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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第九章

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混沌を追いかける者

これまでのあらすじ

ルーニーに氷牙の力を奪われ、修業するために帰ってきた氷牙。発展していく空母戦争や変わっていく組織の中で、氷牙は天魔の力を使いこなそうと日や修業に励んでいた。

真面目そうな男性が目を向けると見知らぬ女は、記憶を思い返すような表情に中にどこか物悲しさを感じさせた。

「・・・私がダコンになったのが、仲間を殺したあの人に敵討ちするためだったから」

ん・・・何か穏やかじゃねぇな。

仲間を殺した?

確かに戦いの中じゃあいつは、まるで心が凍ってるかのように非情になるときがあるが。

「仲間を殺したって、どういうことだ?」

「あの時あの人は、セイカっていう国の軍人をやってて、私がセイカに侵略したのをあの人が迎撃して、その時に2人の仲間をあの人に殺された」

何だよ、戦争絡みか。

なら仕方ねぇよな。

「なぁドッグ、オレ達が気にした方が良いのは、その氷牙って奴なんじゃねぇか?この前、ネオじゃなかったもののこいつは確かに氷牙って奴を殺したって言った。だがそいつはまだ生きてて、未だにダコンを追って異世界を巡ってんだ」

「そうか、ならそいつをいっぺん調査するか」

「ちょっと待ってくれ」

すぐに真面目そうな男性がドッグに声を掛けると、その必死さの伝わる表情に、ドッグも短髪の男性も揃って神妙な面持ちを見せていく。

「あいつは1人で、ただ好奇心で動いてるだけなんだ。だからそんなに危険な奴じゃないと思う」

あ?何でこいつ、あいつを庇ってんだ?

元々敵じゃなかったとしても、あいつとそこまでの関わりがあったのか。

「って言ってもなぁ、理由は何であれ、やってることを見逃す訳にはいかねぇよ」

嫌悪感や威圧感は無いものの、短髪の男性のその言葉に真面目そうな男性は黙り込み、煮え切らないような表情を浮かべていく。

「いや、そこまで気にすることねぇと思う。あいつ、3日くらい前、力を奪われたんだ。つまりもう、あいつはあの青白い龍みてぇな姿にはなれねぇってことになる。だからもう、ダコンを追い掛けてまで戦うことは出来ねぇんじゃねぇかな」

まぁもう1つ力があったみてぇだが、その力を2、3回覚醒させてもたかが知れてるだろうしな。

短髪の男性が気楽そうな表情のまま、納得したように小さく頷くと、短髪の男性と顔を見合わせたドッグもその態度から戸惑いを消していった。

「それが本当なら、気にすることもないんだろうがなぁ」

翼を消して人間の姿を鏡で確認しながら、ふと真面目そうな男性の近くに立つ、色気を醸し出す女と中学生くらいの男女に目を向けてみる。

「なぁ、ダコンになったんだし、これから俺は何をすりゃ良いんだ?」

「とりあえずはまず血液検査だな。それからお前の進化薬を作る。そんなとこだな」

血液検査か、案外普通だな・・・。

「じゃあ、最後に新入りに紹介しとく。これから、お前はオレの担当するチームの一員だ。オレはドッグ・アレスター、そしてあっちがエンジェラ」

は?エンジェラ?死神の鎌みてぇな武器と翼を持つ奴が、エンジェラ?

「そんでお前は?」

「総助」

「ん。ドラゴン」

「あぁ」

ドラゴンと呼ばれた短髪の男性はすぐにエンジェラの隣に居る見知らぬ女に目を向ける。

「あいつがオレの担当するチームに居る、ハオンジュ。そしてオレはドラゴン・ハイド・エリース」

ミドルネームか、ちょっと羨ましいな。

てかチームって言い方、何か、戦争って感じがしねぇな。

「私はバード・チャネーサ。この子はラビット・テネスでこの子がシープ・テネス、そしてこの子達が私達が担当するチームの、ハルクちゃんにレテークちゃん」

ハルクと呼ばれた真面目そうな男性が会釈したので、何気なくハルクに会釈を返す。

山小屋に戻ってリビングのソファーに深く座ったとき、ダイニングテーブルの椅子に座ってこちらに目を向けたエンジェラとふと目が合った。

「ねぇ」

「あ?」

「あんた、ダコンになっても何か変に落ち着いてるね」

変にって何だよ。

「てか、そういうあんたも生まれながらの兵士って訳でもないんだろ?」

「んまぁ、ね、でもあたしは今の自分の方が良い」

「そうか」

しばらくしてドッグが戻って来ると、ドッグはキッチンと繋がった壁沿いにある棚に置かれた小さくはない木箱から、何やら銀色の筒と革製のひらべったいケースを取り出した。

「なぁ、ダコンって、さっき紹介した奴らだけなのか?」

「いや、本来オレ達ディビエイトの管理者は12人居て、管理者は必ず1人はディビエイトを管理するのが任務だ」

「ディビエイトって、こいつみてぇなダコンか?」

「いや、ディビエイトってのはお前らの正式の呼び名だ」

・・・ディビエイトって、日本語にすると逸脱した者とかそんな感じだよな。

それがこいつらが作る兵器の名前なら、ダコンはただの発展途上の形なのか?

