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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第九章

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サランへのスパイ調査

つっても、軍関係の人間に直接そんなこと聞いたらアホみたいだしな。

やっぱり、記者辺りから聞いた方がいいよな。

あれ?・・・。

手に持っていたリストが無くなっていることに気がついたので、反射的にハオンジュの方に顔を向ける。

「ねぇ、ちょっと聞きたいんだけど」

「は、はい?」

て、おいっ・・・もう話し掛けてんじゃねぇか。

「第10番隊のトシマタ・カズって人のこと」

あいつ、天然か。

「えっと、あなた方は、何ですか」

「ああ悪い、週刊大地のもんだが、ちょっと取材していいか?」

するとこちらとハオンジュを交互に見てくる、まるでドラマに出てくる社長秘書のような風貌のその女は、戸惑いこそ見せているがその表情からは少しずつ警戒心は薄れ始めていた。

「出来れば、会見以外のことは遠慮して欲しいんですけど」

「え、でも、私達記者会見のことで来た訳じゃな」

「おいっ何言ってんだ」

「え、あなた達」

やべ、まったくほんとこいつ何も分かってねぇな。

「まさか、記者会見とは別用で?」

「そう、だから記者会見以外のこと、聞いていいでしょ?」

おっと・・・。

その真っ直ぐ過ぎるほどの眼差しを向けるハオンジュを前に、秘書の女は困った表情の中でもまた少し警戒心を和らげさせた。

なんかアメリカ人みてぇな交渉のし方だな。

「まったく、さすが週刊大地ね。まぁちょっとくらいなら話してあげるから、さっさと済ませてよね」

「うん」

「ああ、10番隊のトシマタだっけ、それで何が知りたいの?」

大丈夫かぁ?墓穴掘ったりしねぇかな。

「その人、スパイなんじゃないかって言われてるんだけど、何か疑いを晴らす証拠とかないかな?」

な、こいつ、ストレートに聞きやがった。

すると秘書の女は眉間にシワを寄せ、どことなく緊張感を感じさせる顔色で視線を遠くに逸らす。

賭けに出過ぎだろ、いくらなんでも。

疑う側じゃないという意思表示で良い方に転がりゃいいが。

「その、手に持ってるのは?」

「これは・・・」

「もしかして、他にも疑わしい人物が?」

マズイな、裏目に出たか?・・・。

「そう、だけど」

再び秘書の女の表情から湧いてくる警戒心がこちらにも移ってくるのを感じながら、ふとトウキの姿を思い浮かべる。

「ちょっと見せて?」

ここでもしトウキが騒ぎを起こせば、俺達は怪しまれずに済むのか?

いや、そのサモンってのが俺達の仕業だって思われる可能性だってある。

「なるほど、トシマタにカイダ、あら、最後のこの人も?」

何だ?俺達よりも、リストにこんなに食いつくとは・・・。

「ありがとう。この情報、どこから仕入れたの?」

「それは・・・」

「まぁいいわ?そんなこと言えないってことくらい承知の上だし」

そう言うと若干の緊張感を漂わせたまま秘書の女はハオンジュを通り過ぎ、こちらには目もくれず颯爽と背中を向けていく。

「おい、ちょっと待ってくれよ。俺達にも情報をくれよ」

振り返った秘書の女の眼差しはすでに戸惑いや警戒心はなく、ただ心のモヤが晴れたかのような力強さが纏っているだけだった。

「あなた達を雇った人達、偵襲部隊でしょ?」

何、まさか、バレてたのか?

「い、いや、それは」

「だとしたら大丈夫。私はあなた達の味方だから」

え?・・・。

見下すように口元を緩ませて見せたその女の遠ざかる背中を、ただ黙って見ていたとき、突如下の階から胸騒ぎを掻き立てる異様な感覚が湧き立った。

何だ?気迫、殺気、その類のものが、いきなり膨れ上がった。

その直後にどこからか数人の走る足音が聞こえてくるが、廊下の角から現れたその数人の姿を確認出来たときには、すで廊下を塞ぐように立つ警官を思わせるような制服を来たその数人は皆、こちらとハオンジュに拳銃を向けていた。

チッ・・・あの女、何が味方だよ、くそっ。

「お前ら、下手な真似はするなよ?」

おかしいだろ、いくらスパイ調査でも、あいつらはここの軍人だ。

なのに何故、まるで侵入者を見る目で俺達を?

