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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第九章

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ヒーロー・オブ・アドヴァンス2

これまでのあらすじ

ハシオリトの真意を知り、ジョナスと正義、バクトやカイル達と共にカンデナーデに向かったハクラ。作戦通りブレインハウスを襲撃したハクラはその後地上に降り立ち、カンデナーデが誇る最強の軍人、英雄と戦っていた。

銃撃音が止んだので目を開けるとドラゴンはヒロカと戦っていて、ナオは再び悲鳴を上げながらヒースの周辺に向けて爆炎を撒き散らしていた。

あれ?悲鳴を上げてるのに攻撃してるのはナオの方だったのか。

「いぃーやっ」

再び地面が激しく揺れ、ナオの足元から辺り一面に向かって放射状に土埃が突き上げられていくが、ヒースはまったくその状況に動じることなくその場から離れていきながら、背負っていた大きな銃を構え始める。

「ったくクソうるせぇ女だな」

ヒースの銃から爆音が響くと銃弾は瞬く間にナオを吹き飛ばすが、燃え上がるような光を体に纏うナオは倒れることなく立ち留まると、すぐに何やら走り出そうとする姿勢を見せる。

「ハオンジュ、ここは任せて。ウインドサンダーーっ」

ナオがそう叫んだ瞬間、ナオに纏う光は燃え上がるようなものから吹き上がるようなものになり、そして羽毛に覆われる白い翼は羽毛のない滑らかな質感をしたものになった。

えっ翼が、変わった。

そして飛び上がったナオは地面をまったく揺らさず、しかもほとばしる電気を尾に引きながら目にも留まらぬ速さでヒースの横を飛び抜けた。

電気を纏う風圧に怯んだヒースはすぐに折り返してきたナオに激突されると、盛大に地面を転がり、痛みからか怒りからか表情を大きく歪ませる。

「くっそぉ」

すごいなナオ、あれがガウロエンジンのもうひとつの特性か。

数人の軍人が姿を現し、銃を撃ちながらナオに向かっていくが、地面に降り立ったナオは地震を起こさない代わりに辺り一面に電気を纏う風を吹き起こした。

風音と電撃音が混ざったものが響き渡っていくと同時に、軍人達は皆強風に感電して次々と倒れ込んでいく。

「ありゃ?何もしてないのに皆倒れちゃったよ」

すごいなナオ、ディビエイトになったばかりなのに力を使いこなしてる。

ふと立ち上がったヒースに目を向けると、ヒースは耳に挿している無線機を押さえながら何故かこの状況でも余裕を感じるように口角を上げていた。

「分かった、ミッションコードネーム・ジェノサイド、開始。おいヒロカっ即時撤退だ」

三ツ又の光槍でドラゴンを吹き飛ばしたヒロカは一瞬にして表情を引き締め、素早くヒースに頷き返したがその直後、突如としてヒロカとヒースの姿が視界から消え失せた。

どこに・・・。

感覚を研ぎ澄ませたものの、どこからともなく攻撃してくる訳でもなく、ただその場に薄気味悪い沈黙が訪れた。

「くそ、お、おい、あいつらは」

「分からない、急に消えた」

・・・殺気も感じない。

あれ、倒れてた軍人達も消えてる。

何で・・・全員消えた?

真剣さに満ちた眼差しで目線を落とすナオを見ていたとき、妙な胸騒ぎは何となく目線を空に向けさせた。

「あれ」

ナオとドラゴンも空に顔を向ける頃には、それはもうすでに目まぐるしい速さで地面に落ちようとしていた。



爆風がモニターに映し出される景色ですら覆い尽くした直後、国際防衛大使は関心を寄せるような唸り声を漏らした。

「今のは、衛生から、ですかな?」

「あぁ、5年前から億万長者番付第1位を保ち続けているコーデリアス・キュリスターの愛娘、ヒロカ・キュリスターと、兵器開発部出身で魔法を使わずに英雄まで上り詰めた、軍神と呼ばれるヒース・ジェイカーが共同開発した、ハイブリッドミサイル搭載型人工衛星だ」

「ほう、火薬と魔力エネルギー併用でコストダウンと威力向上を同時に図れる、今もっとも注目されている爆薬素材のミサイルですな」

「副大統領、邸前基地の回線で直接英雄ヒースから通信が入りました。英雄ヒロカが速陣で避難させたので、英雄ヒース並びに英雄ヒース直属のチームに死者はいないとのことです」

