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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第一章

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そして歯車は動き出す

「出来るのか?ただの人間ごときに」

「出来るさ」

須藤が素早く内ポケットに手を伸ばし、何かを取り出した瞬間、それが何か理解出来たときにはそれはすでに須藤の足元から迫り出した土によって宙に投げ出されていた。

鈍い音を鳴らしながら地面に落ちた拳銃を見つめた須藤は、手を押さえながらすぐにアリサカの仲間の男性を睨みつける。

「遅ぇよ、のろま」

しかしアリサカの仲間の男性はふてぶてしい笑みを浮かべながら須藤を睨み返す。

「悪いが、今は黙って捕まる訳にはいかないんだよ、行くぞ、ホンマ」

ホンマと呼ばれた男性は拳を地面に突き立て、土を高く迫り出させると、2人を覆い隠すような土の壁を作り上げた。

2人が土の壁に覆い隠されてから訪れた沈黙に耐え兼ね、須藤が土の壁の背後に回り込むが、すぐに出てきた須藤の表情はすぐにある答えを脳裏に過らせた。

土の壁か・・・まさかこの壁にシールキーを貼って逃げたのか・・・。

「逃げられたか・・・仕方ない、今はあのテロリスト達だけを拘束しよう」

「はい」

「それと応援をよこしてくれ、この生物も運ばなければならないからな」

そういえばこのカラス、姿が変わったことを見れば、やっぱり覚醒して復活したと考えるのが妥当だな。

このカラスも、感情が高ぶったから覚醒したのか・・・。

「須藤刑事、そういえばこの前の野良猫はどうしたの?」

「君には関係のないことだ」

まぁ、いいか、そんなに気にならないし。

「そんなことより、君達はどうやらアリサカソウマとは知り合いのようだが、アリサカソウマがどこに行ったか知ってるんじゃないのか?」

すると須藤はこちらの質問を冷静にあしらったときには見せなかった、まるでテロリストの仲間かどうかを見定めようとするような疑い深い眼差しをこちらに向けてきた。

「まぁ、顔見知りではあるけど、別に仲間って訳じゃないから」

「最近になって突如現れた人知を越えた力を持つテロリストは、ほとんどのケースが単独犯ではなく、組織的に活動しているような動きを見せている。君達のようにどこからか来て、そしてそこに帰ろうとしているようにな」

・・・おじさん達の存在がもし警察に知られたら・・・。

「テロリストの経歴を見る限りでは全く不自然な点は見当たらない。だが、経歴に共通点の無い能力者達にも、たったひとつ共通点があった。それはあの日、人知を越えたテロが初めて確認される前の約2時間。今調べがついている時点では、すべての能力者の近しい人物の誰もが能力者と会っていないということだ」

そりゃ、組織に集められてたからな。

やっぱり、突然いなくなったことは世間にも知られてたんだな。

「近しい人物の話を聞く限りでは、単なる偶然として片付けても不自然さが見受けられない。だが、不自然さが全く無いということがまた不自然でもある。これは私の想像だが、君達は全員、ある特定の人物または組織からの接触を受けたんじゃないのか?」

