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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第九章

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脱出へ

はぁ・・・ったく、こいつ、結構仲間思いの奴だったんだな。

「・・・分かったよしょうがねぇな。お前も少しは手伝えよ?」

「え、あぁ。あと、あの女の人とライオンみたいな顔した人も仲間だからね」

バクトが指を差した方に目を向けたとき、カイルと呼ばれた見覚えのある男の傍に立つその女の全身が青白い光に包まれると、その女の姿はバクトが以前なっていた狼人間のような体格をした青白い鎧に覆われたものへと変わった。

何だあいつ・・・。

「おい、あいつ、あれお前の力なんじゃないのか?」

「ルーニーから分けて貰ったんだって」

ルーニー・・・?確かあのデカイ龍みてぇな奴、だよな。

「行くぞ、ソウスケ」

そう言ったハルクは白黒の水流で体を包み、龍形態へと変身したので、空色の光で体を包み龍形態になるとハルクは素早く走り出し、刀を持つディビエイトとカイルの間に割り込んだ。

「お主、何の真似だ」

「今日だけでいい、こいつらを見逃してやってくれ」

「くどい」

掴みかかったハルクの腕を振り払う刀を持つディビエイトを横目に、背中から羽のように伸びたジェットエンジンを前に向け、6つの排気口をそれぞれ3人のディビエイトがいる方に向けていく。

そして3人を目に留めただけで狙いを定めたジェットエンジン達は意識を向けずとも、息を吐くように空色のレーザーを発射していった。

3人が素早くレーザーをかわしながらドラゴンの方に逃げていくのを見ていると、ドラゴンはただこちらを睨みつけた後に日本を連想させるような体型の白い龍へと変身した。

「カイル行けっ」

「ハルクさん」

「みんな早く」

バクトがカイルの腕を引くとバクト達6人は走り出すが、ふと引っ張られながらもハルクをまるで子犬のような目で見つめるカイルに、何故かエンジェラの姿が重なった。

「おめぇらぁっ」

するとドラゴンは炎を纏いながらディビエイトをも越える大きさへと巨大化し、更にその巨体では想像も出来ないほどの速さで走り出した。

迫りくる地響きと共に拳を振り上げたドラゴンをとっさに押さえ込み、突き返す。

あぶねっ。

「落ち着けよっ」

「あ?」

「聞いてくれ」

「ぅるせぇっ」

再びドラゴンを突き返すが、その直後にドラゴンは火の玉を吐き出したのでとっさにそれをかわし、ジェットエンジンから空色の炎を噴射させてドラゴンを少しだけ遠ざける。

「落ち着けって」

「ふざけんなよ、何してんだよ」

「頼むよドラゴン、今日だけでいいから、見逃してやってくれ」

「何なんだよっ」

再びハルクに殴りかかったドラゴンを押さえ込むが、その巨体相応の力に思わず尻もちをついてしまう。

いってーなくそぉ。

そんな時にカルデラのような大穴の近くに透明な球体が出現すると、その球体からは堕混姿のハオンジュが現れた。

「ドラゴン、何してるの?」

ハオンジュが来たなら、ナオはもう大丈夫なのか。

「お前はちょっと下がってろ」

いきなり口から血ぃ吐いてるナオ連れて来るんだもんな、まぁちょうどドッグが居たから良かったが。

「おいドラゴン、いいじゃねぇかよ、反乱なんて本拠地で潰しゃあ」

「呑気なこと言ってんじゃねぇよ。お前あいつらの戦いを見て気付かなかったのか?」

は?・・・。

「何がだよ」

「あいつらは逃げたんだぞ?相手はネオだった、しかも一対一なのにあいつらは負けずに、逃げれた。それはあいつらが今後オレ達の脅威になるってことだ。今潰さなきゃダメなんだよ」

え?・・・。

「そうか?俺ぁ別に特にやべぇとは思わなかったけどな。俺が本気出しゃ、ネオのあいつらでもまとめて潰せるしな」

「おい、今のは聞き捨てならないな、拙者らが束でもお主に敵わないだと?」

侍のような振る舞いのディビエイトが歩み寄ってくるが、ドラゴンが手をかざすとそいつは静かに足を止め、そしてそれを見届けたドラゴンはこちらに目線を戻すと同時に指を差してきた。

