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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第九章

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それぞれの戦地へ

これまでのあらすじ

サランの軍本部に単身で乗り込んだハオンジュ。そこでリーダーがスパイの張本人だと知り、ソウスケ、ナオと共にリーダーを追って潜伏場所に向かうが、怪我をしてしまい1人出遅れてしまう。


ウラノスの眼の鍵となる天剣を探す為、ロザーに協力し、ハクラ隊長を追っていたカイル。ハクラ隊長がアストラにいると聞いてそこに向かうと、堕混の気配がし、カイルはテリーゴと共にそちらへ向かうことになった。

「本当に行かないの?」

「ドッグが居りゃ問題ねぇよ」

不思議な生き物だな、ドラゴンの使いって、触った途端に見えるようになるなんて。

しかも長細くて、小さな翼なのにすごく安定して空を飛んでる。

それにふかふかして、暖かい。

「ほら、あそこに居るぜ?ドッグ」

「うん」

ドラゴンの使いの背中から飛び降り、赤紫色の光で作った球を前方に飛ばしているエンジェラの下に降り立つ。

「あぁ来たの?」

「うん」

ナオは・・・。

サランの軍人と戦っている、何やら胸元だけを銀色の鎧で覆った人達を見ていたとき、ふと今まさに激しく破壊された高い塀に目を向けると、舞い上がる粉塵の向こうからは何やら首から下を革のようなもので作られた鎧で包んだ1人の若い男性が姿を見せた。

ん、あの人の気迫・・・強いな。

「んだよおめぇらぁ、サランとマーブル相手に手こずってんのかよ」

「ゼコウさん、まだ前に出ないはずじゃ」

1人の銀色の鎧を着た男性に話しかけられた、ゼコウと呼ばれた革製の鎧の男性は、話しかけた男性の肩に手を乗せながら親しげな笑みを男性に見せる。

「いや待機なんてしてられねぇからほんと。退屈で戦死しちゃうだろ。いいから、ここら一帯はオイに任せな」

「は、はぁ」

「ねぇハオンジュ、何、あのヤカラ」

ヤカラ?・・・。

「でも、あの人、確実に他とは違う」

するとまるで余裕に満ちた態度のゼコウは戦場を見渡しゆっくりと前に出ながら、ふとこちらと目を合わせた。

「なぁんだありゃ?けど可愛いな、おおぅい」

「ねぇハオンジュ、話しかけられてるよ?」

私?・・・。

「モテてんじゃん」

なんでよ、こんな時に。

ゼコウと呼ばれる男性に歩み寄ろうとしたとき、2人のサランの軍人がゼコウに向かって走り出した。

「ああ?んだよ」

2人が飛び掛かったその瞬間、ゼコウはその一瞬で両手に作り出した赤い細剣で2人を素早く、且つ豪快に斬り倒す。

両手に細剣・・・。

「そんなもんかよ、前に出ても退屈じゃ意味ねぇじゃんか」

「雷光天貫、その名を大地に轟かせろ」

「んあ?」

「エクスカリバー」

自身の身長よりも大きな光の剣を携えたその男性を前にしても、赤い細剣を持つゼコウは余裕に満ちたその態度をまったく崩そうとはしない。

直後に巨大な剣を振りかぶりながら男性が横にズレたとき、同時に男性の背後に立つ別の男性が極太の光の矢をゼコウに向けて撃ち放った。

「ははっ」

しかしゼコウは右手の剣で巨大な光の剣を、左手の剣で極太の光の矢を姿勢も崩さず難無く受け止めた。

「どぅおお」

そしてゼコウは剣と矢を弾いたその一瞬で2本の赤い細剣をひとつに合わせ、その場で回転しながら赤い細剣を振り回し始めた。

「おおりゃぁっ」

すると赤い細剣は一瞬で長くなり、ゼコウの背後の塀もろとも2人の男性を激しく斬り飛ばす。

それでもゼコウはまた回り始めると、同時に赤い細剣も一瞬の度にその長さを増していき、向かってくる軍人達を豪快に斬り飛ばしていく。

来るっ・・・。

素早く両手にプラズマの剣を作り出し、他の軍人をも巻き込みながらなお水平に振り抜かれる赤い細剣を受け止める。

うぅっ強い・・・。

「エンジェラちょっと手伝って」

「よいしょっ」

エンジェラが地面に突き立てた大鎌が赤い細剣を止めた一瞬のうちに、プラズマの剣を球体に変え、そして2本の交差する輪を飾った球体から身長ほどの大きなプラズマの剣を作り上げる。