こちらに顔を向けるテンジを見た須藤は、すぐにその眼差しに鋭さを深めた。

「心当たりがあるなら教えるんだ。もしかしたらその人物がテロリスト達を裏で管理している可能性が高い」

何となくだけど、組織の存在は知られない方が良いかも知れないな。

さすがに乗り込まれることはないだろうけど。

「僕の周りでもそういう話をたまにしてるけど、誰もその人達のことは分からない」

「本当か?」

「あぁ」

まぁ、おじさんがどういう人か分からないのは確かだしな。

「・・・そうか」

適当な壁を探してシールキーを貼り、ホールに戻って近くの椅子にテンジを座らせると、すぐにこちらに気づいたミサが驚きの表情をうっすらと浮かべながら歩み寄ってきた。

「どうかしたの?」

「テロリストにやられてね」

「すぐマナミ呼んで来るわね」

何かを言いたそうにテンジがミサに顔を向けるが、ミサはすでに颯爽と舞台に向かい始めていた。

「別に痛みも引いてきたしさ、治して貰うほどのものじゃないんだけどさ」

「せっかくだし治して貰ったら?」

「まぁ・・・うん」

マナミを連れてミサが戻ってくると、テンジはどことなく恥ずかしがるような表情でマナミを見ていた。

「どう?痛くなくなった?」

テンジの左足から手を離したマナミにテンジは黙って頷くと、マナミは安心したような笑顔を見せながらすぐに戻っていった。

「それじゃあ、俺はこれで」

「あぁ・・・」

あ、そうだ、そういえば修業の相手をして欲しいって言ってたよな。

そのことを思い出したときにはすでにテンジは舞台脇に居て、廊下への扉を開けようとしていた。

まぁ、いいや。

「氷牙は大丈夫なの?」

「まあね」

ふと先程の須藤の言葉と疑い深い眼差しが脳裏に甦ると、すぐにおじさんの姿も脳裏に浮かび上がった。

だいたいは想像出来るし、頼むついでにちょっと聞いてみるか

「ねぇ氷牙、午前中は何か予定はあるかしら?」

「そうだな、ちょうど今から行こうと思ってるところがあるけど」

するとミサの笑みがどことなく薄くなったように見えた。

「あら、そう・・・どこに?」

「おじさんのとこ。ちょっと聞きたいことがあるから」

「そうなのね、それ、あたしもついて行ったらダメかしら?」

まぁ、いいか。

「別に良いよ」

その笑みが再び深さを増したのを見ながら席を立ちミサと共に舞台に向かい、会議室に入るが、マナミはこちらに気付かずテレビに釘付けになっていた。

「昨日午後、インターネットの掲示板に、国会議事堂を破壊するという犯行声明文が書かれているのが発見されたことで、只今国会議事堂前では、自衛隊により厳戒体制が敷かれている模様です」

なるほど、政府と軍隊を一気に叩こうとしてるのか、このテロリストは。

何となく会議室を見渡すと、テーブルの上に置かれている小物や、会議室の隅にある本棚の色使いにふとマナミっぽさを感じた。

「マナミ好みの会議室に模様替えしてるの?」

「あ、いらっしゃい。そうなの、留守番係だから退屈しないようにしたいの」

「そうか」

おじさんの部屋をノックして扉が開くと、おじさんはまるで自分の体を盾にして部屋が見られないように顔を出したが、だからといって警戒するような表情は全く浮かべず、むしろ快く迎えるかのような笑みさえ見せていた。