まぁつまり、最低でも俺みてぇなのは12人以上居るってことか。

「てか、何で全員紹介しなかったんだ?」

「別に最初から紹介する気はなかった。ただ事前にドラゴンがラビット達を連れてくると連絡してきただけだ」

「そうか」

「じゃ、とりあえずメシ行くぞ」

メシ?

冷蔵庫とキッチンがあるなら、使えるんだよな。

すると席を立ったエンジェラは嬉しそうに微笑んで見せた。

「ドッグ、新しい仲間が来たんだから、今日は奮発してよね」

「あぁ」

あ?普通に歓迎会かよ。

何だよ、オーナー達の戦争相手だから、どんだけ侵略のことしか考えてないのかと思いきや、全然イメージと違うじゃねぇか。



「続いてのニュースです。今日午後、海上自衛隊はしらね型護衛艦くらまに続き、ひゅうが型護衛艦ひゅうがも起動不能に陥ったことを発表しました。能力者によって引き起こされた空母戦争により、2艦目の護衛艦停止に、日本ならびにアメリカにも緊迫感が広がっています・・・」

ヒカルコがテーブルに置かれた携帯電話のテレビを消すと、そのテーブルに居る誰もがその訪れた沈黙を重く受け止めた。

「あーあ、護衛艦またやられちゃったね、やっぱり日本は守ることしかしないから、厳しいよね」

ハルゴが口を開いたときにホットミルクを入れたマグカップを口に運ぶ。

完全に破壊された訳じゃないし、レンが一時的に護衛艦の武器を強化すればまだ反撃も可能かも。

最近中国と北朝鮮にロシアの戦力が加わったらしいから、能力者人口はこっちが圧倒的に不利だし、アメリカも日本とカナダだけじゃ厳しいよな。

懐中時計に目を向けてから席を立ち、闘技場の扉を開ける。

ミントに教えて貰った瞑想も結構続けてるけど。

いつも何かが足りないって気がしてならないんだよな・・・。

心を鎮めながらふと足を止め、遠くを見つめながら目を閉じる。

翼を解放せずに力を限界まで湧き上がらせるだけだけど、この瞑想、結構精神力使うんだよな・・・。

でも少しずつ体中を駆け上がる光と闇の圧力みたいなものも上がってるし、やり甲斐はある。

それにしても早くキングに連絡しないと、あんな力を持って、ルーニーは一体何をしようとしてるのか・・・。

ん?何だこの感じ。

今までに感じたことない・・・まるで光と闇が固くなっていくような。

ミントは力を高めるとどうなるか何も言わなかったけど。

何かしらの効果かな?

「あ、氷牙お帰り」

「あぁ」

「氷牙、毎日1時間くらい瞑想してるけど効果出てるの?」

「少しずつね」

ヒカルコに応えながら焼き魚をつつき、頷くヒカルコに微笑み返してから魚の身を口に運ぶ。

そしていつものように食事が終わるとノブ達が居るテーブルの下に向かう。

「シンジ今暇?」

「あぁ、修業?」

「あぁ頼むよ」

闘技場の中央で両足にだけ鎧を纏ったシンジと向かい合い、翼を解放する。

ミサにも体の動かし方とか教えて貰ったし、今はもう槍よりかは拳の方が楽だな。

そして全身に光と闇を限界まで纏い、まるで以前の自分がやっていたのと同じような構えを取るシンジに飛び掛かる。

見えない防壁にヒビが入ると同時に振り出されたシンジの拳を、手刀で強く振り払いながら再びシンジに殴り掛かる。

しかし上体を反らしながら繰り出されたシンジの拳が腹に当たると、人間の腕力とは思えないほどの衝撃が全身を伝う。

くっ手加減してくれてるのに、相変わらずの衝撃だな・・・。

翼を振り出し、シンジの視界を阻みながらすぐさまシンジの腹辺り目掛けて蹴りを繰り出す。

その後にシンジが拳を突き出すと同時に、防壁のヒビに向かって拳を叩きつけると、シンジの拳が腹に叩き込まれると共にこちらの拳は防壁に拳ひとつ分の穴を空けた。

・・・いけるか?

