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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第八章

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そして歯車は動き出す4

「・・・武装したゼビス人も殺せる辺り、あんた結構やるみたいだからってさ、こっちに引き入れるためにわざわざ追って来たって訳。要はスカウトかな」

はぁ?スカウト?

何の話だ?

ダコンの女からは先程までの殺気は感じなくなっていたものの、その佇まいからはまだ強い警戒心がひしひしと伝わってくる。

「良いのか?俺を殺さなくても」

「あたし達の目的はアルバートに協力することだけじゃないから。とりあえず・・・死にたくなかったらこのままあたしについていった方が良いと思うけど、どうする?」

・・・脅し、か。

信悟の姿が脳裏に浮かび上がると同時に、名前も知らない先程の男性の言葉が妙に心に残っていた。

・・・せっかく拾った命、だよな。

逃げられねぇのに逃げて殺されるよりかは・・・大人しくしてた方が良いんだろうが・・・。

「俺を連れていってどうするつもりだ?それくらい言ったって良いだろ」

相手を見下すような目つきを緩め、ふと困ったような表情を見せたダコンの女に、どことなく人間らしさと共に親近感を覚えた。

「えー・・・あたし、言っちゃいけないこととか考えながら話すの嫌いだし。・・・めんどくさいから、やだ」

こいつらも、生まれながらの兵隊って訳じゃねぇんだよな・・・。

「悪いが、俺はあんたらのことは少しは知ってるつもりだ。こことは違う世界でダコンに会ったことがあるからな」

ダコンの女はこちらの目を見つめながら固まるが、すぐに眉間に小さくシワを寄せるとその眼差しから疑い深さを宿していく。

「あんた・・・まさか」

「あぁ、俺はコテンの兵器じゃねぇ。あんたらと同じでこことは違う異世界から来た」

ダコンの女が睨みつけるように目を細めたとき、突如視界の隅の方に空間の歪みのようなものが見えた気がしたので、何となくその方に顔を向けた。

「動くな、頭が吹っ飛ぶぞ」

するとそこにはこちらの額に銃口を突き付ける、縁にファーの付いたフードを深く被るミリタリージャケットを着た1人の男性が立っていた。

・・・ちょ・・・。

「あれ、また出た。いつから居たの?」

「さっきから居たさ、ずっとな」

何なんだ、こいつ、いきなり目の前にワープして来やがった。

「・・・てめぇ、一体何者だ?」

「あ?そらぁ俺のセリフだ。もしかしてお前もダコンか?」

フードを深く被っているせいか表情は分かりづらいが、大きな犬歯が見え隠れしているその男性が、怒りを抑えるかのように歯を噛み締めていることは分かった。

「何故ダコンをそこまで知ってんだ?答えによっちゃあてめぇを生かして帰すことが出来なくなるが、きっちり話して貰おうか」

くそめんどくせぇなぁ・・・ったく。

「いやぁ、ダコンに会ったのも偶然だし、知り合いにちょっと話を聞いただけで、別にそこまで詳しくは知らねぇよ」

「・・・本当か?」

「あぁ」

ゆっくりと拳銃は降ろしたものの、小さくため息をつくその男性は依然として警戒心を剥き出しにしていて、拳銃はしまわずにこちらに体を向けたまま後ずさりし始めた。

ふぅ・・・くそ、俺は何回命を拾えばいいんだ。

「ねぇドッグ、どうするの?こいつも引き入れちゃう?」

ダコンの女に顔を向けたドッグと呼ばれた男性が再び小さくため息をつくと、拳銃をしまったその佇まいから警戒心が少しだけ薄れたのが見てとれた。

「そうだな。こいつも連れてあっちに合流しよう」

「・・・待てって、だから俺をどうしようってんだよ」

ダコンの女に顔を向けると女はドッグに顔を向けたので、ドッグに顔を向けると、女に顔を向けたドッグは小さく頷きながらフードに手をかけた。

「オレ達の目的はダコンにする人材を捜すことだ。だからさっきの戦いっぷりを見てお前に目を付け、こうやって仲間に引き入れてやろうと思って来た。理解出来たか?」

・・・え?ちょっと・・・。

「ちょ、ちょっと、待てよ?」

確か、こいつらはオーナー達の敵、だよな?

こいつらについて行ってダコンになるってことは、俺はオーナーの敵になるってことで、信悟や氷狼の敵になるってことだよな?

まじかよ、おいおい何だこの状況。

・・・だが、俺達も所詮はオーナーの兵隊作りの実験台にされてたし、たとえこいつらの仲間になっても戦争の道具には変わりねぇってこと、だよな。

「本当は、コテンのメガミとやらに目を付けてたんだがな・・・」

「おい、今何て?あいつら、あいつらをダコンにしようとしてたのか?」

「あぁ・・・だがお前が断るなら、当初の予定通りメガミとやらの中から人材を見つけるかな」

あいつらが、ダコンに?

