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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第九章

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セラフエンジェルVSエンジェル

これまでのあらすじ

ハシオリトの軍人、ジョナスの手助けを決心したカイル。バクトやハクラ達と共にカンデナーデに向かい、混乱を生む為に軍事基地を襲っていた。

「ヒース様だ、俺達は援護に回るぞ」

「おう」

ふぅ、油断した・・・。

素早く顔を上げるが、すでにクルマはエンジン音を唸らせながら地面を滑っていて、とっさにクルマに向けてプラズマの球を撃ち放つものの、クルマはその図体のでかさからは想像もつかないほど素早く動き、プラズマの球を避けていった。

「ナオ」

「大丈夫だよ。それよりあれ、英雄って呼ばれる、この国で最強の軍人だよ」

英雄・・・最強の軍人、か。

「この時代で唯一、魔法を使わない軍人で」

その瞬間、滑りながら止まったクルマの側面から爆炎の尾を引くものが発射されたので、反射的に前方に向けてプラズマを撒き散らしこちらに届く前にそれを爆発させたものの、同時にその爆風から幾つもの小さな弾が飛び出すと、それらは一瞬にして全身に突き刺さってきた。

うぅっ・・・。

全身から激しくプラズマを放出させ、体に刺さるすべての弾を吹き飛ばしながらクルマに向かって飛びかかるが、クルマは素早く帯状の車輪を回し出すとそのまま後退してこちらの拳をかわし、そして直後に屋根の銃身から銃弾を撃ち出した。

プラズマを放出させながら後ろに跳び、爆風をかわすために横に飛び出すと、同じく目の前に滑り込んできたクルマはそのまま横に滑りながら、こちらよりも速く屋根の銃身の下の小さな銃身から何発もの銃弾を高速連射し始めた。

うっあのクルマ、何とかしないと。



「ウラノスバスターっ」

ロードがそう言って投げ飛ばした、2色の巨大な光球は何度見ても焦りを募らせるほどの巨大な爆風を生み、またひとつ極太の光矢を撃ち放つ兵器を破壊した。

「くそぉバリスタ増幅機関がすべてやられた」

「なぁ、さっきからあそこに居るのディエテレ様じゃねぇか?ディエテレ様っ」

ん?・・・。

軍人達が一様に目を向ける方へ体を向けると、そこには何やら四角いものに円筒状のものが付いた小さな黒いものを手に持った女性が居て、すぐに目についたのはその女性の満足げな表情だった。

「いやぁ、綺麗なのが撮れた。魔力に近い粒子状のものみたいだけど、この際何でもいいか」

そう言って黒いものを服の中にしまい込んだその女性は、期待を込めたような眼差しを女性に向ける軍人達に至って落ち着いた表情を向けていく。

「私が来たんだから、やることは分かるよね?」

「総員退避ぃっ総員退避だぁっ」

退避?

それほど怪我も負っていないにも拘わらず、軍人達は皆一様にその場から離れていくと、その戦場には軍人とは思えない服装の、少しボサボサとした肩までの黒髪が目に付く女性がただ1人残されたが、ディエテレと呼ばれたその女性はまるで怖じ気づくことはせず、テリーゴが一歩前に出てもその佇まいからはむしろ落ち着きと余裕に満ちていた。