「そうか」

毎回、あの2人の連携には感心だな。

「ようやく勝ち星といったところですな」

ようやく、か、耳が痛いな。

本当なら誰ひとりとして敗北などあってはならないところだが。



「ふぅ、こいつ、一体何なのかな、まるで息の乱れが・・・というか、息自体してない」

そう言われれば私、全然疲れてない。

今気づいたけど、自分の心臓の鼓動が聞こえない。

それに、鎧の傷がいくらでも直せる・・・。

氷牙というこの力は、不死の力なのか・・・。

こんな力が、存在するなんて。

振りだされる円刃を走ってかわし、常に掌の前に小盾を出しながらカナノアに向けてジャベリンを放っていくが、倍ほどに肥大した光槍でさえもカナノアは難なく弾き返していく。

さすが英雄、あり得ない太さのジャベリンでさえ・・・。

後退したカナノアが光の鞭に手を掛け、弓を引くような体勢を取ると、鞭はまるで矢のように一直線に固まった。

ん・・・。

「あたしだって、バリスタ・オブ・アークエンジェルくらい出来るよ?」

来る・・・。

直後に光を纏った円刃は光矢を放つが、その光矢は構えた小盾を避けるように大きく湾曲してこちらの胸に突き刺さり、更にその湾曲する光矢が高速で連射されると、光矢が胸を突き押す度、体は激しく吹き飛ばされていく。

っ・・・衝撃は感じる、その度に意識も飛びかける、だけど、痛みがないし、全然疲労感がない。

身体中の亀裂を直すとカナノアは再び大きく息を吐きながら、こちらを睨み付けてくる。

ブレインハウスに氷弾を撃ち落としてから結構時間が経つけど、ジョナスはちゃんと王女を助け出したのかな?

氷牙を使うと無線機まで凍るなんて、不便なところもあるんだな。

一瞬だけでも氷牙を解けないかな。

「つまりは、キミを殺すには確実に急所を撃ち貫くか、一瞬で完全に消滅させるか、ってとこか」

確かに、頭が無くなればいくら何でも鎧を直すなんて出来なくなるだろう。

「ディエちゃんが居てくれたら少しは楽なんだけどな・・・ん、あっ」

ん・・・。

構えを解いたカナノアが向けた目線の先に何となく顔を向けると、その向こうにはこちらの方に近づいてくる1人の人間の姿があった。

「おーい」

カナノアが手を振るとその人間は手を振り返しながら小走りして来たが、カナノアに駆け寄っていくその雰囲気はどことなく焦りを伺わせた。

「なぁ、こっちに下半身が獣の男来なかったか?」

下半身が獣の男?

「え、何それ。来てないけど」

「そうか・・・」

「それよりシュハカも手伝ってよ」

工事現場などでよく見るような服装のシュハカと呼ばれた男は困ったように両脇に手を置くが、納得するように小さく頷くとすぐにこちらに体を向け闘志を伺わせた。

「じゃあこいつ殺ったら、カナノアもワシを手伝えよ?」

「いいよ」

「エンド・オブ・ギャラクシー」

さすがに人体じゃないから、体が軽くなったか分からないか。

「おいカナノア、こいつ痩せたぞ?一体何なんだ?」

「あたしだって知らないよ。でも第三気を使うなら、どっかの軍人なんじゃない?」

痩せた?自分じゃ分からないけど、何か変わったのかな?

「なるほど、じゃあ新開発した魔法の練習でテロをしに来たってとこか。雷光天貫」

ん、こっちの英雄もエクスカリバー・・・。

しかしシュハカの手には一向に光の剣は現れず、代わりにシュハカの右腕が鮮やかな黄緑に染まった鉄の如く光沢を見せるものに覆われた。

「まさか、エクスカリバーを体に融合させた?」

「おぉそうだよ?これがワシのエクスカリバーだ」

頼りがいのある強気な表情でそう応えたシュハカはすぐに走り出すと、その瞬間にシュハカの右手から柄の無い刃だけの鉄製の両刃剣が出現したので、掌の前に小盾を出して振り下ろされた剣を受け止めると、小盾に叩きつけられた剣は一瞬だけ電気をほとばしらせた。

光の剣ではなく、完全に鉄製の剣を出すなんて、これは魔法というより錬金術に近い・・・。

「硬ぇなその魔方陣」

そう口を開いたもののシュハカはまったく顔色を変えず、まるで子分を見る親分のような眼差しで後退するこちらを見つめてくる。

しかしその直後にカナノアが再び円刃から湾曲する光矢を放ち、思わず体勢を崩すとそのまま地面を転がってしまう。

あの曲がるバリスタは厄介だな。

「雷光天貫」

ん?・・・。

そう言葉を発したシュハカの右腕は再び光に包まれたが、直後に光は炎となり剣身に纏わりついた。

エクスカリバーは雷光天貫というだけあって、どんな個性が付いた人間がやっても剣は光で形成され、属性は電気性となる。

なのに、あれは、火炎性の属性?