「だったら、あいつらがいつか本部に来たとき、お前らが責任もって潰せよ?」

ハルクの顔を伺うとハルクは目線を落とし、その龍顔から迷いを見せた。

「ハルク、もうそこはしょうがねぇだろ」

「・・・あぁ、分かった。その時が来たら、俺があいつらの所に行く」

・・・いや、こいつ、ぜってぇカイルとかいう奴らは殺さねぇだろ。

真っ直ぐな眼差しを返したハルクにため息をついて見せたドラゴンは、そのまま静かに背を向けるとゆっくりと体をすぼませていった。

「おい、先の言葉、聞いたままにはして置けぬ」

よっこらしょっと。

「ああ?」

「拙者と手合わせして貰おう」

何だこの侍みてぇな奴・・・。

「拙者、姓をシシオウ、名をエイゲンと申す。お主の名は何だ」

・・・てかまじ侍か、こいつ。

「俺ぁ、姓は無ぇよ、名は総助だ」

「止めとけ、エイゲン、ちょっと話があんだ、後にしろ」

ドラゴンに振り返るものの、エイゲンと名乗ったディビエイトはその場からまったく動かずに刀にそっと手を置きながら背筋を伸ばした。

「暫し待たれよ、ドラゴン」

「バカ野郎、そんなんいつだって出来んだろ」

「馬鹿とは何だ。お主らも、愚弄されたままで良いのか?」

エイゲンが2人に顔を向けるものの、黒人のディビエイトは強気な姿勢で腕を組んだまま微動だにせず、怪力女のディビエイトは後頭部に両手を乗せながら人間に戻った。

「あたし暑苦しいの嫌ーい。ドラゴン、もう帰っていいでしょ?」

何だあいつ、改めて見るとすげぇスタイルいい女だな。

てかあの右腕、義手ってやつか?

しかも相当なクオリティの機械だなありゃ、何かすげぇな。

「ちょっと待て。お前らもっと寄れよ、ちょうど良いから今から本部からの通達を伝える」

本部からの通達?

人間に戻りながら何となく女のディビエイトを見ていると、ドラゴンの下に集まると同時に女はいきなり鋭い眼差しで嫌悪感をぶつけてきた。

「何よ変態」

「あ?」

「聞け。ネオも結構増えたから、戦力増強も最終段階にするんだと。現在龍形態になれないディビエイトに進化薬を投与したら、一旦すべてのディビエイトの顔合わせを行う」

お、まじか。

「んでその後、お前らディビエイトは正式に入隊となる」

え、何だそりゃ、俺らまだ仮契約だったのかよ。



「こちらC4ポイント、テロリスト確認」

1人の軍人がそう叫ぶと数人と共に銃を構え、そして軍人達は一斉にマシンガンを撃ち始めるが、ハクラが軍人達に向けて極太の光矢を放っていくと軍人達が飛ばされていくと共にその近くの戦車も爆炎を立ち上らせる。

しかし高層ビルの角から再び戦車と共にロケットランチャーやマシンガンを持つ軍人達が現れたので、素早く右折する道へと逃げ込みながら発射されたロケット弾に目を向ける。

「こちらF5ポイント、テロリスト確認」

ロケット弾の爆風から逃げた先にも戦車の砲弾が撃ち込まれていく中、飛び上がったロードが2色の光球を投げつけるとその凄まじい爆風に戦車共々軍人達は呆気なく吹き飛んでいく。

正義が速陣使えないからしょうがないけど、これはこれで何か楽しいな。

「海はどっちかな」

「多分あっち」

そう言ってハクラが指を差した方に逃げていくが、すぐにまるで湧いて出るように一部隊が建物脇から現れ、行く手を阻んでくる。

あっちに逃げれそうだ。

「こちらH5ポイント、テロリスト確認」

撃ち出されるロケット弾や銃弾、そして爆音と爆風から逃げながら、高層ビルやコンクリートの建物が少ない道へと出ていくと、すぐにその遥か向こうに水平線らしきものが見えた。