「あんた何者だ?」

「えっ・・・知らないんだ。ディエテレ・ベイティアーナっていうんだけど」

「オイラ知らないけど、軍人か?」

「まぁ、軍人っちゃ軍人たけど、この際別にいいか。君たちはテロリストでしょ?悪いけど、君たちはここで成敗するからね」

「テリーゴ気を付けろ」

ロードとテリーゴが素早く身構えると同時に、ディエテレは瞬時に伸長ほどの光の剣を手中に出現させる。

直後にテリーゴが一瞬のうちに姿を消すが、姿を現したテリーゴはすでに吹き飛ばされていて、すぐに目を向けたディエテレもまたすでにその光の大剣を振り抜いていた。

な、見えなかった。

見えないほど速く動くテリーゴを、見えないうちに吹き飛ばすなんて・・・。

「カイルも気を抜くなよ?こいつはこの国で一番強い、英雄と呼ばれる奴らの1人だ」

英雄・・・。

「カイル、テリーゴ、すぐに魂を外気に向けて撃ち放つ意識をするんだ」

え・・・。

「そ」

しかしすでにロードとディエテレの姿はそこにはなく、立ち上がったテリーゴもその状況にこれまでにないほどの表情の引き締まりを見せた。

「あいつの動きが、まったく見えなかった。だけど今なら分かる。あいつは何も、オイラより速く動いてる訳じゃないってこと」

「テリーゴ、それって」

「カイル、今はロードが言ったことに全力を注ごう」

「・・・うん」

テリーゴのあんなに真剣な表情、初めてだ。

でも、魂を外気に向けて撃ち放つって・・・。

その時に一瞬だけ眩い光を感じた直後、突如として現れたロードはすでに地面に倒れ込んでいて、少し離れた場所に現れたディエテレは悠然と立ちながらロードを見据えていた。

それでもすぐに起き上がったロードは片膝を着いたまま、素早く右手に2色の光を燃え上がらせる。

「2人とも、魂は、分かりやすく言えば意識だけじゃなく、体の輪郭を含めた心のようなものだ」

そう言うとロードは右手に灯した2色の光を尖った形に変えながらディエテレに向けて投げ飛ばすが、驚くような表情を見せながらもディエテレはその光を軽々と受け止め、払いのける。

「速陣に槍魔法、あなたこそ、一体何者?軍人?」

「いや、俺はただ好きで魔法を極めただけだ。護身用としても役立つしな」

「ふーん」

「お、ロード、何か変な感じが広がったぞ」

「あぁ、それが陣圏だ。その魔力に満ちた空間では現実時間の1秒が最低でも10秒ほどになる。使い慣れれば陣圏はもっと広がり、空間時間もより現実とかけ離れる」

へえ、この世界にはそんな魔法もあるんだな。

「あんまり調子にのらないでよ」

そう口を開いたディエテレの表情には先ほど見た落ち着きと余裕はすでになく、その強気に満ちた表情はまるで眠らせていた闘志を目覚めさせたかのようだった。

「今初めてやった人のと英雄の速陣が同じだと思わないでよね」

「へっなら試してみろよ」

刺すように鋭い眼差しをテリーゴに向けたディエテレはその直後に姿を消すが、数秒も経たないうちに姿を現したディエテレはその表情や姿勢からは、テリーゴに向ける驚きと恐れを伺わせた。

「馬鹿な、あり得ない。この私が動きを捉えられないなんて」

「テリーゴはな、肉眼で捉えられない動きを、現実時間でやってのけるんだ。だから陣圏の中という同じ条件下でなら、いくら英雄でも負けはしない」

すごいテリーゴ、新しい魔法をすんなり使えるようになって、しかもそれで優勢に立つなんて。

するとふと嘲笑うような小さな笑みを見せたディエテレは、すぐにまたその佇まいから強気を伺わせる。

「だから、英雄を嘗めんなって、ジオラ兄の受け売りだけど」

そう言ってディエテレが再び姿を消すと、すでにロードとテリーゴも見えなくなっていた。

僕も2人に加勢しなきゃ。

魂を、外気に向けて、撃ち放つ・・・。

すぐ横を土埃が突き上げられるほどの衝撃が通りすぎ、思わず顔を背けた後、ふと目を向けた場所にはディエテレが現れ、ディエテレの目線の先には地面に倒れ込んだロードとテリーゴがいた。

「ははっさすが英雄ってだけはあるじゃねぇか」

「笑ってる余裕はないと思うけど、しかもキャラ変わってるし」

だめだ、僕も2人のために戦わなきゃ・・・いや。

「まぁ君たちもそこら辺の軍人よりかは出来る方だよ、だけど、もうおしまい」

僕が2人を・・・。

その瞬間にディエテレは突き出した両腕の外側に3本ずつ、腕よりも太い光の矢を出現させる。

守るんだっ。

ディエテレの両腕から放たれた6本の光矢に全神経を集中していたことに気が付いたときには、すでに6本の光矢は目の前で霧状となって消えていっていて、自分の両腕は何やら幅広い鉄製のものに覆われていた。

・・・ふぅ、変われた、僕も、変われたんだ、仲間のために。

はぁ、やった。

「は、何なのそれ。私のバリスタを、粉々にするなんて」

ホルス大尉、アルマーナ大尉、僕にも出来ました。

「カイル」

後ろを振り返ると、少しくつろいだかのように座り込む2人は揃って嬉しそうに親指を立てたので、2人に親指を立てて見せたとき、ふと腕を覆う幅広い鉄製のものの表側にある、2列に列べられた幾つもの小さな丸い窪みが目についた。

これが、新しい力・・・。

「雷光天貫」

立ち上がる2人を見ながらディエテレに目線を戻すと、ディエテレの手には伸長ほどの光の剣が出現していたが、ディエテレはその場から動かずに弓を引くような体勢を取ると、その光の剣を矢のように持ち直した。

「バリスタ・オブ・エクスカリバー」

そして直後にその光の剣は矢となって撃ち出されたので、思わず庇うように左腕を出した瞬間、先ほどの光矢よりも太い光矢は左腕の鉄製のものに当たる前にも拘わらず霧状となって消えた。

「これでもダメなの?私のバリスタが」

「カイル、凄いなそのスピーカー、というかカイルの音圧の力が進化したんだな」

すぴーかー?