すぐさま何も考えずに、全身を纏った光と闇のすべてを拳からシンジに向けて吹き出させる。

ふぅ・・・やった。

すると地面を転がったシンジは立ち上がりながら、嬉しそうな笑みをこぼし、笑い声を小さく漏らした。

「初めてだな、オレに直接届いたの」

「あぁ」

すると直後にシンジの右腕が黒い外殻を纏い、その大きさを2倍ほどに膨らませた。

「ちょ、ちょっと待ってよ」

「うるせぇよ、代わりに防壁は作らないでやるからさ」

「いやいや」

すぐさまシンジが地面を蹴り、まるでロケット花火のように勢いよく跳びだしたので、とりあえず振り出された右手をかわしながらシンジと距離を取る。

「逃げんなよ」

まずいな、怒らせちゃったかな。

今の姿じゃ、あの右腕だけでも相当危険だし。

再び全身に光と闇を纏うが、すでにシンジはこちらに向けて右腕を振り出そうとしていた。

やばっ・・・。

とっさに手刀でシンジの右腕を振り払い、脇腹を殴りつけようとしたが、シンジもすぐさまこちらの右腕を掴むと素早くこちらの腹を蹴りつける。

そしてシンジは体勢を崩しているこちらに向かってすかさず飛び掛かり、その黒く染まった大きな右腕をこちらの腹に勢いよく突き当てた。

うぐっ・・・。

地面を転がった後に起き上がろうとしたが、その瞬間に腹から胸元に掛けて痛みがほとばしる。

いっ・・・。

「おい、立てるだろ?これでも少しは手加減したんだ」

く、確かにシンジの右腕は驚異だけど、胴体はまだ生身なんだ・・・。

苛立ちを力に変えて立ち上がると、左手を腰に置くシンジはその笑みから自信と余裕、そして若干の狂気を伺わせた。

「もっと本気出せよ」

ふぅっ・・・。

その瞬間、体中から滲み出るように全身を纏った光と闇に若干の硬さ、そして冷たさを感じた。

「出来んじゃん、ほら、来いよ」

「あぁ」

何となく体の軽さを感じた直後、心の中に爪を立てられたような感覚と心臓を鷲掴みにされたような感覚が襲った。

ぐっこんなときに。

「おいっどしたっ」

膝が地面に落ちたときにシンジが駆け寄ってくるが、すでに胸の奥の痛みは薄れていっていた。

あれ、収まるのか、まったく何しに来たんだよネオグリム。

「大丈夫かよ、何だよそれ、たまにそうなるけどさ、異世界から戻ったときに持病でも患ったのか?」

持病・・・。

「ふふっまぁ、そんな感じかな」

シンジの手を掴みながら立ち上がりホールに戻ると、ヒカルコの隣にはユウコが居た。

「氷牙大丈夫?」

「あぁ。でもちょっと頼んで良いかな?」

満面の笑みで頷いたユウコはカバンからひらべったい小さな鉄製の容器を取り出すと、その容器の蓋を開けながら容器をこちらの目の前に置く。

そしてユウコは容器の中にある蝋燭に人差し指に点した炎を移した。

小さな蝋燭に点った炎を見ていると、頭がぼーっとしてくると共にまるで全身から疲れが抜けていくような感覚に見舞われる。

帰ってきてから明日で1週間になっちゃうのに、まだ第二覚醒出来ないのか・・・。

「ありがとう」

「うん」

蓋をした鉄製の容器を返すと、容器をカバンに戻しながらユウコは満足げな笑みでヒカルコと微笑み合う。

「私もユウコの火見てたら疲れ取れちゃったよ」

「うん」

「そういえば、フレイムセラピーなんて名前、センス良いよね」

「そりゃあヒカルコがつけたからだよ。私そもそもそんなに名前にはこだわってなかったし」

「え」

「えって何?もう」

何だろうな、見ないうちにユウコ、すごく大人っぽくなってるような。

ホットミルクを注いでいるときに声を掛けられたので何気なく振り向くと、そこにはシンゴが居た。

「どうだ?修業は」

「まぁまぁかな」

共に別のテーブルに向かうと、椅子に座ったシンゴは何やら期待を寄せるような顔色を見せてきた。

「今度、ユウジ達とイングランドに協力要請の交渉しに行くんだが、あんたも気分転換について行ったらどうだ?」

今のところ強くなったユウジやノブの戦闘シーンは書いてないですが、まぁそのうち出せたらいいなと思ってる感じです。笑

でも一応ユウジに関しては外見や特性はちゃんと出来上がってます。

ありがとうございました。

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