「俺達は偵襲部隊の使いだ、あいつらに確認してくれれば分かる」

「そんな話、信用出来るか。さしずめアイレスから来たんだろ?」

何だよ、まるで聞かねぇのかよ。

「違う。ほんとにナオに頼まれたの」

「ナオ?偵襲部隊の人間の名前を知っていたところで、お前らの話に信憑性は生まれない」

いや、やっぱり、そもそもこいつがあの秘書みてぇな女に話し掛けたからいけなかったのか。

仕方ねぇな。

あいつらには悪いが、捕まる訳にはいかないよな。

意識を制服の男達の足元に集中させると、男達全員の足元はほんのりと空色に光り始める。

軽くやってやるか。

「何だ?」

男の1人が自身の足元に目線を落とした直後、地響きと共に男達の足元は一瞬にして崩壊し、そして空色の光と共に男達は野太い悲鳴を残し姿を消していった。

「ソウスケ」

「とりあえずここを出よう。あいつらには悪いが、もう俺達はここには居られない」

「そっか」

大穴が空いた床に背を向けたとき、遠くの突き当たりから再び数人の制服を来た男達が姿を現す。

チッ・・・。

「こっちだ」

大穴の脇を通り過ぎ、角を曲がり、非常口から階段を上がる。

トウキは何やってんだ、こういうときに目立ってくんねぇと意味ねぇよ。

「どこまで行くの?」

「屋上から逃げるぞ」

どこからか何かの可動音が壁や床を伝わって響いてくる中、ふと階段の先でシャッターが下り始めているのに気がつく。

な、通報されたのか?

誰だよ、あの女か?

それとも追って来てる奴らか。

「ソウスケ、あんなの壊せるでしょ?」

「あぁ楽勝だ」

階段を駆け上がり、ちょうど下りきったシャッター目掛けて拳を振り出す。

中央を大きくへこませながら、突き当たりの壁に力無くうなだれるシャッターを何度か通り過ぎた頃、次の小さな踊り場にはシャッターは下りていなかったものの、そこにはまるで待ち伏せしていたかのように1人の男が立っていた。

12、3段の階段が隔てる中、ウエットスーツのようなものに武装を施した、どことなく特殊部隊を思わせる風貌の男は組んだ腕をゆっくりと解きながら、悠然とした姿勢でこちらを見下ろす。