まじかよ・・・だが、トゥーを失ったあいつらの誰かなら、恐らく復讐のためにダコンの力を望み兼ねねぇな。

ダコン、か。

俺だって、出来ることならあいつらのために、トゥーの敵を討つためにあのカブトムシを破壊してやりてぇ。

だから一旦帰って鉱石を使うことも考えてたしな。

「どうするんだ?来るか、死ぬか」

チッ断れば殺されんのかよ、なら、鉱石を取りに戻ることは出来ねぇな。

それに、鉱石使うのも、ダコンになるのも、大した変わりはねぇ、よな。

「・・・はぁ」



「じゃあ、オレらノブのところに居るから、相手が欲しいならまたいつでも来いよ?」

「あぁ」

ホールに戻るとホットミルクを置いていたテーブルにはヒカルコとメイナ、ミサとタイチの姿があった。

「途中から見てたよ氷牙、良かったな、覚醒出来たみたいでさ」

「・・・まあね」

・・・ふぅ、まだ体が熱いや。

「あら、元気ないじゃない、どうかしたの?」

ホットミルクを一口飲むが、その中途半端に生暖かい舌触りにふと嫌気を感じたことに、自分でも小さな驚きを感じた。

「・・・1回覚醒したくらいじゃ、何も変わらないからね」

結構汗もかいてきたか・・・。

「そんなに急いで無理したって、体がついていけなくなって寝込んじゃうのがオチよ?」

「大丈夫だよ。ちょっとシャワーでも浴びて来る」

次は第二覚醒か。

どれくらい時間がかかるかな・・・。

最初に第二覚醒したシンジは異世界に行ってる間になってたし、そんなにすぐには事は運ばないかな。

・・・ソウスケ、どうしてるかな。

シンゴはああ言ってたけどな・・・。

服を洗濯機に入れ、シャワーを浴びていたとき、ふと胸の底に小さな痛みが走ると、その痛みは重さとなり、間もなくして心全体を包み込むように広がっていった。

・・・何だ、これ。

痛みは無いけど、心臓を鷲掴みにされてるような感じ・・・。

「その調子だ」

・・・ん?何だ?

「もっとだ、もっと怒れ、その感情が儂の糧に、儂の力なる」

まさかこいつ、ネオグリムか。

心臓辺りから体の中を通ってくるように声が聞こえてくる。

「僕が心の中に居なくても話が出来るなら、最初からそうすれば良いのに」

「・・・いや、これは儂が徐々に力を養い始めた証拠だ」

そうだった、ネオグリムのこと、忘れかけてたな。

「・・・何か用なの?」

「どうやらお前なりの目的があるようだが、儂が力を完全に蓄えることが出来れば、儂はお前の意思に関わらず直ちにこの体を精霊の器にする。その事を忘れるな」

「・・・あぁ」

脱衣所に出てバスタオルを取り出し、洗濯機の蓋を開ける。

氷牙の力があったときは不老不死みたいなものだったけど、力が無くなった途端タイムリミット付きの体になるなんてな。

でも、これでプラスマイナスゼロって考えれば、仕方ないで済ませられるかな・・・。

ホールに戻って冷たいミルクを入れ、ヒカルコの隣の椅子に座ったとき、緊迫感を掻き立てるようなサイレンが突如ホールに響き渡り始めた。

何だ?

ヒカルコ達は不安感を募らせるように顔色を曇らせていったものの、ノブ達はまるでそのサイレンがスイッチかのようにやる気や闘志を剥き出しにしていく。

「警視庁から応援要請が入りましたので、出動される方は私の部屋までお願いします」

戦争が起こってる世の中でも、テロを起こす人が居るんだな・・・。

ノブ達の中から3人の男性が舞台に向かってから少しすると、おおよそ十数人の迷彩服の人達を連れてノブ達はおじさんの部屋へと向かっていった。

「ねぇ、空母戦争って言っても、戦いは全部海の上って訳じゃないでしょ?」

「うん、空母を止めるために、直接警視庁とか国会議事堂とか狙われたこともあったよ」

この組織って赤坂にあるし、日本じゃ1番テロの対処に忙しいかもな。

組織があるこのホテルが破壊されちゃ困るし、出来ればテロ鎮圧とかやりたいけど、こっちはノブ達に任せるしかないか・・・。

長かった第八章はここで終わりますが、まぁひとつの区切りとしてるだけなんで、とりあえずって感じですね。若干短めですが、エピローグって感じで見て貰えればと。

ありがとうございました。

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