再び素早く跳び込んで剣を振り上げてきたシュハカに体を向け、小盾を突き出すが、衝突と同時に剣身から電気をほとばしらせて炎を燃え上がらせたその衝撃は小盾に大きな亀裂を発生させた。

小盾にヒビが・・・氷牙の中で一番硬いって言ってた小盾に、ヒビが。

「ジャベリン」

振り出した足の先に小盾を出しながら光槍を放つと肥大した光槍にシュハカは押し飛ばされるが、光槍が消えてもシュハカの腹に穴が空くことはなく、ただ立ち上がったシュハカの腹から胸元にかけての服が焼けていただけだった。

「言っとくが、エクスカリバーを纏ってんのは右腕だけじゃねぇからな?」

「それは・・・エクスカリバーと気魔法の融合?」

「いや違う、エクスカリバーそのものを全身に纏ってる。気魔法はただの鎧代わりにしかなんねぇが、これは剣にも鎧にもなる、得だろ?」

なるほど、エクスカリバーを気魔法として使うのか。

それなら私にも出来そうだ。

「ちょっとシュハカ、敵に手の内喋っちゃだめじゃん」

「関係ねぇよ。知ってようが知らなかろうがワシには勝てねぇ。それにワシはそういう小汚ねぇのは好きじゃねぇ。雷光天貫」

何・・・。

するとまた再びシュハカの右腕は光に包まれるが、その光は電気でもなく炎でもなく、剣身に纏わりついた炎を激しくなびかせる風となった。

通常、属性は1人にひとつが原則なのに、あの人間は1人で電気、火炎、旋風の3つを扱ってる・・・。

恐るべし、英雄。

私もやってみようかな。

「言っとくが、これがワシの主力魔法、3重エクスカリバーだ。いくぜっ」

走り出すシュハカを見ながらカナノアの動きも警戒し、突き出された剣に向かって小盾を突き出した直後、電気を纏う爆風に小盾は硝子の如く砕かれ、そしてその剣先はこちらの掌を容易く貫いていた。

こちらが腕を引く前に剣身から電気を纏う爆風が広がると、吹き飛ぶ中でふと目に焼き付いたのは肘から先の無い左腕だった。

「うし、3重でならお前を殺せるな」

腕が完全に、砕かれ・・・。

妙に落ち着いた自分がいるのに気が付き、何となく形もない左腕に意識を集中させると、やはり先の無いその肘はまるで染み込む水の如く手首、そして手を形成していった。

「あっはっは。あーそりゃねぇよ」

「だからシュハカ、腕じゃなくて頭をやらなきゃ」

「みてぇだな」

「バリスタ・オブ・アークエンジェル」

ニヤつきながらその場で剣を構えたシュハカを見ながら光矢を構え、そして手の前に列べた2枚の小盾に向かって光矢を放つ。

まるでバリスタ魔法増幅装置で放ったような巨大な光矢はシュハカを呑み込んでも勢いは失われず、そのまますべてをえぐりながら彼方へと消えていったが、突如としてカナノアの近くに現れたシュハカの右腕は肩から先を失っていた。

「はっ・・・はっ」

「シュハカぁっ」

そう言って駆け寄ったカナノアがすぐにシュハカの右肩に手をかざすと、次第にシュハカの呼吸に落ち着きが見られていった。

空殻系魔法で止血か、それにしてもとっさに速陣でバリスタの軌道から離れたのはいい判断だ。

「カ、ナノア・・・ワシを、ワシの体を、頼む」

「え」

ん・・・。

「うおおおっ」

その直後にシュハカの目の前の空間が歪み、そしてその歪みから人型のサモンが出現すると、同時にシュハカは意識を失いゆっくりと倒れ込んだ。

サモンに意識を乗り換えて痛みを消し、精神を落ち着かせたか、さすが英雄だ。

けどあの抜け殻ごと今の特大バリスタで焼き消せば問題ないな。

そんな時に突如としてカナノアの傍に出現した若い人間に目が留まると、カナノアもシュハカのサモンも揃ってエンテキーリャ国の国旗が小さく胸元に印刷された軽鎧を着た、その若い人間に顔を向ける。

「僕はあなた達の援軍です。だからすぐにこの場を離れて下さい」

何だ、あの存在感・・・。

「援軍?何でエンテキーリャの人間がここに」

「詳しいことは後です。今はその怪我人の避難を。早くっ」

「う、うん」

シュハカのサモンがシュハカを抱え、2人が一瞬で姿を消すと、その若い人間はゆっくりと深呼吸してからこちらに体を向けた。

やっぱり氷牙という力を持っている人が主人公の中でも最強なんでしょうかね。

ありがとうございました。

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