「はっ」

赤い細剣を弾き返すと、右手で持った赤い細剣を肩に乗せたゼコウはただ嬉しそうに笑い声を上げた。

その時、耳をつんざくほどの轟音がその場を支配し、同時に崩れる塀の中から飛び出てきた龍形態のソウスケはそのままゼコウとの間を通り過ぎる。

「ぬあんじゃありゃっ龍かぁ?」

「くそっ」

空中で体勢を立て直し、地面を擦りながらも着地したソウスケを目で追うと、真っ白なその特徴的な存在にその場の空気は止まり、すべての目線がソウスケに注がれる。

「おっハオンジュか。気をつけろ、あの革の鎧の奴ら、強ぇぞ、ダコンじゃ無理だ」

確かに、あのゼコウ、まだ全然本気出してない。

「アレステッドは?」

「いや、あいつらが強くてそれどころじゃねぇ」

そんな中、ソウスケが壊した塀からゼコウと同じ格好の2人の男女が悠然とした姿を現す。

「ゼコウ、何してんの」

革の鎧の女性がそう声を掛けると、ゼコウはただ親しげにその女性に手を挙げて見せる。

「おうヒスイ」

「おーじゃなくて。ま、いっか」

ヒスイと呼ばれた、キレイな髪と丸顔が特徴的な女性がこちらとエンジェラに目を向けてくると、ヒスイはすぐに右手を横に伸ばし、柄の片側が下まで刃に覆われた赤い槍を出現させる。

「じゃあヒスはあの鎌の子にしよっと」

「ん?あたし?まぁ強いなら良いよ、雑魚には興味ないし」

じゃあ私は、あのおじさんか・・・。

プラズマで視界を覆い、龍形態になると続けて全身を赤紫色の光で覆ったエンジェラも龍形態になるが、驚きは見せたもののおじさんは闘志で眉間にシワを寄せ、ヒスイもすぐに強気に表情を引き締め、ゼコウに至ってはまるで楽しむように小さく笑い声を上げた。

「ガンホールド、スティギーラ、あの得体の知れない者達は私達の敵だ、遠慮なく潰せ」

「おいっす」

「了解です」



う、なんだこんなときにまた目眩が・・・。

「バクト」

頭が・・・体が、何か重力の感覚がおかしくなったみたい・・・。

そんな中、堕混の気配がする女性と戦う軍隊の背後に構える戦車の砲口から、まばゆく輝く光の球が放たれると、女性にかわされたその光球は真っ直ぐこちらに向かってきた。

やばっ・・・。

体を動かそうとする前にロードが飛び出すと、光球は呆気なくロードによって消し飛ばされる。

ふぅ、治まった。

「ロード、あの人と戦ってる軍隊の後ろ、何か厳重じゃない?」

「え、いや、俺はそこまで遠くは見えないが」

「そっか」

革製の鎧を着る男性の扱う日本刀のような赤い刀を、堕混の気配がする女性が右手に作った青白い光の手刀で捌いていく中、ふと森林の方から別に堕混の気配を感じると、間もなくして森林からカイルとテリーゴが姿を現した。

「おおっやっぱりロードとバクトかぁって、ロード、まさか、ルーベムーン使ったのかぁ?」

「あぁ。お、そういうテリーゴも、どこかで立昇を学んだのか」

こんな場所でも緊張感のない会話を交わしながらテリーゴがロードに歩み寄ると、同時にカイルは堕混の気配がする女性と話していた男性に駆け寄った。

知り合いなのかな。

「テリーゴ、あの人は知り合いなの?」

「あぁまあな、成り行きで、一緒に行動するようになった」

じゃあ、あの堕混の気配のする女性も、カイル達の知り合いか。



「ロザー、何かすごい疲れたような顔してるけど」

大きな怪我はしてないみたいだ、良かった。

この場の雰囲気にどこか混乱しているような顔色を見せるロザーは、すぐにバクト達の方へと顔を向けた。

「カイル、あの2人はカイル達の知り合いか?」

「うん、仲間だよ」

「じゃあ、あの2人には俺達がハクラ隊長を追ってることを話してたのか」

ん?・・・。

確か天剣については少し報告したけど・・・。

「ううん、話してないよ。それに僕はハクラ隊長さんの顔は知らないし」

「そう、だよな」

どうしたんだろ、考え込んじゃって。

「どうかしたの?」

「いや、あの翼を生やした方、ハクラ隊長を見た途端、訳の分からないことを言って、いきなり襲い掛かったから。てっきりカイルが話したんだと」

ロードが・・・いきなり襲い掛かった?

一体、どういうこと?