そっか、この窪みからも僕の力が出せるのか。

「お、音圧?そんな馬鹿な、私のバリスタを、たかが音波で打ち消したっての?あり得ない」

ディエテレの眼差しは怒りを感じさせていて、落ち着こうとするようについたため息かと思えば、その静かな佇まいは怒りに満ちた闘志を更に尖らせた。

「こうなったら、直接叩き潰すだけ、速陣っ」

魂を外気に・・・。

あっ見えるっ。

走り出したディエテレを見ながら翼に意識を集中すると、気が付けばディエテレの斜め後ろに回り込んでいた。

すごい、直線移動だけじゃないっ。

しかしこちらが腕を振る前にこちらの存在に気が付いたディエテレは、幅広い鉄製のスピーカーとやらから発せられた、衝撃性の高い音波に吹き飛ばされると同時に素早く腕を交差させ、すぐに立ち直した。

再び音速でディエテレの背後に回り込み、自身の目の前に数十もの小さな光の球を作り出したディエテレの背中に向けて腕を伸ばし、スピーカーの細い側面にある銃身のようなものを突き出す。

しかしその瞬間、ディエテレの目の前にあるにも拘わらず、光矢となった数十もの小さな光の球は全方位に向けて撃ち放たれ、そしてその1つは瞬時にこちらの肩に直撃した。

回転する景色の中でも冷静な自分が居て、とっさに受け身を取り、地面に片膝を着きながら素早くディエテレを視界に収める。

しかしそこにはすでに隙の無さを見せつける闘志に満ちたディエテレがこちらを見据えていた。

「まさか君もテリ何とかと同じ特技が使えるとか?」

「オイラテリーゴだ」

「いや、カイルは現実時間の中で音速移動が出来るんだ。言うなればテリーゴよりも速い」

「あそ。速陣が通用しないからって、英雄が不利になるとでも?見せてあげるよ、この世界で私にしか出来ない最強の魔法」

最強の魔法?・・・。

「させるか、テリーゴっ」

テリーゴが姿を消し翻弄しながら、素早くディエテレに向けて回転する闇のナイフを投げるが、ディエテレは驚異的な反射力でそれを弾きのけると続けてロードが飛ばした2色の光矢をも容易く受け流す。

再びテリーゴが回転する闇のナイフを投げると同時にディエテレの背後に回り込み、そしてディエテレが闇のナイフを弾き返すと同時に音速で飛び出しながらディエテレの背中を殴りつける。

勢いよく吹き飛んだディエテレはそのまま凄まじく地面を転がっていくが、体がバウンドした時にまるで何事もないように体勢を立て直し、そのまま走り出した。

「ベンドジャベリン」

そう言ってディエテレが手を振り払うと、瞬間的に出現した円弧状の光が一瞬にして広範囲に広がり、ロードとテリーゴは成す術もなくその光に吹き飛ばされる。

「うわっ・・・つう」

「おらカイルっさっさと音波でバリアでも張れっ」

「あうん」

うう、戦場でのロードはちょっと苦手かも。

「ファングジャベリン」

手を組み両腕のスピーカーから前面に向けて衝撃を相殺させる音波を撃ち出すが、ディエテレから放たれた幅広い光は更に幅広く増幅されながら頭上に向かって飛んできた。

な、何だ・・・。

そしてその直後、幅広い光はディエテレの方から崩れ落ちるように地面に刺さる光矢と変わり始めた。

うわぁぁっ。

「カイルぅっ」

突き上がった土埃が静まり始めると晴れた視界に映り出したディエテレは、掌を合わせながらこれまでにないほどの光を全身に纏っていた。

「バリスタ・オブ・セラフエンジェル」

その直後、ディエテレの頭上に数十もの光の球がばらまかれると、その複数の光球は一斉に光矢となり3人に降り注いだので、とっさに両腕のスピーカーから音波を撃ち出し、数十もの光矢をすべて同時に音波で受け止める。

あれ・・・。

しかしその数十もの光矢は途切れることはなく、その場はまるで太く輝く数十もの光の線が永続的に音波の壁に放たれている状況となった。

カイルの進化した姿は後々分かります。誰かの目線で説明する、いつものパターンです。笑

ありがとうございました。

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