応じたのか、黒いフードの奴らはまるで機械的に微動だにしなくなるように動きを止める。

何だ?

声の方に目を向けると、数メートル以上距離をあけたそこには全身を隠すほどの黒いローブを着た男性が立っていた。

いつの間に・・・。

「そいつらには手を出すなっ」

「・・ニン・・ゲン・・クウ」

「人間じゃねぇ、その2人には手ぇ出すなって言ってんだ」

「・・・オウ・・・」

黒いフードの奴らが従うということは、あいつはこいつらのリーダーか。

やっぱりさっきもあいつの指示で襲ってきたんだな・・・。

「だめっ」

すると白い方の人が黒いローブの男性に向かって声を上げる。

「仕方ねぇだろ」

しかし黒いローブの男性は怠さを見せるような態度で目線を落としながら白い方の人に応える。

「見過ごせないよ、天使だもん」

どうやら白い方の人は天使らしい。

すると煮え切らないような表情の黒いローブの男性に先程の怠さはなくなっていて、まるで真剣に悩むような眼差しでこちらの方を見つめ始める。

その間に黒いフードの奴らはこちらに標的を絞ったみたいで、黒いローブの男性が歩き出したと同時に黒いフードの奴らは一斉に襲ってきた。

「おいっ」

「だめぇっ」

天使の声が響くと共に全ての鎌が防壁に刺さると、黒いフードの奴らの動きが止まったので、すぐに両手で2人ずつ黒いフードの奴らを氷弾で吹き飛ばしていった。

「・・・え」

「何だ?」

飛んでいく黒いフードの奴らを見る天使や黒いローブの男性が呆気に取られている中、黒いフードの奴らは怯まずに向かってきたので氷の仮面をつけ、紋章を重ねた氷弾で殲滅していった。

「・・・何?それ」

仮面を見た黒い方の人は力強さを宿していた眼差しを曇らせ、少し怯えた声色で口を開く。

「だから大丈夫だって言ったでしょ」

「・・・エリカ、今のうちに連れて行こう」

仮面を外すと、我に返ったように堅い表情を緩ませた天使が黒い方の人に顔を向けてそう呼びかける。

どうやら黒い方はエリカというらしい。

「そうだね、私達について来て」

「あ、あぁ」

天使とエリカに連れられて走り出すと、天使はおもむろに後ろを振り返りながら笑顔を浮かべる。

「ありがとねー」

そして天使は何を思ったか、手を振りながら黒いローブの男性にそう叫んだ。

「おう」

黒いローブの男性は照れ臭そうに小さく手を挙げると、ゆっくりと背を向けて歩き出した。

あの黒いローブとさっきの黒いフードは仲間だ、そして天使達にとって黒いフードの奴らは敵みたいだ。

だけど、最後の天使の言動が理解出来ないな。

天使だから、誰にでも優しいのか?

「ここまでくれば安心だね」

天使達が足を止めたので周りを見渡してみると、左手に林、右手に高い塀がまっすぐ前方に伸びる景色は変わらないものの、塀が途切れた位置には入口らしきものと、白い鎧を着た2つの人影が見えた。

あれは門番だな。

「ありがとう天使さん、エリカさん」

「どういたしまして」

「・・・あ、うん」

天使は満面の笑みで応えたものの、エリカと呼ばれた女性はどこか照れ臭さというよりかは警戒心を感じるような表情でうつむいた。

「どうかした?」

「ううん、名前呼ばれることあんまり無くて」

人見知りなのかな。

「君の情報は、天使さんが言った君の名前であろう言葉しか無かったから」

「あ・・・それもそうだね」

「じゃあ中に入って」

「あぁ」

天使に促されて門に近づくと、天使達を見た門番はすぐに向かい合うように体を傾けながら道を開けた。

「どうぞお入り下さいませ」

「この人、案内してあげて」

「何故ここにいるんでしょう?」

天使がこちらに手を差し出しながら門番を見ると、門番はこちらを見ながら不思議がるような顔で天使に応えている。

「分からないけど、危ないから連れて来たの」

「そうですね、わざわざお手間を取らせてしまって、申し訳ありません」

天使は笑顔で門番に応えると、門番は丁寧に頭を下げた。

「いいの、天使として当然だよ。じゃよろしくね」

「はっ」

すると門番は胸を張りながら力強く声を上げて返事をした。

この天使は身分が高いのかな?

「それでは私について来て下さい」

「あぁ」

手を振る天使とエリカを見送りながら門番の後について歩き出すと、町並みから醸し出される雰囲気から何からその景色すべてに、すぐにここが日本ではないことに気付かされた。

白い建物ばかりだな。

しかも皆、天使やエリカと同じような和服でも洋服でもない服装だ。

そういえばこの門番もそうだな。

本当に違う世界に来たみたいだな。

そこは真ん中にある噴水を中心に広場になっていて、広場として仕切っている塀づたいには幾つもの露店が並んでいた。

日本というよりかはどこかの外国みたいだ。

そして広場を見下ろすかのようにそびえる大きな城にふと目を奪われた。

しばらく歩くと、天使とは違う、まるで普通の人間を思わせるような服装の人達の行列に案内された。

こっちの方が違和感はないけど。

それにしても何の行列なんだろう。

公園にある小さな事務所のように質素に構えている受付カウンターで受付を済ました人は、次々と右側にある扉に案内されていくみたいなので、周りを見渡しながらとりあえず待ってみる。

自分の番になると、受付嬢は何故か不思議そうにこちらを見た。

「あれ?まだいたんだ。えっと・・・お名前は?」

「氷牙です」

「ヒョウガ・・・ヒョウ・・・あの、スペルか漢字はありますか?」

まるで予期せぬことが起きたかのように、受付嬢は終始手元の資料を見ながら話している。

「氷に牙です」

「・・・うーん・・・ちょっと待って下さい」

「はい」

分かる訳ないよな、本名じゃないし。

資料を置いて席を立った受付嬢は、奥の扉を開けると首だけを突っ込んで向こうの部屋を覗いた。

「ほんとに資料これだけですかぁ?・・・そうですか」

受付嬢は腑に落ちない顔をして席に戻ってくると、少し考えるように黙った後にようやく微笑みかけてきた。

「・・・あの・・・どこの国から来ました?」

「・・・日本です」

「・・・ニホンですか」

受付嬢は真顔で聞いたままを繰り返す。

通じる訳ないか。

いよいよ第二章です、これまで読んで下さっている方々にはより一層の感謝を込めてお礼を申し上げたいと思います。

ありがとうございました。

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