「何でしょう?」

「ちょっと聞きたい事があるから、入っていいかな?」

「どうぞ」

部屋に入れるとおじさんはすぐに重ねられた円い椅子を2つ取り、目の前に素早く並べる。

「聞きたい事って何ですか?」

「あぁ、そこの扉から、ある場所に繋いでもらえないかなと思って」

聞きたいことは追い追い切り出すとしようか。

「聞きたいと言うか頼み事ですね。ある場所ってどこですか?」

「異世界とか・・・」

ミサがこちらに顔を向けると、おじさんも真顔のまま表情を固め、一瞬、空気が止まった。

「・・・異世界ですか」

すると少し目線を落としたおじさんは驚きとは少し違う顔色を見せた。

「どういうことなの?」

「空間と空間を繋げられるんだから、次元だって越えられると思って」

眉をすくめ、必死に理解しようとしているかのような表情のミサは、どことなく心配するような眼差しをこちらに向ける。

「1つ聞いていいですか?」

「何かな?」

「異世界が存在するという根拠は?」

おじさんの表情が読めないな。

まるで、自分の意見をひた隠しにして、傍観者に徹しようとしているかのような。

「そうよ。いくらこんな世の中だからって、有り得ないわよ」

するとおじさんに続けとばかりにミサが問い詰めてくる。

「だっておじさん・・・この世界の人じゃないでしょ?」

おじさんの顔色が全く変わらないが、ミサは呆気にとられているみたいだ。

「どうしてそう思うんですか?」

しかしおじさんは依然として表情を崩さずに真顔で質問を投げかける。

「だって今のこの世界の技術じゃ出来ない事をやってるから、確信は無くても疑問は湧くよ」

一瞬片眉を動かしたおじさんは、少し張り詰めたような表情を緩めながら再び目線を落とした。

「そうですよね・・・あの、異世界に行く目的って何ですか?」

「え?何?ほんとにあるの?」

「あ、あるとしたらですよ」

ミサが慌てておじさんに顔を向けると、おじさんはすぐにごまかすように微笑みを見せた。

「鉱石を使おうかと思って」

「それだけですか?」

「そうだね」

「鉱石なんて、どこで使ったって同じじゃないかしら?」

ふと落ち着きを見せたミサは首を傾げながら、そう言って顔を覗いてきた。

「そこにしかない特別な何かがあるかも知れないよ?」

「・・・そうねぇ」

若干の呆れ顔を見せるミサだが、それでもこちらの言葉を真剣に聴き入れて考え込むように目線を逸らす。

鉱石を通して、今の力とその世界にしかない力を結びつけることが出来るかも知れない。

ショウタみたいにただ炎とか風じゃつまらないし。

ミサと同じく目線を落とすおじさんに目を向けると、おじさんは初めて悩むような顔を見せていた。

「私的には、氷牙君がそれ以上強くなって一体どうするのかと思います」

「・・・氷牙ってそんなに強いの?」

ミサが真剣な眼差しでおじさんに問いかけると、おじさんはまるでミサの眼差しを鎮めようとするかのような、落ち着き払った表情をミサに向けた。

「あくまでも潜在能力ですよ」

「・・・そう」

すると少し寂しさに似た表情でミサがこちらを見つめてくる。

「僕は何も世界征服なんて望んでないよ。ただ強くありたいだけ」

「そうですか、それを聞いて安心しました。全てを破壊するだなんて言ったらどうしようかと思いましたよ」

「ちょ、氷牙がそんなこと言うはずないでしょ?」

ミサがすぐにおじさんに言い返すが、おじさんは安心感からか、責めるような眼差しを向けるミサにさえも微笑みを見せた。

「そうですね。分かりました。良いですよ、繋げますよ」

「そうか」

「ち、ちょっと、ほんとに行けるの?」

「はい、あ、絶対に内緒ですよ?」

再び慌て始めたミサにおじさんは釘を刺すように微笑みかける。

噂が流れたら皆おじさんに殺到するだろうからな。

「え?えっと・・・ほんとに?・・・あの」

ミサはこちらとおじさんを交互に見る。

「それで、どういった世界に行きたいですか?キーワードを言ってくれたら、適当な所を探しますよ」

そんなミサに構わずにおじさんは喋り出す。

検索出来るほど、異世界ってのはたくさんあるのか・・・。

「そうだな・・・」

架空のものがほんとにある世界とかいいな。

「氷牙、ほんとに行くつもりなの?」

再び首を少しだけ傾げながら顔を覗き込んでくるミサに顔を向けると、その眼差しは純粋に寂しさを纏っていた。

「あぁ」

「いつ行くの?」

特に用事は・・・無いよな。

「そうだな、今すぐ」

「待ってよ、急過ぎるわ?準備しないとダメよ」

準備か・・・。

「いや、大丈夫だよ」

「ダメよ、食料はどうするの?寝る所は?着替えは?あっちのお金なんて持ってないじゃない。それに言葉が通じなかったらどうするのよ」

ごもっともな意見だが。

「言葉は大丈夫ですよ。その世界に入ったら、その世界の言葉で自然に話してますから」

国によって話す言葉は違くても、そこらへんはまぁ大丈夫か。

「ほら何とかなるよ」

「絶対ダメよ」

強気な眼差しを宿しながらミサはすぐに言葉を返す。

「危なくなったら戻ればいいよ」

「無理に行くことないじゃない」

すると少し怒ったような口調を乗せ、ミサはまたすぐに言葉を返してきた。

「オリジナリティーが欲しいんだよ」

出来れば1人でおじさんのところに来たかったな。

「でも・・・」

「皆には海外に行ったってことにしといてよ」

「・・・じゃあ3日以内には帰ってね」

そう言って再びミサが顔を寄せてきたが、その表情は穏やかさを感じるものになっていた。

納得してくれたのかな?

「何も行く当てが無かったら、ね」

そう言うとミサは何かに勘づいたかのように瞬時に表情を険しくして見せた。

「もしかして帰らないつもり?なら一緒に行くわよ?」

そう言ってミサはいきなりこちらの腕を掴んだ。

何でそうなるんだろう。

「いや、帰るよ。1週間前後でなら良いでしょ?」

「・・・分かったわ」

少しの間目を見つめたまま動かなかったが、小さくため息をついたミサはそう言って腕を放した。

何とか説得出来たみたいだ。

「おじさん、じゃあキーワードは天使と悪魔で」

「分かりました。検索します」

おじさんはキーボードを叩き始めた。

「ほんとに大丈夫?」

その間にミサが再び心配そうに顔を覗いてくる。

「大丈夫だよ。食料に関しては問題無いから」

一瞬動きが止まったミサはこちらを見つめたまま、何故かうっすらと血相を変えていく。

「まさか・・・土でも食べるつもりじゃ・・・」

「それはさすがに違うよ」

「そうよね」

すぐに頷いたミサは安心したように小さく深呼吸した。

ミサ、頭が良いのか悪いのか分からないな。

「出ましたよ・・・もう行きますか?」

意外と早いな。

「ちょっと待って、ミサ、鉱石ってどこだか分かる?」

驚くような表情を見せたもののすぐにミサは立ち上がり鉱石を探し始めた。

「あ、そうね・・確か・・これだわ」

そう言うとミサは幾つかある大きめの巾着袋の1つから鉱石を取り出した。

「ありがとう」

「・・・えぇ」

渋々手渡すミサから鉱石を受け取り、扉に向かって歩き出す。

「氷牙」

ミサに呼ばれたので振り返える。

なんて難しい顔をしているんだろう。

「大丈夫だって」

「・・・うん」

「ゲートは結界で守られてずっと開いてますので、いつでも帰って来れますから安心して下さい」

ゲート?結界・・・。

「分かった」

扉を開けると、2人の人間が並べば塞がれるような狭く短い通路の先に、ただ霧が集まって形作られたような壁があるのが見えた。

何だここ・・・。

あれがゲートかな、他には何もないみたいだし、一気に行こう。

この話に関しては、起承転結の結は=起なので、ここできっぱり終わりって分かりづらいんですよね。

でも、27話で第一章は終わりです。

ありがとうございました。

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