その直後、激しい戦いを繰り広げている2人の内、赤い反った剣を持つ方が放った巨大な火の玉がこちらに飛んでくる。

ロザーの腕を掴むと同時に光の剣に足を掛け、音速でロードの下に降り立つ。

「ねぇロード、何でいきなりハクラ隊長さんに襲い掛かったの?」

「感じるだろ?カイルも、あの女から」

え?・・・あ、本当だ。

「あの女の人も、堕混なんだね」

「あぁ」

「なぁ、ハクラ隊長がなんだって?ダコンってのは一体・・・」

そんな時ハクラ隊長と思われる女性が軍隊に向けて無数の光の球を撃ちだし、その場は若干の恐怖を感じさせるほどの轟音が響き渡った。

「あの女の人が、ハクラ隊長さん?」

「あぁ」

女の人だったのか。

しかしその場から眩しさと轟音が消えても、赤い反った剣を持つ男性だけは唯一悠然と身構えていた。

「そうだ、ハクラ隊長さんは敵なの?味方なの?」

そう聞きながらロザーの顔を見ると、ハクラ隊長を見つめるロザーの眼差しはただ寂しさに満ちていた。

「敵じゃない。最初から、敵なんかじゃなかったんだ。今隊長が戦ってる、ハシオリトっていう国を止めるために、隊長は、誰にも頼らずに、独りで動いてたんだ」

「そっか、じゃあ僕達も加勢しよう、ロード」

「・・・味方?・・・そうか、どうやら俺の思い過ごしだったようだな」

赤い反った剣を持つ男性を蹴り飛ばし、ハクラ隊長が下がったとき、ロザーは素早く走り出し、ハクラ隊長に駆け寄った。

「ハクラ隊長、俺達も加勢します、あいつらは全員俺の味方ですから、安心して下さい」

ハクラ隊長がゆっくりこちらに顔を向け、研ぎ澄まされた闘志が染み込んだような表情を見せたとき、赤い反った剣を持つ男性と同じような格好をした女性が大きな乗り物の方から跳んできて、男性の隣に歩み寄った。

「お?あっちにも仲間がいるみたいだな、早速オイラ加勢するかな」

そう言って小走りで前に出たテリーゴはハクラ隊長に歩み寄ると、その持ち前の陽気な態度でハクラ隊長に向かって親しげに手を挙げて見せた。

「知り合いの知り合いは皆仲間だからな、オイラも加勢するよ」

首を傾げたものの、小さく頷いたハクラ隊長からは敵意を感じないので、ゆっくりと歩き出したロードと共にハクラ隊長に歩み寄っていく。

敵の女性が、短い柄の両端に赤い短剣を着けた形の武器を出現させた直後にテリーゴが姿を消し、その一瞬で赤い反った剣を持つ男性に殴り掛かる。

しかし殴られても上半身を反らせるだけの男性にすぐさま腕を掴まれたテリーゴは、赤い反った剣で切り付けられた上、その衝撃で飛ばされる中、男性から放たれた巨大な火の玉の直撃を受けてしまう。

「テリーゴっ」

激しく地面を引きずり、転がっていったテリーゴに駆け寄ると、かろうじて意識があり、全身に焦げ跡があるテリーゴの腹に出来た横一線の傷からはゆっくりと血が滲み出ていた。

そんな、テリーゴがこんな簡単に・・・。

「オイラの、攻撃が、通じないよ」

赤い反った剣を持つ男性に顔を向けると、テリーゴに目もくれない男性は剣を肩に乗せながら笑い声を上げた。

「何だ今の、速いだけで全然雑魚でやんの、マキアも見たか?今の」

「取るに足らない戦力など、見る必要はない」

テリーゴが歯が立たないのに、僕が敵う訳ない。

ロードも、バクトさんも、きっと・・・テリーゴみたいになっちゃう。



「よくもテリーゴを」

静かにそう口を開いたロードはゆっくりと息を吸い込み始めると、背筋を伸ばすと同時に逆手の両拳を脇に当てる。

「ふう・・・」

その瞬間橙と黄緑の光がロードの至る所から滲み出て、全身を包み込むが、2色の光がロードを見えなくするほど濃くなった直後、全身を包む2色の光は一瞬にして消え、ただロードの背中に張り付くように淡く揺らめく、小さな細い円となった。

何だろ、ハクラって人と同じようになったけど。

そんな時、ふとロードを見つめるハクラの無表情さに満ちた眼差しに目が留まる。

「なぜ、軍人でもないのに第三を」

第三?何だろそれ。

「俺はただ、子供のときに我流で覚えた立昇を何となく極めただけだ」

しかしハクラは特に相槌を打つことはせず、ゆっくりと目線を敵の2人へと戻した。

「誰だか知らないが第三気が出来るのか。まぁさっきの奴みたいに第一気でオレに向かってくるような雑魚じゃないようだし、退屈はしなさそうだ」

その直後にロードは何も言わず素早く両手を天に掲げ、先程作り出した2色粒子の球よりも遥かに巨大な球を作り上げる。

「うおぉっ・・・ウラノス・・・バスターっ」

そう言って2色粒子の球が高速で放り投げられると同時に、敵の男性はその場で赤い刀を構え、マキアと呼ばれた女性は素早くロードに向かって走り出す。

マキアと呼ばれた女性がロードと男性のちょうど中間くらいの距離まで近づいてきたときに、気球を思わせるほど大きな2色粒子の球は男性が構える赤い刀に勢いよくぶつかる。

そして2色粒子の球が激しく破裂すると、その爆風は一瞬にして視界を支配し、その轟音はすべての雑音を潰し、その衝撃は感覚を遠退かせるほど全身を駆け巡った。

ゼコウ・ガンホールド(27)

ハシオリト出身ではなく、傭兵としてハシオリトの軍に身を置いている。実力があるが故に、どんな戦場でも余裕があり、笑い声すら上げることがある。


ヒスイ・スティギーラ(23)

ゼコウと同じく、傭兵としてハシオリトの軍にいる。細身ではあるが、丸顔が原因でいつも着痩せしているとからかわれている。自分の事はヒスと呼ぶ。


ありがとうございました。

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