確かハシオリトの潜水艦が待機してるはずだけど。



「副大統領、テロリストは間もなくガイア射程範囲に到着します」

「あぁ」

「では副大統領、ウィリアムの回収と共に私達は戻ります」

「そうか、では今後とも何かあれば」

「えぇこちらこそ」

握手をしてから会議室を出ていく国際防衛大使達を見送った後、席に戻る間もなく、来客の予定がないはずのその扉がゆっくりと開かれ始める。

誰だ?何・・・。

「お前・・・」



「ジオラ」

驚きに表情が歪むほどの副大統領のその一言に、会議室の目はすべてこちらへと向けられる。

「何故ここに、医務室にいるはずでは・・・」

しかしすぐに何かに勘づいた副大統領はこちらの背後に目を向けるようにその眼差しに鋭さを宿した。

「第一精鋭の暗殺部、ケイティーナ・ヨハンソン。お前が、助けたのか?」

「当然でしょ?結婚するんだから、あたし達」

おい・・・。

副大統領に報告とは、既成事実もいいとこだ、まったく。

「そうか。それで、今更何の用だ?」

何だよ、その態度・・・。

「何言ってんだ、あんた」

「お前が寝ている間に、不覚にも王女は奪還され、エンテキーリャの大使もお帰りして頂いた。後はテロリストをガイアで焼き払うのみ。お前がもう私に問えることは何も無い」

王女が、そうか、あいつらやったんだな。

「証拠ならあるよ」

そう言ってケイティーナはポケットからボイスレコーダーを取り出して見せると、まるで見せつけるようにレコーダーのスイッチを押した。

「では副大統領、後のことは任せる」

「はい、必ずや英雄がテロリストを排除してくれるでしょう」

「・・・これは大統領がブレインハウスを出てからさっきまでを丸々録音したもの、だからもちろん、副大統領とダーリンの会話も入ってる」

しかし副大統領は無気力に打ちひしがれることも、その表情に絶望を伺わせるようなこともせず、ただ呆れるように小さな笑みをこぼしながら背中を向けただけだった。

「私を追放したところで、世界は何も変わらない、いやむしろ、世界情勢は悪くなるだろう」

何を言ってる・・・。

「何だよそれ、どういう意味だ」

「私が、ただ世界征服のためにディアベルの赤眼を欲したと?それは違う」

まるで自信の消失を伺わせない副大統領は椅子に座ると、むしろ若干リラックスしたように手を組みながらテーブルに両肘を立てた。

「2ヶ月ほど前から世間の注目を集めているワンス・テリオプルという島国が開発した、魔力と既存の遺伝子を組み合わせて作られた新種の生物、通称ハイスピーシーズ」

「それは人間と知能が等しいものが多いから、人間による調教を受けないと聞くが」

当初は兵隊に起用する目的で作られたそうだが。

「そうだ。だが、人間と知能が等しくとも、身体能力は人間以上の動物と等しい。これがどういうことか分かるか?」

おいおい・・・。

「まさかこの惑星の支配者が変わるとでも?そりゃ副大統領、映画の観すぎだ」

見かけによらず、子供っぽいんだな。

「・・・絶対にそうならないと、断言が出来るのか?」

それは・・・でも、いくらなんでもなぁ。

「何事にも準備は怠らない。それが私のやり方だ」

「だからって、ディアベルの赤眼でハラスティアを壊滅させることとは関係ない」

「ハルトバニアの西に位置するスクファの海岸線には、テリオプルと深い繋がりを持ち、ハイスピーシーズ計画の一部を担った遺伝子研究施設がある。根を絶やすには、重要な標的だ」

ハイスピーシーズ、人間と知能が等しくとも、その身体能力は人間以上・・・。

「俺達人類が、何故今まで暮らしてこれたと?確かに戦争は繰り返してきたが、人類はそれ以上に良心の下で生きてるからだ、あんたももっと希望を持てよ」

しかし副大統領は不満そうに小さなため息を返すと、どこか心を閉ざしたような寂しさが伺えるほどの強く鋭い眼差しを見せた。

「甘いんだよお前は。希望などに甘えていたらこのままでは、遠くない未来、必ず戦争が起こるぞ」



何だろうあのオレンジ色の壁。

天高く伸びた、まるで何かを囲むような壁に背を向けると、その方角からはすでに逃げ道が見えないほどの大群が迫っていた。

何だ、いつの間にあんな数に増えたんだ?しかも全員、人間じゃない。

「ハクラ、あれは」

「サモンロイド。サモンの魔力で動く、量産型の人型戦闘機」

なるほど、あれがこの国の主力兵隊ってところか。

「ねぇ、じゃああのオレンジ色の壁は?」

「あれは私にも分からない」

目の前には壁、後ろには機械の大軍隊。

ここは・・・。

「ウラノスバスターっ」

建物の角を吹き飛ばしながらもその2色の爆風は凄まじく広がっていき、そして消えていったが、オレンジ色の壁はまるで傷ひとつ付くことはなかった。

ありゃ?

忘れられたあの主人公の始動と共に、バクト達の戦いはまた一波立ちそうです。

ありがとうございました。

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