新手ってやつだな、面白ぇ。

「お前」

しかし話し掛けた瞬間、男は殴り掛かる姿勢で素早く階段を飛び降りる。

んだよっ・・・。

空色の膜に拳の勢いを殺された男の腹に拳を叩き込むと、激しく階段に背中を叩きつけた男はそのままゆっくりと階段を転がり落ちてきた。

全然張り合いがねぇな、せめて大勢で来りゃいいのに。

力無く突っ伏した男を後にして階段を上がり始めた直後、金属製の何かと服が擦れ合うような小さな音が、一瞬にして胸騒ぎを掻き立てる。

振り返ったときにはすでに男はハオンジュに詰め寄っていて、その手には拳銃が握られていた。

くそ・・・。

動く間もなく潰れた銃声が2回響き渡るが、ハオンジュは衝撃を受ける素振りを見せることなく、素早く男の腕を掴み上げ、そして壁に向けて勢いよく男を蹴り飛ばす。

再び壁に背中を叩きつけられた男はそれでも倒れることはなく、素早くハオンジュに向けて拳銃を発砲させる。

しかし体の周りに一瞬だけ電気がほとばしるだけで傷を負わないハオンジュを前に、男は初めて動きを止め、ただ悠然と立つハオンジュを見つめた。

息の乱れも、傷も無ぇ。

あの男、ただの人間じゃねぇ・・・。

「応援要請、7階中央非常階段」

チッ応援を呼ばれた、さっさと片付けねぇと。

「翼解放」

空間を引っ掻くように輝くプラズマに包まれて、風貌の変化を遂げたハオンジュに、男は目を見開きながら開いた口からは笑い声に似たものを発した。

「はぁ?んなのアリかよ。まるでアニメだな」

魔法が根付いた世の中でも、ダコンには驚くのか。

ハオンジュが緑色に輝くレイピア状の剣を両手に作り出すと、背筋を伸ばし、表情を引き締めた男は腰に巻いたベルトからダガーのような武器を取り出した。

2刀流の細剣相手にダガーか。

しかし男が小さく息を吐いた直後、男が持つ短剣は瞬時に西洋の騎士が持つような長剣へと姿を変える。

おや、あれも魔法とやら、か。

「・・・はっ」

ハオンジュの気合いが篭る声と同時に辺り一面に激しくプラズマが舞い踊り、男は思わず身構えたまま体を硬直させる。

危ねぇっ。

こっちまで来た、あいつ。

男の剣を華麗に捌き、瞬時に詰め寄ったハオンジュが、長剣を押さえながら輝く細剣を男のみぞおちに突き立てた直後、ハオンジュと男の間に一筋の白い光線が轟いた。

何だ、誰だ。

ハオンジュが瞬時に後退すると同時に、壁に背中を着ける男が腹から血を流しながら腰を落とすと、男を庇うように2人の男女がハオンジュの前に立ちはだかる。

「くそ、魔導スーツを貫きやがった、この女、何者だ?あ?」

「プラズマを使う魔法なんて私、見たことも聞いたことも読んだこともやったこともないよ?」

新手の男がこちらに顔を向けたとき、ふとその男のズレた目線に胸騒ぎが湧き立った。

「ちょっとっ腹から血ぃ流してくつろいでんじゃないわよっ。相手はたった2人じゃないっ」

反射的に後ろに体を向けると、上り階段の先には同じように武装した3人の男女の姿があった。

「あんたら、一体何なんだよ」

するとこちらに目線を向けたその女は、まるで蔑むように殺気を宿した眼差しを見せてくる。

「決まってるでしょ、あんたらを始末する者よ」

「翼解放」

空色に覆われた視界が晴れると、蔑むような眼差しを一切崩さないその女は、片手をくびれた腰に置いた姿勢すらも崩さずにただ小さく口笛を吹いた。

「何のために俺達を」

「頭の悪い質問だね、侵入者の排除に理由なんか無いわよ」

いちいちイラつくな、あの女。

どことなくリーダー格を思わせるその女は何の前触れもなく、素早く弓を引くような動きを見せる。

そしてこちらが動く前にその女が作り出した光を帯びる小さな矢は、すでにその女の手から解き放たれていたが、光の矢は真っ直ぐ真横を通り過ぎた。

どこ狙って・・・。

何かが弾け飛ぶような音がその場に緊張感をほとばしらせたが、依然として傷を追った人間を庇う2人に体を向けたまま、ただ静かな殺気を漂わせるハオンジュに、リーダー格の女は怒りに表情を歪ませながら大きな舌打ちを鳴らした。

「あたしに顔を向けることすらしない訳?ナメてんじゃないわよ、くそっ。ケイ、マナ、あんたらはその女っあたしらはこっちの魔物だっGO!」

「はっ」

誰が魔物だよ。

リーダー格の女が飛び降りると同時に、辺り一面に空色の霧を充満させ、その女が疑惑を感じるようにこちらを睨みつけると同時に、辺り一面を凄まじい熱と重圧の帯びる空色の光で押し潰す。

階段が激しく崩れ落ちる音が遠のいていくのを感じながら、その場に滞空して残りの2人の男に黙って顔を向ける。

「消えた・・・階段が、リーダーが・・・一瞬で」

やっぱりあの女がリーダーだったのか。

まぁどうでもいいが。

「こいつら、一体」

「考えるな、第二気、神器っ」

あ?何だ?

1人の男の全身が突如淡く輝く白い光に包まれると、直後にその男はロケットのように飛び出し、瞬く間にこちらの腹にその拳を叩き込んだ。

くっ・・・。

翼に意識を集中させてその場に浮き留まった中、一瞬でしかなかったものの、そのまま崩れ去った階段の下へと落ちていった男の食らいつくような眼差しが、ふと脳裏に焼き付いた。

それでも無惨に落ちていった仲間には目もくれず、ただ1人残った男は鋭い眼差しを見せながらこちらに向けて真っ直ぐ人差し指を突き出す。

「封印の陣、百式」

おわ、呪文か、なんかまるで・・・。

その直後に突如として辺り一面に無数の光る針が出現し、瞬く間に体中に突き刺さってくると、痛みは感じない代わりに、まるでその無数の針に押さえつけられているかのように身動きが取れなくなった。

まるでゲームか何かだ。

仕方ねぇ、とりあえずこいつらから離れねぇと。

そして屋上に行ったら即どっかに逃げる。

逃げる?そうだ転送筒使えばいいじゃねぇか。

ふと首を後ろに回すと、ハオンジュは新たに現れた2人の男女にさえもそれぞれ痛手を負わせていた。

あ、そうか、小さな傷でも付けて、とりあえず動けなくすりゃいいのか。

「うおおお」

視界は空色に染まり、頭上から何かが崩れ落ちる音がし始めると、体中が押しつけられる感覚も少しずつ薄れ始める。

「おりゃぁっ」

今のところ、主人公最強というジャンルには誰が当てはまるんでしょうかね。

ありがとうございました。

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